チョウマメ

マメ科の植物
蝶豆から転送)

チョウマメ蝶豆、学名:Clitoria ternatea)は、マメ科クリトリア属(チョウマメ属)の多年生の蔓性(巻きつき性)草本である[1]。一重のほかに八重咲き,白色,橙赤色などの園芸品種がある[2]

チョウマメ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: マメ目 Fabales
: マメ科 Fabaceae
: チョウマメ属 Clitoria
: チョウマメ C. ternatea
学名
Clitoria ternatea L.
和名
チョウマメ、蝶豆
英名
butterfly pea
pigeon-wings

多年草だが、冬までに寒さで枯れてしまうことがあり、一年草として扱うことが多い。タイではอัญชัน (アンチャン)と呼ばれるほか、英語圏ではバタフライピー(Butterfly pea)と呼ばれている。葉は飼料、未熟豆は食用に使われることが多い。ちなみに草の部分(お湯やライムで青く染まりやすい部分)は基本的には食べても問題はない。

特徴

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青色を発色するデルフィニジン系色素の一種であるテルナチンが含まれており[3]、チョウマメの花の搾り汁によって、お菓子などの染料として使用することが多い。チョウマメの抽出液は鮮やかな青色をしている。バタフライピー抽出液にライムレモンをいれると、紫色に変化する特徴がある[4]

色素

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バタフライピーの青色は鮮やかで安定なため、古くから食品に色付けに使用されてきた。[5] この青色の色素はバタフライピーに特有のアントシアニンである「テルナチン」である。

テルナチンは、基本骨格のアグリコンであるデルフィニジンの3位にグルコースマロン酸が結合する形を基本とし、そこからさらにB-環の3’位と5’位にグルコースとクマル酸が交互に結合して側鎖を形成する[6]。これら側鎖の組み合わせにより現在ではA1、A2、A3、B1、B2、B3、B4、C1、C2、C3、C4、C5、D1、D2、D3の計15の類縁体が同定されている。[7]

一般的にアントシアニン色素は安定性が低いのに対してテルナチンは非常に高い安定性を示すことが知られている。この理由の1つは、水溶液中ではテルナチンの側鎖が折りたたまれ、側鎖のクマル酸とアグリコンであるデルフィニジン母核部分が疎水性相互作用により重なり合う(共着色、Copigmentation)ことで2位の炭素が水和されることを防いでいるためであり、クマル酸が多いほど安定性が高いことを分かっている。[8]

バタフライピーはpHによってピンク、紫、青、緑と色が変わることで有名であるが、これはアントシアニンがpH1-3では赤色のフラヴィリウムカチオン型、pH4-5では無色のプソイド塩基型、pH6-7では青色のキノイダル塩基型、pH8-9では黄色のカルコン型というように、pHの変化に応じて可逆的に形態を変えることが要因である。[9]

尚、テルナチンのアグリコンであるデルフィニジンはアントシアニジンの中でもっとも青色に近い色合いであることもテルナチンの鮮やかな青色に寄与していると考えられる。これに加えて、テルナチンのB-環の3’位と5’位に複数の有機酸が結合すること(ポリアシル化)、他のフライボノイドや金属イオンとの錯体形成などがテルナチンの青色発色に寄与している考えられている。[10]

他には、中性において砂糖の添加することで加熱による溶液中での水分子の振動抑制[9]やアントシアニジンと類似の平面構造をもつカテキンとの分子間コピグメンテーション[11]などもテルナチンの安定性向上に繋がる。

東洋インキ製造株式会社(現トーヨーケム株式会社)によると、バタフライピーの乾燥花弁あるいは生花弁から水またはエタノールで抽出された色素について20,000ルクスで48時間の耐光性試験、80℃で120分間の耐熱性試験を実施した結果、いずれの試験の終了時においてもバタフライピー色素は90%以上の残存率となり、他の市販アントシアニン色素(アカキャベツ、ムラサキイモ、赤シソ、赤ダイコン、エルダーベリー、ブドウ果皮、ブドウ果汁、ハイビスカス)と比較して安定性に優れていた。[12]

バタフライピー花弁から色素(テルナチン)の最適な抽出条件として、溶媒は水もしくアルコールもしくはそれらの混合物(アルコール100%では抽出負荷)、 溶媒温度は80℃、(溶媒にアルコールを含む場合は77℃以下)、抽出時間は60分(60分以下では抽出が足りず、60分以上ではテルナチンの劣化が起きる)、抽出可能固形分と抽出溶媒の比率は1g/20ml(抽出溶媒の比率をこれ以上上げても抽出量は増えない)と紹介されている。[13]

日本アドバンストアグリ株式会社が提供するバタフライピーエキスパウダーについても、80℃の耐熱性試験で3時間後の色素残存率は約90%、3,500ルクスの耐光性試験で15日間の色素残存率は約80%と、高い安定性を示した。[14]

ギャラリー

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脚注

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  1. ^ 『世界有用マメ科植物ハンドブック, 雑豆輸入基金協会, 1986.6 pp86-88』雑豆輸入基金協会、6月、86-88頁。 
  2. ^ チョウマメ | 熊本大学薬学部薬用植物園 薬草データベース”. www.pharm.kumamoto-u.ac.jp. 2023年12月15日閲覧。
  3. ^ バタフライピーによる美容・健康効果”. molfon. 2021年1月27日閲覧。
  4. ^ バタフライピーへの圧倒的なこだわり - 日本初バタフライピー専門ブランドmolfon”. molfon. 2021年1月27日閲覧。
  5. ^ Mukherjee et al. The Ayurvedic medicine Clitoria ternatea—From traditional use to scientific assessment.. Journal of Ethnopharmacology. (2008). pp. 120:291-301 
  6. ^ 『寺島ら チョウマメ色素の構造について.天然有機化合物討論会講演要旨集 31巻』天然有機化合物討論会実行委員会、1989年。 
  7. ^ Terahara et al. (1998). “Eight New Anthocyanins, Ternatins C1−C5 and D3 and Preternatins A3 and C4 from Young Clitoria ternatea Flowers.”. J. Nat. Prod.: 61(11) 1361–1367. 
  8. ^ 寺原・西山 (2000). “チョウマメ花アントシアニン色素の抗酸化活性に関する研究.”. 浦上財団研究報告書. Vol.8.: 17-27. 
  9. ^ a b Chu et al. (2016). “Effect of Sucrose on Thermal and pH Stability of Clitoria ternatea Extract.”. International Journal of Food Processing Technology 3: 11-17. 
  10. ^ 「デルフィニジンによる青色花色」.”. 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構. 2023年12月15日閲覧。
  11. ^ Charurungsipong et al. (2020). “Improvement of Anthocyanin Stability in Butterfly Pea Flower Extract by Co-pigmentation with Catechin.”. E3S Web of Conferences: 141, 03008 RI²C 2019. 
  12. ^ 『チョウマメ花エキスの紹介.別冊フードケミカル10』食品化学新聞社、2008年、152-155頁。 
  13. ^ Makasana et al. (2017). “Extractive determination of bioactive flavonoids from butterfly pea (Clitoria ternatea Linn.)”. Research on Chemical Intermediates: 43:783–799.. 
  14. ^ 『食品化学新聞.2020.06.11号.日本アドバンストアグリ 新規天然青色素バタフライピー 話題高まるナチュラルブルー』食品化学新聞社、6月。 

外部リンク

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