扇ひろこ

日本の女性演歌歌手
扇ひろ子から転送)

扇 ひろ子(おうぎ ひろこ、本名:田辺 博美、1945年2月14日 - )は、日本演歌歌手女優である。既婚。

扇 ひろ子
出生名 乗松 博美
生誕 (1945-02-14) 1945年2月14日(79歳)
出身地 広島県広島市[1]
学歴 相愛高等学校卒業
ジャンル 演歌
職業 歌手
担当楽器
活動期間 1964年 -
レーベル 日本コロムビア

経歴

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広島県広島市段原中町(現:南区段原)生まれ[2][注 1]。生後6ヶ月を目前にした1945年8月6日、爆心地から約2キロの自宅で被爆、父を亡くした[2][3][4]。25歳だった母は、新しい男と結婚するため、子どもを四国愛媛県の祖父母に預け、祖母のに入れた[4]。このため9歳まで愛媛で育ち[2]、その後、再会した母とともに大阪に出て9歳から大阪市西区で育った[2]。母とは戸籍上は姉妹だった[4]

幼い頃から歌好きの母に連れられ、ABC朝日放送童謡合唱団に入り[4]、その後は歌謡学院などで歌う[2]

相愛高等学校卒業後の1963年、日本コロムビアと契約[4]。1964年8月6日の広島平和記念式典石本美由紀作詞の「原爆の子の像」をデビュー曲として歌った[2][4][5][6]千羽鶴を折りながら原爆症で亡くなった佐々木禎子をしのぶこの歌は原爆遺児の一人として歌いたかったという。しかし、版権を広島市に寄贈したため、公式デビュー曲は同年発売の「赤い椿の三度笠」となる[4]。同年、同じ日本コロムビアから、小林幸子都はるみがデビュー、このため会社としての扇の推しは全くなかったという[3]

1965年に「哀愁海峡」[4]、1967年に「新宿ブルース」が大ヒットして第一線に出た[4]。まだ地名入りの歌が無い頃で[4]、「新宿以外の地方の人は買わないだろう、それに暗い歌」等とコロムビアの会議で揉めたが[4]、哀愁を帯びた歌は大ヒットし、ご当地ソングの先駆けとなった[3][4][7]。同曲は1968年時点で90万枚を売り上げ[8]、この年流行した「ブルースもの」の歌謡曲の中でも最大のヒットになったとされる[9]

NHK紅白歌合戦に2回出場という実績を持つ(詳細は下記参照)[4]

また、女優としても活躍し[4]、1969年に石井輝男監督に誘われ[4]日活昇り竜 鉄火肌』の主演を始め[4]任侠映画の女侠客役を主に映画にも多数出演[4]。任侠映画では、東映の藤純子(現:富司純子)、大映江波杏子と共に「日活の扇ひろ子」として人気を博す[2][3]。他、1971年の東宝闇の中の魑魅魍魎』(中平康監督)や1972年の東映女囚さそりシリーズ第1作『女囚701号/さそり』(主演:梶芽衣子)の準主役の女囚役などが有名[4]

1972年に「鹿島密夫とダイナ・ショウ」の18歳年上の鹿島密夫と結婚。鹿島の姉が経営するアラモアナの和風レストラン「浅草」を応援するためハワイへ。店勤めが2、3年続いたが、経営が芳しくなく解雇され帰国。五反田の自宅マンションを抵当に入れ、旧月世界通りにレストランを出すが2年で閉店。鹿島が外に女性をつくり、店の後始末には知らん顔したことに、堪忍袋の緒が切れて、1976年に離婚。借金は6000万円を超えていて、マンションも差し押さえ。当時所属の第一プロが高利貸しに借りていた借金を肩代わりし、残りの借金は扇が働いて返済することになった。やがてマネージャーとして第一プロから送られたのが後に夫となる10歳年下の男性で、1986年に男性が円満退社し、同年4月に明治神宮で挙式。独立事務所「オフィス扇ひろ子」を夫と設立。

1980年、『タモリのオールナイトニッポン』で、扇の曲「新宿ゴールデン街」(ビクター・1975年発売)のレコードを、通常の45回転から33回転に変えたらオカマのような声になると話題となり[4]、同年にレコードが再発売され(レコード品番はオリジナル盤が旧ロゴ・黒レーベルのSV-1248、再発盤が現ロゴ・オレンジレーベルのSV-7003)、有線放送で1位になった[4]

現在も全国各地のホール、温泉場などで公演を続けている。近年は自身も被爆者手帳を持ち被爆体験も持つことから、前述の「原爆の子の像」や、美空ひばりが第一回の広島平和音楽祭で歌ったことで知られる「一本の鉛筆」などの反戦歌なども歌っている[2]

2012年7月7日、広島市文化交流会館で開催されたNHK広島放送局主催の「いのちのうた2012 ヒロシマから明日へのメッセージ」に石井竜也らと共に出演。

2013年5月16日放映の「木曜8時のコンサート〜名曲!にっぽんの歌〜」(テレビ東京)に出演。

2021年4月26日には、都内ホテルにて「扇ひろ子 歌手生活55周年記念ディナーショー」が行われ、園まり・佐々木新一らのゲストも参加した[10]

主な出演

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映画

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舞台

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テレビドラマ

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ドラマ以外のテレビ番組

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他、数々の歌番組に出演。

ラジオ番組

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その他

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ディスコグラフィ

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シングル

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# 発売日 A/B面 タイトル 作詞 作曲 編曲 規格品番
1 1964年
8月5日
A面 赤い椿の三度笠 石本美由起 遠藤実 安藤実親 SAS-294
B面 姫様やくざ
2 1964年
11月
A面 人生おんな坂 遠藤実 SAS-377
B面 哀愁街道 遠藤実 安藤実親
3 1965年
2月
A面 振袖仁義 西沢爽 SAS-422
B面 むすめ流れ旅
4 1965年
4月
A面 哀愁海峡 遠藤実 SAS-464
B面 赤いなぎさ
5 1965年
6月
A面 湯の町つばめ SAS-509
B面 おわかれ柳
6 1965年
7月
A面 原爆の子の像 石本美由起 SAS-517
B面 平和のともし灯
7 1965年
9月
A面 浪花化粧 関沢新一 SAS-566
B面 恋すがた祇園町
8 1965年
11月
A面 女の影法師 西沢爽 和田香苗 SAS-607
B面 女は夢がほしいのよ
9 1966年
2月
A面
[注 2]
北海道百年音頭[注 3] 鳥井実 山路進一 SAS-655
10 1966年
3月
A面 浮草哀歌 南葉二 山田宗次郎 SAS-669
B面 女のひとりごと 大矢弘子 和田香苗 塩瀬重雄
11 1966年
4月
A面 未練の涙 関沢新一 古賀政男 佐伯亮 SAS-691
B面 にくいひと
12 1966年
7月
A面 追憶の涙 市川昭介 SAS-737
B面 温泉小唄 島来展也 平川英夫
13 1966年
11月
A面 オランダ屋敷の花 西條八十 古賀政男 佐伯亮 SAS-796
B面 笹舟日記 関沢新一
14 1966年
12月
A面 あいうえお小唄 石本美由起 市川昭介 河村利夫 SAS-806
B面 浮草の宿 市川昭介
15 1967年
3月
A面 新宿ブルース 滝口暉子 和田香苗 SAS-855
B面 悪い人よあなた 南葉二
16 1967年
6月
A面 哀愁椿 西沢爽 山路進一 SAS-902
B面 夜が泣かせるの 時枝文雄 宇津木浩 河村利夫
17 1967年
8月
A面 女のブルース 丘灯至夫 和田香苗 SAS-929
B面 愛されたいの
18 1967年
11月
A面 いろは小唄 石本美由起 市川昭介 SAS-981
B面 爪をかむ女 市川昭介 河村利夫
19 1968年
2月
A面 ネオン・ブルース 滝口暉子 和田香苗 SAS-1034
B面 むらさきの夜 石本美由起 和田香苗 只野通泰
20 1968年
4月
A面 カスバの女 大高ひさを 久我山明 和田香苗 SAS-1070
B面 夢は夜ひらく 中村泰士
富田清吾
中村泰士
21 1968年
6月
A面 みれん海峡 西沢爽 和田香苗 SAS-1115
B面 流れる女
22 1968年
8月
A面 花のしずく 西條八十 SAS-1167
B面 なみだ川 宮敏緒 花木章吾 小谷充
23 1968年
11月
A面 泪のブルース 山口洋子 山本丈晴 河村利夫 SAS-1202
B面 女ひとりの夜
24 1968年
12月
A面 泣き女 丘灯至夫 和田香苗 SAS-1210
B面 嫌よ今夜は帰さない 滝口暉子 和田香苗 只野通泰
25 1969年
2月
A面 済んでしまったの 和田香苗 SAS-1250
B面 銀座ワルツ 山口洋子
26 1969年
6月
A面 仁義 丘灯至夫 SAS-1283
B面 東京三度笠
27 1969年
9月
A面 西沢爽 和田香苗 小谷充 SAS-1337
B面 函館の夜
28 1969年
10月
A面
[注 4]
札幌の夜 吉岡治 只野通泰 SAS-1342
29 1970年
1月
A面 女のみだれ花 丹古晴己 紺野章 池田孝 SAS-1375
B面 ひとりぼっちの唄
30 1971年
6月
A面 傷心 鳥井実 猪俣公章 竹村次郎 E-1030
B面 新宿さすらい女 岸田淳平 鈴木征一 小杉仁三
31 1974年
6月
A面 緋牡丹ブルース 吉川静夫 渡久地政信 寺岡真三 SV-1188
B面 北の渡世人 船木謙一
32 1974年
9月
A面 女と港町 滝口暉子 関戸公明 藤田はじめ SV-1198
B面 甘い生活 たかたかし 四方章人
33 1975年
9月
A面 新宿ゴールデン街 山口洋子 あかのたちお SV-1248
B面 女の子守唄 猪俣公章 あかのたちお
34 1977年
12月
A面 女の小唄 倉田洋子 渡久地政信 SV-6336
B面 他人顔 足立貞敏
35 1978年
5月
A面 他人町 宇山清太郎 鈴江文人 SV-6422
B面 悔やみ節
36 1979年
3月
A面 赤い靴の旅 ちあき哲也 森田公一 高田弘 SV-6562
B面 道案内 浅木しゅん 仲田修子 神保正明
37 1979年
7月
A面 にがい酒 吉田旺 岡千秋 近藤進 SV-6612
B面 みれん夜曲
38 1980年
5月
A面 新宿ゴールデン街[注 5] 山口洋子 あかのたちお SV-7003
B面 女の子守唄 猪俣公章 あかのたちお
39 1981年
3月
A面 新宿宵待草 いではく 遠藤実 京建輔 SV-7092
B面 女の舟唄 白鳥園枝
40 1982年
8月
A面 おんな浜酒場 喜多条忠 吉田正 斉藤恒夫 SV-7240
B面 昨日の女 石坂まさを
41 1987年
10月21日
A面 浪花の大将[注 6] 滝口暉子 和田香苗 湯野カオル RE-787
B面 負けなやあんた 藤山寛美
42 1990年
11月21日
01 会津の小鉄
〜侠客列伝入り〜
松島一夫
京山幸枝若
和田香苗 CJDX-1
02 港雨 滝口暉子 和田香苗 坂下滉
43 1991年
6月21日
01 哀愁海峡 西沢爽 遠藤実 湯野カオル CJDX-3
02 花と竜 二階堂伸 村田英雄
44 1992年
4月21日
01 明日は他人 滝口暉子 和田香苗 馬場良 CJDX-5
02 我が愛よ 岡山翠
45 1994年
10月21日
01 差し向かい 麻こよみ 四方章人 杉村俊博 CODA-506
02 夢さがし
46 1995年
11月1日
01 あなたに出会って ふじなみ女 中山大三郎 丸山雅仁 CODA-741
02 ほろ酔い気分 麻こよみ
47 1998年
11月14日
01 べらんめえ女傘 木下龍太郎 叶弦大 桜庭伸幸 CODA-1637
02 木遣り恋唄
48 2003年
10月22日
01 華の女道 高橋直人 安藤実親 佐伯亮 COCA-15585
02 花いちもんめ 春日ゆき 松井タツオ
49 2008年
9月24日
01 夢路坂 高橋直人 佐伯亮 COCA-16178
02 修羅の旅 春日ゆき
03 越前海岸 白鳥園枝 山本寛之
50 2013年
10月23日
01 酔いどれほたる 小野田洋子 岡千秋 池多孝春 COCA-16776
02 華の女道 (台詞入り) 高橋直人 安藤実親 佐伯亮
51 2015年
10月21日
01 深川美人 掛橋わこう 幸斉たけし 石倉重信 COCA-17074
02 さすらい女節 菅麻貴子 神代臣
52 2017年
11月22日
01 おんな流れ花 志賀大介 武野良 COCA-17359
02 涙色のタンゴ 桜井幸介 千寿二郎 武井正信
53 2021年
4月21日
01 My Valentine
〜2月14日に生まれて〜
美樹克彦 KOSEI 小倉良 COCA-17868
02 新宿ブルース
(ギター弾き語りVer.)
滝口暉子 和田香苗 斉藤功

アルバム

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発売日 規格 規格品番 タイトル
日本コロムビア
1968年 LP ALS-4319 女ごころを歌う
MCAレコード
1971年 LP JMC-5023 演歌の世界
日本コロムビア
1973年 LP ALS-7042 新宿ブルース
ビクターレコード
1974年 LP SJX-190 女と港町
日本コロムビア
2008年9月24日 CD COCP-35172 扇ひろ子全曲集
2013年2月20日 CD COCP-37835 スター☆デラックス 扇ひろ子
2014年5月21日 CD COCP-38541 扇ひろ子 プレミアム・ベスト2014
2016年11月23日 CD COCP-39734 扇ひろ子全曲集 2016
2017年11月22日 CD COCP-40139 扇ひろ子全曲集

タイアップ曲

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楽曲 タイアップ
1968年 花のしずく フジテレビ系ドラマ「花のしずく」主題歌
なみだ川 フジテレビ系ドラマ「花のしずく」挿入歌
1969年 仁義 日活映画「昇り竜 鉄火肌」主題歌
1970年 女のみだれ花 日活映画「女無頼」主題歌
ひとりぼっちの唄 日活映画「女無頼」挿入歌

NHK紅白歌合戦出場歴

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年度/放送回 曲目 対戦相手
1967年(昭和42年)/第18回 新宿ブルース 春日八郎
1968年(昭和43年)/第19回 みれん海峡 村田英雄
  • 第19回は歌唱映像が現存する。
  • 第19回は『思い出の紅白歌合戦』(NHK-BS2)で、扇の歌唱を含め全編が再放送されている。
  • 第18回も映像は現存するが、扇の歌唱映像については詳細不明。

受賞

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脚注

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注釈

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  1. ^ 段原中町は現在の住所では段原三丁目、段原南二丁目あたりとなる(中国新聞 2009年7月25日 10面)。
  2. ^ B面は、こまどり姉妹の「北海道巡句」。
  3. ^ デュエット:大下八郎
  4. ^ B面は、有田弘二の「美幌峠の夜」。
  5. ^ 前述の通り「タモリのオールナイトニッポン」で紹介され話題となり再発された。ジャケットには「33回転でもお聞きください!」と表記されている。
  6. ^ 台詞:藤山寛美

出典

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参考文献

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  • あの時この歌―戦後日本歌謡史― 嬉一夫(中国新聞)著 渓水社 1983年10月

外部リンク

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