ICい〜カード
ICい〜カード(アイシィ・い〜カード、英称:IC E-card)は、伊予鉄グループが発行し、伊予鉄道・伊予鉄バスなどで利用できる非接触方式ICカードを利用した乗車カードである。
概要
編集カード本体やリーダライタの基本システムにはSuica(JR東日本)など鉄道ICカード式乗車券で実績のあるFeliCaが採用されている。カード裏面に刻印される番号のうち、発行事業者を示す記号はIY(現在は新規発行停止となっているJMBい〜カードについては、これに当てはまらず、16桁の英数字が裏面に刻印されている[1])。
通常、交通系ICカードは最終利用日から10年間利用がないと失効となるが、2015年1月28日付けで「10年間利用がないICい~カードの失効」規定の撤廃を発表。永年使用可能となる[2]。
この記事では、以上のICい〜カードおよびシステム全般について記す。
沿革
編集同社では、市内線(路面電車)・郊外線(郊外電車)・バス共通のい〜カードを導入していたが、郊外線では直接カードを自動改札機に投入できず、自動券売機で引き換えるようになっていた。折しも2004年(平成16年)、国土交通省の「広域的な公共交通利用転換に関する実証実験実施計画」の1つとして「松山都市圏における、ICカードを用いた都心部公共交通と観光施設などの連携による公共交通利用転換実証実験」が、同社の市内電車・市内ループバスならびに一部の松山市内の観光施設で実施された。その結果をフィードバックし、2005年(平成17年)8月23日 「ICい〜カード」の名称で発売および、伊予鉄道市内線・郊外線・伊予鉄バス全線での利用を開始した。中四国では、経営合理化のため前倒しで導入された高松琴平電気鉄道、ことでんバスのIruCaに続く2事業者目のIC乗車券カード導入事業者となる。
- 2004年(平成16年)
種類
編集- ICい〜カード(無記名式)大人用のみ
- 購入時にデポジット500円の預託が必要(返却時に返金)。紛失再発行ができない。ロイコ系リライタブルカードである。2016年4月からは、在庫が払拭次第、レギュラーカードのデザインにIYOTETSUロゴが新たに追加され、さらに水色からオレンジに変更されたカードの発行に順次統一・変更される。
- ICい〜カード(記名式) 大人用・小児用・障害者大人用(障害者介護者用カード含む)・障害者小児用
- 購入時にデポジット500円の預託が必要(返却時に返金)[6]。大人用は、無記名式と同じ4種類のカードから選択できる(2016年4月以降は、上記無記名式同様の発行対応に変更)が、それ以外は、レギュラーカードのみ発売(色は、大人用のレギュラーカードデザインのそれぞれ色違いとなる)。購入者氏名が、カードに表示される。すべてロイコ系リライタブルカードである。デザインのカラーは、大人用はオレンジ、小児用は緑、障害者大人(介護者用も同じ)はピンク、障害者小児は黄のカードとなる。
- ICい〜カードゴールド(記名式)
- 2016年4月に発行開始となった、オートチャージ対応型カード。発行には、クレジットカードである、ローズカードの発行を要し、同カードからのみオートチャージが実施される(クレジットカードと一体にはなっていない)。それ以外の基本的機能は、一般の大人用のICい〜カード(記名式) と同様。券面のデザインは、2016年4月から順次発行されている新レギュラーカードとほぼ同じだが、既存の記名式カードを当カードに流用することはできず、別途のカードを発行することになる。
- ICい〜カード定期券
- 伊予鉄グループでは持参人式は採用しておらず、すべての定期券が記名式となる。カード表面に定期券情報を印刷するため、記名式レギュラーカードに限定される。定期機能のない記名式レギュラーカードには、そのまま定期券機能を付加できる。
- モバイルい〜カード(おサイフケータイ)
- 2016年3月31日をもってサービスを終了した。利用者情報を登録する必要上、記名式カードと同じ取扱になっていた。
- JALマイレージバンク伊予鉄い〜カード(略称 JMBい〜カード)
- JMB ICカード兼用の記名式カード。申し込み先は、日本航空JMB事務局となる。発行料として500円(消費税込)が必要だが、発行料無料キャンペーンも頻繁に実施されていた。2015年12月25日受付分をもって、新規発行停止。以降も既存の利用者は利用可能だが、同じカードへの再発行はできない。
- ただし、小児用のJMBい〜カードの場合は、今回の新規発行停止にともなって、大人用への切り替えも不可となったため、小学校卒業年度の3月31日以降の利用に関しては、伊予鉄窓口で回収され、原則、一般の大人用記名式カードへの切り替えとなる(チャージ移行時に、JMBカードに入金されたチャージ額が2000円未満の場合は、別途追加チャージを要する)。JMBとしての利用については、別のJMBカードが発行されていない場合は、同じお得意様番号で別のJMBカードを発行する形となる。
- 愛媛FCい〜カード
- 愛媛FCファンクラブ会員カードと兼用で無記名式。2008年までは記名式でデポジットは不要だったが、2009年よりJリーグ全試合対象観戦記録システム「ワンタッチパス」の導入にともない、無記名式でデポジットが必要という形式に変更された。専用デザインカード。
特殊カード
編集利用可能エリア
編集伊予鉄グループ(交通サービス)
編集- 郊外電車(高浜・郡中・横河原各線)
- 市内電車(坊っちゃん列車も利用可能)
- 伊予鉄バス 一般路線バス全線。松山空港・松山観光港リムジンバス、八幡浜・三崎特急線、新居浜特急線、ホエールエクスプレスを含む。新居浜特急線共同運行のせとうちバス運行便は全区間で利用できない(ただし、紙回数券は共通利用可能)。
- 伊予鉄タクシー(松山地区のみ)
- 石崎汽船
- 中島汽船(同社バスでの利用は不可)
伊予鉄グループでも伊予鉄南予バスでは利用できない。
高速バス(伊予鉄バスとの共同運行会社)
編集- とさでん交通
- 松山 - 高知間の高速バス「ホエールエクスプレス」
駐車場
編集その他
編集特徴
編集- 松山 - 高知間の高速バス「ホエールエクスプレス」が約1割引、中島汽船の航路が約5%割引。(割引後運賃の10円未満端数は10円単位に四捨五入)
- その他の交通事業者では割引は適用されない。
- 小児用や身障者用(適用運賃はいずれも大人運賃の半額)なども発行されている。
- 定期券機能を持たない記名式のカードが作成できる。記名式カードは発行の際に発行窓口での利用者登録が必要となるが、紛失・破損した場合でも、カード内残額を引き継いで再発行を受けることが可能になる。購入時にデポジット500円の預託が必要(返却時に返金)[6]。ただし、記名式の発行窓口は以下の通り。
- バスや市内電車の車内でもチャージ可能。
チャージ取扱い場所と方法
編集ICい〜カード取扱窓口
編集係員にチャージする金額分の現金とカードを渡す。係員が端末を操作してチャージする。領収書が発行される。
自動チャージ機
編集「入金」ボタンを押し、カードをおき、チャージ分の紙幣を入れる。入金した紙幣は全額チャージされるため、お釣りが必要な場合は窓口を使うか、事前に両替が必要である。領収書は領収書ボタンを押すと発行される。
バス・市内電車
編集- 利用客が、運転士にチャージする旨とチャージ金額分の現金を手渡しする。
- 運転士が機器を操作する。
- 「チャージ」ボタンを押し、運転士IDカードをタッチする。
- 運転士がチャージ金額を入力する。液晶画面に金額が表示される。
- 金額を確認後、利用者自身、または運転士がカードをセンサーにおく。画面にチャージ結果が表示される。領収書は発行されない。
ホエールエクスプレス(高速バス)
編集- 利用客が、運転士にチャージする旨とチャージ金額分の現金を手渡しする。
- 運転士が携帯用機器を操作する。
利用方法
編集市内電車
編集全線均一運賃制のため、乗車時はそのまま乗車、下車時に運賃箱についているセンサーにタッチすると運賃が自動的に引き落とされる。
バス
編集- 乗車時に乗車用センサーにカードをタッチする。
- 下車時に運賃箱についているセンサーにカードをタッチすると運賃が自動的に引き落とされる。
郊外電車
編集- 乗車時に駅設置の乗車用簡易改札機のセンサーにカードをタッチする。
- 降車時も駅設置の降車用簡易改札機のセンサーにカードをタッチすると運賃が自動的に引き落とされる。
- 松山市駅では窓口係員に申し出ることにより途中下車ができる。
船舶
編集- 窓口で乗車券を購入の際、ICい〜カードで支払う旨を申し出、カードを渡す。
- 係員が携帯端末でカードから減額処理を行う。利用明細書が発行される。
タクシー
編集- 普通に乗車する。
- 下車時にICい〜カードでの支払いであることを運転士に申し出、カードを手渡す。
- 乗務員が携帯端末でカードから減額処理を行う。利用明細書が発行される。
高速バスホエールエクスプレス
編集- あらかじめ、高速バス予約センターにて予約を行う。その際にICい〜カードで支払う旨を申し出る。
- 乗車時に、予約時に申告した名前を運転士に申し出、カードを渡す。
- 運転士が、携帯端末を操作し、運賃相当額をカードから減算処理する。
自動販売機
編集- 商品をはじめに選択する。
- 読み取り機にかざすと商品が出てくる。
モバイルICい〜カードでの利用方法
編集2016年3月31日でサービスを終了した。
- 携帯用伊予鉄道ホームページにアクセスし、専用iアプリをダウンロードする。
- 必要事項を登録する。したがって、自動的に記名式カード扱いとなる。デポジットは不要である。
- 初期設定が完了すると、カード式ICい〜カードと同様に使用可能となる。
- この時点では残額が0円なので、まずチャージを行う必要がある。
- 携帯電話からの(クレジットカードなどを使った)チャージには対応していない。
- 小児および定期券機能には対応していない。
利用明細の確認
編集取扱窓口に申し出る。レシートタイプの利用明細票を受け取れる。なお、利用区間は表示されず、「郊外鉄道」「路面電車」などと表示されるのみである。
共通利用の可能性について
編集同カードは、交通系ICカードとして日本のデファクトスタンダードとなっているFelicaを採用している。また、IruCa同様、チャージ時にはプレミアムを付与せず、乗車時に運賃を割引く方法を採用した。電子マネーとしては、端末の設定で任意の割引率を設定できるため、サービスレベルも汎用性も高くなっている。その点では、Suicaなどとの共通利用において、チャージ時にプレミアムを付加するICカード乗車券よりは障壁が低い。しかし、四国共通カード構想[7] を含め、すでに発行されている他社の鉄道・バスICカードとの相互利用については、現時点では不透明である。2012年7月30日にJR四国はJR西日本とともに、2014年春以降、予讃線の一部と瀬戸大橋線へICOCAを導入する予定であると発表し[8]、2014年3月より香川県内で運用を開始した。また、独自のICカードは導入しない予定である[9]。JR四国のICOCA導入発表後に、四国の他のICカード乗車券との相互利用についての見解は後述のIruCa以外は表明されていない。なお、IruCa(およびICOCA)が日本鉄道サイバネティクス協議会策定の「サイバネ規格」を採用しているのに対し、ICい~カードやですかは非サイバネ規格であるため、現在のカードでは短期的な共通化は困難との指摘がある[10]。
国土交通省は2015年7月15日に公表した「交通系ICカードの普及・利便性拡大に向けた検討会 とりまとめ」の中で、ICい~カードを含む(相互利用対象外となっている)「地域独自カード」について、全国相互利用可能となっている10カードの「片利用共通接続システム」を構築することで、相互利用可能10カードを独自カード導入交通機関で利用可能にすることを検討するとしている[11]。この方針に沿って、サイバネ規格のIruCaについては、2018年3月3日より「片乗り入れ」の形で、全国相互利用サービス対象のICカードが琴電の電車路線で利用可能となり[12]、1年後の2019年3月2日からはことでんバスでも同様の利用が可能となった[13]。
その後、松山市内電車、松山空港リムジンバスは新たに対応機器を設置することによって2024年3月に相互利用可能10カードを利用可能となった(富山地方鉄道軌道線と同様)[14][15][16]。さらに、2025年3月18日から伊予鉄南予バスを除く伊予鉄グループ全ての鉄道・バスで利用可能になる[4][5]。
機器メーカー
編集この節の加筆が望まれています。 |
- 市内線(路面電車)・バスの運賃箱・自動チャージ機
- 携帯端末
- 駐車場自動精算機(市駅西駐車場)
- 三菱プレシジョン(改造対応)
脚注
編集- ^ 伊予鉄ホームページ内で、IYからはじまる17桁を入力する場合は、JMBい〜カードに刻印された16桁の頭にJをつけて対応する。
- ^ “「10年間利用がないICい~カードの失効」撤廃について”. 伊予鉄道. 2022年8月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月7日閲覧。
- ^ 松山都市圏におけるICカードを用いた都市部公共交通と観光施設などの連携による公共交通利用転換実証実験 (PDF)
- ^ a b 『2025年3月、ICOCA利用エリアを拡大 伊予鉄電車・バス全線で利用可能に!市内電車・リムジンバスは本年3月13日(水)スタート』(PDF)(プレスリリース)伊予鉄グループ・西日本旅客鉄道、2024年2月26日 。2024年2月26日閲覧。
- ^ a b 『2025 年 3 月 18 日(火)スタート! ICOCA など 全国交通系 IC カード 伊予鉄電車・バス全線で利用可能に』(PDF)(プレスリリース)伊予鉄グループ、2024年11月1日 。2024年11月1日閲覧。
- ^ a b 伊予鉄ホームページ「平成30年10月1日から、記名式ICい〜カードにつきましても、デポジットをお預かりいたします。」 - 伊予鉄ホームページ
- ^ 四国新聞ニュース2002/02/26付け 2014年の導入を目処
- ^ JR四国香川県内13駅でのICカード乗車券「ICOCA」導入について 四国旅客鉄道プレスリリース 2012年7月30日
- ^ JR四国、「ICOCA」利用駅を13駅に拡大 ‐ 日本経済新聞、2012年7月30日
- ^ 高橋恵一・土井健司・豊嶋以長「地域ICカードの利用実態と市場動向-ガラパゴス化する四国のICカード」[1] - 第39回土木計画学研究発表会資料(2009年6月)
- ^ “交通系ICカードの普及・利便性拡大に向けた検討会 とりまとめの公表について”. 国土交通省 (2015年7月15日). 2016年1月31日閲覧。
- ^ IruCaエリアにおける交通系ICカードのご利用開始日について - 高松琴平電気鉄道・西日本旅客鉄道プレスリリース(2018年1月22日)
- ^ 交通系ICカード乗車券の全国相互利用サービスエリア拡大について - ことでんグループ
- ^ “ICOCAなど全国交通系ICカードを導入します”. 伊予鉄グループ. 2023年10月28日閲覧。
- ^ “伊予鉄が全国交通系ICカード10種を来春導入予定と発表 市内電車など(愛媛)(愛媛新聞ONLINE)”. Yahoo!ニュース. 2023年10月28日閲覧。
- ^ “市内電車での全国交通系ICカードのご利用について | 富山地方鉄道株式会社”. www.chitetsu.co.jp. 2023年10月28日閲覧。
- ^ IC CARD WORLD 2007にて展示、またホームページに事例掲載あり。