第46回世界遺産委員会(だい46かいせかいいさんいいんかい)は、2024年7月21~31日にインドニューデリーで、今現在開催されている世界遺産委員会である[1]。当初会場は2023年9月に完成した新国際会議場ヤショブミ英語版が使われる予定であったが[2]、最終的に国際展示コンベンションセンターのバーラト・マンダパム英語版となった[3]

会場となるバーラト・マンダパム

今委員会では日本が推薦した佐渡島の金山新潟県佐渡市)の登録もあり、緊急案件を含む24件(文化遺産19、自然遺産4、複合遺産1)が新規登録され、世界遺産の総数は1223件となった。

委員国

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委員国は以下の通りである[1]。地域区分はユネスコ執行委員会委員国のグループ区分に準じている。国名の太文字は議長・副議長国。

議長国   インド 議長ヴィシャル・V・シャルマ英語版(ユネスコ印大使)
ヨーロッパ北アメリカ
(グループ I・II)
  イタリア
  ベルギー 報告担当。担当者はMartin Ouaklani
  ブルガリア 副議長国
  ギリシャ 副議長国
  ウクライナ
  メキシコ
カリブラテンアメリカ
(グループ III)
  アルゼンチン
  セントビンセント・グレナディーン 副議長国
  ジャマイカ
アジア太平洋
(グループ IV)
  日本
  韓国
  ベトナム
  カザフスタン
  トルコ
アフリカ
(グループ V-a)
  ルワンダ
  ザンビア
  ケニア 副議長国
  セネガル
アラブ諸国
(グループ V-b)
  カタール 副議長国
  レバノン

審議対象の推薦物件一覧

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期日(2023年2月1日)までに推薦書を提出し、書類点検を経て受理された物件が対象。審議は7月26~29日に行われる予定[4]

物件名に * 印が付いているものは既に登録されている物件の拡大登録など重大な変更を示す。太字は正式登録(既存物件の拡大などについては申請用件が承認)された物件。英語名とフランス語名は諮問機関の勧告文書に基づいており[5]、登録時に名称が変更された場合にはその名称を説明文中で太字で示してある。

第46回世界遺産委員会の審議で新規に世界遺産保有国となる国はない。この時点で、世界遺産条約を締約している195か国のうち、世界遺産を保有していない国は27か国のままである。

自然遺産

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画像 推薦名 推薦国 勧告 決議 登録基準
  バダインジャラン砂漠 - 聳える砂丘群と湖沼群   中華人民共和国 登録 登録 (7), (8)
Badain Jaran Desert - Towers of Sand and Lakes
Désert de Badain Jaran – Tours de sable et lacs
80万haの広大な砂漠の中の巨大な砂丘オアシス、広範囲に分布する鳴き砂などの地質学的多様性が評価[6]
  中国の黄海=渤海湾沿岸の渡り鳥保護区群(第2段階)*(2019年登録の「中国の黄海=渤海湾沿岸の渡り鳥保護区群(第1段階)中国語版」の拡大)   中華人民共和国 承認 承認 (10)
Migratory Bird Sanctuaries along the Coast of Yellow Sea-Bohai Gulf of China (Phase II) [significant boundary modification of “Migratory Bird Sanctuaries along the Coast of Yellow Sea-Bohai Gulf of China (Phase I)”, inscribed in 2019, criterion (x)]
Sanctuaire d’oiseaux migrateurs le long du littoral de la mer Jaune et du golfe de Bohai de Chine (Phase II) [modification importante des limites du bien « Sanctuaire d’oiseaux migrateurs le long du littoral de la mer Jaune et du golfe de Bohai de Chine (phase I) », inscrit en 2019, critère (x)]
渡り鳥の渡りルートであるフライウェイ英語版の世界遺産化による保護を推進する国際自然保護連合(IUCN)が東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップの一端として評価[6]。2019年登録の保護区に、27件の保護区を追加する推薦。IUCNはその一部の拡大については承認を勧告した[7]
  フロー・カントリー英語版   イギリス 登録 登録 (9)
The Flow Country
Le Flow Country
世界有数の厚さ8メートルもの泥炭堆積層と湿原二酸化炭素吸収源として二酸化炭素回収・貯留効果があることも確認されたことが評価[6]。泥炭湿地としては初の世界遺産となった。
  ラヴノ英語版ヴィエトレニツァ洞窟英語版   ボスニア・ヘルツェゴビナ 情報照会 登録 (10)
Vjetrenica Cave, Ravno
Grotte de Vjetrenica, Ravno
  レンソイス・マラニャンセス国立公園   ブラジル 登録 登録 (7), (8)
Lençóis Maranhenses National Park
Parc national de Lençóis Maranhenses
気候海洋の作用によって形成されたバルハンという独特な景観が広がる砂浜雨季には雨水による湖沼が形成されるなど、地質学的特徴も評価[6]

複合遺産

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画像 推薦名 推薦国 勧告 決議 登録基準
  メルカ・クントゥレ英語版とバルヒトの考古学的・古生物学的遺跡群   エチオピア 登録 登録 (3), (4), (5)
Melka Kunture and Balchit Archeological and Paleontological Site
Site archéologique et paléontologique de Melka Kunture et

Balchit

200万年前からこの地域にヒト科の動物が生息していたことを証明する先史時代の遺跡群。古代のホモ・サピエンなどスの化石が産出し、黒曜石を含む火山岩から作られた様々な道具とともに、年代が特定された地層に記録されている。火山や堆積物の下に埋もれた古地理景観の断片は、化石動物相や植物相とともに保存されており、更新世におけるエチオピア高地の高山生態系を復元することができる。こうして、高地の課題や気候条件に対するヒト科動物の適応について結論を導き出すことができる。複合遺産ではなく文化遺産として登録された[8][9]。登録に際し、名称が「メルカ・クントゥレとバルヒト : エチオピア高原地域の考古学的・古生物学的遺跡群」(英語: Melka Kunture and Balchit: Archaeological and Palaeontological Sites in the Highland Area of Ethiopia / フランス語: Melka Kontouré et Balchit : sites archéologiques et paléontologiques de la région des hauts plateaux d’Éthiopie)となった。
  テ・ヘヌア・エナタ - マルキーズ諸島   フランス
  フランス領ポリネシア
登録 登録 (3), (6), (7), (9), (10)
Te Henua Enata – The Marquesas Islands
Te Henua Enata – Les îles Marquises
地質学的には若い群島で、周辺から孤立していることから固有種が多くみられ、陸上・海洋双方の生物多様性が評価[6]

文化遺産

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画像 推薦名 推薦国 勧告 決議 登録基準
  ハグマターナハマダーン歴史地区   イラン 登録延期 登録 (2), (3)
Hegmataneh and Historical Centre of Hamedan
Hegmataneh et centre historique de Hamedan
メディア王国の首都遺跡。ICOMOSは、考古学的な価値をより適切に示すような範囲設定を再考すべきことなどを挙げ、「登録延期」を勧告した[10]。委員会では逆転で登録が認められたが、登録名は「ハグマターナ」(英・仏:Hegmataneh)となった。
  モイダム英語版群 - アーホーム朝の墳丘システム   インド 登録 登録 (3), (4)
Moidams – the Mound-Burial System of the Ahom Dynasty
Moidams – système de tertres funéraires de la dynastie

Ahom

石の基壇にレンガを積んだ墓室を盛り土で覆う構造の墳墓で、アーチ型の羨道やchow-chali(チョウチャリ)という独特な二階建て構造の内部、発掘調査で確認された副葬品の遺存状態が評価[11]。推薦書での類似例比較検証には日本の古墳も参考に挙げている。
  プー・プラバート歴史公園英語版   タイ王国 登録 登録 (3), (5)
The Phu Phrabat Historical Park
Le parc historique de Phu Phrabat
第40回世界遺産委員会で推薦された際には、登録延期勧告を受け、取り下げてられていた。タイ語でプーは山、プラバートは聖足跡の意味。前回の推薦では広域な範囲を対象としていたが、中核となる遺跡と聖域を示すセーマ石(バイセーマー英語版 / 結界石[12]に絞り込んだ。その結果、正式登録に際し、名称が「ドヴァーラヴァティー時代のセーマ石の伝統を伝えるプー・プラバート」(英語: Phu Phrabat, a testimony to the Sīma stone tradition of the Dvaravati period/フランス語: Phu Phrabat, un témoignage de la tradition des pierres Sema de la période de Dvaravati)となった。
  北京中軸線中国語版中華の理想的秩序を示す建造物群   中華人民共和国 登録 登録 (3), (6)
Beijing Central Axis: A Building Ensemble Exhibiting the Ideal Order of the Chinese Capital
Axe central de Beijing : un ensemble de constructions représentant l’Ordre idéal de la capitale chinoise
北京の外城城門の永定門から前門大街を通り、正陽門を潜り天安門広場から紫禁城を経て鼓楼・鐘楼に至る7.8キロ。沿道の構成資産には毛沢東の遺体が安置されている毛主席紀念堂などが含まれる。
  佐渡島さどの金山   日本国 情報照会 登録 (4)
Sado Island Gold Mines
Mines d’or de l’île de Sado
ICOMOSの勧告は情報照会だったが、委員会では登録が認められた[13]
  ニア国立公園の洞窟群の考古遺産   マレーシア 登録 登録 (3), (5)
The Archaeological Heritage of Niah National Park’s Caves Complex
Le patrimoine archéologique de l’ensemble des grottes du

parc national de Niah

  アル=ファウ英語版考古地域の文化的景観   サウジアラビア 登録 登録 (2), (5)
The Cultural Landscape of Al-Faw Archaeological Area
Le paysage culturel de la zone archéologique d’Al-Faw
紀元前4世紀~後4世紀にかけて織物や香辛料の交易地として栄えた都市遺跡。
  ウンム・アル=ジマール英語版   ヨルダン 登録 登録 (3)
Umm Al-Jimāl
Umm Al-Jimāl
紀元前1世紀~後2世紀にかけてのナバテア人による交易都市遺跡。
  ゲディ英語版の歴史地区と考古遺跡英語版   ケニア 登録 登録 (2), (3), (4)
The Historic Town and Archaeological Site of Gedi
La ville historique et site archéologique de Gedi
  ティエベレ英語版の王宮   ブルキナファソ 登録 登録 (3)
Royal Court of Tiébélé
La Cour royale de Tiébélé
  人権、解放および和解:ネルソン・マンデラ関連遺産群   南アフリカ共和国 情報照会 登録 (6)
Human Rights, Liberation and Reconciliation: Nelson

Mandela Legacy Sites

Droits de l’homme, libération et réconciliation : les sites de mémoire de Nelson Mandela
第45回世界遺産委員会に向けて推薦されたものの、その時は勧告も決議も見送られた。現在、世界遺産への推薦は一国一件だが、本件は前年からの持ち越し審議で、「記憶の場所」という新たな概念を評価するものであることから例外的措置として扱われ、下記の「現生人類の出現:南アフリカの更新世居住遺跡群」と合わせての登録となった。
  現生人類の出現:南アフリカの更新世居住遺跡群   南アフリカ共和国 登録 登録 (3), (4), (5)
The Emergence of Modern Humans: The Pleistocene

Occupation Sites of South Africa

L’émergence de l’humanité moderne : les sites d’occupation du Pléistocène en Afrique du Sud
ピナクル・ポイント英語版シブドゥ洞窟英語版ディープクルーフ岩陰遺跡英語版を対象とする推薦[14]
  モラヴィア教会の入植地群*(2015年登録の「モラヴィア教会の入植地クリスチャンスフェルド」(デンマーク)の拡大)   イギリス
  ドイツ
  アメリカ合衆国
承認 承認 (3), (4)
Moravian Church Settlements [significant boundary modification of ‘Christiansfeld, a Moravian Church Settlement”, Denmark, inscribed in 2015, criteria (iii)(iv)]
Colonies de l’Église morave [modification importante des limites du bien « Christiansfeld, une colonie de l’Église morave »,

Danemark, inscrit en 2015, critères (iii)(iv)]

すでに登録されているクリスチャンスフェルドに加え、ヘルンフート(ドイツ)、ベスレヘム(米国・ペンシルベニア州)、グレイスヒル英語版(英国・北アイルランド)の3件を追加する推薦[15]。アメリカのデクスターアベニュー・バプテスト教会英語版は「キング記念教会」の通称があり、公民権運動キング牧師ゆかりの教会である。
  「街道の女王」アッピア街道   イタリア 登録 登録 (3), (4), (6)
Via Appia. Regina Viarum
Via Appia. Regina Viarum
  バチュ英語版文化的景観   セルビア 不登録
Bač Cultural Landscape
Paysage culturel de Bač
  シュヴェリーンの邸宅群   ドイツ連邦共和国 登録 登録 (4)
Schwerin Residence Ensemble
Ensemble de la résidence de Schwerin
シュヴェリーン湖の湖畔に築かれた歴史主義建築群を対象としている[16]
  イズニク : 文明間の変遷の痕跡   トルコ ―― ――
Iznik: Traces of the Transition Between Civilizations
İznik : traces de la transition entre les civilisations
正式な勧告前に取り下げられた。
  レヴァダス・ダ・マデイラ英語版   ポルトガル 不登録
Levadas da Madeira
Levadas da Madeira
マデイラ島の山がちな地形の送水路などを対象とする文化的景観だったが、ICOMOSからは不登録を勧告された[17]
  トゥルグ・ジウブランクーシ記念作品群   ルーマニア 登録 登録 (1), (2)
Brâncusi Monumental Ensemble of Târgu Jiu
Ensemble monumental de Brâncuși à Târgu Jiu
第39回世界遺産委員会では不登録勧告を受けて取り下げられ、第43回世界遺産委員会では「最近」の戦争に関する遺産の一つとして審議が先送りされた。登録対象については、en:Sculptural Ensemble of Constantin Brâncuși at Târgu Jiuも参照。
  ローマ帝国の国境線 - ダキア   ルーマニア 登録 登録 (2), (3), (4)
Frontiers of the Roman Empire - Dacia
Frontières de l’Empire romain – Dacie
ローマ帝国の国境線としては4件目の登録となった。en:Dacian Limesも参照のこと。
  ケノゼロ湖英語版の証拠   ロシア 登録 登録 (3)
Testament of Kenozero Lake
Témoignage du lac Kenozero
登録に際して名称が「ケノゼロ湖の文化的景観」(英語: Cultural Landscape of Kenozero Lake / フランス語: Paysage culturel du lac Kenozero)となった。
  パナマの植民地時代の地峡横断道路   パナマ 情報照会
The Colonial Transisthmian Route of Panamá
La route transisthmique coloniale du Panamá
第43回世界遺産委員会では勧告・決議とも「登録延期」だった。

緊急登録

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7月27日からの新規登録審査に先駆け、7月26日に緊急案件として例外的に新規登録が行われた。危機遺産指定のための緊急措置であった。

文化遺産
画像 登録名 推薦国 登録基準
  聖ヒラリオン修道院英語版 / テル・ウンム・アメル英語版   パレスチナ (2), (3), (6)
Saint Hilarion Monastery/ Tell Umm Amer
Monastère de Saint Hilarion/ Tell Umm Amer
聖ヒラリオン修道院跡はガザ地区のテル・ウンム・アメルの遺構にあり[18]、パレスチナにおける最も古いキリスト教教会を含む。ビザンチン時代のアジアとアフリカの交易ルート上にあり、「砂漠の修道院」と呼ばれ、宗教や文化の交流のみならず経済的交流(寄付)がもたらしたモザイク画などの華麗な装飾が残されている。地域は「テル・オム・アーメル」とも表記される[19]

危機遺産

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危機遺産の指定に関する協議は、委員会開催期間中は7月29日に行われる予定[4]

緊急案件

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リストへの新規掲載

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画像 登録名 保有国 分類 世界遺産登録年 危機遺産登録年
  聖ヒラリオン修道院 / テル・ウンム・アメル   パレスチナ 文化 2024年 2024年 -
イスラエルによる攻撃での損壊に加え、反イスラエルの抵抗組織であるハマスが隠れ拠点とする可能性や反キリスト教の見せしめとして破壊する恐れも示唆される。2024年7月26日に緊急措置として新規登録されたのと同時に危機遺産にも指定された。

事前通達

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議事が紛糾する可能性が考えられる案件に関し、世界遺産センターが世界遺産委員会での危機遺産審議対象勧告を当該国に対して通達しており、不服申し立てがある場合には反論材料を揃える機会を与える。

  • ストーンヘンジ(イギリス):前回の第45回世界遺産委員会で「admit concerns(懸念がある)」とされたA303 roadストーンヘンジ・トンネル英語版の工事が進捗したことから危機遺産とするか審議が行われ[21]、トンネルの深度をさらに下げ埋蔵文化財への影響を軽減する設計変更や通行料を徴収して保全費用に充てることなどを表明したことが評価され今委員会での危機遺産化は免れたが、地下水位の変化に伴う地盤沈下や工事段階での震動が及ぼす影響を観察し道路開通後の影響を想定して提出することを求め、その内容次第では次委員会以降に再び議事として扱うことも示された[22]
  • 仏陀の生誕地ルンビニネパール):地震での損壊と水害の深刻化から危機遺産とするか審議が行われ、緊急の劣化防止措置が取られたことが評価され今委員会での危機遺産化は免れた[23]

前年からの持ち越し審議

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確認案件

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懸念の表明

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前年までに提出された保全措置報告(SOC)に基づき、必要に応じて現地調査を実施した結果を踏まえ、現況を放置すると近い将来に危機遺産となる危険性を孕んでいると判断された案件に対し「admit concerns(懸念がある)」と公表し、事前対処を求めるようになった。

指定解除審査

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危機遺産指定物件は、指定理由の是正が図られたと思われる場合、その旨の意見書を提出し、世界遺産委員会の場において指定解除(危機遺産リストからの除去)審査をうけることができる。解除審査は諮問機関や関連団体なども交え、指定審議や保全措置報告とは別行程で行われる。

リストからの除去

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画像 登録名 保有国 分類 世界遺産登録年 危機遺産登録年
  ニョコロ=コバ国立公園   セネガル 自然 1981年 2007年
密猟や家畜の増加に伴う野生生物の減少、金や玄武岩の採掘超過と鉱毒流出などにより危機遺産となったが、監視体制と罰則を強化し、鉱山汚染防止システムを導入したことと、外来種であるオジギソウの自発的な駆除努力が評価され指定解除となった[28]

名称変更

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先住民族の権利に関する国際連合宣言による2019年の国際先住民族言語年をうけ、2022年から国連国際の十年の「先住民言語の国際の10年」が始まり、ユネスコが主導した「現地語の使用可能性に関する専門家会議」の提言により、当該地現地語発音や先住民による呼称を優先し外名撤廃(併記)する方針に基づく[29]

軽微な変更

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保全措置審査

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6年毎の定期的、あるいは委員会からの指示による登録遺産の保全措置報告(SOC)および、必要に応じ自発的に提出する遺産影響評価(HIA)の審査。基本的には提出された報告書の事務的確認作業だが、諮問機関から注視答申があった案件に関しては危機遺産化を検討する議事として扱われる。今回は危機遺産対象案件も含め44件の保全措置報告が上げられており、日本からは琉球王国のグスク及び関連遺産群が届け出られている[30]。審議は7月23・24日に行われる予定[4]

保全措置報告

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遺産影響評価

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前々回の世界遺産委員会において、全ての世界遺産条約締結国に対し個々の登録物件について気候変動に関する対策を遺産影響評価(HIA)として報告することや、今後の新規の推薦の際に被害想定と対策案を盛り込むことを義務付けたが(「第44回世界遺産委員会#議題」参照)、今期からさらに踏み込み戦略的環境アセスメント(SEA)や社会的影響評価英語版(SIA)を発展させた環境社会影響評価(ESIA)も反映させることを決めており、まずは特に影響をうけやすい自然遺産分野から導入を開始する[35]

その他の議題・話題

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議題

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話題

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脚注

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注釈

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  1. ^ ドイツの世界遺産であったドレスデン・エルベ渓谷は生活の利便性を求める住民の意向が反映し架橋したことが登録抹消の理由となったが(「抹消された世界遺産#ドレスデン・エルベ渓谷」参照)、ストーンヘンジ界隈でも一部の住民には「世界遺産より生活」とトンネル賛成の意見もある。
  2. ^ 古都京都の文化財の構成資産下鴨神社でも緩衝地帯である境内糺の森の一画にマンションが建設され問題となった(「賀茂御祖神社#境内のマンション建設」参照)。

出典

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  1. ^ a b Decision - 19 EXT.COM 3 UNESCO World Heritage Centre
  2. ^ a b HISTORIC: India to Chair, Host UNESCO's World Heritage Committee for First Time Republic World 2024年1月9日
  3. ^ 46th Session of the World Heritage Committee Ministry of Culture(Indian Government)
  4. ^ a b c Provisional Agenda UNESCO World Heritage Centre
    Provisional Timetable UNESCO World Heritage Centre
  5. ^ World Heritage Centre 2024a
  6. ^ a b c d e IUCN recommends five natural sites, across Europe, South America and Asia and the Pacific, for the World Heritage List IUCN 2024年6月7日
  7. ^ World Heritage Centre 2024a, p. 9-13
  8. ^ Melka Kunture and Balchit: Archaeological and Palaeontological Sites in the Highland Area of Ethiopia”. UNISCO. 2024年7月27日閲覧。
  9. ^ Melka Kunture”. Melka Kunture. 2024年7月27日閲覧。
  10. ^ ICOMOS 2024a, p. 107
  11. ^ ICOMOS recommends 'favourably' inscription of Assam's 'Moidams' on UNESCO heritage list NEWS DRUM 2024年7月20日
  12. ^ 辻角桃子「ドヴァーラヴァティー時代のセーマ石の配置」、『溯航』第37号、早稲田大学大学院文学研究科考古談話会編集・発行、2019年、pp. 99-108。
  13. ^ 「佐渡島の金山」に係る世界遺産委員会決議の概要(文化庁、2024年7月27日)
  14. ^ World Heritage Centre 2024a, p. 35
  15. ^ World Heritage Centre 2024a, p. 64
  16. ^ World Heritage Centre 2024a, p. 52
  17. ^ ICOMOS 2024a, pp. 168, 179
  18. ^ イスラエルの空爆作戦がガザの考古学的宝物をいかに危険にさらすか(Arab New Japan, 2024年7月26日閲覧)
  19. ^ ガザの修道院跡「危機遺産」に 紛争受け、世界遺産と同時登録 ユネスコ(時事通信社、2024年7月26日閲覧)
  20. ^ Ancient Saint Hilarion Monastery in the Gaza Strip gains enhanced protection from Unesco The Artnews Paper 2023年12月18日
  21. ^ UNESCO proposes putting Stonehenge on 'danger' list BBC 2024年6月26日
  22. ^ UN cultural agency rejects plan to place Britain's Stonehenge on list of heritage sites in danger Yahoo! news 2024年7月25日
  23. ^ UN cultural agency decides against placing Lumbini, Buddha's birthplace in Nepal, on endangered list THE TELEGRAPH 2024年7月25日
  24. ^ WHC confirms GBR still facing ‘In Danger’ threat next year Australian Marine Conservation Society 2023年9月14日
  25. ^ UNESCO Lauds Australia's Efforts to Shield Great Barrier Reef Mirage News 2024年6月25日
  26. ^ US, British militaries launch massive strike against Houthis in Yemen Ahram Online 2024年1月12日
  27. ^ a b World Heritage Sites at Risk: Stonehenge in FocusUnesco discusses world heritage risks, spotlight on EFE 2024年7月23日
  28. ^ Senegal's fauna-rich national park removed from World Heritage in Danger List: UNESCO Siasat Daily 2024年7月24日
  29. ^ 河内真美「ユネスコの基礎教育(Fundamental Education)事業における多様性の保障」『日本公民館学会年報』第17巻、日本公民館学会、2020年11月、120-128頁、CRID 1390568456353657472doi:10.24661/kominkan.17.0_120ISSN 1880439X 
  30. ^ State of Conservation Reports by States Parties UNESCO World Heritage Centre
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参考文献

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外部リンク

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