1962年オランダグランプリ

1962年オランダグランプリ (1962 Dutch Grand Prix) は、1962年のF1世界選手権の開幕戦として、1962年5月20日ザントフォールト・サーキットで開催された。

オランダ 1962年オランダグランプリ
レース詳細
1962年F1世界選手権全9戦の第1戦
ザントフォールト・サーキット(1948-1989)
ザントフォールト・サーキット(1948-1989)
日程 1962年5月20日
正式名称 XI Grote Prijs van Nederland
開催地 ザントフォールト・サーキット
オランダの旗 オランダ ザントフォールト
コース 恒久的レース施設
コース長 4.193 km (2.605 mi)
レース距離 80周 335.440 km (208.433 mi)
決勝日天候 晴(ドライ)
ポールポジション
ドライバー ローラ-クライマックス
タイム 1:32.5
ファステストラップ
ドライバー ニュージーランドの旗 ブルース・マクラーレン クーパー-クライマックス
タイム 1:34.4 (5周目)
決勝順位
優勝 BRM
2位 ロータス-クライマックス
3位 フェラーリ

11回目のオランダグランプリとなる本レースには22回目の「ヨーロッパグランプリ」の冠がかけられ[1]、80周・335kmで行われた。

レース概要

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BRM・P57

1.5Lのエンジン規定も2年目を迎え、前年は出遅れたイギリス勢の準備もしっかり整い、コヴェントリー・クライマックスV型8気筒のFWMVエンジンを、BRMも同じV型8気筒のP56エンジンを搭載したP57を本格的に投入した[2]チーム・ロータスF1マシンとしては初めてモノコック構造のシャシーを採用した「25」を投入した[3]ローラバウメーカー英語版の後ろ盾により、初めてのF1マシン「Mk4」を制作し、前年のヨーマン・クレジット・レーシングチームの面々が揃った[4]ジャック・ブラバムは前年半ばに「モーター・レーシング・ディベロップメンツ(ブラバム)」を設立し、本年からドライバー兼コンストラクターとして参戦を始めたが、自製マシンが完成するまでの間はロータス・24で参戦した[4]。イギリス勢以外ではポルシェ空冷水平対向8気筒エンジンを搭載した新車804を投入した[5]。前年圧倒的な速さを見せたフェラーリは、前年末にカルロ・キティをはじめとしたチーム首脳陣が離脱し、ドライバーもフィル・ヒルが残留したものの、若いジャンカルロ・バゲッティリカルド・ロドリゲスらを迎え若返り化したことによる混乱、イタリア国内の労働ストライキによるマシン開発の遅れなどにより、前年の156を改変するにとどまった[6]。イギリス勢の巻き返しの尖兵と目されたスターリング・モスだったが、開幕1ヶ月前の非選手権レース「グローヴァー・トロフィー」(グッドウッド・サーキット)でクラッシュして頭部を強打する瀕死の重傷を負ってしまい、事故から1年後に引退した[5]

予選はF1初参戦のローラを駆るジョン・サーティースポールポジションを獲得した[5]

決勝はグラハム・ヒルがBRM・P57を駆って初勝利を挙げた。BRMにとっては1959年オランダGPヨアキム・ボニエ以来、2回目の優勝である。27秒差の2位にチーム・ロータスのトレバー・テイラー、前年のドライバーズチャンピオンのフィル・ヒルは3位表彰台を獲得した。

エントリーリスト

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チーム No. ドライバー コンストラクター シャシー エンジン
  スクーデリア・フェラーリ SpA SEFAC 1   フィル・ヒル フェラーリ 156 フェラーリ Tipo178 1.5L V6
2   ジャンカルロ・バゲッティ
3   リカルド・ロドリゲス
  チーム・ロータス 4   ジム・クラーク ロータス 25 クライマックス FWMV 1.5L V8
5   トレバー・テイラー 24
  クーパー・カー・カンパニー 6   ブルース・マクラーレン クーパー T60 クライマックス FWMV 1.5L V8
7   トニー・マグス T55 クライマックス FPF 1.5L L4
  ブラバム・レーシング・オーガニゼーション 8   ジャック・ブラバム ロータス 24 クライマックス FWMV 1.5L V8
  UDT・レイストール・レーシングチーム 9   イネス・アイルランド ロータス 24 クライマックス FWMV 1.5L V8
10   マステン・グレゴリー 18/21 クライマックス FPF 1.5L L4
  ポルシェ・システム・エンジニアリング 11   ヨアキム・ボニエ ポルシェ 804 ポルシェ 753 1.5L F8
12   ダン・ガーニー
  エキュリー・マールスベルゲン 14   カレル・ゴダン・ド・ボーフォール ポルシェ 718 ポルシェ 547/3 1.5L F4
15   ベン・ポン 787
16   ヴォルフガング・ザイデル エメリソン 61 クライマックス FPF 1.5L L4
  ロブ・スローテマーカー 1 ポルシェ 718 ポルシェ 547/3 1.5L F4
  オーウェン・レーシング・オーガニゼーション 17   グラハム・ヒル BRM P57 BRM P56 1.5L V8
18   リッチー・ギンサー P48/57
  ヨーマン・クレジット・レーシングチーム 19   ジョン・サーティース ローラ Mk4 クライマックス FWMV 1.5L V8
20   ロイ・サルヴァドーリ
  エキュリー・ギャロワーズ 21   ジャッキー・ルイス クーパー T53 クライマックス FPF 1.5L L4
ソース:[7]
追記
  • タイヤは全車ダンロップ
  • ^1 - マシンが準備できず

結果

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予選

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順位 No. ドライバー コンストラクター タイム グリッド
1 19   ジョン・サーティース ローラ-クライマックス 1:32.5 1
2 17   グラハム・ヒル BRM 1:32.6 +0.1 2
3 4   ジム・クラーク ロータス-クライマックス 1:33.2 +0.7 3
4 8   ジャック・ブラバム ロータス-クライマックス 1:33.3 +0.8 4
5 6   ブルース・マクラーレン クーパー-クライマックス 1:33.9 +1.4 5
6 9   イネス・アイルランド ロータス-クライマックス 1:34.1 +1.6 6
7 18   リッチー・ギンサー BRM 1:34.5 +2.0 7
8 12   ダン・ガーニー ポルシェ 1:34.7 +2.2 8
9 1   フィル・ヒル フェラーリ 1:35.0 +2.5 9
10 5   トレバー・テイラー ロータス-クライマックス 1:35.4 +2.9 10
11 3   リカルド・ロドリゲス フェラーリ 1:36.1 +3.6 11
12 2   ジャンカルロ・バゲッティ フェラーリ 1:36.3 +3.8 12
13 11   ヨアキム・ボニエ ポルシェ 1:37.0 +4.5 13
14 14   カレル・ゴダン・ド・ボーフォール ポルシェ 1:37.4 +4.9 14
15 7   トニー・マグス クーパー-クライマックス 1:37.5 +5.0 15
16 10   マステン・グレゴリー ロータス-クライマックス 1:38.0 +5.5 16
17 20   ロイ・サルヴァドーリ ローラ-クライマックス 1:38.8 +6.3 17
18 15   ベン・ポン ポルシェ 1:40.9 +8.4 18
19 21   ジャッキー・ルイス クーパー-クライマックス 1:43.2 +10.7 19
20 16   ヴォルフガング・ザイデル エメリソン-クライマックス 1:46.0 +13.5 20
ソース:[8]

決勝

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順位 No. ドライバー コンストラクター 周回数 タイム/リタイア原因 グリッド ポイント
1 17   グラハム・ヒル BRM 80 2:11:02.1 2 9
2 5   トレバー・テイラー ロータス-クライマックス 80 +27.2 10 6
3 1   フィル・ヒル フェラーリ 80 +1:21.1 9 4
4 2   ジャンカルロ・バゲッティ フェラーリ 79 +1 Lap 12 3
5 7   トニー・マグス クーパー-クライマックス 78 +2 Laps 15 2
6 14   カレル・ゴダン・ド・ボーフォール ポルシェ 76 +4 Laps 14 1
7 11   ヨアキム・ボニエ ポルシェ 75 +5 Laps 13
8 21   ジャッキー・ルイス クーパー-クライマックス 70 +10 Laps 19
9 4   ジム・クラーク ロータス-クライマックス 70 +10 Laps 3
Ret 3   リカルド・ロドリゲス フェラーリ 73 スピンオフ 11
Ret 18   リッチー・ギンサー BRM 71 アクシデント 7
Ret 9   イネス・アイルランド ロータス-クライマックス 61 スピンオフ 6
Ret 10   マステン・グレゴリー ロータス-クライマックス 54 ハーフシャフト 16
NC 16   ヴォルフガング・ザイデル エメリソン-クライマックス 52 周回数不足 20
Ret 12   ダン・ガーニー ポルシェ 47 ギアボックス 8
Ret 6   ブルース・マクラーレン クーパー-クライマックス 21 ギアボックス 5
Ret 20   ロイ・サルヴァドーリ ローラ-クライマックス 12 撤退 17
Ret 19   ジョン・サーティース ローラ-クライマックス 8 アクシデント 1
Ret 8   ジャック・ブラバム ロータス-クライマックス 4 アクシデント 4
Ret 15   ベン・ポン ポルシェ 2 スピンオフ 18
ソース:[9]
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第1戦終了時点のランキング

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  • : トップ5のみ表示。ベスト5戦のみがカウントされる。

脚注

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  1. ^ 当時は毎年各国の持ち回りにより、その年の最も権威のあるレースに対して「ヨーロッパGP」の冠がかけられていた。
  2. ^ (林信次 1997, p. 35)
  3. ^ (林信次 1997, p. 36)
  4. ^ a b (林信次 1997, p. 38,48)
  5. ^ a b c (林信次 1997, p. 38)
  6. ^ (林信次 1997, p. 38,46)
  7. ^ Netherlands 1962 - Race entrants”. statsf1.com. 2018年4月22日閲覧。
  8. ^ Netherlands 1962 - Qualifications”. statsf1.com. 2018年4月22日閲覧。
  9. ^ 1962 Dutch Grand Prix”. formula1.com. 29 November 2014時点のオリジナルよりアーカイブ。20 September 2015閲覧。

参照文献

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  • 林信次『F1全史 1961-1965』ニューズ出版、1997年。ISBN 4-938495-09-0 

外部リンク

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FIA F1世界選手権
1962年シーズン
次戦
1962年モナコグランプリ
前回開催
1961年オランダグランプリ
  オランダグランプリ 次回開催
1963年オランダグランプリ
前回開催
1961年ドイツグランプリ
  ヨーロッパグランプリ
(冠大会時代)
次回開催
1963年モナコグランプリ