日本会議国会議員懇談会
日本会議国会議員懇談会(にっぽんかいぎ こっかいぎいんこんだんかい)は、日本最大の右派・保守系団体である日本会議[4][5][6]を支援する目的で設立された日本の超党派の議員連盟[7]。1997年5月29日設立。
略称 | 日本会議議連[1] |
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設立 | 1997年5月29日 |
設立者 |
小渕恵三 森喜朗 小沢辰男 |
種類 | 議員連盟 |
本部 | 日本 東京都千代田区平河町1丁目2-2 朝日ビル4階[2] |
会長 | 古屋圭司(第4代)[3] |
ウェブサイト | 日本会議国会議員懇談会 |
概要
編集1997年5月30日、「日本を守る会」と、財界人・文化人・旧日本軍関係者を中心とした「日本を守る国民会議」を統合して、日本会議が設立された[8]。その発足前日の5月29日、これを全面的に支援し連携する目的で、自由民主党の小渕恵三、森喜朗、それに新進党の小沢辰男[注釈 1]が発起人となって「日本会議国会議員懇談会」が結成された[9]。発足時の参加国会議員数は189人であった[10]。会長には島村宜伸、幹事長には平沼赳夫、事務局長には小山孝雄が就いた[11]。
その後増加し続け、2013年には252名[12]、2014年には289名[13]、2015年9月時点では281名となっている[10]。
2014年10月1日、日本会議は改憲分野のフロント組織として「美しい日本の憲法をつくる国民の会」を設立した[14][15]。「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の事務所と「日本会議国会議員懇談会」の事務所は同じ住所(東京都千代田区平河町1丁目2-2 朝日ビル4階)に置かれている[16][2]。
特徴
編集前述したように、日本会議の活動趣旨に賛同する国会議員によって結成された議連であることから、同団体が掲げる「“誇りある国づくり”を目指し、美しい日本を守り伝えるため」の国民運動を支持し、これを推進している[3]。何より日本国憲法の改正を悲願とし[1]、この他にも選択的夫婦別姓制度・外国人地方参政権付与・女系天皇及び女性宮家等をそれぞれ阻止すること、男系維持のための旧皇族の身分復帰、歴史教科書問題や慰安婦問題など歴史認識を是正すること、内閣総理大臣の靖国神社参拝の促進、北朝鮮による日本人拉致被害者の救出運動、尖閣諸島及び竹島等日本固有の領土を守る世論喚起などを推進している[3]。
2015年時点で国会議員のおよそ4割が参加しており[17]、後述の通り自由民主党所属の議員が圧倒的に多い。この他、旧民主党及び民進党内で保守・右派に位置していた議員や、大阪維新の会[注釈 2]を母体とする日本維新の会の議員らも参加している。また、当議連メンバーの多くは『神道政治連盟国会議員懇談会』をはじめ『みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会』や『創生「日本」』などの議員連盟にも参加していることが確認されている[18][19]。
通算8年9か月近く内閣総理大臣を務めた安倍晋三とは特に関わりが深いと指摘されており、2006年9月発足の第1次安倍内閣の組閣の際に当議連メンバーを多く入閣させた[注釈 3]。第2次安倍内閣では19人中13人が、同改造内閣では実に19人中15人が当議連メンバーであった[8]。その後もコンスタントに10人を超す議連メンバーが入閣しており、第4次安倍第2次改造内閣でも16人が入閣した[20]。安倍の跡を継いだ菅義偉内閣でも首相・菅義偉を含め20人中14人が本議連メンバー(2020年9月の内閣発足時)であった[21]。
見解
編集日本会議の面々と知己があり、改憲論者ながらも安全保障関連法は「違憲」であるとして反対の立場をとった慶應義塾大学名誉教授の小林節は、「彼ら(日本会議)に共通する思いは、第二次世界大戦での敗戦を受け入れ難い、だからその前の日本に戻したいということ。日本が五大軍事国だった時のように、米国とともに世界に進軍したいという思いの人が集まっている。よく見ると、明治憲法下でエスタブリッシュメント(支配階級)だった人の子孫が多い」と述べ[22]、上智大学国際教養学部教授の中野晃一も、「日本会議は、日本を帝国主義的な統治形態へ回帰させるのが目的ではないかと疑っている」と述べている[17]。
日本会議は日本国憲法の三大原理である「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」を排斥すべきだとの考えを根底に抱いており[23][24]、そのため国内外から「戦前回帰を目論む極右団体」と見なされることが多い[25][6]。議連に参加している議員にも同様の厳しい目が向けられている[26]。
一方、日本会議広報部長の村主真人は「家父長制の復活」や「現憲法を無効とし、大日本帝国憲法復活を目指す」、「教育勅語の復活」などといった政策を、日本会議側から安倍政権に働きかけた事実はないとしており、「戦前回帰を目指す集団というのは誤解である」と答えている[27]。2015年に安全保障関連法を巡る方向性の違いから退会した原口一博(当時民主党)も、「極右の安倍シンパと決めつけられているみたいだが、そういうレッテルを貼られるのは違和感がある。そこにいるからといって、全部に賛同しているわけではないし、政治活動は自由だ。(議連を)抜けるのは大変か? そんなことありません」と述べている[28]。
会員
編集元会員
編集過去に会員であることが指摘された人物は以下のとおり。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b “首相「党一丸で改憲」/改造内閣 12閣僚が日本会議議連幹部”. しんぶん赤旗. (2019年9月12日) 2020年7月19日閲覧。
- ^ a b “平成30年度政務活動費収支報告 植村佳史 2”. 奈良市 (2022年8月10日). 2024年1月16日閲覧。
- ^ a b c “日本会議・日本会議国会議員懇談会 設立20周年記念大会盛大に挙行(平成30年4月30日)”. 日本会議 (2018年4月30日). 2020年7月19日閲覧。
- ^ “憲法改正を訴える日本会議の「危ない」正体 「宗教右派の統一戦線」が目指すもの”. AERA. (2016年7月12日) 2021年1月20日閲覧。
- ^ Mesmer, Philippe (2016年8月3日). “A Tokyo, une nationaliste nommée à la défense”. Le Monde 2021年1月19日閲覧。
- ^ a b Steger, Isabella (14 March 2018). “"Falsify" might already be the winner for Japan's word of the year in 2018”. Quartz. 8 July 2020閲覧。 “Abe and Aso's names were nixed from an explanatory section about the school's ties with the powerful far-right lobbying group Nippon Kaigi.”
- ^ “国民運動の歩み”. 日本会議. 2020年7月19日閲覧。
- ^ a b “時代の正体〈89〉日本会議を追う(上)改憲へ増す影響力”. カナロコ. (2015年5月4日) 2020年7月19日閲覧。
- ^ 俵 2016, p.96.
- ^ a b 俵 2016, p.97.
- ^ 藤生 2017, pp. 155–156.
- ^ “【社説】日本の右傾化、積極的な対処が必要だ”. 中央日報. (2013年5月2日) 2020年7月19日閲覧。
- ^ 「地方から改憲の声、演出 日本会議が案文、議員ら呼応」、朝日新聞、2014年8月1日。
- ^ “いよいよ「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が設立”. 日本会議大阪 (2014年10月2日). 2024年1月12日閲覧。
- ^ “「責任持つ政治家か」 桜井よしこ氏が首相批判 改憲求める集会で”. 朝日新聞 (2023年11月27日). 2024年1月12日閲覧。
- ^ “憲法改正を実現する1,000万人ネットワーク 美しい日本の憲法をつくる国民の会”. 美しい日本の憲法をつくる国民の会. 2023年10月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月12日閲覧。
- ^ a b “国会議員の4割が参加する謎の団体「日本会議」とは”. クーリエ・ジャポン (2015年8月24日). 2020年7月19日閲覧。
- ^ “第3次安倍改造内閣/自民閣僚全員が「靖国」派 侵略美化・改憲を推進…”. しんぶん赤旗. (2015年10月12日) 2020年7月19日閲覧。
- ^ 俵 2016.
- ^ “「靖国」派ズラリ 自民閣僚/第4次安倍再改造内閣 19人中18人/小泉氏も毎年参拝”. しんぶん赤旗. (2019年9月14日) 2020年7月20日閲覧。
- ^ “菅内閣 「靖国」派ズラリ 改憲・右翼政治も“継承” 議連に18人”. しんぶん赤旗. (2020年9月21日) 2020年12月5日閲覧。
- ^ “日本最大の右派団体「日本会議」と安倍政権のただならぬ関係〜なんと閣僚の8割が所属”. 現代ビジネス (2015年7月12日). 2020年7月20日閲覧。
- ^ 山崎 2016, pp. 233–234.
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- ^ Mcneill, David (2015年8月15日). “Growing influence of Japan Conference reflects resentment at Tokyo's postwar settlement with Washington”. The Japan Times 2021年1月20日閲覧。
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- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc bd be bf bg bh bi bj bk bl bm bn bo bp bq br bs bt bu bv bw bx by bz ca cb cc cd ce cf cg ch ci cj ck cl cm cn co cp cq cr cs ct cu cv cw cx cy cz da db dc dd de df dg dh di dj dk dl dm dn do dp dq dr ds dt du dv dw dx dy dz ea eb ec ed ee ef eg eh ei ej ek el em en eo ep eq er es et eu ev ew ex ey ez fa fb fc fd fe ff fg fh fi fj fk fl fm fn fo fp fq fr fs ft fu fv fw fx fy fz ga gb gc gd ge gf gg gh gi gj gk gl gm gn go gp gq gr gs gt gu gv gw gx gy gz ha hb hc hd he hf hg hh hi hj hk hl hm hn ho hp hq hr hs ht hu hv hw hx hy hz ia ib ic id ie if ig ih ii ij ik il im in io ip iq ir is it iu iv iw ix iy iz ja jb jc jd je jf jg jh ji jj jk jl jm jn jo jp jq jr js jt ju jv jw jx jy jz ka kb kc kd ke kf kg kh ki kj kk kl km kn ko kp kq kr ks kt ku kv kw kx ky kz la lb lc ld le lf lg lh li lj lk ll lm ln lo lp lq lr ls lt lu lv lw lx ly lz ma mb mc md me mf mg mh mi mj 成澤編著 2016, pp.213–230.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc bd be bf bg bh bi bj bk bl bm bn bo bp bq br bs bt bu bv bw 「参院選後の改憲目指す 日本会議と安倍首相 日本の右傾化進める"影の組織"」『週刊朝日』2016年6月24日。2024年4月12日閲覧。
- ^ “決裁文書改ざんの財務省報告詳報”. 西日本新聞 (2018年3月12日). 2023年5月26日閲覧。
- ^ 日本会議退会に関する長島昭久のツイート (2015年9月28日) 2017年10月30日閲覧。
参考文献
編集- 青木理『日本会議の正体』平凡社〈平凡社新書〉、2016年7月9日。ISBN 978-4582858181。
- 山崎雅弘『日本会議―戦前回帰への情念』集英社〈集英社新書〉、2016年7月15日。ISBN 978-4087208429。
- 俵義文『日本会議の全貌——知られざる巨大組織の実態』花伝社、2016年6月17日。ISBN 9784763407818。
- 藤生明『ドキュメント 日本会議』筑摩書房〈ちくま新書〉、2017年5月10日。ISBN 978-4480069658。
- 成澤宗男編著『日本会議と神社本庁』金曜日、2016年6月28日。ISBN 9784865720105。
関連項目
編集- 美しい国 / 日本を、取り戻す。
- 家父長制 / 家父長主義
- 草の根保守
- 自主憲法論 / 押し付け憲法論
- 反フェミニズム / ミソジニー
- 文化芸術懇話会
- 戦後政治の総決算
- 戦後レジーム#日本(安倍晋三は第一次政権発足時に「この体制からの脱却」をスローガンとしており、安倍に近い右派議員らもこれを敵視する)
- 憲法学会 - 日本学術会議協力学術研究団体
関係する議員連盟
編集- 慰安婦問題と南京事件の真実を検証する会(旧民主党内の保守・反動系議員が中心)
- 永住外国人の地方参政権を慎重に考える勉強会(同上)
- 親学推進議員連盟
- 家族の絆特命委員会
- 公共放送のあり方について考える議員の会
- 国家主権と国益を守るために行動する議員連盟
- 自主憲法研究会
- 人権擁護法案から人権を守る会
- 神道政治連盟国会議員懇談会
- 真の人権擁護を考える懇談会
- 創生「日本」(旧「真・保守政策研究会」)
- 伝統と創造の会
- 日本教職員組合問題究明議員連盟
- 日本の前途と歴史教育を考える議員の会
- 日本の尊厳と国益を護る会
- 日本の領土を守るため行動する議員連盟
- 平和を願い真の国益を考え靖国神社参拝を支持する若手国会議員の会
- みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会