4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)
4,4'-メチレンビス (2-クロロアニリン)は化学式C13H12Cl2N2で表される有機化合物である。3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタンとも表記され、MOCA、あるいはMBOCAと略記される。
4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン) | |
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4-[(4-Amino-3-chlorophenyl)methyl]-2-chloroaniline | |
別称 3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン MOCA MBOCA | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 101-14-4 |
PubChem | 7543 |
ChemSpider | 7262 |
UNII | 3L2W5VTT2A |
KEGG | C10999 |
ChEMBL | CHEMBL82846 |
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特性 | |
化学式 | C13H12Cl2N2 |
モル質量 | 267.15 g mol−1 |
外観 | 薄い黄色の結晶または粉末[1] |
匂い | 軽いアミン臭[1] |
密度 | 1.44 g/cm3[2] |
融点 |
108 °C, 381 K, 226 °F [1] |
沸点 |
378.9℃ |
水への溶解度 | 13.9 mg/L(24℃)[3] |
有機溶媒への溶解度 | アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトンに易溶。ベンゼン、エタノール、トルエンに可溶[1] |
蒸気圧 | 0.00001 mmHg (20°C)[2] |
危険性 | |
主な危険性 | potential occupational carcinogen[2] |
NFPA 704 | |
引火点 | 203 °C (397 °F; 476 K) |
許容曝露限界 | none[2] |
半数致死量 LD50 | 640mg/kg(マウス、経口[1]) |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
安全性
編集本物質の製造に携わった労働者に発癌性、特に膀胱癌の症例が複数報告され[5]、2010年に国際がん研究機関は本物質をIARC発がん性リスク グループ1とした[6]。1976年に特定化学物質障害予防規則の特定第2類物質、特別管理物質に指定され、製造・取扱設備の密閉化または局所排気装置等の設置などの措置を必要とするとともに、作業記録および健康診断の結果を30年間保存することを義務付けている[6]。日本産業衛生学会は、1993年に本物質の許容濃度を0.005 mg/m3と定めた[6]。 2021年6月23日、厚生労働省は全国で初めてMOCAが原因で膀胱癌を発症したことによる労災認定を公表した[7]。
用途
編集防水材に使われるポリウレタンの硬化剤として利用される。2009年度の製造・輸入数量は2696トンであった[3]。本物質を含む硬化剤を必要としないポリウレタン塗膜防水材も開発されている[8]。
脚注
編集- ^ a b c d e 4,4'-メチレンビス (2-クロロアニリン)(東京化成工業)
- ^ a b c d NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0411
- ^ a b 3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン (PDF) (環境省)
- ^ a b 3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン(厚生労働省 職場のあんぜんサイト)
- ^ 「3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン」(PDF)『産業衛生学雑誌』第54巻、日本産業衛生学会、2012年。
- ^ a b c 化学物質「MOCA」について (PDF) (厚生労働省)
- ^ “モカで膀胱がん、労災認定 静岡県内で発症確認の2人も”. 朝日新聞デジタル (2021年6月24日). 2023年12月9日閲覧。
- ^ 『横浜ゴム、特定化学物質非該当のウレタン塗膜防水材「U-8000SF」を新発売』(プレスリリース)横浜ゴム、2013年12月16日 。2017年11月4日閲覧。