夏季オリンピック

国際的な総合スポーツ大会
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夏季オリンピック(かきオリンピック、: Jeux olympiques d'été、: Summer Olympic Games)は、近代オリンピックのうち夏季に行われる総合スポーツ大会。国際オリンピック委員会(IOC)により開催され、正式名称はオリンピアード競技大会(オリンピアードきょうぎたいかい、英: Games of the Olympiad)。夏季五輪とも呼ばれる。

夏季五輪の開催国。数字は開催年。
  • 緑色の国は過去に1回開催された国。青色の国は過去に2回以上開催された国(同一都市であるか、その国の別々の都市であるかを問わず)。
  • ●は開催された都市で、黒色は1回、オレンジ色は2回、赤色は3回開催された都市。

概要

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オリンピズムに基づき行われる祭典であり、オリンピズムを人々に広めるための平和の祭典である[1][2][3]。オリンピズム(オリンピック哲学)が目指しているのは、平和な世界を実現し人間尊厳を護るためには人類の調和的な成長が必要なので、そのためにスポーツを役立てることである[4]

第1回夏季オリンピック1896年アテネで開催され、以後現在まで原則4年単位のオリンピアードの第1年(4で割り切れる西暦年)に開催されている。ただし、戦争で中止となった事例(1916年1940年1944年)や、感染症流行により1年延期された事例(2020年)がある。また、中止された大会も回数にカウントされる。

第1回大会から全ての大会に参加している選手団は、ギリシャイギリスフランススイスオーストラリア1908年1912年オーストララシアとして参加)の5つのみである。

大会一覧

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開催年 開催国 開催都市 参加国・地域数 参加人数 競技種目数 開会式 閉会式 主競技場 注釈
1 1896年   ギリシャ王国 アテネ 14 241人 0人 241人 43 4月6日 4月15日 パナシナイコスタジアム
2 1900年   フランス パリ 24 975人 22人 997人 85 5月14日 10月28日 ヴェロドローム・ド・ヴァンセンヌ
3 1904年   アメリカ合衆国 シカゴ
セントルイス
12 645人 6人 651人 94 7月1日 11月23日 フランシス・フィールド [注 1]
1906年   ギリシャ王国 アテネ 21 848人 6人 854人 78 4月22日 5月2日 パナシナイコスタジアム [注 2]
4 1908年   イギリス  イタリア王国
  イギリス
ローマ
ロンドン
22 1971人 37人 2008人 110 4月27日 10月31日 ホワイトシティ・スタジアム [注 3]
5 1912年   スウェーデン ストックホルム 28 2359人 48人 2407人 102 7月6日 7月22日 ストックホルム・スタディオン
6 1916年   ドイツ帝国 ベルリン 中止 [注 4]
7 1920年   ベルギー アントワープ 29 2561人 65人 2626人 156 8月14日 9月12日 オリンピスフ・スタディオン [注 5]
8 1924年   フランス パリ 44 2954人 135人 3089人 126 7月5日 7月27日 スタッド・オランピック・イヴ=デュ=マノワール
9 1928年   オランダ アムステルダム 46 2606人 277人 2883人 109 7月28日 8月12日 オリンピスフ・スタディオン
10 1932年   アメリカ合衆国 ロサンゼルス 37 1206人 126人 1332人 117 7月30日 8月14日 ロサンゼルス・メモリアル・コロシアム
11 1936年   ドイツ国 ベルリン 49 3632人 331人 3963人 129 8月1日 8月16日 ベルリン・オリンピアシュタディオン
12 1940年   日本
  フィンランド
東京
ヘルシンキ
中止 [注 6]
13 1944年   イギリス ロンドン [注 7]
14 1948年   イギリス ロンドン 59 3714人 390人 4104人 136 7月29日 8月14日 ウェンブリー・スタジアム
15 1952年   フィンランド ヘルシンキ 69 4436人 519人 4955人 149 7月19日 8月3日 ヘルシンキ・オリンピックスタジアム
16 1956年   オーストラリア
  スウェーデン
メルボルン
ストックホルム
72 2791人 364人 3155人 151 11月22日
6月10日
12月8日
6月17日
メルボルン・クリケット・グラウンド [注 8]
17 1960年   イタリア ローマ 83 4727人 611人 5338人 150 8月25日 9月11日 スタディオ・オリンピコ・ディ・ローマ
18 1964年   日本 東京 93 4473人 678人 5151人 163 10月10日 10月24日 国立霞ヶ丘競技場陸上競技場
19 1968年   メキシコ メキシコシティー 112 4735人 781人 5516人 172 10月12日 10月27日 エスタディオ・オリンピコ・ウニベルシタリオ
20 1972年   西ドイツ ミュンヘン 121 6075人 1059人 7134人 195 8月26日 9月11日 ミュンヘン・オリンピアシュタディオン
21 1976年   カナダ モントリオール 92 4824人 1260人 6084人 198 7月17日 8月1日 オリンピック・スタジアム
22 1980年   ソビエト連邦 モスクワ 80 4064人 1115人 5179人 203 7月19日 8月3日 ルジニキ・スタジアム
23 1984年   アメリカ合衆国 ロサンゼルス 140 5263人 1566人 6829人 221 7月28日 8月12日 ロサンゼルス・メモリアル・コロシアム
24 1988年   韓国 ソウル 159 6197人 2194人 8391人 237 9月17日 10月2日 ソウルオリンピック主競技場
25 1992年   スペイン バルセロナ 169 6652人 2704人 9356人 257 7月25日 8月9日 エスタディ・オリンピック・リュイス・コンパニス
26 1996年   アメリカ合衆国 アトランタ 197 6806人 3512人 10318人 271 7月19日 8月4日 センテニアル・オリンピックスタジアム
27 2000年   オーストラリア シドニー 199 6582人 4069人 10651人 300 9月15日 10月1日 スタジアム・オーストラリア
28 2004年   ギリシャ アテネ 201 6296人 4329人 10625人 301 8月13日 8月29日 アテネ・オリンピックスタジアム
29 2008年   中国 北京 204 6305人 4637人 10942人 302 8月8日 8月24日 北京国家体育場 [注 9]
30 2012年   イギリス ロンドン 204 5892人 4676人 10568人 302 7月27日 8月12日 ロンドン・スタジアム
31 2016年   ブラジル リオデジャネイロ 206 6179人 5059人 11237人 306 8月5日 8月21日 エスタジオ・ド・マラカナン
32 2021年   日本 東京 206 5982人 5494人 11656人 339 7月23日 8月8日 東京オリンピックスタジアム国立競技場 [注 10]
33 2024年   フランス パリ 206 329 7月26日 8月11日 スタッド・ド・フランス [注 11]
34 2028年   アメリカ合衆国 ロサンゼルス 7月14日 7月30日 ロサンゼルス・メモリアル・コロシアム
35 2032年   オーストラリア ブリスベン 7月23日 8月8日 ブリスベン・クリケット・グラウンド
36 2036年   未定

正式競技

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夏季オリンピック国際競技連盟連合(ASOIF)に国際競技連盟(IF)が加盟している競技が正式競技とされ、本大会の7年前の国際オリンピック委員会(IOC)総会で最終決定する。競技数の上限は28である。競技・種目数は一貫して増え続け、2000年のシドニー五輪では28競技・300種目に達したことから五輪の肥大化が問題視され、2012年のロンドン五輪では野球とソフトボールが外され、26競技・302種目に減らされた[注 12]。2007年には中核競技制度が導入され、2016年のリオデジャネイロ五輪ではロンドンで実施された26競技(2020年大会では25競技)は除外されない。リオ大会ではゴルフとラグビー(7人制)が加わり、28競技で実施された[5]

水泳

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格闘技

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射的

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球技

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複合競技

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その他

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競技人気

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IOCは、夏季オリンピック競技を人気度に基づいて5つのカテゴリー(A-E)に分け、テレビ視聴数(40%)、インターネット人気(20%)、公的調査(15%)、チケット要求(10%)、報道報道(10%)、全国連盟数(5%)の6つの基準で測定している。スポーツのカテゴリは、そのスポーツ競技の国際連盟が受け取るオリンピック収入のシェアを決定する[6][7]。2016年、オリンピックに新たに登場した競技(ラグビーとゴルフ)がカテゴリーEに入れられた。

現在のカテゴリは次のとおり。

Cat. 競技数 競技種
A 4 陸上競技、水泳、体操、ダンススポーツ
B 5 バスケットボール, バレーボール, サッカー, テニス, 自転車競技
C 8 アーチェリー, バドミントン, ボクシング, 柔道, ボート, 卓球, 射撃, ウエイトリフティング
D 9 カヌー, 馬術, フェンシング, ハンドボール, ホッケー, セーリング, テコンドー, トライアスロン, レスリング
E 3 近代五種, ゴルフ, 7人制ラグビー
F 6 野球/ソフトボール, 空手, スケートボード, スポーツクライミング, サーフィン

水泳は、競泳、飛込、アーティスティックスイミング、水球、マラソンスイミングを含む。

開催都市選考

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メダルと入賞

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メダル授与と入賞

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各競技種目の一位となった競技者には金メダル、二位には銀メダル、三位には銅メダルの授与が行われ、4位以下は「入賞」となる。「入賞」は最大8位まで。

失格者が出た場合、永年において可能な限り剥奪・回収および繰上げ者には返還・授与を行っており、近年、ドーピング検査・鑑定によって10年を越える剥奪・授与が実現している。例えば、二位競技者Aが失格の場合、Aの記録抹消とAから銀メダル剥奪が行われ、繰上げ二位の新二位競技者Bに銀メダル授与と銅メダル返還請求が行われ、新三位競技者Cに銅メダル授与が行われる。


国別メダル獲得数

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なお誤解の無いように説明しておかなければならないが、オリンピックのメダルはあくまで「競技者個人」(やチーム)に対して授与されているのであって、「国」に対して授与されているのではない。

以下の表は、国際オリンピック委員会公式データに基づく[8]

2016年8月21日時点

順位 総計 競技数
1   アメリカ合衆国 (USA) 1,075 846 752 2,673 28
2   ソビエト連邦 (URS) 395 319 296 1,010 10
3   イギリス (GBR) 263 295 293 851 28
4   中国 (CHN) 224 167 155 546 10
5   フランス (FRA) 212 241 263 716 28
6   イタリア (ITA) 206 178 193 577 27
7   ドイツ (GER) 191 194 230 615 16
8   ハンガリー (HUN) 175 147 169 491 26
9   オーストラリア (AUS) 164 177 213 554 28
10   東ドイツ (GDR) 153 129 127 409 5
11   ロシア (RUS) 149 125 152 426 6
12   スウェーデン (SWE) 145 170 179 494 27
13   日本 (JPN) 142 136 161 439 22
14   フィンランド (FIN) 101 85 117 303 25
15   韓国 (KOR) 90 87 90 267 17
16   ルーマニア (ROU) 89 95 122 306 21
17   オランダ (NED) 85 92 108 285 26
18   キューバ (CUB) 78 68 80 226 20
19   ポーランド (POL) 68 84 132 284 21
20   カナダ (CAN) 64 102 136 302 26
  • 凡例 :
      かつて存在した国家

脚注

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注釈

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  1. ^ 当初はシカゴで開催される予定だったが、セントルイス万国博覧会との同時開催のため、セントルイスに変更された。
  2. ^ 通常の大会の中間年に開催された特別大会。国際オリンピック委員会はこの大会を正式な大会として認めていない。
  3. ^ 当初はローマで開催される予定だったが、ヴェスヴィオ山の噴火の影響により、ロンドンに変更された。
  4. ^ 第一次世界大戦のため開催中止。
  5. ^ セーリング競技はオランダアムステルダムでも行われた。
  6. ^ 日中戦争第二次世界大戦のため開催中止。
  7. ^ 第二次世界大戦のため開催中止。
  8. ^ 検疫の関係により、馬術競技のみストックホルムで開催され、独自の開会式、閉会式が行われた。
  9. ^ 馬術競技は中国の特別行政区である香港で行われた。
  10. ^ 当初は2020年に開催される予定だったが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響で、2021年に1年延期された。ただし大会名称は変更されず、「2020」が使用された。
  11. ^ サーフィン競技はフランスの海外領土である仏領ポリネシア タヒチ島で行われた。
  12. ^ 北京五輪ではこれまでで最大の28競技・302種目だった。

出典

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  1. ^ オリンピックスポーツ文化研究所
  2. ^ 舛本直文『オリンピックは平和の祭典 』大修館書店、2019年
  3. ^ 『オリンピックの事典―平和と青春の祭典』三省堂、1984年
  4. ^ International Olympic Comitee, "What is Olympism?"
  5. ^ 産経新聞 2012年7月25日
  6. ^ “Athletics to share limelight as one of top Olympic sports”. The Queensland Times. (31 May 2013). http://www.qt.com.au/news/atheltics-share-limelight-one-top-olympic-sports/1889097/ 18 July 2013閲覧。 
  7. ^ Winners Include Gymnastics, Swimming - and Wrestling - as IOC Announces New Funding Distribution Groupings”. The Association of Summer Olympic International Federations. 18 July 2013閲覧。
  8. ^ “RESULTS” (英語). olympic.org. https://www.olympic.org/olympic-results 13 November 2017閲覧。 

関連項目

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外部リンク

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