ウィッシュ (映画)
『ウィッシュ』(原題: Wish)は、2023年にウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオが製作し、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズが配給したアメリカのアニメーション・ミュージカル・ファンタジー映画である。クリス・バックとファウン・ヴィーラスンソーン(本作が長編監督デビュー)によって監督され、ジェニファー・リーとアリソン・ムーアが脚本を執筆した。物語はリー、バック、ヴィーラスンソーン、ムーアの共同で考案され、プロデューサーにはピーター・デル・ヴェッチョとフアン・パブロ・レイエス・ランカスター=ジョーンズが、エグゼクティブプロデューサーにはリーとドン・ホールが名を連ねている。アートスタイルはコンピュータアニメーションと従来の手描きアニメーション風のスタイルを融合させたものとなっている。声の出演はアリアナ・デボーズ、クリス・パイン、アラン・テュディック、アンジェリーク・カブラル、ヴィクター・ガーバー、ナターシャ・ロスウェル、ハーヴィー・ギレン、エヴァン・ピーターズ、ラミー・ユセフジョン・ルドニツスキーらが務めている。物語は、17歳の少女アーシャ(デボーズ)が切実な願いを星に祈るところから始まり、彼女は生きている魔法の落ち星と出会い、共にロサス王国の悪賢い支配者である魔術師マグニフィコ(パイン)に立ち向かう。
ウィッシュ | |
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Wish | |
監督 |
クリス・バック ファウン・ヴィーラスンソーン |
脚本 |
ジェニファー・リー アリソン・ムーア |
原案 |
ジェニファー・リー クリス・バック ファウン・ヴィーラスンソーン アリソン・ムーア |
製作 |
ピーター・デル・ヴェッコ フアン・パブロ・レイジェス ランカスター=ジョーンズ |
出演者 |
アリアナ・デボーズ クリス・パイン アラン・テュディック アンジェリーク・カブラル ヴィクター・ガーバー ナターシャ・ロスウェル ハーヴィー・ギレン エヴァン・ピーターズ ラミー・ユセフ ジョン・ルドニツスキー |
音楽 |
デイヴ・メッツガー(スコア) ジュリア・マイケルズ(ソング) ベンジャミン・ライス(ソング) |
撮影 |
ロブ・ドレッセル(レイアウト) アドルフ・ルシンスキー(照明) |
編集 | ジェフ・ドラハイム |
製作会社 | ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ |
配給 |
ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ ウォルト・ディズニー・ジャパン |
公開 |
2023年11月8日(エル・キャピタン劇場) 2023年11月22日 2023年12月15日 |
上映時間 | 95分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
製作費 | 1億7,500万~2億ドル[1] |
興行収入 | 2億5,500万ドル |
前作 | ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界 |
次作 | モアナと伝説の海2 |
『ウィッシュ』の開発は2018年に始まったが、2022年1月にリーがディズニーアニメーションでオリジナル映画を執筆中であることが明らかにされるまで公にはされなかった。同年9月に正式にプロジェクトが発表され、タイトルとともにデボーズとテュディックの出演が発表された。リーと共に『アナと雪の女王』(2013年)や『アナと雪の女王2』(2019年)で共同監督やストーリーアーティストを務めたバックとヴィーラスンソーンが監督として起用されることも同月に確認され、後にムーアが脚本執筆に加わることとなった。『ウィッシュ』はディズニーの100周年を記念しており、多くのディズニー映画のテーマである「願いが叶う」という要素が反映されている。また、本作は「願い星」の起源を描いた作品としても注目されている[2][3]。ジュリア・マイケルズとベンジャミン・ライスが楽曲を提供し、ディズニーの常連オーケストレーターであるデイヴ・メッツガーがスコアを担当している[4]。
『ウィッシュ』は2023年11月8日にロサンゼルスのエル・キャピタン劇場でプレミア上映され、11月22日にアメリカで劇場公開された[5]。映画は賛否両論の評価を受け、1億7,500万~2億ドルの製作費に対し、全世界でおよそ2億5,500万ドルを興行収入として記録した。アナリストたちは、本作が興行的には失敗し、スタジオに1億3,100万ドルの損失をもたらしたと見ている[6]。本作はいくつかの賞にノミネートされ、ゴールデングローブ賞のアニメ映画賞にもノミネートされた[7]。
ストーリー
編集マグニフィコ王とアマヤ王妃は、地中海の島に「ロサス王国」を築いた。マグニフィコは魔術を学んでおり、彼の臣民たちの最も大きな願いを叶えることができる。臣民たちはそれぞれ、自分の願いをマグニフィコに預け、彼がそれを保護し叶える時を待つ。毎月一度の儀式で、マグニフィコは一つの願いを選び、それを叶えることになっている。
それから数年後、17歳のアーシャは、祖父サビーノの100歳の誕生日に、マグニフィコの弟子になるための面接を受けようと準備していた。彼女は、サビーノの「人々にインスピレーションを与える」という願いが叶うことを期待していた。面接は順調に進むが、アーシャがサビーノの願いを叶えるよう頼んだところで、マグニフィコはそれを拒否する。彼はその願いが自身の権力に対する脅威となる可能性があると見なしていたのだ。アーシャは、マグニフィコが臣民たちの未だ叶えられていない願いを返すつもりがないことに気づき、そのやり方に異議を唱えるが、マグニフィコは彼女を弟子にすることも、彼女の家族の願いを叶えることも拒否する。
アーシャは、マグニフィコが彼らを欺いていることをサビーノや母親サキナに伝えようとするが、説得に失敗する。落胆したアーシャは星に願いをかけ、驚くことに、その星が空から降りてきて、光の球のような姿で現れる。アーシャはその星を「スター」と名付けた。スターの魔法は、森の動物たち、そしてアーシャのペットのヤギ、ヴァレンティノに話す力を与え、アーシャはスターの力を借りて家族の願いを取り戻すことを決意する。王国中の人々がスターの存在を感じ取り、マグニフィコもその力に脅威を感じる。アマヤの懇願にもかかわらず、彼は自らの権力を守るため、禁じられた闇の魔法に手を染め始める。
アーシャはサビーノの願いを取り戻し、サビーノはそれを思い出せたことに喜ぶ。しかし、マグニフィコはアーシャがスターを召喚したことを告げられ、彼女を逮捕しようとやってくる。闇の魔法に魅了されたマグニフィコは、スターの魔法とロサス王国の願いを使って自身の力をさらに強めようとし、サビーノとサキナは近くの島へ逃げる。一方、アーシャ、スター、そしてヴァレンティノは残り、王国の人々の願いを解放しようと奮闘する。アーシャの友人サイモンは、アーシャをマグニフィコに売り渡し、騎士になるという自分の願いを叶えてもらおうとしていた。マグニフィコはその願いを叶えるが、同時にサイモンを操り、彼を手下にしてアーシャを捕まえさせる。
アーシャは友人のダリア、ガーボ、ハル、バジーマ、サフィ、ダリオと共に、マグニフィコの支配を終わらせるため立ち上がる。アマヤもまた、マグニフィコの堕落を知り、彼らに加わる。友人たちがマグニフィコの書斎に侵入し、天井を開けて願いを解放しようとする中、アーシャはマグニフィコを引き付けようとするが、変装したサイモンに騙される。しかし、動物たちの助けを借りてサイモンを倒す。マグニフィコは城の塔に登り、すべての願いの力を吸収してスターを捕らえる。アーシャは彼を止めようとするが、マグニフィコは空を遮り、臣民たちを動けなくして願いをかけさせないようにする。
諦めないアーシャは、臣民たちにロサスの未来を変えるための願いをかけるよう呼びかける。その強い願いの力がついにマグニフィコを打ち倒し、彼の魔法は彼自身に反転し、杖の鏡の中に彼を閉じ込める。臣民たちは自らの封じられていた願いを取り戻し、その願いを追い求めることの大切さを再認識する。
アマヤはロサスの唯一の支配者となり、臣民たちが自分の力で願いを叶えられるよう手助けをする。後悔したサイモンはアーシャとその友人たちに許される。スターはアーシャに魔法の杖を贈り、人々が夢を抱き続けることを鼓舞するように言い残して、再び空の星々の中に戻っていく[8][9][10]。
登場人物/キャスト
編集※括弧内は日本語吹替。
- アーシャ (Asha)
- 声 - アリアナ・デボーズ(生田絵梨花[11])
- 本作の主人公である17歳の少女。長い黒髪が特徴。良くも悪くも自ら称するほど「優しすぎる」性格で、祖父・サビーノのために願いを叶えさせようと奮闘し、母国であるロサスを深く愛する。
- マグニフィコ王の弟子になる面接を受けた際に、彼の願いに対する考えに異を唱えるも聞き入れられなかった。帰宅後、ザビーノら家族にマグニフィコの本性を打ち明けるも信じてもらえず苦悩したが、星に願いをかけた際にスターと出会った。
- スターによる魔法と願いの返還を危険視するマグニフィコ王によって裏切り者と断罪され、彼によって迫り来る闇を察知して王国を救う手助けをする[12][13]。
- 物語の途中でマグニフィコの策略で指名手配され、サイモンの裏切りに遭う。禁断魔法に呑まれたマグニフィコにスターを仕留められるも希望を失わず、ダリア達を含めた民衆全員と心を一つにして願い玉を取り戻す。事件後、ダリオにフェアリー・ゴッドマザーになってはどうかと提案された。
- マグニフィコ王 (King Magnifico)
- 声 - クリス・パイン(福山雅治[14])
- ロサス王国の国王であり、世界中の人々から託された何百もの願いの唯一の管理者。幼い頃に家族を盗賊の凶行によって失い、その悔しさから鍛錬を重ねて魔法使いになった過去を持つ。
- 表向きは王国と妻であるアマヤ王妃を心から愛し、国民からも信望篤い人格者だが、実は本作のディズニー・ヴィランズ。真の目的は“多くの願いを独占すること”だった。アーシャを含めた王国の人々の願いを我が物にしようと企み、自身の裏の顔と野望を知ったアーシャを指名手配する[15]。
- 最終決戦でスターを仕留め、アーシャも始末しようとする。しかしアーシャたちが心を一つにし、希望を取り戻した結果、敗北し呪いの杖に取り込まれてしまった。アマヤ王妃に助けを求めるも許して貰えるわけがなく、そのまま地下牢に連行された。
- バレンティノ (Valentino)
- 声 - アラン・テュディック(山寺宏一[16])
- アーシャのペット。人と話したいという願いを持ち、スターの光の粒を食べた事で話す能力を手に入れたヤギ[13]。手に入れた声色は自分でも驚くほどのイケてる低音ボイスだが、泣く時は高音になる。一人称は「俺」。黄色い服を着ている。
- 事件後、全ての哺乳類が幸せに暮らせる世界を作る事を目標とするようになった。
- スター (Star)
- 不思議な星の妖精。好奇心旺盛でお茶目な性格。言葉が話せない代わりに表情と動きで自分の感情を表現している。願いを叶える力を持つ。その魔法は植物に命を吹き込んだり、動物に言語を話せるようにしたりするほど高い能力を持ち、マグニフィコ王から不倶戴天の存在として恐れられている。
- ミッキーマウスから着想を得たキャラクターである。美術監督のビル・シュワブは初期段階でミッキーマウスについて話し合い、「ウォルトはミッキーを創作した。それなら私たちの100周年記念映画の中にもミッキーに敬意を表したキャラクターを据えられれば最高ではないだろうか、とね。」とウォルト・ディズニーへの深き尊敬の念が込められたアイデアである事と、「私は大好きなあのミッキーのハート型の顔型を取り入れようと考え、結果的に、あのハートの顔型を使ってスターの感情を表すことになりました。スターのポーズはミッキーにマッチさせたものです」という制作秘話を明かした[17]。
- アマヤ王妃 (Queen Amaya)
- 声 - アンジェリーク・カブラル(檀れい[18])
- マグニフィコ王の妻。国民想いの優しい性格。夫を愛しているが、当の本人からは道具としか見なされていない。
- スターの存在を恐れるあまり、禁断魔法を使う事も厭わない夫の恐ろしい目的を知った事で、最初は諌める事に成功。その後も夫を信じようとしたが、独善的に振る舞う彼を見かねてアーシャ達に協力する事となる。
- サビーノ (Sabino)
- 声 - ヴィクター・ガーバー(鹿賀丈史[18])
- アーシャの祖父。100歳。穏やかな人柄でマンドリン奏者になる事を願っている。
- 事件後、自分たちに希望をくれたスターに敬意を表し、『星に願いを』を演奏した。愛称は「サバ」。
- サキーナ (Sakina)
- 声 - ナターシャ・ロスウェル(恒松あゆみ[19])
- アーシャの母。実はマグニフィコの被害者の1人で願いを奪われてしまった。
- ダリア (Daliha)
- 声 - ジェニファー・クミヤマ(大平あひる[18])
- アーシャの友達7人組の1人で、1番の親友。メガネをかけたケーキ作りが好きな女性。聡明で理知的。松葉杖を用いて歩行している事から、足に何らかの障害を持っていると考えられる。
- サイモン (Simon)
- 声 - エヴァン・ピーターズ(落合福嗣[18])
- アーシャの友達7人組の1人。いつも眠たげな大きな体の男性。マグニフィコ王に選ばれて願いを忘れ去られていた。
- 作中では忘れた願いを思い出せず、悩んだところをマグニフィコにつけこまれ、アーシャたちを裏切ってしまいう。
- さらに願いである騎士になる夢を叶えてもらった際、彼に洗脳されてしまう。マグニフィコからの任務を受け、逆賊として指名手配されていたアーシャを成敗しようとしたところを動物たちに妨害され、洗脳が解ける。
- 事件後、洗脳されていたとはいえ、友人のアーシャたちを裏切ったことを悔やんだ。絶縁を覚悟で彼女達に謝罪し、彼女たちと和解。友人に戻った。
- ガーボ (Garbo)
- 声 - ハーヴィー・ギレン(蒼井翔太[18])
- アーシャの友達7人組の1人。短気な少年。現実主義な面があり、最初はスターの存在を信じなかったが、スターの魔法によるバレンティノとニワトリたちのミュージカルショーを目撃した事で、スターの存在を知った。高所恐怖症だが仲間の為に頑張ろうと奮闘する。
- サフィ (Safi)
- 声 - ラミー・ユセフ(岡本信彦[18])
- アーシャの友達7人組の1人。鼻が大きくアレルギー持ちで、くしゃみをする事が多い男性。
- ハル (Spring)
- 声 - ニコ・ヴァーガス(青野紗穂[18])
- アーシャの友達7人組の1人。能天気でひょうきんな女性。
- バジーマ (Bajima)
- 声 - デラ・サバ(竹達彩奈[18])
- アーシャの友達7人組の1人。恥ずかしがり屋の女性。
- ダリオ (Dario)
- 声 - ジョン・ルドニツスキー(宮里駿[18])
- アーシャの友達7人組の1人。天然気味な性格の金髪の男。
- 動物たち (Animals)
- 声 - 麻生かほ里(キノコアンサンブル)、石丸幹二(木のパパ)、伊東えり(キノコアンサンブル)、上戸彩(母ウサギ)、小此木麻里(キノコアンサンブル)、尾上松也(ウズラのパパ)、菅野美穂(子ジカ)、菊地ゆうみ(キノコアンサンブル)、小泉孝太郎(フクロウアンサンブル)、小鳩くるみ(キノコアンサンブル)、斎藤瑠希(アライグマのママ)、Zinee(木の子供)、鈴木より子(キノコアンサンブル)、鈴木福(ウサギの兄弟)、鈴木ほのか(キノコアンサンブル)、すずきまゆみ(キノコアンサンブル)、高橋茂雄(フクロウアンサンブル)、武内駿輔(カメ)、土居裕子(キノコアンサンブル)、中川翔子(二匹のネズミ)、中村優月(子ウサギ)橋爪紋佳(キノコアンサンブル)、濱田めぐみ(リス)、ウッディ・バック/林勇(バンビ)、原田泰造(キノコ)、平川めぐみ(キノコアンサンブル)、平野綾(アライグマのママ)、本城雄太郎(ティーンの木)、イヴェット・ニコール・ブラウン/松たか子(ヤマアラシ)、MARU(木のママ)、丸山壮史(ジョン)、三ツ矢雄二(フクロウアンサンブル)、森川智之(ウサギの兄弟)、諸星すみれ(ウサギの姉妹)、屋比久知奈(ウズラのママ)、ゆめっち(アライグマのママ)、吉岡悠歩(フクロウ)、吉川愛(シマリス)
- バレンティノ同様、スターの魔法で言葉を話せるようになった動物。アーシャに協力する。
- その他
- 声 - 浅倉大介、伊藤かりん、大友花恋、風間俊介、小宮山雄飛、濱家隆一、宮島咲良、ゆりやんレトリィバァ
- 一言声優として出演。役は不明。
製作
編集開発
編集『ウィッシュ』の開発は2018年に始まったが、公に発表されたのは2022年1月21日で、この時にウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの最高クリエイティブ責任者であるジェニファー・リーがオリジナル映画の脚本を執筆していることが報じられた[20][21]。
2022年9月9日、D23 Expoでのプレゼンテーションにおいて、ディズニー・アニメーションは本作のタイトルを発表し、監督チームがクリス・バックとフォーン・ヴァーサントーンであり、ピーター・デル・ヴェッチョとフアン・パブロ・レイエス・ランカスター=ジョーンズがプロデューサーを務めることが明らかになった。バック、ヴァーサントーン、デル・ヴェッチョの3人は『アナと雪の女王』シリーズでジェニファー・リーと共にそれぞれ共同監督、ストーリーアーティスト、プロデューサーとして働いていた。また、アートスタイルは、ディズニーの伝統的な水彩画風のアニメーションと、現代の作品で使用しているコンピュータアニメーションを融合させたものになると発表された。作曲家デイヴ・メッツガーは、『白雪姫』(1937年)と『眠れる森の美女』(1959年)をキャラクターや背景デザインの主なインスピレーションに挙げており、特に後者の作品が本作を2.55:1のアスペクト比で上映する決定にも影響を与えたと述べている[22]。長編監督デビューとなるヴァーサントーンは、「ウォルト・ディズニーが影響を受けた20世紀のイラスト風のスタイルと現代のCG技術を融合させること」に期待を寄せた[23]。
本作のアニメーションは当初、全編が手描きアニメーションで制作される予定だったが、カメラの動きやキャラクター表現における制約が多いと判断され、最終的にコンピュータアニメーションとの融合が決定された[24]。
『The Art of Wish』のアートブックでは、アマヤ王妃が当初はマグニフィコと共に悪役として描かれる予定だったことが明かされている[25]。また、スターは「ピーター・パンにインスパイアされた、人間でありながら一部は魔法的なキャラクター」として描かれていた[26]。さらに、最終版からカットされたり変更されたりしたコンセプトやシーンもいくつか存在していた。例えば、アーシャとその家族が村に隠れ、村人が木に願いを書いているシーンや、サビーノがアーシャにマグニフィコと戦うようインスピレーションを与えた直後に死亡する場面があった[27]。また、スターがアマヤ王妃とその衛兵から逃げるために様々な生き物に変身する森での追跡シーンや[28]、マグニフィコが願いを吸収して全能の存在になり、アーシャが時間稼ぎのためにヴァレンティノをスターだと偽る場面などもあった[29]。さらに、アーシャがサビーノの願いを取り戻した後、サビーノが「A Wish Worth Making」という曲を歌うシーンも、制作の終盤で不明な理由によりカットされた[30]。
キャスティング
編集2022年9月9日、D23 Expoでアリアナ・デボーズとアラン・テュディックが、それぞれアーシャとヴァレンティノの主役としてキャスティングされたことが発表された。2023年4月26日、シネマコンにおいて、クリス・パインがマグニフィコ王の声を担当することが発表された。リーは、パインについて「王国で最も権力を持つマグニフィコ王には、魅力と賢さ、カリスマ性を兼ね備えた人物が必要でしたが、クリスはそれらすべてを見事に表現してくれています」と語っている。2023年9月18日には、アンジェリーク・カブラルがマグニフィコの妻であるアマヤ王妃の声を担当することが発表された。残りのキャストは、フルトレーラーの公開とともに発表された。
音楽
編集ジュリア・マイケルズは2022年9月のD23 Expoで本作のためにオリジナル曲を書くことが発表された[31]。2023年4月までに、デヴィッド・メッツガーが本作のスコアを作曲することが決定し、ベンジャミン・ライスがマイケルズに加わって曲を書いた。メッツガーは以前、『ターザン2』(2005年)や『ブラザー・ベア2』(2006年)といったディズニーのダイレクト・トゥ・ビデオ・アニメーション映画の作曲家として、また『ターザン』(1999年)、『ボルト』(2008年)、『アナと雪の女王』(2013年)、『アナと雪の女王2』(2019年)といった劇場公開されたディズニー・アニメーション映画のオーケストラを担当した[32]。4月に開催されたシネマコンで、ディズニーはアーシャが「This Wish」を歌う映像を公開し、『Deadline Hollywood』の記者は「とてもかわいらしく、力強いアンセムだ」と評した[33]。
楽曲
編集- 『ようこそ!ロサス王国へ(Welcome to Rosas)』歌:アリアナ・デボーズ、コーラス/生田絵梨花、コーラス
- 『輝く願い(At All Costs)』歌:クリス・パイン、アリアナ・デボーズ/福山雅治、生田絵梨花
- 『ウィッシュ~この願い~(This Wish)』歌:アリアナ・デボーズ/生田絵梨花
- 『誰もがスター!(I'm a Star)』歌:アリアナ・デボーズ、アラン・テュディック、ウッディ・バック、イヴェット・ニコール・ブラウン、コーラス/生田絵梨花、山寺宏一、丸山壮史、林勇、濱田めぐみ、原田泰造、松たか子、MARU、本城雄太郎、Zinee、吉岡悠歩、吉川愛、森川智之、鈴木福、諸星すみれ、武内駿輔、中川翔子、小鳩くるみ、鈴木より子、土居裕子、すずきまゆみ、平川めぐみ、伊東えり、小此木麻里、鈴木ほのか、麻生かほ里、菊地ゆうみ、橋爪紋佳、菅野美穂、石丸幹二、斎藤瑠希、平野綾、ゆめっち、尾上松也、屋比久知奈、三ツ矢雄二、小泉孝太郎、高橋茂雄、上戸彩
- 『無礼者たちへ(This Is The Thanks I Get?!)』歌:クリス・パイン/福山雅治
- 『真実を掲げ(Knowing What I Know Now)』歌:アリアナ・デボーズ、アンジェリーク・カブラル、ジェニファー・クミヤマ、ハーヴェイ・ギレン、ニコ・ヴァーガス、デラ・サバ、ラミー・ユセフ、ジョン・ラドニツキー/生田絵梨花、檀れい、大平あひる、蒼井翔太、青野紗穂、竹達彩奈、岡本信彦、宮里駿
- 『ウィッシュ~この願い~(リプライズ)(This Wish(reprise))』歌:アリアナ・デボーズ、ジェニファー・クミヤマ、アンジェリーク・カブラル、ヴィクター・ガーバー、ナターシャ・ロスウェル、ハーヴェイ・ギレン、ニコ・ヴァーガス、デラ・サバ、ラミー・ユセフ、ジョン・ラドニツキー/生田絵梨花、大平あひる、檀れい、鹿賀丈史、恒松あゆみ、蒼井翔太、青野紗穂、竹達彩奈、岡本信彦、宮里駿
- 『かけがえのない願い(A Wish Worth Making)(エンドソング)』歌:ジュリア・マイケルズ
トリビア
編集エンドクレジットに登場する歴代キャラクター
編集- 白雪姫『白雪姫』(1937年12月21日公開)
- ピノキオ『ピノキオ』(1940年2月7日公開)
- ミッキーマウス『魔法使いの弟子(ファンタジア)』(1940年11月13日公開)
- ダンボ『ダンボ』(1941年10月23日公開)
- バンビ『バンビ』(1942年8月13日公開)
- イカボード・クレイン『スリーピー・ホローの伝説(イカボードとトード氏)』(1949年10月5日公開)
- シンデレラ『シンデレラ』(1950年2月15日公開)
- チェシャ猫『ふしぎの国のアリス』(1951年7月28日公開)
- ピーター・パン『ピーター・パン』(1953年2月5日公開)
- レディ、トランプ『わんわん物語』(1955年6月16日公開)
- マレフィセント『眠れる森の美女』(1959年1月29日公開)
- ポンゴ『101匹わんちゃん』(1961年1月25日公開)
- マーリン『王様の剣』(1963年12月25日公開)
- バルー『ジャングル・ブック』(1967年10月18日公開)
- マリー『おしゃれキャット』(1970年12月11日公開)
- ロビン・フッド『ロビン・フッド』(1973年11月8日公開)
- プー『くまのプーさん』(1977年3月11日公開)
- トッド、コッパー『きつねと猟犬』(1981年7月10日公開)
- バジル『オリビアちゃんの大冒険』(1986年7月2日公開)
- オリバー『オリバー ニューヨーク子猫ものがたり』(1988年11月18日公開)
- アリエル『リトル・マーメイド』(1989年11月17日公開)
- ベル、野獣『美女と野獣』(1991年11月22日公開)
- アラジン『アラジン』(1992年11月25日公開)
- シンバ、ラフィキ『ライオン・キング』(1994年6月24日公開)
- ポカホンタス『ポカホンタス』(1995年6月23日公開)
- カジモド『ノートルダムの鐘』(1996年6月21日公開)
- ヘラクレス『ヘラクレス』(1997年6月27日公開)
- ムーラン『ムーラン』(1998年6月19日公開)
- ターザン『ターザン』(1999年6月18日公開)
- ヨーヨー・フラミンゴ『動物の謝肉祭(ファンタジア2000)』(1999年12月17日公開)
- アラダー『ダイナソー』(2000年5月19日公開)
- イズマ『ラマになった王様』(2000年12月15日公開)
- マイロ・サッチ『アトランティス 失われた帝国』(2001年6月15日公開)
- スティッチ『リロ&スティッチ』(2002年6月21日公開)
- ジム・ホーキンス『トレジャー・プラネット』(2002年11月27日公開)
- コーダ『ブラザー・ベア』(2003年11月1日公開)
- マギー『ホーム・オン・ザ・レンジ にぎやか農場を救え!』(2004年4月2日公開)
- チキン・リトル『チキン・リトル』(2005年11月4日公開)
- ボルト『ボルト』(2008年11月21日公開)
- ティアナ『プリンセスと魔法のキス』(2009年12月11日公開)
- ラプンツェル『塔の上のラプンツェル』(2010年11月24日公開)
- ラルフ『シュガー・ラッシュ』(2012年11月2日公開)
- エルサ『アナと雪の女王』(2013年11月27日公開)
- ヨウカイ(ロバート・キャラハン教授 )『ベイマックス』(2014年11月7日公開)
- ジュディ・ホップス、ニック・ワイルド『ズートピア』(2016年3月4日公開)
- モアナ『モアナと伝説の海』(2016年11月23日公開)
- ラーヤ『ラーヤと龍の王国』(2021年3月5日公開)
- ミラベル・マドリガル『ミラベルと魔法だらけの家』(2021年11月24日公開)
- スプラット『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』(2022年11月23日公開)
「ラテン・アメリカの旅」(1942年8月24日公開)、「三人の騎士」(1944年12月21日公開)、「メイク・マイン・ミュージック」(1946年4月20日公開)、「ファン・アンド・ファンシー・フリー」(1947年9月27日公開)、「メロディ・タイム」(1948年5月27日公開)、『ビアンカの大冒険』(1977年6月22日公開)、『コルドロン』(1985年7月24日公開)、「ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!」(1990年11月16日公開)、『ルイスと未来泥棒』(2007年3月30日公開)、「くまのプーさん」(2011年7月15日公開)、「シュガー・ラッシュ:オンライン」(2018年11月21日公開)、「アナと雪の女王2」(2019年11月22日公開)は含まれていない。
封切り
編集本作は、短編映画『ワンス・アポン・ア・スタジオ -100年の思い出-』とともに2023年11月22日に劇場公開[34][35]。2023年2月16日、同社の『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』とピクサー・アニメーション・スタジオの『バズ・ライトイヤー』(ともに2022年)の商業的失敗を受けて、ディズニーは家族連れを映画館に呼び戻すことを期待して、本作とピクサーの『マイ・エレメント』の劇場公開期間の延長を検討したと報じられた[36][37]。2023年6月15日、アヌシー国際アニメーション映画祭で、本作の20分の映像が上映された[38]。なお、日本ではランキング初登場1位、動員数が約221万人、興行収入は約30億96万円を記録している(2024年1月現在)。
ホームメディア
編集2024年3月27日から購入によるデジタル配信、同年4月24日からディスクによる販売[39]、同年5月4日からレンタルによるデジタル配信をそれぞれ開始する予定[40]。
2024年4月26日からは定額制動画配信サービスのDisney+でも見放題独占配信を開始する予定[41]。
コラボレーション
編集- 劇場版 SPY×FAMILY CODE: White
- 2023年12月22日に東宝配給で公開[42][43]。
- 本作のヒロインであるアーシャとコラボ元である『SPY×FAMILY』に登場するアーニャ・フォージャーには「名前の響きが似ている」「ある日突然、世界を揺るがす秘密を知ってしまう」「動物の相棒(アーシャにはバレンティノ、アーニャにはボンド)がいる」という共通点があるということで、特別映像[44]とスペシャルビジュアルが公開された[43](過去には『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』ともコラボしている)。
書誌情報
編集- エリン・ファリガンド、代田亜香子『ウィッシュ』小学館〈小学館ジュニア文庫〉、2023年12月15日発売[45]、ISBN 978-4-09-231472-6
関連作品
編集- 『アトランティス 失われた帝国』(2001年) - ウォルト・ディズニー生誕100周年記念作品。本作と同じく、「ディズニー100周年記念作品」として認知されている。
脚注
編集- ^ Fuster, Jeremy (2023年6月19日). “The Flash and Elemental Flops Send Red Alerts for 2 of Hollywood's Biggest Box Office Brands” (英語). TheWrap. 2023年8月12日閲覧。
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- ^ “東宝『SPY×FAMILY』、最速上映全国9館で”. 文化通信.com (2023年12月8日). 2023年12月20日閲覧。
- ^ a b “『ウィッシュ』“アーシャ”と“アーニャ”奇跡の共演!この冬必見の2作品『ウィッシュ』『SPY×FAMILY』よりスペシャルビジュアル&映像が到着!”. ディズニー公式. ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 (2023年12月19日). 2023年12月19日閲覧。
- ^ (日本語) アーシャとアーニャが奇跡のコラボ⁉|映画『ウィッシュ』と『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』スペシャル映像|「ウィッシュ」大ヒット上映中! 2023年12月19日閲覧。
- ^ “「ウィッシュ (小学館ジュニア文庫 ジフ 4-3)」を図書館から検索。”. カーリル. 2024年2月3日閲覧。