生物圏保護区
生物圏保護区(せいぶつけんほごく)は、ユネスコの「人間と生物圏計画」(Programme on Man and the Biosphere ; MAB計画) に基づいて成立した国際的な指定保護区の名称。生物圏保存地域(せいぶつけんほぞんちいき)とも呼ぶ。また、日本国内ではユネスコエコパークの呼称が用いられている[1]。「生物圏保護区世界ネットワーク」(World Network of Biosphere Reserves) には、2023年6月現在で134か国の748ヶ所の保護区が登録されている(うち23ヶ所は国境を越える「越境生物圏保護区」)[2]。
履歴
編集1970年に開始された「人間と生物圏計画」は、14の研究分野を対象としている。その中の一つが「自然地域とそこに存在する遺伝物質の保護研究」である。その実現のため「生物圏保護区世界ネットワーク」と「生物保護区」を構築することが、1974年に提示された。
意義・対象域
編集「生物圏保護区世界ネットワークの法的枠組み」(The Statutory Framework of the World Network of Biosphere Reserves) によれば、生物圏保護区は、人間と生物圏との相互間の均衡が取れた関係を明示すると同時に進展させるために創設された。生物圏保護区は複数の生態系を含んでいる必要があり、したがって地上・沿岸部・海洋の生態系の組み合せから構成されると、この枠組みの第4条に規定されている。生物圏保護区が設定されると、そこでの生態系や生物多様性を保持することが求められる。
設定
編集保護区の設定は、法的に保護される中核地域 (core area)、保護の妨げになる活動が禁じられている緩衝地域 (buffer area)、許可を得た活動は認められる移行地域 (transition zone) の3層に分かれている。この地域区分けは、地元の利益となるように自然資源の持続可能な使用を行う観点から導入されたものである。また、保護区内の活動には、それを支えるような適切な調査やモニタリング、教育、訓練などが要請されている。
以上は、アジェンダ21や生物の多様性に関する条約などの国際的合意を履行していくための手段である。
登録要件
編集具体的な登録要件は以下のとおり。
- 重要な生物群集を持つ地域で、保護された中核地域を含む。
- 異なった管理がなされている複数の地域を含む。
- 調査、教育、訓練に対してサポート態勢を取れる。
- 法律上の適切な保護がある。
審議
編集ユネスコが年に一回主催する生物圏保護区国際諮問委員会(IACBR)によって登録・抹消などが審査される。
生物圏保護区の一覧
編集公式サイトによる[2]。国名は2023年現在のもの。
脚注
編集注釈
編集- ^ 登録当時の名称は「マッシャベー・ベルオンブル生物圏保護区」。2020年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ a b c 2019年に登録抹消。
- ^ 登録当時の名称は「マリンディ・ワタム生物圏保護区」。2019年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 2020年に登録範囲拡大。
- ^ a b c d e f g h 2017年に登録範囲拡大。
- ^ a b c d e f g h i j 2020年に登録抹消。
- ^ a b c d e 2021年に登録抹消。
- ^ a b 2020年に「複合W・アルリ・パンジャリ生物圏保護区」に合併。
- ^ 1996年登録当時の名称は「W地域生物圏保護区」。2002年にベナンおよびブルキナファソ域内に登録範囲拡大。2020年に「パンジャリ生物圏保護区」「アルリ生物圏保護区」と合併し、範囲拡大再登録・改称。
- ^ 2003年に登録範囲拡大。
- ^ 2005年にウガンダ域内も指定され、2023年に正式な越境生物圏保護区となった。
- ^ 1998年に登録範囲拡大。
- ^ a b 2002年に登録抹消。
- ^ 2011年に登録抹消。
- ^ a b c d e f g 2018年に登録抹消。
- ^ 登録当時の名称は「ダンガリ生物圏保護区」。1995年の登録範囲拡大に伴い「ブックマーク生物圏保護区」に改称。2004年に現在の名称に再改称。2020年に登録抹消。
- ^ 登録当時の名称は「フィッツジェラルド川国立公園生物圏保護区」。2017年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ a b c 2016年に登録範囲拡大。
- ^ 登録当時の名称は「大台ヶ原と大峰山生物圏保護区」。2016年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 2014年に登録範囲拡大。
- ^ 登録当時の名称は「屋久島生物圏保護区」。2016年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 登録当時の名称は「カットティエン生物圏保護区」。2011年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ a b c d 2019年に登録範囲拡大。
- ^ 2000年にロシアの「カトゥニ生物圏保護区」、2014年にカザフスタンの「カトン・カラガイ生物圏保護区」がそれぞれ登録。2017年に合併し、範囲拡大再登録・改名。
- ^ 1997年にロシアの「ウブス・ヌール盆地生物圏保護区」とモンゴルの「ウブス・ヌール盆地生物圏保護区」がそれぞれ登録。2021年に合併し、範囲拡大再登録・改名。
- ^ 1997年に登録抹消。
- ^ 1997年、2001年に登録範囲拡大。
- ^ 2005年に登録範囲拡大。
- ^ 登録当時の名称は「ウクナイノ湖生物圏保護区」。2017年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 登録当時の名称は「ベイン・エイ生物圏保護区」。2016年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ a b 2002年に登録範囲拡大。
- ^ 2013年に登録抹消。
- ^ 2012年に登録抹消。
- ^ a b c 2014年に登録抹消。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 2017年に登録抹消。
- ^ 登録当時の名称は「氷河生物圏保護区」。2017年に現在の名称に改称。
- ^ 登録当時の名称は「イエローストーン生物圏保護区」。2018年に現在の名称に改称。
- ^ a b 2016年に登録抹消。
- ^ 登録当時の名称は「タイアロ環礁生物圏保護区」。2006年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 登録当時の名称は「ファンゴ渓谷生物圏保護区」。2020年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 登録当時の名称は「カマルグ生物圏保護区」。2006年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 2013年に登録範囲拡大。
- ^ 登録当時の名称は「ダビー川生物圏保護区」。2009年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ a b 2010年に登録抹消。
- ^ 1987年、1990年、2018年に登録範囲拡大。
- ^ a b 登録当時の名称は「オカ川渓谷生物圏保護区」。2000年に分割新設。
- ^ 登録当時の名称は「スイス国立公園生物圏保護区」。2010年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 2007年に登録抹消。
- ^ 登録当時の名称は「北ブル島生物圏保護区」。2015年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 登録当時の名称は「キラーニー生物圏保護区」。2017年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 登録当時の名称は「エル・カナルとロス・ティロス生物圏保護区」。1997年の登録範囲拡大に伴い「ロス・ティロス生物圏保護区」に改称。2002年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に再改称。
- ^ 登録当時の名称は「中央湾岸平野生物圏保護区」。2017年に現在の名称に改称。
- ^ 登録当時の名称は「南部大西洋海岸平野生物圏保護区」。2017年に現在の名称に改称。
- ^ 登録当時の名称は「パーラバ生物圏保護区」。2003年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ a b 登録当時の名称は「バイカル湖生物圏保護区」。2000年に分割新設。
- ^ 登録当時の名称は「イロワーズ生物圏保護区」。2012年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 登録当時の名称は「ベルヒテスガーデナー・アルプス生物圏保護区」。2010年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 登録当時の名称は「シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州ワッデン海生物圏保護区」。2004年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 1996年に登録範囲拡大。
- ^ 登録当時の名称は「マンサナーレス川上流部生物圏保護区」。2019年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 2004年、2019年に登録範囲拡大。
- ^ 登録当時の名称は「リュベロン生物圏保護区」。2010年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 登録当時の名称は「フォンテーヌブローの国生物圏保護区」。2010年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ ウクライナ域内区域の別名は「ドゥナイ生物圏保護区」。
- ^ 2003年に登録範囲拡大。「大カンタブリカ生物圏保護区群」を構成する生物圏保護区の1つ。
- ^ a b c d e f g h i j 「大カンタブリカ生物圏保護区群」を構成する生物圏保護区の1つ。
- ^ 登録当時の名称は「フロンテナック・アーチ生物圏保護区」。2007年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 登録当時の名称は「ティチーノ渓谷生物圏保護区」。2018年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 登録当時の名称は「ピサの森生物圏保護区」。2016年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 2019年に登録範囲拡大。「大カンタブリカ生物圏保護区群」を構成する生物圏保護区の1つ。
- ^ 2005年に「ライファの森生物圏保護区」「サララ川間地帯生物圏保護区」「スパスキー諸島生物圏保護区」「スヴィヤシュスク湿地生物圏保護区」がそれぞれ登録。2007年に合併し、範囲拡大再登録・改名。
- ^ 登録当時の名称は「メナシェ高地生物圏保護区」。2017年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 2002年にウクライナの「シャツキー湖沼群生物圏保護区」、2003年にベラルーシの「プリブシュスコエ・ポレシエ生物圏保護区」がそれぞれ登録。2012年に合併し、ポーランド域内に範囲拡大再登録・改名。
- ^ 別名は「ケインズモア・オブ・フリートとシルバーフロー・メリックケルズ生物圏保護区」。
- ^ 1977年に「ステネト生物圏保護区」「ツァリチナ生物圏保護区」「ジェンデマ生物圏保護区」「ボアティン生物圏保護区」がそれぞれ登録。2017年に合併し、範囲拡大再登録・改名。
- ^ 2011年登録当時の名称は「ロストーチャ生物圏保護区」。2019年にポーランド域内に範囲拡大再登録・改名。
- ^ 2012年にクロアチアとハンガリーの「ムーラ・ドラーバ・ドナウ生物圏保護区」、2018年にスロベニアの「ムーラ川生物圏保護区」、2019年にオーストリアの「ムーラ下流部渓谷生物圏保護区」がそれぞれ登録。2021年に合併し、範囲拡大再登録・改名。
- ^ 2012年に登録範囲拡大。
- ^ a b 2010年に登録範囲拡大。
- ^ 2009年に登録範囲拡大。
- ^ 2002年、2009年に登録範囲拡大。
- ^ 2000年、2001年に登録範囲拡大。
- ^ 登録当時の名称は「カラクムル生物圏保護区」。2006年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 1993年登録当時の名称は「湾奥生物圏保護区」。1995年に範囲拡大再登録・改称。
- ^ 登録当時の名称は「パラグアイ川のオカ湖生物圏保護区」。2014年の登録範囲拡大に伴い現在の名称に改称。
- ^ 2016年にホンジュラス域内に登録範囲拡大。
- ^ 2002年にドミニカ共和国の「ハラグア・バオルコ・エンリキージョ生物圏保護区」、2012年にハイチの「ラ・セイユ生物圏保護区」がそれぞれ登録。2017年に合併し、範囲拡大再登録・改名。
- ^ 1977年にペルーの「北西アモテープ・マングローブ生物圏保護区」、2014年にエクアドルの「セコの森生物圏保護区」がそれぞれ登録。2017年に合併し、範囲拡大再登録・改名。
出典
編集- ^ ユネスコエコパークの推薦決定について 文部科学省、2013年9月4日
- ^ a b “World Network of Biosphere Reserves” (英語). UNESCO. 2023年6月23日閲覧。
参考資料
編集- 生物多様性政策研究会(2002年)『生物多様性キーワード事典』中央法規出版 ISBN 978-4805844229