カスモサウルス
カスモサウルス(Chasmosaurus)は、中生代後期白亜紀カンパニアン(約7,650万 - 7,500万年前)に北米大陸に生息していた角竜下目の恐竜の属の一つ。
カスモサウルス | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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Chasmosaurus belli ROM 843の骨格。
(ロイヤル・オンタリオ博物館の展示品) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地質時代 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
中生代後期白亜紀カンパニアン期 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Chasmosaurus Lambe, 1914 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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種 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
属名カスモサウルスは、「穴のあいたトカゲ」を意味する。これは、頭部のフリルに(軽量化のためと考えられている)穴があいているからである。しかしこの「穴」は、トリケラトプスを除き、ほとんどの角竜に見られるため、カスモサウルス特有の物ではない。
記載
編集カスモサウルスは中型のケラトプス類であった。2010年、グレゴリー・ポールは全長4.8メートル、体重2トンと推定している[1]。2種間で知られている違いは、主に角とフリルの形質に関連しているが、ルッセリ種の頭頂骨はあまり知られていない。他の多くのカスモサウルス亜科と同様に、カスモサウルスの顔面にも3本の発達した角があり、鼻骨に1本、後眼窩骨に2本が備わっている。両種とも角は絶対的にかなり短いが、ルッセリ種は比較的長く、特に上眼窩角はより後方に湾曲している。 本属のフリルは夥しく拡張されており、前部よりも後部の方が広い。吻部の水平面以上にはほぼ隆起していない。ベリ種ではフリル後端がV字型で側面が直線的である。ルッセリ種では後縁は浅いU字型をしており、側面はより凸状である[1]。側面は6〜9個の小さな皮骨(縁鱗状骨と呼ばれる)によって装飾されており、鱗状骨に付着している。フリルの角(かど)は頭頂骨上の大きな角状の皮骨を特徴としている。 ルッセリ種では外側のものが最も大きく、ベリ種では内側のものがより大きい。頭頂骨の他の部分に皮骨は存在しない。フリルを形成する頭頂骨には非常に大きな開口部があり、これがこの属名の由来となった。 この頭頂骨はほとんどの近縁種のような楕円形ではなく、三角形をしていて、フリルの両端が尖っている。
カスモサウルス・ベリ (C. belli) の頭頂骨はNHMUK 4948として知られている標本において最もよく保存されている。最初の3つの頸椎は他のネオケラトプシア標本と同様にsyncervicalとして知られている状態に癒合している。この標本には他に5つの頚椎が保存されており、合計8つの頚椎があり、これは完全な頸部を表していると考えられる。第4頸椎~第8頸椎において長さよりも幅が広く、長さはほぼ等しい。 胴椎も同様である。ベリ種はsyncervical を持っており、標本によっては仙椎、胴椎、時に尾椎からなる複合体である。
チャールズ・モートラム・スタンバーグが収集したカスモサウルス標本NMC 2245は皮膚の印象を伴っていた[2]。保存されている領域は、右側の腰から約1×0.5メートルの範囲である [2]。 大きな鱗は直径が最大55mmで、互いに5~10cm離れていた。 鱗は六角形または五角形で、5つまたは6つの辺を持っていた。これらの辺はそれぞれ、やや小さな鱗に接し、ロゼットを形成している。直径約1cmの小さな凸状の鱗が全体を取り囲んでいる。大きな鱗は、その縁に垂直な方向にまっすぐな溝があり、全面的に皺があった[3]。残念ながら、既知の化石の皮膚印象標本からは、カスモサウルスの色についてはまだ何も知ることができない。
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C. belliの頭骨側面。
ロイヤルオンタリオ博物館の展示品。 -
C. belliの骨格。
ロイヤル・ティレル古生物学博物館の展示品 -
C. belliの復元図
発見と種
編集1898年、カナダ地質学調査所のローレンス・ラムは、ベリークリークでカスモサウルスの第一標本となる頭頂骨、ホロタイプNMC 491 を発見した[2] 。またラムはこの動物が、より小さいフリルをもつ角竜の属モノクロニウスの新種であると考えた[2]。 彼は新種モノクロニウス・ベリ (Monoclonius belli) として標本を記載した[2]。その種小名は採集家のウォルター・ベルへの献名である[4]。
その後の1913年、チャールズ・ヘイゼリアス・スタンバーグとその息子たちがカナダ・アルバータ州州立恐竜公園でモノクロニウス・ベリのいくつかの完全な頭骨を発見した[5]。これらの発見に基づき、ランベはプロトロサウルス(Protorosaurus「原初のトロサウルス」の意味)を設立した[6]。しかしプロトロサウルスの名はペルム紀の爬虫類に先取されていたので、1914年にカスモサウルスと改名された。カスモサウルスの名は古代ギリシア語で「裂けた」あるいは「開いた」を意味する χάσμα, khasma という単語に由来する物で、非常に大きな頭頂骨窓に因んでいる。ランベは1913年にスタンバーグが発見した、皮膚印象の保存された概して完全な骨格 NMC 2245 をパラタイプとして記載した[7]。
その頃から、頭骨を含む更なる化石が発見されカスモサウルスと同定された。そしていくつかの種がこの属に追加された[2]。今日、それらのうちいくつかはカスモサウルス・ベリの頭骨の形態変異のバリエーションに過ぎないと考えられている[2]。 その他はカスモサウルスの有効種または独自の属であると思われる。1933年、バーナム・ブラウンはAMNH 5401に基づきカスモサウルス・カイセニ (Chasmosaurus kaiseni) を命名、カスモサウルス・ベリから独立させた。種小名はピーター・ケイセン (Peter Kaisen) への献名である[8]。これは1990年にトーマス・レーマンに命名されたカスモサウルス・カナデンシス (Chasmosaurus canadensis) と関連があると思われる[9]。カスモサウルス・カナデンシスはもともと1902年にランベによってモノクロニウス・カナデンシス (Monoclonius canadensis) として記載されていたが、1915年にランベによってエオケラトプス・カナデンシス (Eoceratops canadensis) として再記載された種である。エオケラトプスと角の長いカスモサウルス・カイセニはニコラス・ロングリッチによってモジョケラトプスの典型例であると考えられていた[10]。また、モジョケラトプスはカスモサウルス・ルッセリ (Chasmosaurus russelli) のシノニムであることを発見した研究チームがあるが、キャンベルらも2016年にカスモサウルスの標本を分析し、エオケラトプスとカスモサウルス・カイセニがルッセリ種のシノニムであることを発見した。キャンベルらは2016年に行われたカスモサウルス標本の分析の中で、エオケラトプスとカイセニ種は、双方のホロタイプにおいて頭頂骨を欠いている事により、種不明のカスモサウルス (Chasmosaurus sp.) としてのみ参照することが可能であると述べた[11]。1933年、リチャード・スワン・ルルは1926年に採集された異常に口吻が短い標本、ROM 839(旧ROM 5436)をカスモサウルス・ブレヴィロストリス (Chasmosaurus brevirostris) として記載した。種小名は「短い鼻先」を意味する[12]。これはベリ種のジュニアシノニムであると思われる[9]。チャールズ・モートラム・スタンバーグは1940年に、アルバータ州南部のダイナソーパーク累層下部で発見された標本NMC 8800に基づいてカスモサウルス・ルッセリ (Chasmosaurus russelli) を追加した。種小名はローリス・シャノ・ラッセル (Loris Shano Russell) への献名である[5][13]。トマス・レーマンは、1989年にテキサス州産のカスモサウルス・マリスカレンシス (Chasmosaurus mariscalensis) を記載した[14]。これは現在アグジャケラトプスと改名されている[15]。最近記載された種は2001年に命名されたカスモサウルス・イルヴィネンシス (Chasmosaurus irvinensis) である[16]。これはダイナソーパーク累層最上部から知られる。本種は2010年に一度ヴァガケラトプスという独自の属を与えられた[17]が、2019年のキャンベルの研究でカスモサウルスに帰還された[18]。
1987年、グレゴリー・ポールはペンタケラトプス・ステルンベルギィ (Pentaceratops sternbergii) をカスモサウルス・ステルンベルギ (Chasmosaurus sternbergi) に改名した[19]が、これは合意が得られておらずペンタケラトプス・ステルンベルギのジュニアシノニムと見なされている。2000年、ジョージ・オルシェフスキーはモノクロニウス・レクルヴィコルニス (Monoclonius recurvicornis Cope 1889) を、よりカスモサウルス亜科に近似であるとして、カスモサウルス・レクルヴィコルニス (Chasmosaurus recurvicornis) と改めた[20]。これは疑問名である。
今日、ベリ種とルッセリ種、ただ2つのみの種が有効とされている。これらにはわずかな形態的差異と層序的差異がある。ルッセリはダイナソーパーク累層(カンパニアン期)のより古い(下部の)地層から見つかり、ベリ種はダイナソーパーク累層中部から見つかる[21]。共に7650万〜7550万年前の期間に生息した[5]ホロタイプとパラタイプのほかにもいくつかの標本が知られている。これらの標本にはAMNH 5422、ROM 843(旧ROM 5499)、NHMUK R4948などがあり、いずれも頭骨を含む部分骨格の標本である。ルッセリ種のホロタイプ以外に、パラタイプのCMN 8803(フリル)、CMN 41933(フリル後部)、RTMP 81.19.175(右側頭骨)、CMN 2280(1914年にスタンバーグ家によって発見された頭骨付き部分骨格)が知られている。 YPM 2016の頭骨とAMNH 5402の頭骨と骨格は、キャンベルら (2016)によって他のベリ種に言及された標本とは異なり、より多くのホーンレット・パーツを持つことが指摘されたが、著者はそれらを個体変異と解釈しており、キャンベルら(2019)はこれらの標本をヴァガケラトプスに近い不確定のカスモケラトプス種と解釈している[18][22]。
モジョケラトプス
編集モジョケラトプス・ペリファニア Mojoceratops perifania はロイヤル・ティレル古生物学博物館やアメリカ自然史博物館所蔵の複数個体分の部分的な頭骨から2010年、ロングリッチによって記載され、それに基づいて他の5個体分の標本も同種と見なされた。モジョケラトプスとされた全ての個体はカナダのダイナソーパーク累層から産出されたものだった。 属名のモジョはアフリカ系アメリカ人文化のスラングで(ドラッグなどに)「虜になる、溺れる」という意味のモジョ に由来し、種小名は古代ギリシャ語で「目立つプライド」を意味する。どちらも派手なフリルに因んでいる。この種は他の研究者たちがカスモサウルスのものであると考える頭骨に基づいている[10]。
AMNH 5401と呼ばれる一個体分のほぼ完全な頭骨にはもともとカスモサウルス・カイセニ Chasmosaurus kaiseni の学名が与えられていた。C. カイセニはモジョケラトプスと同じ特徴をもっていると考えられた為、M. ペリファニアの同物異名とされた。しかしながらAMNH 5401 には縁頭頂骨 (ホーンレット) が保存されておらず、別のカスモサウルスの種のものをもとに人工的に補われていた。このことが過去10年間科学者達の混乱を招き続けていた。縁頭頂骨はカスモサウルスのようなケラトプス類の同定において非常に重要な決め手となる部分である。そのためC.カイセニは疑問名であり、M.ペリファニアの同物異名ではないと考えられた。ロングリッチはまた、エオケラトプスの模式標本がモジョケラトプスにあてはまるのではないかとも指摘していた。しかしその標本はあまりにも保存状態が悪く、更に亜成体であると考えられる個体で、以前から疑問名とされていた。信憑性に乏しいということで、こちらもM.ペリファニアの同物異名ではないと考えられる[10]。
2016年のカスモサウルスの概説では、C.カイセニとエオケラトプスは双方とも、ホロタイプとしては保存が部分的過ぎるため、種不詳のカスモサウルスであるということで纏まっている[11]。
ホロタイプの原記載やモジョケラトプスとされた他の頭骨標本について、複数の研究者たちは出版物の中で本属の有効性を疑問視している。例えば、2011年、 メイドメントとバーレットはモジョケラトプスについていかなる独自性も見出すことはできず、カスモサウルス・ルッセリの同物異名ではないかと指摘している。キャンベルらは2016年に著したカスモサウルスの種に関する分析の中で、メイドメントらに賛同した上、モジョケラトプスの固有形質とされていた頭頂骨の血管の溝はC.ルッセリのホロタイプや他のカスモサウルスの標本においても散在的にも見受けられると付け加えた。これらの主張はモジョケラトプスが単なるC.ルッセリの成長段階に過ぎないことを示唆している[11]。
エオケラトプス
編集1901年、 ローレンス・ラムはカナダ・アルバータ州・ベリークリークで恐竜の頭骨を発見し、モノクロニウス属の新種、M.カナデンシスとして発表した[23]。
その 模式標本、 NMC 1254 はカンパニアン中頃のものと思われるベリーリバー層群から発見された。それは部分的な頭骨、下顎、脊椎の前部を含んでおり、亜成体と思われた。頭部は右の上眼窩角、右眼窩、右側の鱗状骨、フリルの縁の断片、そして左の下顎の後部の要素からなる。この時、ラムは右頸部も発見したと思っていたが、これは後に正しくは鼻骨と特定された。彼は1897年に右下顎を NMC 284 とし、それと別に上眼窩角を NMC 190とした[23]。
1905年にスタントンとジョン・ベル・ハッチャーは、本種をケラトプス・カナデンシス Ceratops canadensis として、つまりケラトプス属に含まれるとして再記載した[24]。 これは1907年のハッチャーの死後の出版で確認された。その中で、ハッチャーはさらに上顎と歯を参照し、カスモサウルス・ベリとの同一性を示唆していた[25]。
1915年、ラムは新属エオケラトプスを設立した。この名は古代ギリシャ語で「暁のケラトプス」を意味する。本属がケラトプスより更に古い時代に生きていたと考えた故である[26]。モノクロニウス・カナデンシスに代わってE.カナデンシスがその模式種とされた。
後の1915年、複数の標本がエオケラトプスに含められた。その内の一つが1913年にウィリアム・エドマンド・カトラーによって発掘された化石である。それはカトラーの不慮の死後、カルガリー動物園に保管されていたが最終的に破壊され失われたものとアメリカの古生物学者たちは推定していた。しかし実はカトラーが自然史博物館に売却して、それがカスモサウルス BMNH R4948 として収蔵されていたことが2010年に発覚した[27]。別の標本 UALVP 40 は、1921年にジョージ・フライヤー・スタンバーグによって発掘され、1923年にエオケラトプスとしてチャールズ・ホイットニー・ギルモアによって記載されたものである[28]。1933年、 リチャード・スワン・ルル はそれがカスモサウルス・カイセニのメスかもしれないと考えた[29]。 1990年、 トーマス・レーマンはカスモサウルス・カイセニとエオケラトプスを統合し、カスモサウルス属の新種、カスモサウルス・カナデンシスに含めた[30]。
2010年にニコラス・ロングリッチは、レーマンがC.カナデンシスとした TMP 1983.25.1を新属新種モジョケラトプス・ペリファニアとして記載した。(詳細は前節モジョケラトプスを参照)その顛末でエオケラトプスは疑問名となった[10]。
キャンベルらは、2016年のカスモサウルスの種についての分析でエオケラトプスおよび C. カイセニはどちらもホロタイプとしての独自性に欠くため種不詳のカスモサウルスとした[11]。
ホロタイプはかなり小さい個体であることを示している。その鱗状骨は外側の曲線に沿って計測して、長さ57cm、幅38cm。縁登頂骨は6つ[25]。 亜成体であることは、短く幅の広い鱗状骨、短い鼻面と癒合していない縁鼻骨によって判断することができる[10]。 鼻角の基底部には、三日月形の構造があり、鼻骨との接触面が見える。これは、1915年にラムが縁鼻骨を形成する別の骨化であることを示唆している[26]。 エオケラトプスの上眼窩角は通常のカスモサウルスと比べかなり長く、216mmある。これは基底部の直径の二倍の長さになる[10]。 上眼窩角は後ろに反っている。ラムはこの角の反りは個体が成長段階の途中であったことを示すわけではなく、タクソンが有効であることを示す独自の特徴であると唱えた[26]。 しかし今日ではこの角の反りはカスモサウルス亜科において、その個体が未成熟であることを示す特徴として理解されている[10]。
1902年、ラムはモノクロニウス・カナデンシスをケラトプス亜科に分類した[23]。 1915年、ラムはエオケラトプス亜科 Eoceratopsinae を設立し、そこにアンキケラトプス、トリケラトプス、そしてネドケラトプス(当時はディケラトプス)も含め、カスモサウルス亜科よりもコンパクトで頑丈なフリルをもつ別のグループと考えられた[26]。 今日ではそういった形態はエオケラトプスも含め、カスモサウルス亜科に含まれることになっている。
系統
編集カスモサウルスはカスモサウルス亜科のメンバーである。以下のクラドグラムは2015年のカレブ・ブラウンとドナルド・アンダーソンに基づく[31][32]。
系統
編集カスモサウルス亜科 |
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古生物科学
編集カスモサウルスは生息地であるララミディア大陸の東海岸を別の角竜類セントロサウルスと共有していた。ニッチ・パーテーションが行われていた可能性が示唆されている。
フリルと角の機能には問題がある。 角はかなり短く、フリルには大きな穴があったので、機能的な防御はできなかったと思われる[1]。フリルは単に威圧的に見せるために使われたか、あるいは体温調節のために使われたのではないかと考えられる。フリルはまた、体を大きく見せるために、あるいは性的なディスプレイの一部として、鮮やかな色をしていた可能性もある。 しかし、いかなる性的二形も証明することは困難である。1933年、ルルは長い上眼窩角を持つカスモサウルス・カイセニは実際にはカスモサウルス・ベリの雄であり、そのうちの雌は短い角を有していたと推測した[33]。しかし、現在ではこの2種は別種と言われている。
カナダのアルバータ州ダイナソーパーク層下層で発見されたカスモサウルス・ベリの幼体UALVP 52613から、カスモサウルスは幼体の世話をしていなかった可能性があることがフィリップ・カリーらによって示唆された。この標本は関節したほぼ完全な骨格で、全長1.5m。3歳と推定され、四肢のプロポーションは成体のカスモサウルスに似ている。このことは、カスモサウルスは幼体でも動きが速くなかったことを示しており、成体の歩調に追いつくための素早さがなかったことを示している。化石は前肢が欠損している以外は完全なもので、明瞭な眼瞼骨が確認できるほか、強膜輪も保存されていることがわかる。縁鼻骨や縁頬骨、縁後頭骨はまだ形成されておらず、近縁なトリケラトプスの幼体と似ているが、一方ではっきりした頭頂骨窓を確認できる。この化石は右半身を上にし、頭部と胴体、後肢を露出した状態で発見された。すぐ脇には大きなシンクホールの跡が残っており、肩帯と前肢はそこへ吸い込まれて失われたと考えられる。採集された骨格は左半身を集中的にクリーニングされることになった。骨の下からは皮膚の痕跡も発見され、化石を保存していた堆積物からは幼体が川を渡っている間に溺死した可能性があることが示唆された[34]。さらに標本を調査したところ、幼体のカスモサウルスは成体よりもフリルが短く狭いことが判明した[35]。
脚注
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