許宗萬
許 宗萬(ホ・ジョンマン、허종만、1935年2月22日[1] - )は、朝鮮民主主義人民共和国の政治家、実業家。最高人民会議代議員、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総連)議長。国交の存在しない日本において、事実上の「北朝鮮大使」とされている[2]。
許 宗萬 허종만 | |
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生年月日 | 1935年2月22日(89歳) |
出生地 |
日本統治下朝鮮 慶尚南道固城郡 |
出身校 | 東京朝鮮中高級学校 |
所属政党 | 朝鮮労働党 |
称号 | 金日成勲章、金正日勲章、共和国労働英雄称号、金メダル(鎌とハンマー)、国旗勲章第1級 |
最高人民会議代議員 | |
選挙区 | 明澗郡極洞労働者区選挙区 |
当選回数 | 4回 |
在任期間 | 2003年8月 - |
最高指導者 |
金正日(1994年 - 2011年) 金正恩(2011年 - ) |
その他の職歴 | |
第3代在日本朝鮮人総聯合会 中央常任委員会議長 (2012年5月19日 - ) |
許 宗萬 | |
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各種表記 | |
チョソングル: | 허종만 |
漢字: | 許宗萬 |
発音: | ホ・ジョンマン |
日本語読み: | きょそうまん |
ローマ字: | Hŏ Chongman |
英語表記: | Ho Jong Man |
経歴
編集日本統治時代の朝鮮慶尚南道固城郡で生まれる。来日後、特別永住資格を与えられ永住。
1955年、朝鮮総連の結成に関わり神奈川県本部委員長を務め、1959年に東京都本部委員長に就任。その後、中央本部国際局部長を経て1986年9月に中央委員会副議長となった[3]。同時期に朝銀信用組合に勤務し、人事権を掌握していた[4]。
1993年7月に中央委員会責任副議長に昇格[5]、実務を一手に担う。
2003年8月の北朝鮮最高人民会議第11期代議員選挙で当選し[6]、2009年3月の第12期代議員選挙でも再選した[7]。
2012年5月19日、2月に死去した徐萬述第2代朝鮮総連議長の後任として第3代朝鮮総連議長に選出された[5][8]。
2014年3月、最高人民会議第13期代議員選挙で再選され、5月には朝鮮総連議長に再任された[9]。
2015年3月26日、経済制裁により禁輸対象となっている北朝鮮産マツタケを不正輸入し逮捕された貿易会社社長の関連先として、南昇祐副議長と共に自宅が家宅捜索された[10]。4月9日に北朝鮮で最高人民会議が開催されるが出席を見送り、朝鮮総連からは南が出席した[11]。
2019年3月の最高人民会議第14期代議員選挙において、極洞選挙区(咸鏡北道明澗郡)から再選された[12]。
2020年2月14日付の労働新聞で、国旗勲章1級と労力英雄称号を、三代の指導者に「絶対的な忠誠心を持って主体革命偉業と総連愛国偉業の遂行に大きく寄与した」として授与したと発表[13]。
活動
編集- 2014年7月、北朝鮮による日本人拉致問題の再調査合意により、2006年以来実施されている訪朝後の再入国禁止措置が解除されることを見込み訪朝を計画するが、朝鮮総連本部ビル売却問題に関連し、売却阻止のため1億円の供託金を出費したため、金正恩第一書記への上納金が集金出来なかったとして断念した[16]。9月から10月にかけて訪朝が実現し、北朝鮮建国66周年中央報告大会に出席[17]。訪朝中は金永南最高人民会議常任委員会委員長と会談し運営方針について協議したが、希望していた金正恩との会談は実現しなかった[18][19][20]。また、7月には許に副議長を解任された高徳羽西東京本部委員長が、許よりも先に訪朝し朝鮮労働党幹部と会談しており、許の影響力低下が指摘された[21]。
- 朝鮮総連本部ビル売却問題ではビル退去を防ぐために、在日韓国・朝鮮人資産家から数億円の資金を集め[22]、朝鮮総連の1998年の国会議員当選時代から付き合いのある山内俊夫元参議院議員と協力したり、マルナカホールディングスへの働きかけを行った[23]。働きかけにより、2015年3月、マルナカホールディングスから本部ビルの土地を転売された山形県の企業グリーンフォーリストとの間に賃貸契約を結び退去を免れた[24][25]。
人物
編集- 東京朝鮮中高級学校在学中はサッカー部に所属しており、第33回全国高等学校サッカー選手権大会ではウイングとして出場した[4]。
- 高い集金能力を北朝鮮に評価され最高幹部に上り詰めたと言われており[2]、その手腕から「北の集金マシン」と呼ばれている[4]。ただし、集金については強引な方法を用いることが多く、在日朝鮮人の朝鮮総連離れを引き起こしていたため、議長就任が検討される度に反対に遭い、徐萬述が死去するまで就任出来なかったという[26]。また、多額の送金を実施したことで金正日の信頼を得た反面、朝銀信用組合を破綻させている[27]。そのため、朝鮮総連幹部からは「独断専行型で人望は皆無」と評されている[4]。また、幹部に昇進してからは日本政界との交渉役を担当し、強固な人脈を築いたとされている[4]。
- 2011年の金正日の死に際し、再入国禁止措置のため葬儀を欠席。そのため北朝鮮内の序列が下げられた[28]が、朝鮮総連本部ビルの退去を回避したことから金正恩の信頼を回復したと見られる[29]。
- 息子が2人おり、長男は中央本部組織局第2部副局長として人事を統括し、次男は東京都支部副委員長を務めている[30]。また、次男はマツタケの不正輸入を行った貿易会社の役員を兼務しており、その肩書を利用して北朝鮮に渡航し、上納金の送金や労働党幹部との連絡役を務めていた[31]が、2015年5月12日にマツタケの不正輸入を行った容疑で逮捕された[32]。同年12月に懲役1年8ヶ月、執行猶予4年(求刑・懲役2年)の判決が言い渡された[33]。
脚注
編集- ^ “金正恩氏が総連議長に誕生日の祝電 「異例ずくめ」で親密ぶりアピール”. デイリーNKジャパン. (2015年2月23日) 2015年3月27日閲覧。
- ^ a b “北の“集金マシン”許宗萬体制に捜査のメス 拉致再調査に「圧力」”. 産経ニュース. (2015年3月26日) 2015年3月27日閲覧。
- ^ “有力者「許議長」、昨年9月には約8年ぶり平壌訪問も”. 産経ニュース. (2015年3月26日) 2015年3月27日閲覧。
- ^ a b c d e “「マツタケ不正輸入」で注目の朝鮮総連議長、実は全国高校サッカーの元スター選手”. デイリーNKジャパン. (2015年3月26日) 2015年3月27日閲覧。
- ^ a b “朝鮮総連新議長に許宗萬氏 01年以来の選出”. 47NEWS (47NEWS). (2012年5月19日). オリジナルの2015年7月23日時点におけるアーカイブ。
- ^ “金総書記100%賛成で当選 代議員数は687人”. 47NEWS. (2003年8月4日) 2015年3月27日閲覧。
- ^ “在日同胞6人も選出”. 朝鮮新報. (2009年3月11日)
- ^ “朝鮮総連新議長に許宗萬氏”. 産経ニュース. (2012年5月19日)[リンク切れ]
- ^ “許宗萬氏を議長に再任し閉幕 朝鮮総連全体大会”. 産経ニュース. (2014年5月25日) 2015年3月27日閲覧。
- ^ “朝鮮総連議長宅を捜索 マツタケ不正輸入の関連先”. 日本経済新聞. (2015年3月26日) 2015年3月27日閲覧。
- ^ “総連副議長が訪朝、最高人民会議に出席”. 日本経済新聞. (2015年4月8日) 2015年4月15日閲覧。
- ^ “북 김정은, 최고인민회의 대의원 처음 빠져 - 통일뉴스” (朝鮮語). www.tongilnews.com. 2019年4月11日閲覧。
- ^ “허종만동지에게 조선민주주의인민공화국 로력영웅칭호를 수여함에 대하여”. 労働新聞. (2020年2月14日) 2020年2月27日閲覧。
- ^ http://japan.hani.co.kr/arti/politics/20760.html
- ^ “北、総連に戦時態勢指示 3月 韓国内乱陰謀と同時期”. 産経ニュース. (2013年10月3日) 2015年3月27日閲覧。
- ^ “朝鮮総連議長、訪朝見合わせ 資金不足影響か 金日成20周年命日”. 産経ニュース. (2014年7月8日) 2015年3月27日閲覧。
- ^ “北朝鮮、建国66周年で大会”. 日本経済新聞. (2014年9月9日) 2015年3月27日閲覧。
- ^ “金永南委員長と会談 訪朝の朝鮮総連議長”. 産経ニュース. (2014年9月17日) 2015年3月27日閲覧。
- ^ “金正恩氏との会談実現せず 訪朝の朝鮮総連議長”. 産経ニュース. (2014年10月13日) 2015年3月27日閲覧。
- ^ “北朝鮮の金づるも今は昔、苦境に陥る朝鮮総連に金正恩氏が感じている不安 朝鮮総連の第25回全体大会に送った長文書簡のその中身 | JBpress (ジェイビープレス)”. JBpress(日本ビジネスプレス). 2022年6月6日閲覧。
- ^ “朝鮮総連の若手実力者が訪朝 制裁解除受け 許宗萬議長より先んじ、権力構造に変化か”. 産経ニュース. (2014年7月31日) 2015年3月27日閲覧。
- ^ “総連関連会社が50億円抵当権、本部を実質“買い戻し”の動き 都内の拠点売却も”. 産経ニュース. (2015年2月4日) 2015年3月29日閲覧。
- ^ “「迂回転売」で維持画策 “ダミー”業者利用、マルナカに接触…600億円債権回収骨抜き”. 産経ニュース. (2015年1月13日) 2015年3月27日閲覧。
- ^ “朝鮮総連ビル購入は酒田市の謎の零細企業 44億円どこから調達、総連との関係は?”. J-CASTニュース. (2015年2月2日) 2022年3月25日閲覧。
- ^ “「総連は責任果たした」「通常の範囲で(手数料)受け取った」仲介の山内俊夫元参院議員”. 産経ニュース (産経新聞社). (2015年1月29日) 2015年2月16日閲覧。
- ^ “朝鮮総連議長の徐萬述氏が死去”. デイリーNKジャパン. (2012年2月20日) 2015年3月29日閲覧。
- ^ “【朝鮮総連トップ次男逮捕】拉致再調査中断示唆した非難の裏に「秘められた」“アキレス腱””. 産経ニュース. (2015年5月12日) 2015年5月12日閲覧。
- ^ “「祖国が変わった」総連議長 不満吐露”. デイリーNKジャパン. (2014年12月11日) 2015年3月29日閲覧。
- ^ “総連本部ビル維持成功に正恩氏が論功行賞? 労働新聞に許宗萬議長の特大記事”. デイリーNKジャパン. (2014年2月17日) 2015年3月29日閲覧。
- ^ “長男は“裏”人事、次男は秘密資金運用…北朝鮮模した許氏一家「支配」、捜査が直撃”. 産経ニュース. (2015年3月29日) 2015年3月29日閲覧。
- ^ “総連トップ次男、正恩政権「密使」 本国送金・秘密資金運用も担う”. 産経ニュース. (2015年3月29日) 2015年3月29日閲覧。
- ^ “マツタケ不正輸入に関与、朝鮮総連トップ次男ら逮捕「不当逮捕なので一切協力しない」”. 産経ニュース. (2015年5月12日) 2019年3月29日閲覧。
- ^ “マツタケ不正輸入 朝鮮総連議長の次男らに有罪判決”. 毎日新聞. (2015年12月10日) 2019年3月29日閲覧。
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