嵐が丘 (1939年の映画)
『嵐が丘』(あらしがおか、原題: Wuthering Heights)は、1939年のアメリカ合衆国の恋愛映画。1950年に大映洋画部が配給した際の邦題は『嵐ヶ丘』である。その後、1966年の日比谷みゆき座など、東宝系での再公開時に『嵐が丘』となる。監督はウィリアム・ワイラー、出演はマール・オベロンとローレンス・オリヴィエなど。原作はエミリー・ブロンテの小説『嵐が丘』。オリヴィエのアメリカ映画第1作として知られる。第12回アカデミー賞で撮影賞(白黒作品)を受賞している。 この時期のユナイテッド・アーティスツ作品には珍しく版権が売却されなかったことから、現在も、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(UAの後継)が版権を保有する。2007年には、「文化的、歴史的、美術に重要」としてアメリカ国立フィルム登録簿に選ばれた。
嵐が丘 | |
---|---|
Wuthering Heights | |
ポスター(1939) | |
監督 | ウィリアム・ワイラー |
脚本 |
チャールズ・マッカーサー ベン・ヘクト |
原作 |
エミリー・ブロンテ 『嵐が丘』 |
製作 | サミュエル・ゴールドウィン |
出演者 |
マール・オベロン ローレンス・オリヴィエ |
音楽 | アルフレッド・ニューマン |
撮影 | グレッグ・トーランド |
編集 | ダニエル・マンデル |
製作会社 | サミュエル・ゴールドウィン・プロダクションズ |
配給 |
ユナイテッド・アーティスツ 大映洋画部 |
公開 |
1939年4月13日 1950年12月1日 |
上映時間 | 103分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
ストーリー
編集吹雪で道に迷ったロックウッドは、「嵐が丘」と呼ばれる館に辿り着き、一夜の宿を乞うた。陰気な館には主人のヒースクリフと妻のイザベラが使用人たちと暮らしていた。その夜、ロックウッドは破れた窓の外からヒースクリフを呼ぶ女の声を聞いた。それを知ったヒースクリフは、「キャシー!」と叫んで吹雪の戸外へ飛び出して行った。取り残されたロックウッドは、館の家政婦エレンから、「嵐が丘」にまつわる過去の悲劇を聞くことになった。
「嵐が丘」の元の持ち主だったアーンショーは慈悲深い男で、貧しい孤児を保護し、ヒースクリフと名付けて実子同然に育てた。アーンショーの娘キャシーはヒースクリフを愛したが、跡取り息子であるヒンドリーは彼を憎み、父の死後は館の馬丁として酷使した。
成長したキャシーは上流階級に憧れ、裕福なエドガー・リントンに求婚されて有頂天になった。キャシーは本心ではヒースクリフを愛しており、承諾の返事も思い止まったのだが、そうと知らないヒースクリフは館を飛び出し、行方をくらました。
キャシーがエドガーと結婚した後に、ヒースクリフは成功した裕福な紳士として戻って来た。復讐を誓ったヒースクリフは、まず、ヒンドリーの借金を肩代わりすることで「嵐が丘」の当主の座を手に入れた。ヒースクリフは次にエドガーの妹イザベラと結婚し、同時にキャシーに愛を語り続けた。悩み苦しんだキャシーはやがて生きる気力を失い、亡くなった。
エレンの話が終る頃、医師のケネスが「嵐が丘」に駆けつけた。ケネスは吹雪の荒野でヒースクリフと女の二人連れを見たのだが、追いつくとヒースクリフが一人で死んでいたというのだ。幽霊ではないと語るエレン。愛し合うヒースクリフとキャシーは、時の隔たりを超えてようやく一緒になったのだった。
キャスト
編集役名 | 俳優 | 日本語吹替 | |
---|---|---|---|
NHK版 | PDDVD版 | ||
ヒースクリフ | ローレンス・オリヴィエ | 新田昌玄 | 古澤徹 |
キャサリン・アーンショー・リントン | マール・オベロン | 寺田路恵 | 湯屋敦子 |
エドガー・リントン | デヴィッド・ニーヴン | 木下秀雄 | 鳥海勝美 |
エレン・ディーン | フローラ・ロブソン | 織田芙実 | |
イザベラ・リントン | ジェラルディン・フィッツジェラルド | 水城蘭子 | 古山あゆみ |
ヒンドリー・アーンショー | ヒュー・ウイリアムズ | 坂詰貴之 | |
ケネス医師 | ドナルド・クリスプ | 澤田将考 | |
ジョセフ | レオ・G・キャロル | 真木恭介 | 織間雅之 |
ロックウッド | マイルズ・マンダー | 御園行洋 | |
アーンショー(キャシーの父) | セシル・ケラウェイ | ||
子供時代のヒースクリフ | レックス・ダウニング | 藤原美央子 | |
子供時代のキャシー | サリタ・ウートン | 前田ゆきえ | |
子供時代のヒンドリー | ダグラス・スコット | 大鐘則子 |
- NHK版:初回放送1971年12月31日『劇映画』[1]
スタッフ
編集- 監督:ウィリアム・ワイラー
- 製作:サミュエル・ゴールドウィン
- 撮影:グレッグ・トーランド
- 音楽:アルフレッド・ニューマン
主な受賞歴
編集アカデミー賞
編集撮影中のエピソード
編集本作で主役を演じたオリヴィエとオベロンは、両名ストレスでイライラしており終始いがみ合っていた。オベロンは「オリヴィエが大嫌いだ。キス・シーンなんて想像するだけでゾッとする」と漏らしており、オリヴィエは「オベロンが気に入らない。彼女がどうしたこうした」とロンドンの舞台に立っていた愛人のヴィヴィアン・リーに手紙で愚痴もこぼしていた[要出典]。
それを読んだヴィヴィアンはいたたまれなくなり、舞台をすっぽかして大西洋航路の客船に飛び乗り、大陸横断鉄道や航空路を経由して、ロサンゼルスへやって来た。また、その頃『風と共に去りぬ』が、主役であるスカーレット・オハラ役の女優が決まっていないままアトランタの火災シーンから撮影が開始された。しかし、製作者の弟であるプロダクション・マネージャーが撮影現場の見物人の1人であったヴィヴィアンの炎に赤く輝く横顔を見て「スカーレットは決まりだ!!」と直感し、思わぬ形でヴィヴィアンは大作の主役に抜擢された[要出典]。