鮎川哲也賞(あゆかわてつやしょう)は、東京創元社が主催する公募の新人文学賞。「創意と情熱溢れる鮮烈な推理長編」を募集する[1]

鮎川哲也賞
受賞対象新人
会場ホテルメトロポリタンエドモント
日本の旗 日本
主催東京創元社
報酬正賞:アーサー・コナン・ドイル
賞金:印税全額
初回1990年
最新回第34回(2024年)
最新受賞者山口未桜『禁忌の子』
公式サイトhttp://www.tsogen.co.jp/award/ayukawa/

1988年東京創元社が全13巻の書き下ろし推理小説シリーズ「鮎川哲也と十三の謎」を刊行する際、その最終巻を「十三番目の椅子」として一般公募した。翌年、その企画を発展する形で鮎川哲也賞が創設された。正賞はコナン・ドイル像、賞金は印税全額。受賞作は毎年10月前後に東京創元社より刊行される。

贈呈式は毎年、飯田橋にあるホテルメトロポリタンエドモント〈悠久の間〉にて、ミステリーズ!新人賞と合同で行われる。

鮎川哲也と十三の謎 十三番目の椅子

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選考委員
受賞作
その他の刊行作品

公募要項

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  • 作品枚数:400字詰原稿用紙360~650枚
  • 応募締切:10月31日
  • 結果:ホームページ(4月頃) / ミステリーズ!誌上(6月刊)
  • 授賞式:10月頃

選考委員

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出典[2]

受賞作・最終候補作一覧

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特記がなければ、初刊は東京創元社、文庫は創元推理文庫刊。

回 (年度) 応募総数 著者 受賞作 刊行時タイトル 初刊 文庫化等
第1回(1990年度) 71編 受賞 芦辺拓 殺人喜劇の13人 1990年11月 1998年10月
佳作 二階堂黎人 吸血の家 1995年9月[注 1] 1999年7月[注 2]
候補 伊吹明彦 故郷いまだ語ることなし
伊井圭[注 3] ゴールド・イリュージョン
西澤保彦 聨殺 仔羊たちの聖夜 1997年8月[注 4] 2001年8月[注 5]
第2回(1991年度) 90編 受賞 石川真介 不連続線 1991年11月 1999年3月[注 6]
候補 硬結田信樹 殺すわたし
篠田真由美 琥珀の城の殺人 1992年8月 1998年10月[注 2]
城靖夏夫 サーカス村の殺人
秋梨惟喬[注 7] 羅睺の首
第3回(1992年度) 104編 受賞 加納朋子 ななつのこ 1992年9月 1999年8月
候補 霞流一[注 8] 鵞鳥商店街探偵談
成田かずみ 愛の嵐
美唄清斗 殺人デュエット
青壁憂也[注 9] アガサ・クリスティ殺害計画
第4回(1993年度) 121編 受賞 近藤史恵 凍える島 1993年9月 1999年9月
候補 瀧まゆみ 青き沈黙
風田二兎 さびしがりやに捧げる
首ナシ殺人
貫井徳郎 慟哭 1993年10月 1999年3月
第5回(1994年度) 125編 受賞 愛川晶 化身 化身 アヴァターラ 1994年9月 1999年6月[注 10]
候補 矢口敦子 家族の行方 1994年10月 2002年6月
山瀬翠 赤石に死す
美唄清斗 由仁葉は或る日 1994年11月
園部佳朗 AICOの殺人
第6回(1995年度) 126編 受賞 北森鴻 狂乱廿四孝 1995年9月 2001年8月[注 5]
佳作 佐々木俊介 繭の夏 1995年9月 2001年6月
村瀬継弥 藤田先生のミステリアスな一年 1995年9月
候補 青壁憂也 紙の中
三好圭一 最期の風景
横内正彦 最果ての国
第7回(1996年度) 81編 受賞 満坂太郎 海賊丸漂着異聞 1996年9月 2005年3月
候補 柄刀一 朱の絢爛
門前典之[注 11] 唖吼の輪廻 死の命題 1997年9月[注 12]
2010年2月[注 13][注 14]
山瀬翠 凶獣の森
第8回(1997年度) 85編 受賞 谺健二[注 15] 未明の悪夢 1997年10月 2003年6月[注 6]
候補 城平京 名探偵に薔薇を 1998年7月
柄刀一 3000年の密室 1998年7月[注 13] 2002年3月[注 6]
氷川透 眠れない夜のために 密室は眠れないパズル 2000年6月[注 13]
南雲浩二 香陬野の一番長い夏
第9回(1998年度) 83編 受賞 飛鳥部勝則 [注 16] 殉教カテリナ車輪 1998年9月 2001年7月
候補 伊藤柳児 君にバラード
九丹量巨 アーバンカルト
ポップリアクション
第10回(1999年度) 99編 受賞作なし
候補 夕木涼子 オールド・デイズ
今里浩紀 誘拐
今田孝志 推理小説
第11回(2001年度) 73編 受賞 門前典之 人を喰らう建物 建築屍材 2001年9月
候補 金沢整 完全なる容疑者
九条菜月[注 17] 月見草
迫光 シルヴィウス・サークル 2002年4月
第12回(2002年度) 74編 受賞 後藤均[注 18] スクリプトリウムの迷宮 写本室の迷宮 2002年10月 2005年2月
候補 江東うゆう 楽土を出づ 2003年4月[注 12]
岸田るり子 ファミリー・シークレット
鷹将純一郎 過ぎ去りし時の彼方から
ほしおさなえ ヘビイチゴ・サナトリウム 2003年12月 2007年6月
第13回(2003年度) 67編 受賞 森谷明子 異本・源氏藤式部の
書き侍りける物語
千年の黙 異本源氏物語 2003年10月 2009年6月
候補 関野喬 クリスマス・ミステリ
金沢整 G・A・N・G
三沢陽一 玩弄迷宮
第14回(2004年度) 112編 受賞 神津慶次朗 月夜が丘 鬼に捧げる夜想曲 2004年10月
岸田るり子 屍の足りない密室 密室の鎮魂歌 2004年10月 2008年5月
候補 市川藍 湖の騎士
小早川雅彦 パブロ・ピカソの肖像
ゲルニカ一九三七年
葉月みづは 華奢の夏
第15回(2005年度) 131編 受賞作なし
佳作 日向旦[注 19] 六月の雪 世紀末大バザール 六月の雪 2006年6月
候補 井上幸俊 崖上十字
鈴木一夫 菜摘ます児
九条菜月[注 20] 群青
第16回(2006年度) 138編 受賞 麻見和史 ヴェサリウスの柩 2006年9月 2012年5月
佳作 似鳥鶏 理由あって冬に出る 2007年10月
松下麻理緒[注 21] 毒殺倶楽部
候補 鈴木凛太郎 りっちゃんの酒蔵
斯波耕之介 虞美人草綺談
鏑木蓮 継がれた殺意
第17回(2007年度) 132編 受賞 山口芳宏 雲上都市の怪事件 雲上都市の大冒険 2007年10月 2011年1月
候補 斯波耕之介 誰ぞ常ならむ
鈴木凛太朗 八角ギヤマン館の闇
第18回(2008年度) 139編 受賞 七河迦南 七つの海を照らす星 2008年10月 2013年5月
候補 優騎洸 聖域を作りし魔物
蓮見恭子 巫病の島
彩坂美月[注 22] ひぐらしふる 2011年6月[注 23] 2016年4月[注 10][注 24]
第19回(2009年度) 138編 受賞 相沢沙呼 午前零時のサンドリヨン 2009年10月 2012年10月
候補 松本英哉 すべてが幻想リアル
安在京 沈黙は彼女のレトリック
蓮見恭子 無明橋にて待つ
第20回(2010年度) 148編 受賞 安萬純一 ボディ・メタ ボディ・メッセージ 2010年10月 2013年12月
月原渉[注 25] 太陽が死んだ夜 2010年10月 2014年6月
候補 川瀬七緒 静寂のモラトリアム
傘才縞 親不知子不知
第21回(2011年度) 140編 受賞 山田彩人 眼鏡屋は消えた 2011年10月 2014年9月
候補 花岡健太 追憶のプルシアンブルー
桃永夏兎 バードランドのキングたち
篠澤寄夫 一年生には荷が重い
第22回(2012年度) 140編 受賞 青崎有吾 体育館の殺人 2012年10月 2015年3月
候補 桃永夏兎 わたしの愛したピグマリオン
西陽武十 武蔵オルタネイティブ
倉科りと アルデバランの館
輝瀬咲 遺書屋ミメーシス
第23回(2013年度) 152編 受賞 市川哲也 名探偵 The Detective 名探偵の証明 2013年10月 2017年12月
候補 佐原陸丸 ライトにフーダニット
吉野泉 カンタロープ 放課後スプリング・トレイン 2016年2月
そえだ信 ねずみと巨獣
輝瀬咲 それなりの天才
第24回(2014年度) 141編 受賞 内山純 Bハナブサへようこそ ビリヤード・ハナブサへようこそ 2014年10月 2018年2月
候補 松本英哉 遊ぶ幻想ロジック
森輝喜 鬼滝伝説
井田実 死の熱
第25回(2015年度) 149編 受賞作なし
候補 嵯峨伊緒 校舎西棟、推理系女子
そえだ信 宇気比の隧道
渡武 お化け屋敷の犯罪
井田実 地球儀を廻せ!
第26回(2016年度) 135編 受賞 市川憂人 ジェリーフィッシュは凍らない[3] 2016年10月 2019年6月
候補 御室千紗 鎮守の森のアーキビスト
才川真澄 南国コンチェルト
朝永理人 墜落論
江錐勝 馬鈴薯と漬け物
第27回(2017年度) 141編 受賞 今村昌弘[4] 屍人荘の殺人[5] 2017年10月 2019年9月
優秀賞 一本木透 だから殺せなかった 2019年1月 2021年11月
候補 梨江枯葉 空の底に咲く
朝永理人 幽霊は時計仕掛け 幽霊たちの不在証明 2020年3月[注 26]
亘二舟 箱庭のふたり
戸田義長[注 27] 恋牡丹 2018年10月
第28回(2018年度) 157編 受賞 川澄浩平[6] 学校に行かない探偵 探偵は教室にいない 2018年10月 2021年9月
候補 方丈貴恵 遠い星からやって来た探偵
岡本好貴 ロンドンの探偵たち
小松雅 眠りから覚めたヴェンデッタ
床品美帆 レッドカサブランカ
第29回(2019年度) 152編 受賞 方丈貴恵[7] 時空旅行者の砂時計 2019年10月 2023年9月
候補 本能寺かぼちゃ 計画的殺人は死刑
紺野天龍[注 28] 神薙虚無最後の事件 2022年5月[注 29]
才川真澄 ダシェラの黒い月
亘二舟 駄目でも友と
第30回(2020年度) 158編 受賞 千田理緒[8] 誤認五色 五色の殺人者 2020年10月
優秀賞 弥生小夜子 風よ僕らの前髪を 2021年5月
候補 黒澤主計 ビター・スウィート・リリパット
本能寺かぼちゃ 今から密室殺人が5つ起きる。
しかも著作累計5000万部の
ミステリー作家が建てた、
この雪に閉ざされた館でだ
松城明 殺人機械が多すぎる
岡本好貴 名探偵の軌跡
第31回(2021年度) 172編 受賞作なし[9]
候補 雪裏 ミセス・マクベスは手を〇〇ない
福田俊紀 チョコレートフルネス
伊佐木翌二郎 過去を射抜く矢
岡本好貴 忍者はロンドンを駆ける
第32回(2022年度) 177編 受賞作なし[10]
優秀賞 真紀涼介 想いを花に託して 勿忘草をさがして 2023年3月
候補作 小西マサテル 楓と祖父と虎の謎(リドル) 名探偵のままでいて 2023年1月[注 30] 2024年4月[注 31]
匿名希望 野に放つ
香山マヤカ 英雄の墓
岡本好貴 プランテーションの密室
佳川志乃 かがみつき
第33回(2023年度) 186編 受賞 岡本好貴 北海は死に満ちて[11] 帆船軍艦の殺人 2023年10月
優秀賞 小松立人 そして誰もいなくなるのか 2024年9月
候補作 矢先紺 IN NOMINE
河原采 追杉一途と四つの失恋
三日市零 シュープリーム・カクテル
第34回(2024年度) 216編 受賞 山口未桜 禁忌の子[12] 2024年10月
候補作 佐渡翔 阿弥陀堂の殺人
夜来風音 琥珀色の告白
綺馬優月 深刻な幽霊不足

脚注

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注釈

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  1. ^ 立風ノベルス
  2. ^ a b 講談社文庫
  3. ^ 「小久保英治」より改名
  4. ^ 角川書店
  5. ^ a b 角川文庫
  6. ^ a b c 光文社文庫
  7. ^ 「那伽井聖」より改名
  8. ^ 「有正眞一郎」より改名
  9. ^ 「柳竜一」より改名
  10. ^ a b 幻冬舎文庫
  11. ^ 「舞子悦司」より改名
  12. ^ a b 新風舎
  13. ^ a b c 原書房
  14. ^ 『屍の命題』に改題
  15. ^ 「児玉健二」より改名
  16. ^ 「阿部勝則」より改名
  17. ^ 「九条菖蒲」より改名
  18. ^ 「富井多恵夫」より改名
  19. ^ 「篠宮祐介」より改名
  20. ^ 「九条菖蒲」より改名
  21. ^ 「松下麻利緒」より改名
  22. ^ 「結城未里」より改名
  23. ^ 幻冬舎
  24. ^ 『ひぐらしふる 有馬千夏の不可思議なある夏の日』に改題
  25. ^ 「月原少年」より改名
  26. ^ 宝島社文庫
  27. ^ 「左義長」より改名
  28. ^ 天堂薫より改名
  29. ^ 講談社
  30. ^ 宝島社
  31. ^ 宝島社文庫

出典

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  1. ^ 鮎川哲也賞 応募要項参照
  2. ^ 鮎川哲也賞 歴代受賞作”. 2021年4月5日閲覧。
  3. ^ 東京創元社、第26回鮎川哲也賞を決定”. 新文化通信社 (2016年4月7日). 2017年12月16日閲覧。
  4. ^ 第27回鮎川哲也賞が決定いたしました”. 東京創元社 (2017年4月5日). 2017年12月16日閲覧。
  5. ^ 東京創元社、第27回鮎川哲也賞を決定”. 新文化通信社 (2017年4月14日). 2017年12月16日閲覧。
  6. ^ 第28回鮎川哲也賞が決定いたしました”. 東京創元社 (2018年4月5日). 2018年4月17日閲覧。
  7. ^ 第29回鮎川哲也賞が決定いたしました”. 東京創元社 (2018年4月5日). 2019年4月5日閲覧。
  8. ^ 第30回鮎川哲也賞が決定いたしました”. 東京創元社 (2020年4月1日). 2020年4月20日閲覧。
  9. ^ 第31回鮎川哲也賞が決定いたしました”. 東京創元社 (2021年4月1日). 2021年4月5日閲覧。
  10. ^ 第32回鮎川哲也賞の最終選考会がおこなわれました”. 東京創元社 (2021年4月1日). 2021年4月23日閲覧。
  11. ^ 第33回鮎川哲也賞の最終選考会がおこなわれました”. 東京創元社 (2023年4月4日). 2023年4月4日閲覧。
  12. ^ 第34回鮎川哲也賞が決定いたしました”. 東京創元社 (2024年4月5日). 2024年4月5日閲覧。

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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