ヤマザキショップ
ヤマザキショップは、ボランタリー・チェーン方式による日本のコンビニエンスストア(以下「コンビニ」)型の小売店である。
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「Yショップ(ワイショップ)」・「ヤマザキYショップ(ヤマザキワイショップ)」とも呼ばれる。従来は「ヤマザキサンロイヤル」の屋号で展開していた。
本項では、ヤマザキショップの機能強化型業態である「ヤマザキスペシャルパートナーショップ(YSPS)」についても記述する。
概要
編集山崎製パン(ヤマザキパン)市場開発営業部が所管し、日本ボランタリー・チェーン協会にも「山崎製パン株式会社Yショップ事業部」として加盟している。
ヤマザキパンは従来から自社商品を取り扱う各地の個人商店と提携し、「ヤマザキサンロイヤル」の屋号で小売店を展開していた。店頭の看板には、ヤマザキパンのシンボルキャラクターである食パンをくわえる白人少女「スージーちゃん」が掲げられていた[1][2]。
しかし1970年代に日本各地でコンビニチェーンの出店が加速すると、スーパーマーケットを含む小売店同士の競争が激化したことを受け、1982年より特に経営条件の厳しい小規模店舗の経営体質強化を目的とした新ブランド「ヤマザキショップ」の展開を開始した[3]。ヤマザキパンは商品の供給や店舗の改装などの経営面でのフォローを積極的に行い、以後急速に加盟店が増加した[3]。店頭の看板はスージーちゃんに代わり、ヤマザキパンのシンボルマークである太陽マーク[1]が掲げられている(スージーちゃんの看板は現在も改装されていない店舗や、閉店した店舗跡に残されている場合がある)。
ヤマザキパンはコンビニチェーン店のデイリーヤマザキを別途展開しているが、同業他社と同様におおむね画一的に全国展開を行うデイリーヤマザキに対し、ヤマザキショップはヤマザキパンという共通の仕入れ先を持つ個人商店が主体であり、同じ経営者が複数の店舗を出店している場合を除き、店舗同士の繋がりや共通点は薄い。
ボランタリー・チェーンのため、他の大手コンビニチェーンよりロイヤルティーや機器リース料は低く抑えられている。また、後述するように24時間営業が必須ではないため、従来は他のコンビニチェーンに加盟していたものの、不採算や店舗周辺の地域環境の変化などを受け、24時間営業を取り止めるなどの理由でヤマザキショップへ転換する事例も見られる[注 1]。
店舗数は2006年時点で3,975店だったが、経営者の高齢化・後継者不足・不採算などの理由で減少傾向にあり、2018年時点で2,852店となっている[4]。その一方で、2020年代以降も造船業者[5]や住宅資材会社[6]が開業した店舗、病院内[7]や役所[8]、道の駅[9]との併設など、柔軟な業態による新規出店が少なからず見られる。
ヤマザキパン本社では「コンビニ機能店」と位置付けている。デイリーヤマザキが2013年7月1日に同本社と合併してデイリーヤマザキ事業統括本部の管轄となって以降、同社内の組織面では事実上デイリーヤマザキの「小型サテライト店舗」という位置付けとなったが、それによる各店舗への直接の影響は特にない。
店舗
編集24時間営業は必須ではなく(14時間以上)、月2回まで定休日を設けることができる[10]。おおむね朝5時から7時頃に開店し、夜20時から24時頃に閉店する店舗が多い。個人経営が基本のため、都合に応じて臨時休業を行うケースもある。2020年7月現在、沖縄県以外の日本全国に出店している[注 2]。
個人商店がベースのため、大手コンビニチェーン店が出店していない住宅地や農村部などの人通りや人口の少ない地域にも数多く存在する。また、大手コンビニ他社と異なり経営者の兼業に制限がないこともあり、医療機関や教育機関といった、大規模施設の敷地内や深夜営業ができない場所に出店しているケースも見受けられる[注 3]。
取り扱う商品はヤマザキパンのパン製品を初め、サンデリカなどのヤマザキパン系列の工場が製造する弁当やサンドイッチといった日配食品、ヤマザキパンの子会社であるヤマザキビスケット・不二家・東ハトの製品(菓子類)など。オプションサービスとして提供されている調製機能[10]によって作られた、店内調理のサンドイッチや焼きたてパンを取り扱う店舗もある[注 4]。また、ヤマザキパン系列のデイリーヤマザキ(ニューヤマザキデイリーストアも含む)で取り扱う商品についても個別に仕入れることが可能で、店舗ごとに取り扱う商品の傾向は異なる。
ミネラルウォーターなどのプライベートブランドのペットボトル飲料も展開しており、店内や店頭の自動販売機で販売されている。他にも酒類や新聞・雑誌・タバコのほか、独自に仕入れた地元産の果物・野菜といった生鮮食品を販売したり、宅配便やクリーニングなどの取り次ぎに対応したりする店舗もある。商品の陳列方式はコンビニ他社の雰囲気に近い店舗が少なくないが、基本的に個人商店としての運営方針が尊重されており、内装やサービスなどの独自性が強い店舗もある(後述)。
店頭のレジと本部のホストコンピュータは連携しておらず、POSや在庫管理のシステムは各店が独自に構築している。このため、公共料金の収納代行に対応する店舗は一部に限られている。現金以外の支払い方法(電子マネーやQR・バーコード決済など)への対応状況も店舗ごとに異なる。
2021年3月には、ミツウロコプロビジョンズが自社で運営するコンビニ型店舗を「ヤマザキYショップMG」にリブランドした。ミツウロコ社は元々ポプラと業務提携していたが、ポプラの事業縮小を受け提携先をヤマザキショップに切り替えた(それ以前のミツウロコ社の店舗の変遷はミツウロコプロビジョンズの記事を参照のこと)[11]。
過去に愛媛県松山市に存在した伊予鉄道の交通系ICカードであるICい〜カードが使用できる店舗は、「い〜ショップ」という名称で営業していた(市駅店・古町店の2店舗が該当。現在はいずれもセブン-イレブンに転換されている)。
なお、全国規模で展開するコンビニ業態の小売店ながら、公式ウェブサイトには店舗の一覧は掲載されていない。
ヤマザキスペシャルパートナーショップ(YSPS)
編集ヤマザキスペシャルパートナーショップ(YSPS)は、ヤマザキショップをベースに店舗運営のハード面を強化した運営機能強化型店舗である。ロゴマークは通常のヤマザキショップとは異なり、ヤマザキパンに勤める女子美術大学のOGがデザインした(同大学内にもYSPSは出店している)。
従来は店舗側で構築していたPOSレジ・ストアコントローラ・携帯端末SSTを備え、本部・取引先を結ぶ高速通信ネットワークを整備。商品情報を管理し、発注・検品・販売・在庫管理を一貫して行うトータル店舗システムを導入している。
原則として16時間営業で、店内で調製した焼きたてパン・サンドイッチを取り扱うほか、従来の店舗ではあまり対応していない電子マネーによる支払いや、マルチコピー機サービス、公共料金の収納代行、宅配便などの取り次ぎに対応している。コンビニATMなどの一般的な大手コンビニ他社に準じた機能を導入したい場合は、デイリーヤマザキなどへの移行を勧められている。
最盛期は関東から九州まで約60店舗存在したが、現在はほとんどの店が閉店ないしデイリーヤマザキ系列の「ニューヤマザキデイリーストア」に転換しており、数店舗を残すのみとなっている[12]。
特徴のある店舗
編集- Yショップニシ[13](長野県大町市)
- コンビニ商品のほかに長野県名物のおやき・立ち食いそばなどを販売。店内にギャラリースペースを設けイベントを多数開催する他、アルバイトの希望で店内での結婚式を実施したことがある。
- Yショップ上総屋(東京都中央区)
- 元々は3代続く酒屋だった。レコードを取り扱う通称「レコードコンビニ」で、売り上げの約3割をレコードが占めている。岸野雄一・小西康陽・声・TOMC・常盤響など様々なミュージシャンや文化人のDJ出演・来店などで知られる[14]。
- Yショップ未来コンビニ店(徳島県那賀郡那賀町)
- YUZU CAFE株式会社が運営。2021年にレッド・ドット・デザイン賞のベスト・オブ・ザ・ベストを受賞している[15]。
脚注
編集注釈
編集- ^ デイリーヤマザキの前身である「ヤマザキデイリーストアー」が1999年にデイリーヤマザキへリブランドされた際も、店舗面積が比較的小さいあるいは郊外部にあるなどの理由でデイリーヤマザキではなくヤマザキショップに転換した例もあった。
- ^ 北海道・福井県・鳥取県・高知県・鹿児島県の計5道県にはデイリーヤマザキ(派生ブランドのニューヤマザキデイリーストア・ヤマザキデイリーストアーを含む)は出店しておらず、ヤマザキショップのみが存在する。
- ^ 賀茂精神医療センター店(広島県東広島市)、作新学院高校店(栃木県宇都宮市)、新潟空港店(新潟県新潟市東区)など。
- ^ ヤマザキショップとしては出店せず、これらの調製機能のみを単独で契約してサンドイッチやパンを提供する店舗も存在する。
出典
編集- ^ a b “山崎製パン|企業情報|沿革”. 山崎製パン株式会社. 2025年2月24日閲覧。
- ^ “ヤマザキのパン配送トラック、車体に描かれている「女の子」は誰?…「スージーちゃん、実在の人物です」”. デイリースポーツ. (2021年2月7日) 2024年4月29日閲覧。
- ^ a b “Yショップの原点”. 山崎製パン株式会社. 2025年2月24日閲覧。
- ^ 週刊SPA!編集部 (2019年9月26日). “ヤマザキショップ、自由すぎるコンビニの謎。GWに9連休、店内でDJイベントや結婚式も… | 日刊SPA! | ページ 2”. 日刊SPA!. 2019年11月16日閲覧。
- ^ “過疎高齢化進む「造船の島」に待望のコンビニ 下松の笠戸島 通常の店舗より業務用品が充実”. 中国新聞. (2024年2月9日) 2024年5月5日閲覧。
- ^ “奈良・川上村にコンビニ 焼きたてパンや特産品も 林業資料館の跡地に”. 奈良新聞. (2023年5月23日) 2024年5月5日閲覧。
- ^ “相生のIHI播磨病院にコンビニと薬局がはいるみたい”. さおりんご (2023年10月4日). 2024年5月5日閲覧。
- ^ “ヤマザキショップ柏市役所店(本庁舎地下)の開店について”. 山下洋輔 (2021年2月24日). 2024年5月5日閲覧。
- ^ “プレオープンし施設内公開 道の駅サーモンパーク千歳”. 苫小牧民報. (2023年8月25日) 2024年5月5日閲覧。
- ^ a b “加盟条件”. 山崎製パン株式会社. 2025年2月24日閲覧。
- ^ “RICストア(旧エブリワン、ココストア)、2016年秋より残存店舗を整理してポプラと提携へ”. 都商研ニュース. 都市商業研究所 (2016年11月17日). 2025年2月24日閲覧。
- ^ YSPSトータル店舗システム自社商品4〜5割、山崎製パン、小型コンビニ。山崎製パン加盟店募集(山崎製パン 市場開発営業部)山崎製パンコンビニエンスストア加盟店募集(山崎製パン デイリーヤマザキ事業統括本部)
- ^ 週刊SPA!編集部 (2019年9月26日). “ヤマザキショップ、自由すぎるコンビニの謎。GWに9連休、店内でDJイベントや結婚式も…”. 日刊SPA!. 2019年10月11日閲覧。
- ^ “コンビニ、盆踊りでDJ 街に自由を”. PROJECT DESIGN. 2019年10月11日閲覧。
- ^ “未来コンビニ”. 阿波ナビ. 2021年12月4日閲覧。