バレンシアの熱い花
『バレンシアの熱い花』(バレンシアのあついはな)は、宝塚歌劇団のミュージカル作品。柴田侑宏作。1976年初演。
19世紀初頭のスペインを舞台に、父を暗殺された貴族青年の復讐を描いた、柴田のオリジナル作品。
柴田にとって劇作家・演出家としての充実期に手がけた作品。初演が好評を博した他、21世紀以降も2007年の本公演再演や、2010年代・20年代にも全国ツアー演目となっており、再演作の多い柴田作品の中でも、根強い人気を誇る作品のひとつ。
あらすじ
編集19世紀スペイン、バレンシア地方。フランスの息のかかった領主ルカノールは横暴を繰り返していた。
軍務から2年ぶりに帰郷した前領主の嫡子フェルナンドは、父を暗殺したのがルカノールであると知り、復讐を決意、父の死の真相を知る退役軍人レオン将軍の策に従って軍から退き、遊び人を装う。
フェルナンドは遊び人になりきるために酒場に通いはじめ、酒場で歌い手として働くラモンやイサベラと親しくなっていく。
またルカノールの甥・ロドリーゴも恋人シルヴィアを叔父に強奪され、専横を極める叔父に面と向かって逆らうこともできず、ただ叔父への憎しみを募らせる日々を過ごしていた。
共通の敵をもつフェルナンドとロドリーゴは協力してルカノールを倒すことを誓い、ラモンにも盟友となるよう誘いかける。ラモンは誘いを断るものの、妹ローラがルカノールの部下に射殺される事件がおこり、遂に仲間に加わる。彼らは「黒い天使」を名乗り、夜な夜な悪党を倒していった。
フェルナンドと酒場のイサベラは恋に落ちるが、フェルナンドは婚約者マルガリータを裏切れず、またイサベラも、フェルナンドと時を過ごせるのは、彼の復讐に目処がつくまでのひとときにすぎないと悟っていた。一方ロドリーゴはシルヴィアと秘かに愛情を確かめ合っていた。
レオン将軍率いる義勇軍が決起し、ついにルカノールとの決戦の日が来た…
登場人物
編集- フェルナンド・デルバレス侯爵:前領主の嫡子。マジョルカ島からバレンシアへ帰還し、父の復讐に燃える。
- ロドリーゴ・グラナドス伯爵:フェルナンドの友人でルカノールの甥。
- ラモン・カルドス:酒場で働く青年。イサベラに恋している。
- イサベラ:酒場の女性。自らがフェルナンドとは本来違う世界の人間だと自覚している。
- シルヴィア:反逆罪で捕えられた父を救うためにルカノールの妻となる。
- マルガリータ:フェルナンドの婚約者でレオン将軍の孫娘。純粋にフェルナンドを慕っている。
- ルカノール公爵:現領主。
- レオン将軍:人望豊かな退役軍人。
- セレスティーナ侯爵夫人:フェルナンドの母。
主な楽曲
編集- バレンシアの熱い花
- 瞳の中の宝石
- 決意
- 恋のカンタンテ
- 死んでもいい
- バレンシアのために
- ロンサールの恋歌
(作詞:柴田侑宏 作曲 :寺田瀧雄)
- 暗殺依頼状
- 黒い天使3人登場
- 再会
- 士官たちの乱暴
- 出撃
- フェルナンドの告白
- マルガリータのテーマ
- 密談
- 夜会
- ルカノール登場
- ロドリーゴ家の舞踏会
- ロドリーゴの苦悩
- 別れ
(作曲:寺田瀧雄)
- 決闘
- 城中侵入
- ラモンの怒り
(作曲:河崎恒夫)
これまでの上演
編集- 初演・1976年月組
- 1979年月組
- 2007年宙組
-
- 宝塚大劇場:6月22日-7月30日[5](新人公演:7月10日[6])、東京宝塚劇場:8月17日-9月30日[5](新人公演:8月28日[6])
- 演出は中村暁、振付をANJU(元花組男役トップ安寿ミラ)が担当した。
- 本公演の伴演作(ショー)はコズミック・フェスティバル『宙 FANTASISTA![5]』
- 形式名は「ミュージカル・ロマン[5]」
- 18場[5]。
- 大和悠河・陽月華の大劇場お披露目公演[5]。
- ロドリーゴ役とラモン役は、蘭寿とむと北翔海莉が役替わりで務めた[5]。
- ベテラン脇役・鈴鹿照がこの作品をもって定年退団。そのため密偵ホルヘの役の比重を大きくしたり、クライマックスシーンの変更が行なわれた。
ラモン | ロドリーゴ | |
---|---|---|
6月22日(金)-7月6日(金) | 蘭寿とむ | 北翔海莉 |
7月7日(土)-7月20日(金) | 北翔海莉 | 蘭寿とむ |
7月21日(土)-7月30日(月) | 蘭寿とむ | 北翔海莉 |
ラモン | ロドリーゴ | |
---|---|---|
8月17日(金)-8月31日(金) | 蘭寿とむ | 北翔海莉 |
9月1日(土)-9月14日(金) | 北翔海莉 | 蘭寿とむ |
9月15日(土)-9月30日(日) | 蘭寿とむ | 北翔海莉 |
- 全国ツアー公演として、10月30日-11月25日[9]まで続演された。
公演日 | 公演場所 |
---|---|
10月30日 | 梅田芸術劇場・メインホール(大阪府) |
10月31日 | |
11月2日 | 市川市文化会館(千葉県) |
11月3日 | グリーンホール相模大野(神奈川県) |
11月4日 | 茅ヶ崎市民文化会館(神奈川県) |
11月6日 | オーバード・ホール (富山市芸術文化ホール)(富山県) |
11月8日 | 高山市民文化会館(岐阜県) |
11月10日 | 中京大学文化市民会館オーロラホール (名古屋市民会館大ホール)(愛知県) |
11月11日 | |
11月13日 | 静岡市民文化会館(静岡県) |
11月14日 | |
11月16日 | 九州厚生年金会館(福岡県北九州市) |
11月17日 | 福岡市民会館(福岡県) |
11月18日 | |
11月20日 | 熊本市民会館(熊本県) |
11月21日 | 佐賀市文化会館(佐賀県) |
11月23日 | 都城市総合文化ホール(宮崎県) |
11月24日 | 宝山ホール(鹿児島県文化センター) |
11月25日 |
- 2016年宙組
-
- 全国ツアー公演として、11月18日から12月11日まで上演[10]。
- 演出は中村暁が担当[10]。
- 伴演作(ショー)はダイナミック・ショー『HOT EYES!![10]』
- 相手役の実咲凜音は、KAAT神奈川芸術劇場公演『双頭の鷲』に出演[10]。
公演日 | 公演場所 |
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11月18日(金) | 梅田芸術劇場メインホール(大阪府) |
11月19日(土) | |
11月20日(日) | |
11月23日(水) | 松戸・森のホール21(千葉県) |
11月25日(金) | 府中の森芸術劇場(東京都) |
11月26日(土) | 神奈川県民ホール |
11月27日(日) | |
11月29日(火) | ひめぎんホール(愛媛県県民文化会館) |
11月30日(水) | 西条市総合文化会館(愛媛県) |
12月2日(金) | 北九州ソレイユホール(福岡県) |
12月3日(土) | 福岡市民会館 |
12月4日(日) | |
12月6日(火) | 佐賀市文化会館 |
12月7日(水) | アルカスSASEBO(長崎県) |
12月10日(土) | 宝山ホール(鹿児島県文化センター) |
12月11日(日) |
- 2023年星組
-
- 全国ツアー公演として、3月26日から4月11日まで上演
- 演出は中村暁が担当
- 伴演作(ショー)はロマンチック・レビュー『パッション・ダムール・アゲイン!』
公演日 | 公演場所 |
---|---|
3月26日(日) | 梅田芸術劇場メインホール(大阪府) |
3月27日(月) | |
3月28日(火) | |
3月29日(水) | |
4月1日(土) | 市川市文化会館(千葉県) |
4月2日(日) | |
4月4日(火) | 広島県立文化芸術ホール |
4月5日(水) | |
4月6日(木) | 周南市文化会館(山口県) |
4月8日(土) | 福岡市民会館(福岡県) |
4月9日(日) | |
4月10日(月) | |
4月11日(火) |
スタッフ(宝塚公演)
編集1976年
編集- 作・演出:柴田侑宏[1]
- 音楽[11]:寺田瀧雄、河崎恒夫
- 音楽指揮:野村陽児[11]
- 振付[11]:喜多弘、河上五郎、岡正躬
- 擬闘:河上五郎[11]
- 装置:黒田利邦[11]
- 衣装:小西松茂[11]
- 照明:今井直次[12]
- 音響:松永浩志[12]
- 小道具:上田特市[12]
- 効果:中田正廣[12]
- 演出助手:正塚晴彦[12]
- 制作:橋本雅夫[12]
2007年
編集配役一覧
編集( )は新人公演。
1976年月組 (宝塚) |
1979年月組 (東京) |
2007年宙組 (宝塚・東京) |
2007年宙組 (全国) |
2016年宙組 (全国) |
2023年星組(全国) | |
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フェルナンド | 榛名由梨[2] (条はるき[2]) |
榛名由梨[4] (芹まちか[4]) |
大和悠河[6] (春風弥里[6]) |
大和悠河 | 朝夏まなと | 凪七瑠海 |
ロドリーゴ | 瀬戸内美八 (大地真央) |
大地真央 (峰城とわ) |
蘭寿とむ 北翔海莉 (鳳翔大) |
七帆ひかる | 澄輝さやと | 極美慎 |
ラモン | 順みつき (世れんか) |
順みつき (剣幸) |
蘭寿とむ 北翔海莉 (早霧せいな) |
蘭寿とむ | 真風涼帆 | 瀬央ゆりあ |
イサベラ | 小松美保[2] (邦なつき[2]) |
小松美保[4] (五條愛川[4]) |
陽月華[6] (花影アリス[6]) |
陽月華 | 伶美うらら | 舞空瞳 |
シルヴィア | 舞小雪 (潮はるか) |
舞小雪 (邦なつき) |
美羽あさひ (藤咲えり) |
美羽あさひ | 遥羽らら | 水乃ゆり |
マルガリータ | 北原千琴 (野々ひかり) |
優ひかり (葦笛るか) |
和音美桜 (天咲千華) |
天咲千華 | 星風まどか | 乙華菜乃 |
ルカノール | 沖ゆき子 (礼美良) |
藤城潤 (星原美沙緒) |
悠未ひろ (暁郷) |
悠未ひろ | 寿つかさ | 朝水りょう |
レオン将軍 | 水代玉藻 (汝鳥伶) |
美郷真也 (八雲美佳) |
美郷真也 | 松風輝 | 美稀千種 | |
セレスティーナ夫人 | 大路三千緒 (紫賀みどり) |
三鷹恵子 (京三紗) |
邦なつき (和音美桜) |
邦なつき | 純矢ちとせ | 紫りら |
ホルヘ | 葉山三千子 (早織光世) |
水乃亮 (火の鳥美奈) |
鈴鹿照 (七海ひろき) |
寿つかさ | 星吹彩翔 | 大輝真琴 |
脚本(スタッフ) | 柴田侑宏 | |||||
演出(スタッフ) | 柴田侑宏 | 柴田侑宏 中村暁 |
中村暁 |
漫画化
編集宝塚ファンとしても知られる、さいとうちほによる作画。宝塚GRAPH誌・1998年9〜12月号に掲載され、その後以下の単行本に収録されている。
- 天使の微笑・悪魔の涙:小学館、1999年刊行。
- 銀の狼:小学館漫画文庫、2005年刊行。
脚注
編集- ^ a b c d e 100年史(舞台) 2014, p. 143.
- ^ a b c d e 100年史(舞台) 2014, p. 295.
- ^ 100年史(舞台) 2014, p. 216.
- ^ a b c d e 100年史(舞台) 2014, p. 296.
- ^ a b c d e f g h i 100年史(舞台) 2014, p. 192.
- ^ a b c d e f 100年史(舞台) 2014, p. 316.
- ^ “『バレンシアの熱い花』『宙 FANTASISTA!』 | 宙組 | 宝塚大劇場 | 宝塚歌劇 | 公式HP”. archive.kageki.hankyu.co.jp. 2023年9月27日閲覧。
- ^ “『バレンシアの熱い花』『宙 FANTASISTA!!』 | 宙組 | 東京宝塚劇場 | 宝塚歌劇 | 公式HP”. archive.kageki.hankyu.co.jp. 2023年9月27日閲覧。
- ^ 100年史(舞台) 2014, p. 261.
- ^ a b c d “宝塚宙組、11・12月は「バレンシアの熱い花」「HOT EYES!!」で全国ツアー”. ステージナタリー. (2016年5月20日) 2016年6月21日閲覧。
- ^ a b c d e f 100年史(人物) 2014, p. 196.
- ^ a b c d e f 100年史(人物) 2014, p. 197.
- ^ a b c d e f g h 100年史(人物) 2014, p. 212.
- ^ a b c d e f g h 100年史(人物) 2014, p. 213.
参考資料
編集- 監修・著作権者:小林公一『宝塚歌劇100年史 虹の橋 渡りつづけて(舞台編)』阪急コミュニケーションズ、2014年4月1日。ISBN 978-4-484-14600-3。
- 監修・著作権者:小林公一『宝塚歌劇100年史 虹の橋 渡りつづけて(人物編)』阪急コミュニケーションズ、2014年4月1日。ISBN 978-4-484-14601-0。
関連
編集外部リンク
編集- 2007年・宙組
- 2016年・宙組
- 全国ツアー・公演案内(宝塚歌劇公式)
- 宙組 大劇場「バレンシアの熱い花」配信deタカラヅカ
- 宙組 全国公演「バレンシアの熱い花」配信deタカラヅカページ
- 宙組 大劇場(役替わり)「バレンシアの熱い花」配信deタカラヅカページ
- 星組 全国公演('23)「バレンシアの熱い花」配信deタカラヅカページ
- 花と愛のたからづか(CD)宝塚アン(商品)ページ
- 花と愛のたからづか(LP) 国会図書館オンライン
- 花と愛のたからづか(CD) 国会図書館オンライン
- 2023年・星組