福翁自伝』(ふくおうじでん、旧字体福󠄁翁󠄂自傳)は、幕末維新明治洋学者教育者である福澤諭吉晩年の口語文体による自叙伝である。

福翁自伝
福󠄁翁󠄂自傳
著者 福澤諭吉
発行日 1899年6月15日
発行元 時事新報社
ジャンル 自伝
日本の旗 日本
形態 並製本上製本など
ページ数 549
コード ISBN 978-4-00-331022-9
ISBN 4-7664-0888-8
ISBN 978-4-7664-1626-8
ISBN 978-4-00-240210-9
ISBN 978-4-06-291982-1 など
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1898年(明治31年)7月1日から1899年(明治32年)2月16日まで計67回にわたって「時事新報」に掲載された。単行本は1899年(明治32年)6月15日に刊行。

福澤自身の人柄が判るだけでなく、幕末から維新にかけての動乱期に、近代思想の先駆者として日本を大きく導いた当事者による自叙伝は、日本近代史の重要な文献でもある。「門閥制度は親のかたき」[1]等の有名な言葉もこの自伝からである。

成立

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西洋では学者の多くが自叙伝を著すことから、慶應義塾関係者は福澤に自伝を書くよう勧めていたが、多忙を極め一向に執筆にかかれないでいた[2]。そんな中、ある外国人から幕末維新前後の体験談に関するインタビューを受け、口述筆記という方法を思い立ったのがきっかけである[2]。福澤諭吉が口述した内容を、矢野由次郎(時事新報記者)が速記し、その原稿に福澤自身の手で推敲加筆するという形で書かれた[3]1948年(昭和23年)に速記原稿が発見され、小見出しが付けられている[3]

また福澤が、個人的にも尊敬していた18世紀アメリカ政治家・著述家だったベンジャミン・フランクリン(「フランクリン自伝」)に、大きく習ったものともされる[誰によって?]オーラル・ヒストリーの出発点となる書とも位置付けられている[4]

差別表現問題

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本書における

「そんなけだから塾中の書生に身なりの立派な者はず少ない。そのくせ市中の縁日などえば夜分屹度きっと出て行く。行くと往来の群集、就中なかんずく娘の子などは、アレ書生が来たと云て脇の方にけるその様子は、何か穢多でも出て来てれをきたながるようだ。如何どう仕方しかたがない。往来の人から見て豚を殺す穢多のように思うはずだ」[5]

との記述が問題視され、「穢多」の語が「ゝゝ」と伏字に置き換えられたり「えた」と平仮名表記に改竄されたりしたことがある[6][7]

この点について、本書の校注者の会田倉吉は「本書中には、差別用語として使用を当然さしひかえるべき表現が、数か所にわたって見うけられる。(略)その福沢にして、いかにも無造作にこのような表現を用いている事実は、その生きた時代をしかと知るうえになんらかの示唆を与えることと思われる」と述べ、本文中の差別表現を敢えて原文のままとした[8]

構成

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  1. 幼少の時
  2. 長崎遊学
  3. 大阪修行
  4. 緒方
  5. 大阪を去って江戸に行く
  6. はじめてアメリカに渡る
  7. ヨーロッパ各国に行く
  8. 攘夷論
  9. 再度米国行
  10. 王政維新
  11. 暗殺の心配
  12. 雑記
  13. 一身一家経済の由来
  14. 品行家風
  15. 老余の半生

書誌情報

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現代語訳

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翻訳

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  • The Autobiography of Yukichi Fukuzawa. NY: Columbia University Press, 1966. Revised translation by Eiichi Kiyooka, with a foreword by Carmen Blacker.(英語版)
  • The Autobiography of Yukichi Fukuzawa. (Paperback) Columbia University Press, 2007. Revised translation by Eiichi Kiyooka, with a foreword by Albert Craig. ISBN 0-2311-3987-X (英語版)
  • la vie du vieux FUKUZAWA racontée par lui-même, Albin Michel, 2007, Marie-Françoise Tellier (Traduction). ISBN 978-2226171092フランス語版)
  • 후쿠자와 유키치 자서전, 허호 옮김, 이산 펴냄, 2006年3月 ISBN 8987608530韓国語版)
  • 福泽谕吉自传马斌译商务印书馆,1980年,ISBN 7100014220中国語版)
  • 福泽谕吉自传:改造日本的启蒙大师杨永良文汇出版社,2012年3月1日,ISBN 9787549603909中国語版)

脚注

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  1. ^ 富田正文校訂 『新訂 福翁自伝』、岩波書店岩波文庫〉、1978年、ISBN 4-00-331022-5 の「幼少の時」の章にある「門閥制度は親の敵」(14頁)を参照。近代デジタルライブラリーに収録。外部リンクの『福翁自伝』の「幼少の時」の章(10頁)を参照。
  2. ^ a b 『福翁自伝』初版序
  3. ^ a b 『福翁自伝』富田正文解説
  4. ^ 小林多寿子「『福翁自伝』におけるオーラリティと多声性」福沢研究センター通信第16号
  5. ^ 福翁自傳 百二十頁
  6. ^ 部落問題研究所『表現の自由と「差別用語」』(部落問題研究所出版部, 1985)p.150
  7. ^ 『差別表現と糾弾』(解放出版社, 1988)p.210
  8. ^ 1953年版『福翁自伝』校注者はしがき。

関連文献

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関連項目

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外部リンク

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