石塚 真一(いしづか しんいち、1971年 - )は、日本漫画家茨城県常総市出身で、2002年にデビュー。主な作品に山岳救助を主題とした『岳 みんなの山』やジャズを主題とした『BLUE GIANT』がある。

石塚 真一
生誕 1971年
日本の旗 日本茨城県、現常総市
職業 漫画家
活動期間 2002年 -
ジャンル 青年漫画
代表作
受賞
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来歴

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筑波山頂よりの眺望

石塚真一は1971年茨城県、現在の常総市で生まれた[1][2]。祖父は木彫り彫刻師、母は美術教師であった[3]。初めて登った山は筑波山であるという[2]。中学校ではブラスバンド部に所属[4]、高校(京華高等学校)時代はなにも目標がなかったと述懐している[2][5]南イリノイ大学新潟校に進学し、22歳のときにアメリカの本校に渡った[4][6]。ジャズに出会ったのはブルース・バンドでギターを弾いていた20歳のころであるという[7]。その後山に魅せられ、気象学を専攻するため[注 1]カリフォルニアサンノゼ州立大学に転籍[6][1]。渡米中にルームメイトの誘いをきっかけにロック・クライミングも始めている[2]。27歳のころに帰国[注 2][4]、アメリカ時代の知人の経営する輸入商社に就職したが、その会社は半年ほどで倒産してしまった[3]

石塚は元々本格的に漫画を描いた経験はなかったが、30歳になるまでにやり残しのないように勝負したいとの思いから、28歳のころに漫画家を目指し始め、2001年の第49回小学館新人コミック大賞一般部門に応募し、『This First Step』で入選を果たした[8][3][9]。翌2002年に『ビッグコミックオリジナル増刊』に掲載されデビュー作となった同作について[9]、当時の担当編集者の勝木大[注 3]は、冴えない中年男性がほかの人物と不倫をしている女性会社員に恋をするというストーリーでありながら、ドロドロした感じはなくて、とても爽やかな話で、話の創り方が、普通じゃない感じでありながらキッチリまとまっていたと述べ、一方画力については発展途上であったと語っている[10]。受賞後は、漫画の描き方の本を買ったり、仕事の後に小学館に足を運ぶなど、漫画を一から勉強し[11]、半年ほどアシスタントも経験した[10]

2003年から2012年にかけて『ビッグコミックオリジナル増刊[注 4]にて山岳救助を主題とした『岳 みんなの山』を連載[12][13]。同作は2011年に実写映画化され、2009年の第54回小学館漫画賞一般向け部門、2012年の第16回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞などを受賞している[12][4][8]。2013年から2016年にかけて『ビッグコミック』にてジャズを主題とする『BLUE GIANT』を連載[4][6]。同作では第62回小学館漫画賞一般向け部門、マンガ大賞2016第3位、第20回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞などを受賞している[4][14]。日本編である『BLUE GIANT』(通称「無印」)の終了後、ヨーロッパ編である『BLUE GIANT SUPREME』(2016年 - 2020年)、アメリカ編である『BLUE GIANT EXPLORER』(2020年 - )を同誌において連載している[15][4]

作風

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石塚自身によると、アメリカに留学をしていた時代の友人が浦沢直樹の『MASTERキートン』の影響でアメリカの大学まで考古学の勉強をしに来ていたことに大きな衝撃を受け、自身もいつか漫画で誰かにここまで大きな影響を与えたいと考えるようになる。29歳のころに参考にしていたのは弘兼憲史の作品であり、現在も参考にしている[9]。また、大勢の観客がいるシーンを描くときとは、ちばてつやの『のたり松太郎』を見て奮起すると語っている[16][17]。そのほか、ちばてつや北見けんいちやまさき十三も影響を受けた漫画家として挙げている[17]

勝木大[注 3]は、石塚の人間に対する眼差しとても優しいと述べており[10]、石塚本人は、事件性よりも “人と人の関係性” に惹かれ……、市井のひとびとの物語を描いていくということに向き合っていきたいと語っている[9]

人物

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グランド・ティトン
J・レッドマン
人物評
勝木大[注 3]は石塚の印象について、いつも明るくて、辛いとか言わないといった点において、『岳 みんなの山』の主人公である島崎三歩と似た印象の人物であると語っている[10]
ジャズ関連
好きなジャズ・アルバムとしてはジョン・コルトレーンブルー・トレイン』、ジョシュア・レッドマンパッセージ・オブ・タイム英語版』、ロイ・ハーグローヴ『イヤーフードEarfood』などを[18]、とくに好きな曲としては、ハンク・モブレーの「リメンバー英語版」(『ソウル・ステーション』)を挙げている[19]

作品リスト

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※出版社は特記のない限り小学館

連載作品
  • 岳 みんなの山(『ビッグコミックオリジナル増刊』『ビッグコミックオリジナル』、2003年 - 2012年、単行本全18巻)
  • そんでよし!(『ビッグコミックオリジナル増刊』、2009年 - )
    • 単行本:『そんでよし!』 1巻〈BIG COMICS〉、2011年。ISBN 978-4-09-183820-9 
  • BLUE GIANT(『ビッグコミック』、2013年 - 2016年、単行本全10巻)
    • BLUE GIANT SUPREME(『ビッグコミック』、2016年 - 2020年、単行本全11巻)
    • BLUE GIANT EXPLORER(story director:NUMBER 8、『ビッグコミック』、2020年[20] - 2023年[21]、単行本全9巻)
    • BLUE GIANT MOMENTUM(『ビッグコミック』、2023年[22] - 連載中、既刊3巻[注 5]
  • 北狼 ラストハンター(『ビッグコミックオリジナル』、2013年 - )
読み切り作品
  • 50 YEARS LATER(story:NUMBER 8、『ビッグコミックオリジナル』2024年13号[23]
短編集
  • 『TOKYO CHECK IN[東京チェックイン]』〈BIG COMICS SPECIAL〉2009年。ISBN 978-4-09-182458-5 
収録作品
    • 「そんでよし!」(読み切り版)「東京チェックイン」「This First Step」[24][25]
アートワーク


絵画

『沸き立つ音』(2024年)-BLUE GIANT 主人公 宮本大をモチーフにした絵画(F40サイズ)を「24時間テレビ-チャリティーオークション」のために書き下ろし[27]

TV出演等

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脚注

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  1. ^ NEWSポストセブン (2017, p. 2) において、高地気象を勉強しておけば、国のお金でヒマラヤに行けるんじゃないかと思ったと語っている。
  2. ^ KOBEjazz.jp (2016) において、アメリカから誰かに伝えたいこと、人の心を動かせるなにかとして持ち帰ったものが、クライミングとジャズであると語っている。
  3. ^ a b c 『岳 みんなの山』第2集途中までの担当編集者[10]
  4. ^ 後に『『ビッグコミックオリジナル』に移動[10]
  5. ^ 2024年10月現在

出典

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  1. ^ a b 茨城県教育委員会 2016.
  2. ^ a b c d TVでた蔵 2012.
  3. ^ a b c NEWSポストセブン 2017, p. 2.
  4. ^ a b c d e f g 小学館, BLUE GIANT EXPLORER.
  5. ^ 京華中学高等学校 2011.
  6. ^ a b c NEWSポストセブン 2017, p. 1.
  7. ^ KOBEjazz.jp 2016.
  8. ^ a b マンガペディア.
  9. ^ a b c d TOKION 2021.
  10. ^ a b c d e f eBigComic4 2016.
  11. ^ 文春オンライン 2021b, p. 1.
  12. ^ a b 小学館集英社プロダクション.
  13. ^ NEWSポストセブン 2017, p. 3.
  14. ^ NEWSポストセブン 2017, p. 4.
  15. ^ 文春オンライン 2021a, p. 1.
  16. ^ 文春オンライン 2021a, p. 3.
  17. ^ a b マンバ通信 2021.
  18. ^ mora 2017.
  19. ^ Sony 2017.
  20. ^ “宮本大、次なる地はアメリカ!「BLUE GIANT」新シリーズがビッグコミックで開幕”. コミックナタリー (ナターシャ). (2020年5月25日). https://natalie.mu/comic/news/380367 2023年5月10日閲覧。 
  21. ^ 「BLUE GIANT EXPLORER 第72話」『ビッグコミック』2023年10号、小学館、2023年5月10日、159頁、ASIN B00CU7JAT8 
  22. ^ 「BLUE GIANT」ジャズの聖地・ニューヨーク編、ビッグコミックで開幕”. コミックナタリー. ナターシャ (2023年7月25日). 2023年7月25日閲覧。
  23. ^ 「BLUE GIANT」の石塚真一×NUMBER 8が描くSF読み切り、BCオリジナルに登場”. コミックナタリー. ナターシャ (2024年6月20日). 2024年6月20日閲覧。
  24. ^ 小学館, TOKYO CHECK IN.
  25. ^ ナタリー 2009.
  26. ^ ナタリー 2017.
  27. ^ 日本テレビ放送網株式会社. “24時間テレビ”. 日本テレビ. 2024年9月1日閲覧。

参考資料

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インタビュー記事
その他