アルファロメオ・レーシング

アルファロメオF1(Alfa Romeo F1 TEAM)は、2019年から2023年までスイスのレーシングコンストラクター「ザウバー・モータースポーツAG」が運営していたF1チーム。

アルファロメオ
スイスの旗 Alfa Romeo
エントリー名 アルファロメオ・レーシング (2019 - 2021)
アルファロメオF1チーム (2022 - 2023)
チーム国籍 スイスの旗 スイス
チーム本拠地 スイスの旗 スイス チューリッヒ州ヒンヴィル
主なチーム関係者 スウェーデンの旗 フィン・ラウジング
ドイツの旗 アンドレアス・ザイドル
イタリアの旗 アレッサンドロ・アルニ・ブラビ
イギリスの旗 ジェームス・キー
スイスの旗 ビート・ツェンダー
イタリアの旗イギリスの旗 ルカ・フルバット
スイスの旗 パスカル・ピッチポルトガル語版
フランスの旗 フレデリック・バスール
主なドライバー フィンランドの旗 キミ・ライコネン
イタリアの旗 アントニオ・ジョヴィナッツィ
ポーランドの旗 ロバート・クビサ
フィンランドの旗 バルテリ・ボッタス
中華人民共和国の旗 周冠宇
以前のチーム名称 ザウバーF1チーム
(2010 - 2018)
撤退後 ステークF1チーム
キック英語版・ザウバー)
F1世界選手権におけるチーム履歴
参戦年度 2019 - 2023
出走回数 104
コンストラクターズ
タイトル
0
ドライバーズ
タイトル
0
優勝回数 0
通算獲得ポイント 149
表彰台(3位以内)回数 0
ポールポジション 0
ファステストラップ 2
F1デビュー戦 2019年オーストラリアグランプリ
最後のレース 2023年アブダビグランプリ
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F1界で活動しているチーム「ザウバー」が、筆頭スポンサーである自動車メーカー「アルファロメオ」のネーミングライツにより改称し、2019年にリニューアルして誕生した。

2026年からF1に参入するアウディとの戦略的パートナー契約を2022年10月に結んだことに伴い、アルファロメオとのパートナーシップは2023年で終了となった[1]

概要

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2018年1993年よりF1に参戦しているスイスのモータースポーツチーム「ザウバー」に、イタリアの自動車メーカー「アルファロメオ」がタイトルスポンサーとして参入しパートナーシップを締結。「アルファロメオ・ザウバーF1チーム」のエントリーで参戦を開始する。

そして翌2019年ネーミングライツの形でコンストラクター名自体を変更し、『アルファロメオ・レーシング』の名称でエントラント登録をする。コンストラクター名の登録変更により「ザウバー」名義の戦績はリセットされ、新たに現行名での開始となるが組織の買収や譲渡は無く、これまで通り「ザウバー・モータースポーツAG」が運営する独立系チームとして活動している[2]

さらに2022年より、アルファロメオ・レーシングから『アルファロメオF1チーム』に変更し、製造者名も同名称から『アルファロメオ』のみに改めている[3]

F1参戦シーズン

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前史

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1970年、カーレーサー ペーター・ザウバーが自身のチーム「ザウバー」を設立し、モータースポーツの分野で活動を開始。1993年よりF1に参戦する。

2018年、自動車メーカー『アルファロメオ』とタイトルスポンサーのパートナーシップを締結[4]。「アルファロメオ・ザウバーF1チーム」のエントラント名でエントリー。エンジン供給はフェラーリが担当。マーカス・エリクソンシャルル・ルクレールをドライバーに、コンストラクターズランキング8位を記録[5]。シーズン終了後、エリクソンは降板しテストドライバーに起用。ルクレールはフェラーリに移籍した[6]

2019年

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C38(2019年)

新たなドライバーラインナップは、2007年のワールドチャンピオン キミ・ライコネンがフェラーリから移籍し2001年以来のチーム復帰。チームメイトに2017年に2戦ザウバーから出場し、前年はザウバーのリザーブドライバーを勤めていたアントニオ・ジョビナッツィが昇格した[7]

そして長年のコンストラクター名「ザウバー」を今シーズンから『アルファロメオ・レーシング』に登録変更し、新たなチーム名で活動を開始する[8]F1マシンはザウバーの型式名を継承した C38 で、車体の一部にはザウバー エンジニアリングの名が刻印されている[9]。エンジンもフェラーリからの供給を継続する。

第20戦ブラジルGPにて、4位・5位に入賞しシーズンベストリザルトを記録[10]。これにより昨季を上回る57 ポイントを獲得したが、それでもドライバーズやコンストラクターズランキングでは、ほぼ横ばいの成績に終わっている[11]

2020年

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運営元「ザウバー」の創立50周年を迎える[12]。新たなリザーブドライバーに、BMWザウバー時代に優勝実績をもつロバート・クビサ(前ウィリアムズF1ドライバー)を起用。また、クビサをバックアップしているポーランドの石油企業『PKNオーレン』とタイトルスポンサーを締結し、チーム名「アルファロメオ・レーシング・オーレン」でエントリー[13]

今シーズンは前年までとは打って変わって、非常に厳しいシーズンであった。2019年シーズン後半からフェラーリ製PUの問題点が指摘され、その問題を回避したフェラーリPUが供給されることとなったが、その関係でPUの戦闘力は低下[14]。さらに今季新型コロナウイルス感染症の影響に対応して追加の規定が導入された影響でPUのアップデートが実質禁止されてしまい[15][16]、その点での戦闘力向上も見込めなかった、さらにライコネンのコメントによれば、シャシー側の戦闘力も前年型より低下し[17]、僅か8ポイント獲得の成績に終わっている。しかもコンストラクター・ランキング8位はキープしたものの、7位とは99ポイントも差が開いた惨敗であった[18]。これは当チームだけではなくフェラーリ製PUユーザーのチーム全般が低調であり、本家であるスクーデリア・フェラーリもランキング6位に低迷していた。

2021年

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ライコネンの契約終了による彼の引退説や[19]、PU供給を受けるフェラーリの育成部門のフェラーリ・ドライバー・アカデミー(FDA)所属のドライバーが起用[20]されるのではないかとマスコミから噂されていたが[20][21]、今期も引き続き両ドライバーを起用した[22]。また、マシン名だが、本来は2021年から導入されるはずであった新規定のレギュレーションのマシンとして「C40」と命名する予定であったが、その導入が1年延期されたことやマシン開発においてそれを仮名称として使用し作業していたことから、入れ替えなどはせず、その次番となる「C41」を今季用のマシン名として使用している[23][24]

開幕戦でライコネンが11位完走を記録したため、コンストラクターズ暫定7位でスタートし、第5戦でジョビナッツィ、第6戦でライコネンがそれぞれ10位入賞を記録。この時点の成績ではコンストラクターズ暫定8位に位置していた[25]。だが、昨年最下位のウイリアムズが第11戦でダブル入賞を記録したことにより9位へ転落[26]。以後、ライコネンが8位入賞2回、ジョビナッツィが9位入賞を記録し、ポイントを加算したものの、コンストラクターズ8位のウィリアムズを上回れず、コンストラクターズ9位のままシーズンを終えた。この成績については、シーズン序盤に2022年型マシンの開発を優先すべく、2021年のマシン開発を早期に終了する予定とコメントしていたが[27]、シーズン終了後のまとめとして、アップデートを行わなかった場合のリスクの過小評価とレースでの入賞のチャンスを逃したことでコンストラクターズ8位を維持できなかったと語っている[28]。今シーズン限りでライコネンはF1を引退。ジョビナッツィもチームを去った。

なお第13戦オランダGP金曜日の終了後、ライコネンの新型コロナウイルスへの感染が発覚[29]。土曜日以降と第14戦イタリアGPでは、リザーブドライバーのクビサが代役を務めた。

11月末、創業者ペーター・ザウバーから受け継ぎザウバー・ホールディングスの会長を務めていた、パスカル・ピッチが辞任[30]

2022年

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レギュラードライバーを一新し、チャンピオンチームのメルセデスよりバルテリ・ボッタス、2022年シーズン唯一の新人となる周冠宇を迎えた。前年の経緯と異なり、2022年車はC40ではなく「C42」と名付けられた。10月26日に2026年からの新規定PUを搭載するパートナーとしてアウディとの提携を発表、ザウバーがアルファロメオを名乗るのは2023年までとなった[31]

戦績

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シャシー エンジン タイヤ No. ドライバー 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 ポイント ランキング
2019 C38 フェラーリ 064
1.6L V6ターボ
P AUS BHR CHN AZE ESP MON CAN FRA AUT GBR GER HUN BEL ITA SIN RUS JPN MEX USA BRA ABU 57 8位
7   ライコネン 8 7 9 10 14 17 15 7 9 8 12 7 16 15 Ret 13 12 Ret 11 4 13
99   ジョヴィナッツィ 15 11 15 12 16 19 13 16 10 Ret 13 18 18† 9 10 15 14 14 14 5 16
2020 C39 フェラーリ 065
1.6L V6ターボ
P AUS STY HUN GBR 70A ESP BEL ITA TUS RUS EIF POR EMI TUR BHR SKH ABU 8 8位
7   ライコネン Ret 11 15 17 15 14 12 13 9 14 12 11 9 15 15 14 12
99   ジョヴィナッツィ 9 14 17 14 17 16 Ret 16 Ret 11 10 15 10 Ret 16 13 16
2021 C41 フェラーリ 065/6
1.6L V6ターボ
P BHR EMI POR ESP MON AZE FRA STY AUT GBR HUN BEL NED ITA RUS TUR USA MEX SÃO QAT SAU ABU 13 9位
7   ライコネン 11 13 Ret 12 11 10 17 11 15 15 10 18 WD 8 12 13 8 12 14 15 Ret
88   クビサ 15 14
99   ジョヴィナッツィ 12 14 12 15 10 11 15 15 14 13 13 13 14 13 16 11 11 11 14 15 9 Ret
2022 C42 フェラーリ 066/7
1.6L V6ターボ
P BHR SAU AUS EMI MIA ESP MON AZE CAN GBR AUT FRA HUN BEL NED ITA SIN JPN USA MEX SÃO ABU 55 6位
77   ボッタス 6 Ret 8 5 7 6 9 11 7 Ret 11 14 20 Ret Ret 13 11 15 Ret 10 9 15
24   10 11 11 15 Ret Ret 16 Ret 8 Ret 14 16 13 14 16 10 Ret 16 12 13 12 12

車両ギャラリー

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  • パワーユニット型(2019年 - 2021年)

グラウンドエフェクト型(2022年 - 2023年)

脚注

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  1. ^ 2026年からF1参戦のアウディ、ザウバーとファクトリーチーム契約。株式取得の計画も」『』autosport web、2022年10月26日。2019年3月12日閲覧。
  2. ^ “名門ザウバーの名前がF1から消える。2019年は『アルファロメオ・レーシング』として参戦”. オートスポーツWeb. (2019年2月1日). https://www.as-web.jp/f1/448781?all 2019年3月12日閲覧。 
  3. ^ アルファロメオF1、チーム名変更を正式に発表。『F1チーム』を名称に追加、新ロゴも披露”. autosport web (2022年1月21日). 2022年1月24日閲覧。
  4. ^ “『アルファロメオ・ザウバー』正式発表。2018年から複数年の技術・商業パートナーシップを締結”. オートスポーツWeb. (2017年11月29日). http://www.as-web.jp/f1/185449?all 2019年3月12日閲覧。 
  5. ^ ザウバーF1代表、2019年はコンストラクターズ選手権で8位よりも上を目指すと明言”. オートスポーツWeb (2018年12月23日). 2019年3月12日閲覧。
  6. ^ ザウバー 「エリクソンの存在がルクレールの開花に役立った」”. F1-Gate.com (2019年1月18日). 2019年3月12日閲覧。
  7. ^ アルファロメオでの新たな挑戦に闘志を燃やすライコネンとジョビナッツィ”. TopNews (2019年3月8日). 2019年3月12日閲覧。
  8. ^ F1エントリーリスト改訂版が発表。アルファロメオ、シャシー名も変更”. Motorsport.com (2019年2月7日). 2019年3月12日閲覧。
  9. ^ アルファロメオF1、新車「C38」を正式発表…車体にはザウバーの名が残る”. Formula1-Data.com (2019年2月25日). 2019年3月15日閲覧。
  10. ^ アルファロメオ、4-5の大金星を挙げるも「サインツを抜けず悔しい」とライコネン / F1ブラジルGP”. Formula1-Data (2019年11月18日). 2019年12月2日閲覧。
  11. ^ 【最終ランキング】2019年F1世界選手権ポイントランキング/F1最終戦アブダビGP終了後”. TopNews (2019年12月2日). 2019年12月2日閲覧。
  12. ^ ザウバー創立50周年を迎えた2020年。アルファロメオF1「前進して、中団トップを争えるように」”. autosport web (2020年2月19日). 2020年2月19日閲覧。
  13. ^ クビサ、アルファロメオF1のリザーブドライバーに就任。ポーランド企業がタイトルスポンサーに”. AUTOSPORT web (2020年1月2日). 2020年1月2日閲覧。
  14. ^ フェラーリF1、エンジンパワーの低下は「技術指令書への対処の結果」formula1-data.com(2020年7月18日)2022年1月27日閲覧。
  15. ^ F1技術解説:フェラーリ後退の原因の7割はパワーユニット由来のもの。パワーを補うためにやるしかない必死のアップデートwww.as-web.jp(2020年7月17日)2022年1月27日閲覧
  16. ^ フェラーリの失速最大の要因はパワーユニットと、開発を足踏みさせた世界情勢による不運www.as-web.jp(2020年8月1日)2022年1月27日閲覧
  17. ^ F1最多走行距離の記録を達成したライコネン「遅すぎるマシン」の改善求めるwww.as-web.jp(2020年8月19日)2022年1月27日閲覧
  18. ^ 苦戦が続いたアルファロメオF1。バルセロナテストの時点で「望む状態ではなかった」とライコネンが語る www.as-web.jp(2020年12月24日)2022年1月27日閲覧
  19. ^ キミ・ライコネン「今年限りでF1を引退する可能性もある」www.topnews.jp(2020年6月10日)2020年11月20日閲覧。
  20. ^ a b ライコネンがアルファロメオF1に残留か。ジョビナッツィと若手3名が残るシートを争う展開にwww.as-web.jp(2020年10月5日)2020年11月20日閲覧。
  21. ^ アルファロメオF1の2021年シート、昇格噂される跳馬ジュニアよりも「まずは何よりもライコネンが最優先」formula1-data.com(2020年9月16日)2020年11月20日閲覧。
  22. ^ キミ・ライコネンとアントニオ・ジョビナッツィ、2021年アルファロメオF1残留が正式決定formula1-data.com(2020年10月30日)2020年11月20日閲覧。
  23. ^ アルファロメオの2021年型F1マシン『C41』:開発トークンを使い、スリムなノーズに変更”. autosport web (2021年2月22日). 2021年7月14日閲覧。
  24. ^ 2020年に低迷したアルファロメオF1、『C41・フェラーリ』で一歩前進を狙う「中団トップの座が目標」と代表”. autosport web (2021年2月22日). 2021年7月14日閲覧。
  25. ^ 2021 Formula One Azerbaijan Grand Prix - Team Standings”. results.motorsportstats.com. 2021年11月17日閲覧。
  26. ^ 2021 Formula One hungarian Grand Prix - Team Standings”. results.motorsportstats.com. 2021年11月17日閲覧。
  27. ^ 2022年型マシンの開発に力を注ぐアルファロメオF1。今季のアップデートは第2戦が最後かwww.as-web.jp(2021年4月12日)2022年1月27日閲覧
  28. ^ アルファロメオ、2021年アップデート無しの影響を過小評価していたと認める。しかし後悔はゼロjp.motorsport.com(2022年1月23日)2022年1月27日閲覧。
  29. ^ ライコネンが新型コロナウイルス陽性! リザーブドライバーのクビサがオランダGPに代役参戦へ”. jp motorsport.com (2021年9月4日). 2021年11月17日閲覧。
  30. ^ ザウバー会長、アルファロメオF1代表とのドライバー選定の意見の相違で辞任”. F1-gate.com (2021年11月30日). 2022年3月10日閲覧。
  31. ^ アウディ、ザウバーとのタッグを正式発表!2026年から”戦略的パートナー”にアダム・クーパー Motorsport.com 2022年10月26日

外部リンク

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