2022年オーストラリア総選挙

2022年オーストラリア総選挙英語: 2022 Australian federal election)は、2022年5月21日オーストラリアで行われた連邦議会上院下院議員第47期)の総選挙である。

2022年オーストラリア総選挙
2022 Australian federal election
オーストラリア
2019年 ←
2022年5月21日
→ 2025年
(予定)

内閣 第2次モリソン内閣
解散日 2022年4月11日
公示日 2022年4月22日
改選数 040(上院)
151(下院)
選挙制度 比例代表制(上院)
小選挙区制(下院)
有権者 満18歳以上のオーストラリア国民
有権者数 17,228,900[1]

世論調査
投票率 90.47%(上院・減少2.01%)
89.82%(下院・減少2.07%)
  第1党 第2党
 
Anthony Albanese portrait (cropped).jpg
Scott Morrison portrait.jpg
党首 アンソニー・アルバニージー スコット・モリソン
政党 労働党 自由党
同盟 保守連合
党首就任 2019年5月30日 (2019-05-30) 2018年8月24日 (2018-08-24)
党首選挙区 グレインドラー (NSW) クック (NSW)
前回選挙 15(上院)
68(下院)
19(上院)
77(下院)
選挙前議席 15(上院)
67(下院)
18(上院)
75(下院)
獲得議席 15(上院)
77(下院)
15(上院)
57(下院)
議席増減 増減なし(上院)
増加09(下院)
減少003(上院)
減少019(下院)
得票数 4,525,598(上院)
4,765,520(下院)
5,148,028(上院)
5,233,334(下院)
得票率 30.09%(上院)
32.58%(下院)
34.24%(上院)
35.70%(下院)
得票率増減 増加1.30%(上院)
減少0.76%(下院)
減少3.75%(上院)
減少5.74%(下院)
選好得票 52.13% 47.87%
選好得票増減 増加3.66% 減少3.66%




代議院の選挙区別結果。灰色は不明。

選挙前首相

スコット・モリソン
保守連合

選出首相

アンソニー・アルバニージー
労働党


概要

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上院元老院)と下院代議院)の両院で実施された[2]。上院76議席のうち40議席と、下院151議席全てが選挙にかけられた。

5月21日午前8時から午後6時まで投票が行われたのち、午後10時には労働党勝利および9年ぶりの政権交代の見通しがABCニュースに報じられた[3]。自由党はジョシュ・フライデンバーグ副党首が落選したように議席の3分の1を失う敗北を喫し、労働党も勝利こそしたが得票率32%で過半数には届かなかった[4]。一方、下院では無所属の増加が目立った。緑の党も上下院ともに伸ばした。スコット・モリソン首相は敗北宣言とともに党首辞任を発表し、5月23日にアンソニー・アルバニージーが首相に就任した[5]

労働党の勝利祝賀会において、アルバニージーはまずアボリジニトレス海峡諸島民がオーストラリアの先住民であると認め、先住民の諮問機関「議会への声」を設置することを憲法に盛り込むことの是非を問う国民投票を3年の任期中に実施すると改めて述べた[6]。また、演説後の取材では、米英との安全保障の枠組み・AUKUSを強く支持していると語った。さらに、気候変動対策で世界のリーダーとなることを望んでいるとした[4]

現職・スコット・モリソン率いる自由党に、野党だった労働党が勝利し、9年ぶりの政権交代が実現した。労働党党首のアンソニー・アルバニージーが新首相に就任した。

アルバニージーは首相として就任後翌日の5月24日に日本の東京都で行われた日米豪印戦略対話 (Quad) に出席した。

選挙データ

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内閣

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解散日

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  • 2022年4月11日

投票日

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  • 2022年5月21日

改選数

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  • 上院:040
  • 下院:151

選挙制度

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投票方法
義務投票制が採用されている。
選挙権
次のいずれかに該当する者
  1. 満18歳以上のオーストラリア国民
  2. 1984年1月26日までに選挙人登録したイギリス国民
被選挙権
満18歳以上のオーストラリア国民
有権者数
17,228,900 (  4.90%)[1]

選挙活動

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背景

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スコット・モリソン首相が率いる与党・保守連合の続投となるのか、最大野党・労働党が約9年ぶりに政権を奪取するのか注目が集まっていた[2]。第2次モリソン政権下での主な出来事として、以下のものがある。

  • COVID-19パンデミック - COVID-19流行当初は対策に成功したが、変異株流入で感染が再び拡大し、国民の不満が広がった[7]。特に2021年以降は感染数が急増して政策が破綻し、政党支持率も逆転した。
  • 議会内の性的違法行為英語版スキャンダル - 政府職員によるレイプや議会での自慰行為の告発、司法長官によるレイプ疑惑などが相次いだ[8]。調査では、議事堂で働く人の3人に1人がセクハラを経験していたことが示された[9]
  • AUKUS発足 - 米英豪安全保障協力であるこのパートナーシップは一定の議論があるものの、労働党も賛成しているように、超党派の支持を得ている。しかし、潜水艦共同開発計画を反故にされたフランスや抑止相手に置かれた中国からは大きな反発を受けるようになった[10]

2019年12月には、国内が長期的な森林火災に見舞われている中、ハワイで前倒しのクリスマス休暇を過ごしていたことが、大きな批判を浴びた[11]。これに関連して、気候変動への無関心も非難された。また、21年9月にはロックダウン下にプライベートジェット移動により制限を免除されて家族に会いに行ったことが批判された[12]

主張

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モリソン首相は、COVID-19感染拡大を抑制し、経済回復を主導したことを強調している。2022/23年度予算案では、燃料税率の半減や低・中所得者の個人所得税控除などの家計支援策のほか、各州のインフラ整備や水素などの低排出技術への投資に追加拠出する方針を打ち出している[2]

労働党は、モリソンの山火事対応やCOVID-19対応などの失敗を強く批判。医療システムの強化、雇用創出や労働条件の改善、子育て支援、国内製造業の強化などを公約に掲げている[2]。また、気候変動対策への取り組みが与党との大きな違いの一つで、2005年に対する2030年の温室効果ガス排出削減率を43%としている(与党は28%[4][13])。このため、電気自動車 (EV) への支援を強化し、2030年までに全電源に占める再生可能エネルギーの割合を最低80%とする一方、国の産業である炭鉱の新規開発や拡大は認める方針。

選挙結果

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野党・労働党が75議席を獲得して勝利し、2013年以来9年ぶりとなる政権交代が実現した。与党・自由党は改選前3分の1となる18議席を失い、敗北した。しかし、労働党の得票率が大きく伸びたわけではなく、保守連合の失った議席の5分の2を無所属の候補が奪った点が特徴である。

モリソン首相は中国への強硬姿勢や安全保障面での実績を強調したが、アルバニージー労働党党首は外交・安保で保守連合と政策に違いがないとして争点にせず、経済や社会保障をアピールポイントにした[14][15][13]。国民もまた直面するインフレに関心を高め、世論調査では選挙戦の争点に「生活費」を挙げた国民は半数を超えた。実際、オーストラリアでは22年1月から3月までの物価上昇率が5.1%と過去20年で最高水準に達した。

政党別獲得議席

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上院

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e • d    2022年オーストラリア上院議員選挙 (2022年5月21日 (2022-05-21)施行)
 
党派 獲得
議席
増減 得票数 得票率 改選前 非改選 議席計
保守連合 15  03 5,148,028 34.24% 18 17 32
自由党/国民党(合同) 5   2,997,004 19.93% 5 6 11
クイーンズランド自由国民党 2  01 1,061,638 7.06% 3 3 5
オーストラリア自由党 7  02 1,052,571 7.00% 9 8 15
地方自由党 1   32,846 0.22% 1 0 1
オーストラリア国民党 0   3,969 0.03% 0 0 0
野党 25  05 9,892,630 65.76% 20 19 44
オーストラリア労働党 15   4,525,598 30.09% 15 11 26
オーストラリア緑の党 6  03 1,903,403 12.66% 3 6 12
ワン・ネイション 1   644,744 4.29% 1 1 2
統一オーストラリア党 1  01 520,520 3.46% 0 0 1
デビッド・ポーコック 1  01 60,406 0.40% 0 0 1
ジャッキー・ランビー・ネットワーク 1  01 31,203 0.21% 0 1 2
大麻合法化党 0   501,421 3.33% 0 0 0
自由民主党 0   340,132 2.26% 0 0 0
動物の正義党 0   240,696 1.60% 0 0 0
レックス・パトリック・チーム 0  01 23,425 0.16% 1 0 0
諸派 0   1,101,082 7.32% 0 0 0
欠員 0  02 2 4 4
総計 40   15,040,658 100.0% 40 40 80
有効票数(有効率) 15,040,658 96.58%
無効票数(無効率) 532,003 3.42%
投票総数(投票率) 15,572,661 90.47%
棄権者数(棄権率) 1,640,772 9.53%
有権者数 17,213,433 100.0%
出典:投開票AEC)/議席ABC

下院

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e • d    2022年オーストラリア下院議員総選挙 (2022年5月21日 (2022-05-21)施行)
 
党派 獲得
議席
増減 得票数 得票率 改選前
保守連合 58  019 5,233,334 35.70% 77
オーストラリア自由党 27  017 3,502,713 23.89% 44
クイーンズランド自由国民党 21  002 1,172,515 8.00% 23
オーストラリア国民党 10   528,442 3.60% 10
地方自由党 0   29,664 0.20% 0
野党・無所属 93  019 9,425,708 64.30% 74
オーストラリア労働党 77  009 4,776,030 32.58% 68
オーストラリア緑の党 4  003 1,795,985 12.25% 1
カッターのオーストラリア党 1   55,863 0.38% 1
中道連合 1   36,500 0.25% 1
ワン・ネイション 0   727,464 4.96% 0
統一オーストラリア党 0   604,536 4.12% 0
諸派 0   653,161 4.46% 0
無所属 10  07 776,169 5.29% 3
二党間選好得票
オーストラリア労働党 7,642,161 52.13%
保守連合 7,016,881 47.87%
総計 151   14,659,042 100.0% 151
有効票数(有効率) 14,659,042 94.81%
無効票数(無効率) 802,337 5.19%
投票総数(投票率) 15,461,379 89.82%
棄権者数(棄権率) 1,752,054 10.18%
有権者数 17,213,433 100.0%
出典:投開票/議席(AEC)

脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ a b Enrolment statistics”. aec.gov.au. en:Australian Electoral Commission (AEC). 4 May 2022時点のオリジナルよりアーカイブ2022年5月24日閲覧。
  2. ^ a b c d オーストラリア連邦議会総選挙、5月21日に実施へ(オーストラリア)”. ジェトロ. 2022年5月2日閲覧。
  3. ^ オーストラリア総選挙、野党・労働党が勝利の見通し…9年ぶり政権交代へ”. 読売新聞オンライン. 2022年5月24日閲覧。
  4. ^ a b c “コラム:豪政権交代、気候変動対策は大きく前進か”. Reuters. (2022年5月24日). https://jp.reuters.com/article/breakingviews-australia-election-idJPKCN2NA06D 
  5. ^ オーストラリア、9年ぶり政権交代の見通し 現首相が敗北認める”. 朝日新聞デジタル. 2022年5月24日閲覧。
  6. ^ “豪総選挙で野党・労働党勝利、9年ぶり政権交代へ”. BBC News. BBC. (2019年5月29日). https://www.bbc.com/japanese/61539236 2023年10月15日閲覧。 
  7. ^ オセアニア2国、首相が苦境 コロナ禍長期化で支持率低迷”. 時事ドットコム. 2022年5月2日閲覧。
  8. ^ 豪政府に新スキャンダル 議会内で性的行為の動画流出”. www.afpbb.com. 2022年5月2日閲覧。
  9. ^ “アングル:豪首相、総選挙目前で逆風 造反や支持率低下に直面”. Reuters. (2021年12月10日). https://jp.reuters.com/article/analysis-australia-pm-idJPKBN2IM09I 
  10. ^ 米英豪の「AUKUS(オーカス)」 フランスの外交敗戦 インド太平洋戦略の立て直しへ”. 毎日新聞. 2022年5月2日閲覧。
  11. ^ “豪山火事、集落が「ほとんどなくなった」場所も ハワイ休暇の首相に批判”. BBCニュース. (2019年12月23日). https://www.bbc.com/japanese/50889125 2022年5月2日閲覧。 
  12. ^ 豪首相がロックダウン下に国内移動、娘らと父の日過ごす 「二重基準」と批判の声”. BBCニュース. 2022年5月2日閲覧。
  13. ^ a b 豪保守連合、「親中」批判空回り 気候変動・女性政策乏しく下野”. 毎日新聞. 2022年5月24日閲覧。
  14. ^ モリソン氏誤算「対中・安保」争点にならず 豪州総選挙”. 産経ニュース. 2022年5月24日閲覧。
  15. ^ 与党の「対中」争点化不発 ソロモンの協定締結で―豪総選挙”. 時事ドットコム. 2022年5月24日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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