ラッド(学名:Scardinius erythrophthalmus)は、ヨーロッパ中央アジア西アジアに広く分布するコイ科ウグイ亜科淡水魚の一種。ラッドは Scardinius 属の総称でもあるため、特に本種を指す場合はコモン・ラッド(Common Rudd)と呼ぶ。

ラッド
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
上目 : 骨鰾上目 Ostariophysi
: コイ目 Cypriniformes
: コイ科 Cyprinidae
: Scardinius
: ラッド S. erythrophthalmus
学名
Scardinius erythrophthalmus
(Linnaeus, 1758)
英名
Common Rudd

分布

編集

ヨーロッパから中東にかけ、北海バルト海黒海カスピ海アラル海に分布する[2]。またアイルランドアメリカ合衆国モロッコマダガスカルチュニジアニュージーランドカナダスペインに人為的に持ち込まれている[3]。かつて、日本では埼玉県伊佐沼に移入されたが定着はしなかった。

それ以外では、琵琶湖において、淡水性二枚貝の規制宿主として輸入され、養殖されたものが野外でまとまって採集された記録も残っている。また、福井県や新潟県からも報告がある。

形態

編集

全長は45–50cm。体色は黄緑色に近く、背鰭と胸鰭は灰色がかった赤色、その他の鰭は明るい赤色。口は上向きで、背鰭は後方にある。背鰭は3棘と8 - 9軟条から、臀鰭は3棘と8 - 12軟条、尾鰭は18 - 19条から成る。椎骨は36 - 39個で、側線鱗は39 - 42個[2]。形態的にはローチと非常によく似ているが、ローチは目の色が黄色でなく深紅色であり、背鰭軟条が10 - 12本であることで見分けられる。本種とローチは交雑する事もある。

生態

編集

栄養が豊富で植物がよく茂るに生息し、汽水域にも進出する。若魚は動物プランクトン水生昆虫、小魚を食べる。成魚は主に水草を食べる。1日に体重の最大40% の植物を捕食し、そのうち80% が老廃物として排出される。富栄養水や汚染水など、幅広い温度や環境に耐えることができる。寿命は最長19年で、2 - 3年で性成熟する[4]。雌は水草の中で最大20万個の卵を産む。卵は透明か淡い黄色で粘着性があり、水草に付着する[2]

人との関わり

編集

釣りの対象として人気で、ミミズウジとそのサナギスイートコーンなどが餌になる。流れの緩やかな場所を好む為、ウキを利用した釣り方が一般的である。釣りの対象魚以外としては、現地では観賞用として親しまれており、黄変種や青変種の改良品種が作られている。日本にも稀に観賞用として輸入されることがある。

ニュージーランドやカナダでは、元々の生態系への影響が大きいことから、侵略的外来種とされている[5]。アメリカの幾つかの州では本種の所持、移動が禁止されている[6]

参考文献

編集
  1. ^ Freyhof, J.; Kottelat, M. (2008). Scardinius erythrophthalmus. IUCN Red List of Threatened Species 2008: e.T19946A9112799. doi:10.2305/IUCN.UK.2008.RLTS.T19946A9112799.en. https://www.iucnredlist.org/species/19946/9112799 14 February 2024閲覧。. 
  2. ^ a b c Scardinius erythrophthalmus, Rudd : Fisheries, aquaculture, gamefish, aquarium, bait”. 2024年2月14日閲覧。
  3. ^ Rudd (Scardinius erythrophthalmus) introduced to the Iberian peninsula: Feeding ecology in Lake Banyoles | Request PDF” (英語). ResearchGate. 2024年2月14日閲覧。
  4. ^ rudd Scardinius erythrophthalmus”. February 14, 2024閲覧。
  5. ^ Chadderton, W. Lindsay. “Management of invasive freshwater fish: striking the right balance!”. Hamilton, NZ: Department of Conservation. 2012年3月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。10 May 2010閲覧。
  6. ^ ALABAMA REGULATIONS 2022-2023”. pp. 67 220–2-.26. 2024年2月14日閲覧。

関連項目

編集