活動火山対策特別措置法

日本の法律

活動火山対策特別措置法(かつどうかざんたいさくとくべつそちほう、昭和48年7月24日法律第61号)は、火山噴火に対応した避難施設および防災営農施設等の整備、火山灰の除去などを定めた日本法律である[1]。略称は「活火山法」[2][1]

活動火山対策特別措置法
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 活火山法
法令番号 昭和48年法律第61号
種類 行政手続法
効力 現行法
成立 1973年7月13日
公布 1973年7月24日
施行 1973年7月24日
主な内容 火山の爆発に対する防災
関連法令 災害対策基本法
制定時題名 活動火山周辺地域における避難施設等の整備等に関する法律
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昭和53年法律第29号による改正前の題名は「活動火山周辺地域における避難施設等の整備等に関する法律」(かつどうかざんしゅうへんちいきにおけるひなんしせつとうのせいびとうにかんするほうりつ)[3]

1972年(昭和47年)に発生した鹿児島県桜島南岳の噴火による大量の降灰や噴石による被害を契機に制定された[2]

概要

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火山爆発などの火山現象によって著しい被害を受ける地域に対する避難施設緊急整備、火山灰の降灰除去、火山現象の研究観測体制の整備などについて規定している。目的を定めた第1条の条文は以下のとおりである。

第一条 この法律は、火山の爆発その他の火山現象により著しい被害を受け、又は受けるおそれがあると認められる地域等について、活動火山対策の総合的な推進に関する基本的な指針を策定するとともに、警戒避難体制の整備を図るほか、避難施設、防災営農施設等の整備及び降灰除去事業の実施を促進する等特別の措置を講じ、もつて当該地域における住民、登山者その他の者(以下「住民等」という。)の生命及び身体の安全並びに住民の生活及び農林漁業、中小企業等の経営の安定を図ることを目的とする。

活動火山対策特別措置法第1条

内閣総理大臣は火山の爆発その他の火山現象により著しい被害を受け、又は受けるおそれがあると認められる地域等における活動火山対策の基本指針を定める(第2条)。また、火山の爆発による人的災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき地域を、火山災害警戒地域に指定する(第3条)。

火山災害警戒地域ごとに「火山防災協議会」を設置することとなっており、都道府県及び市町村に設置が義務付けられている(第4条)[4]

法改正

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  • 2015年(平成27年)7月8日 - 2014年の御嶽山噴火を受け、2015年7月に法改正され新たに「登山者は、火山の噴火等が起こった際に円滑、迅速に避難できるよう、必要な手段を講じるように努めなければならない。」(第11条第2項)という規定が定められた[5]。また、火山周辺の一部の施設については、避難確保計画の作成等が義務づけられることとなった[6][1]
  • 2023年(令和5年)6月14日 - 国に「火山調査研究推進本部」を設置して、火山の観測や調査の計画の策定や研究を一元的に進めることなど盛り込まれた[7]。国民の間に広く活動火山対策についての関心と理解を深めるため、8月26日が「火山防災の日」と制定された[8]

火山災害警戒地域

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活動火山対策特別措置法第3条に基づき内閣総理大臣が指定する「火山災害警戒地域」は49火山が指定されており、火山及びその対象の都道府県・市町村は2021年(令和3年)5月31日現在以下のとおりである[9]

火山名 画像 都道府県 市町村
アトサヌプリ   北海道 清里町弟子屈町
雌阿寒岳   釧路市足寄町白糠町
大雪山   上川町東川町美瑛町
十勝岳   富良野市美瑛町上富良野町中富良野町南富良野町新得町
樽前山   苫小牧市千歳市白老町
倶多楽   登別市白老町
有珠山   伊達市壮瞥町洞爺湖町
北海道駒ヶ岳   七飯町鹿部町森町
恵山   函館市
岩木山   青森県 弘前市鰺ヶ沢町西目屋村藤崎町板柳町鶴田町
八甲田山   青森市十和田市
十和田   青森市弘前市八戸市黒石市五所川原市十和田市つがる市平川市藤崎町大鰐町田舎館村板柳町鶴田町中泊町七戸町六戸町おいらせ町三戸町五戸町田子町南部町新郷村
岩手県 二戸市八幡平市
秋田県 能代市大館市鹿角市北秋田市小坂町藤里町
秋田焼山   鹿角市仙北市
岩手山   岩手県 盛岡市八幡平市滝沢市雫石町
秋田駒ヶ岳   雫石町
秋田県 仙北市
鳥海山   由利本荘市にかほ市
山形県 酒田市遊佐町
栗駒山   岩手県 一関市
宮城県 栗原市
秋田県 横手市湯沢市羽後町東成瀬村
蔵王山   宮城県 蔵王町七ヶ宿町川崎町
山形県 山形市上山市
吾妻山   山形県 米沢市
福島県 福島市猪苗代町
安達太良山   福島市郡山市二本松市本宮市大玉村猪苗代町
磐梯山   会津若松市喜多方市北塩原村磐梯町猪苗代町会津坂下町湯川村
那須岳   下郷町西郷村
栃木県 那須塩原市那須町
日光白根山   日光市
群馬県 沼田市片品村
草津白根山   中之条町長野原町嬬恋村草津町
長野県 高山村
浅間山   群馬県 長野原町嬬恋村
長野県 小諸市佐久市軽井沢町御代田町
新潟焼山   新潟県 糸魚川市妙高市
長野県 小谷村
弥陀ヶ原   富山県 富山市上市町立山町
焼岳   長野県 松本市
岐阜県 高山市
乗鞍岳   長野県 松本市
岐阜県 高山市
御嶽山   長野県 上松町王滝村木曽町
岐阜県 高山市下呂市
白山   石川県 白山市
岐阜県 白川村
富士山   神奈川県 相模原市小田原市南足柄市大井町松田町山北町開成町
山梨県 富士吉田市都留市大月市上野原市身延町西桂町忍野村山中湖村鳴沢村富士河口湖町
静岡県 静岡市沼津市三島市富士宮市富士市御殿場市裾野市清水町長泉町小山町
箱根山   神奈川県 箱根町
伊豆東部火山群   静岡県 熱海市伊東市伊豆市
伊豆大島   東京都 大島町
新島   利島村新島村神津島村
神津島   新島村神津島村
三宅島   三宅村
八丈島   八丈町
青ヶ島   青ヶ島村
鶴見岳伽藍岳   大分県 別府市宇佐市由布市日出町
九重山   竹田市由布市九重町
阿蘇山   熊本県 阿蘇市高森町南阿蘇村
雲仙岳   長崎県 島原市雲仙市南島原市
霧島山   宮崎県 都城市小林市えびの市高原町
鹿児島県 霧島市湧水町
桜島   鹿児島市垂水市
薩摩硫黄島   三島村
口永良部島   屋久島町
諏訪之瀬島   十島村

脚注

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参考文献

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  • 石原和弘、2013、「火山噴火予知と噴火災害の軽減」、『砂防学会誌』65巻6号、砂防学会、doi:10.11475/sabo.65.6_1
  • 伊藤順一、2015、「火山災害の特徴と我が国における火山防災体制」、『安全工学』54巻5号、安全工学会、doi:10.18943/safety.54.5_346
  • 井口正人、石川芳治、2016、「火山災害にどう備えるか」、『学術の動向』21巻11号、日本学術協力財団、doi:10.5363/tits.21.11_41

関連項目

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外部リンク

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