アカデミー監督賞
アカデミー賞の部門
アカデミー監督賞(アカデミーかんとくしょう、Academy Award for Directing)は、アカデミー賞の一部門で、その年アメリカで公開された映画における、最も優れた映画監督にあたえられる。
アカデミー賞監督賞 Academy Award for Best Director | |
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最新の受賞者:クリストファー・ノーラン | |
受賞対象 | 映画の指揮の達成における卓越性 |
国 | アメリカ合衆国 |
主催 | 映画芸術科学アカデミー (AMPAS) |
初回 | 1929年 |
最新受賞者 | クリストファー・ノーラン『オッペンハイマー』 (2023年) |
公式サイト | oscars |
この賞を受賞した96作品中69作品が、アカデミー作品賞を獲得している他、1928-1929年度を除く全ての作品が作品賞に同時ノミネートを受けていたりと、最も作品賞とのつながりを持つ賞ともいえる。
逆に作品賞を受賞しながら、監督賞にノミネートされなかった作品は『つばさ』(1927年)、『グランド・ホテル』(1932年)、『ドライビング Miss デイジー』(1989年)、『アルゴ』(2012年)、『グリーンブック』(2018年)『コーダ あいのうた』(2021年)の6作品のみである。
また、他部門にノミネートされながらも、監督賞のみの受賞となったのは『情炎の美姫』(1928年)、『スキピイ』(1930年)、『オペラハット』(1936年)、『新婚道中記』(1937年)、『ジャイアンツ』(1956年)、『卒業』(1967年)、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021年)の7作品。監督賞が唯一のノミネートだった『美人国二人行脚』(1927年)を含めると8作品のみとなる。
歴史
編集第1回は「ドラマ(Dramatic Picture)」と「コメディ(Comedy Picture)」の2部門に分かれており、前者はフランク・ボーゼイギ(第七天国)が、後者はルイス・マイルストン(美人国二人行脚が )が受賞した。翌年の第2回には、ひとつの部門に統一されている。
各年の受賞者と候補者
編集1920年代
編集第1回に限り、ドラマ映画監督とコメディ映画監督がそれぞれ選ばれた。
年 | 受賞者 | 候補者 |
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1927/1928 (ドラマ) |
フランク・ボーゼージ – 『第七天国』 |
ハーバート・ブレノン – 『ソレルと其の子』 キング・ヴィダー – 『群衆』 |
1927/1928 (コメディ) |
ルイス・マイルストン – 『美人国二人行脚』 |
テッド・ワイルド – 『ロイドのスピーディー』 |
1928/1929 | フランク・ロイド – 『情炎の美姫』 |
ライオネル・バリモア – 『マダムX』 ハリー・ボーモント – 『ブロードウェイ・メロディー』 アーヴィング・カミングス – 『懐しのアリゾナ』 フランク・ロイド - 『愛の曳網』 エルンスト・ルビッチ – The Patriot |
1929/1930 | ルイス・マイルストン – 『西部戦線異状なし』 |
クラレンス・ブラウン – 『アンナ・クリスティ』、『ロマンス』 ロバート・Z・レナード – 『結婚双紙』 エルンスト・ルビッチ – 『ラヴ・パレイド』 キング・ヴィダー – 『ハレルヤ』 |
1930年代
編集年 | 受賞者 | 候補者 |
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1930/1931 | ノーマン・タウログ – 『スキピイ』 |
クラレンス・ブラウン – 『自由の魂』 ルイス・マイルストン – 『犯罪都市』 ウェズリー・ラッグルス – 『シマロン』 ジョセフ・フォン・スタンバーグ – 『モロッコ』 |
1931/1932 | フランク・ボーゼイジ – 『バッド・ガール』 |
キング・ヴィダー – 『チャンプ』 ジョセフ・フォン・スタンバーグ – 『上海特急』 |
1932/1933 | フランク・ロイド – 『カヴァルケード』 |
フランク・キャプラ – 『一日だけの淑女』 ジョージ・キューカー – 『若草物語』 |
1934 | フランク・キャプラ – 『或る夜の出来事』 |
ヴィクター・シャーツィンガー – 『恋の一夜』 W・S・ヴァン・ダイク – 『影なき男』 |
1935 | ジョン・フォード – 『男の敵』 |
ヘンリー・ハサウェイ – 『ベンガルの槍騎兵』 フランク・ロイド – 『戦艦バウンティ号の叛乱』 |
1936 | フランク・キャプラ – 『オペラ・ハット』 |
グレゴリー・ラ・カーヴァ – 『襤褸と宝石』 ロバート・Z・レナード – 『巨星ジーグフェルド』 W・S・ヴァン・ダイク – 『桑港』 ウィリアム・ワイラー – 『孔雀夫人』 |
1937 | レオ・マッケリー – 『新婚道中記』 |
ウィリアム・ディターレ – 『ゾラの生涯』 シドニー・フランクリン – 『大地』 グレゴリー・ラ・カーヴァ – 『ステージ・ドア』 ウィリアム・A・ウェルマン – 『スタア誕生』 |
1938 | フランク・キャプラ – 『我が家の楽園』 |
マイケル・カーティス – 『汚れた顔の天使』 マイケル・カーティス – 『四人の姉妹』 ノーマン・タウログ – 『少年の町』 キング・ヴィダー – 『城砦』 |
1939 | ヴィクター・フレミング – 『風と共に去りぬ』 |
フランク・キャプラ – 『スミス都へ行く』 ジョン・フォード – 『駅馬車』 サム・ウッド – 『チップス先生さようなら』 ウィリアム・ワイラー – 『嵐が丘』 |
1940年代
編集1950年代
編集1960年代
編集1970年代
編集1980年代
編集1990年代
編集2000年代
編集2010年代
編集2020年代
編集年 | 受賞者 | 候補者 |
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2020/21 | クロエ・ジャオ – 『ノマドランド』 |
トマス・ヴィンターベア – 『アナザーラウンド』 デヴィッド・フィンチャー – 『Mank/マンク』 リー・アイザック・チョン – 『ミナリ』 エメラルド・フェネル – 『プロミシング・ヤング・ウーマン』 |
2021 | ジェーン・カンピオン – 『パワー・オブ・ザ・ドッグ』 |
ポール・トーマス・アンダーソン – 『リコリス・ピザ』 ケネス・ブラナー – 『ベルファスト』 濱口竜介 – 『ドライブ・マイ・カー』 スティーヴン・スピルバーグ – 『ウエスト・サイド・ストーリー』 |
2022 | ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート – 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 |
トッド・フィールド - 『TAR/ター』 マーティン・マクドナー - 『イニシェリン島の精霊』 リューベン・オストルンド - 『逆転のトライアングル』 スティーブン・スピルバーグ - 『フェイブルマンズ』 |
2023 | クリストファー・ノーラン – 『オッペンハイマー』 |
ジュスティーヌ・トリエ - 『落下の解剖学』 マーティン・スコセッシ - 『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』 ヨルゴス・ランティモス - 『哀れなるものたち』 ジョナサン・グレイザー - 『関心領域』 |
記録
編集複数回受賞・ノミネート者
編集最年長・最年少の受賞・ノミネート者
編集記録 | 監督 | 映画 | 年齢 |
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最年長受賞者 | クリント・イーストウッド | ミリオンダラー・ベイビー | 74歳 |
最年長ノミネート者 | マーティン・スコセッシ | キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン | 81歳 |
最年少受賞者 | デイミアン・チャゼル | ラ・ラ・ランド | 32歳 |
最年少ノミネート者 | ジョン・シングルトン | ボーイズ'ン・ザ・フッド | 24歳 |
受賞・ノミネート者の多様性
編集- 創設以来、463組のノミネート、74組の監督に授与されているが、6人の黒人監督(ジョン・シングルトン、リー・ダニエルズ、スティーヴ・マックイーン、バリー・ジェンキンス、ジョーダン・ピール、スパイク・リー)が合計6回ノミネートしているが、いずれも受賞はしていない[2]。
- 8人の女性監督(リナ・ウェルトミューラー、ジェーン・カンピオン(2回)、ソフィア・コッポラ、キャスリン・ビグロー、グレタ・ガーウィグ、エメラルド・フェネル、クロエ・ジャオ、ジュスティーヌ・トリエ)が合計8回ノミネートされ、3人(キャスリン・ビグロー、クロエ・ジャオ、ジェーン・カンピオン)が受賞している[3]。
- 9人のアジア系監督(M・ナイト・シャマラン、クロエ・ジャオ、リー・アイザック・チョン、濱口竜介、ポン・ジュノ、アン・リー(3回)、勅使河原宏、黒澤明、ダニエル・クワン)が合計11回ノミネートされ、4回(アン・リー(2回)、ポン・ジュノ、クロエ・ジャオ)受賞している[4]。
- 5人のラテンアメリカ系監督(エクトール・バベンコ、フェルナンド・メイレレス、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(3回)、アルフォンソ・キュアロン(2回)、ギレルモ・デル・トロ)が合計8回ノミネートされ、5回(アルフォンソ・キュアロン(2回)、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(2回)、ギレルモ・デル・トロ)受賞している[5]。
その他
編集- 第11回では、マイケル・カーティスが史上初めて『汚れた顔の天使』と『四人の姉妹』の2作品でノミネートされた監督となった。その後、2作品で同時にノミネートされたのは第73回のスティーヴン・ソダーバーグ(『トラフィック/エリン・ブロコビッチ)のみで、ソダーバーグは『トラフィック』で監督賞を受賞した。
- クラレンス・ブラウンが無冠ながら最多6回のノミネートを果たしている。
- これまでの歴史上、共同でノミネートされているのが、ロバート・ワイズ&ジェローム・ロビンズ(『ウエスト・サイド物語』)、ウォーレン・ベイティ&バック・ヘンリー(『天国から来たチャンピオン』)、ジョエル&イーサン・コーエン(『ノーカントリー』、『トゥルー・グリット』)、ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』)であり、そのうち、受賞しているのはロバート・ワイズ&ジェローム・ロビンズとコーエン兄弟(『ノーカントリー』)とダニエル・クワン&ダニエル・シャイナートである。また、コーエン兄弟はこの部門で唯一の兄弟での共同受賞である。
- フランシス・フォード・コッポラは『ゴッドファーザー』シリーズ各作品でノミネートされ、そのうち、『PART II』で受賞を果たしている。
- ジョン・フォード(1940年・1941年)、ジョセフ・L・マンキーウィッツ(1949年・1950年)、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(2014年・2015年)はこの部門で連覇した監督である。
- ジョージ・スティーヴンス(1951・1956)、アン・リー(2005・2012)、アルフォンソ・キュアロン(2013・2018)はこの部門を二度受賞しているが、一度も作品賞を受賞していない。
- スティーヴン・スピルバーグは、1970年代、1980年代、1990年代、2000年代、2010年代、2020年代と6つの世代に渡ってノミネートを果たした初めての監督である。
参考文献
編集- ^ “Nominees for the 86th Academy Awards”. 映画芸術科学アカデミー. 2014年1月17日閲覧。
- ^ Stolworthy, Jacob (January 23, 2018). “Oscar nominations 2018: Jordan Peele and Greta Gerwig's Best Director nods are a win for diversity and creativity”. The Independent. オリジナルのJanuary 23, 2018時点におけるアーカイブ。 January 23, 2018閲覧。
- ^ Gonzalez, Sandra (January 23, 2018). “Greta Gerwig's 'Lady Bird' best director nomination is a huge deal”. CNN. オリジナルのJanuary 23, 2018時点におけるアーカイブ。 January 23, 2018閲覧。
- ^ “Asian Directors and the Oscars | US-China Institute” (英語). china.usc.edu. 2022年3月30日閲覧。
- ^ “7 Latinos who have won Academy Awards” (英語). HOLA (2020年2月5日). 2022年3月30日閲覧。
外部リンク
編集- Academy of Motion Picture Arts and Sciences - 映画芸術科学アカデミー公式サイト
- The Oscars - アカデミー賞授賞式公式サイト
- Oscar Legacy - アカデミー賞各年の概要(公式サイト)
- The Official Academy Awards Database - アカデミー賞公式データベース
- Academy Awards - インターネット・ムービー・データベース
- アカデミー賞 - allcinema