瘋癲老人日記
『瘋癲老人日記』(ふうてんろうじんにっき)は、谷崎潤一郎の長編小説。息子の嫁に性欲を覚える不能老人の性倒錯(脚フェティシズム)が身辺雑記の日記形式で綴られた作品[1]。
瘋癲老人日記 | |
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訳題 | Diary of a Mad Old Man |
作者 | 谷崎潤一郎 |
国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
ジャンル | 長編小説 |
発表形態 | 雑誌連載 |
初出情報 | |
初出 | 『中央公論』1961年11月号-1962年5月号 |
刊本情報 | |
出版元 | 中央公論社 |
出版年月日 | 1962年5月 |
装幀 | 棟方志功(挿絵と兼務) |
id | NCID BN0933809X |
受賞 | |
毎日芸術賞大賞 | |
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『中央公論』1961年(昭和36年)11月から1962年(昭和37年)5月まで連載。1962年(昭和37年)5月に中央公論社から刊行され、毎日芸術賞大賞を受賞した、谷崎晩年の代表作。単行本は棟方志功の装幀。
梗概
編集77歳の老人・卯木督助のかたかな書きの日記の体裁をとっており、歌舞伎の「助六」を観に行く場面から始まる。督助は息子の妻の颯子に性的魅力を感じているが、颯子は夫のいとこの春久と遊びまわっている。督助は颯子の足に踏まれたいというフット・フェティシズムとマゾヒズムの欲望を抱いており、颯子に猫目石を買ってやり、その代償のように颯子の足に頬ずりし、その足の型で仏足石を作るが、血圧が高くなり入院する。最後は周囲の人々による手記でしめくくられる。
老人の日記は歴史的かなづかい、看護婦の手記は新かなづかいと、書き分けられている(新潮文庫版および旧版の中公文庫版ではいずれも新かなづかいにされている)。
老人の性を描いたものとして、『鍵』、および川端康成『眠れる美女』と併称される。のち、谷崎の最後の妻谷崎松子の連れ子である渡辺清治の妻・渡辺千萬子との往復書簡が公開され、千萬子が颯子のモデルであることがはっきりし、また当時の谷崎の生活をかなりそのまま用いており、看護婦の手記も実際にあったものであることが分かった。
登場人物
編集- 卯木督助(うつぎ とくすけ)
- 本作の主人公。明治16年生まれの77歳。颯子の脚に魅了される。
- 卯木颯子(さつこ)
- 浄吉の妻。N・D・Tの踊り子出身。家の家計を見ている。
- 卯木浄吉
- 督助の息子。颯子との間に7歳になる経助という息子がいる。
- 婆さん
- 督助の妻。映画版では「はま」という名前が付いている。
- 陸子(くがこ)
- 督助の娘。辻堂在住。三人の子供がいる。
- 城山五子(いつこ)
- 督助の娘。京都在住。二人の子供がいる未亡人。
- 佐々木
- 住み込みの看護婦。
- 春久
- 督助の甥。颯子と仲が良い。
刊本
編集翻訳
編集映画化
編集- 1987年 『nl:Dagboek van een oude dwaas』 オランダ映画、監督:Lili Rademakers
脚注
編集参考文献
編集- 谷崎潤一郎『鍵・瘋癲老人日記』(改)新潮文庫、2001年6月。ISBN 978-4-10-100515-7。 初版1968年10月
- 谷崎潤一郎; 渡辺千萬子『谷崎潤一郎=渡辺千萬子往復書簡』中公文庫、2006年1月。ISBN 978-4122046344。 ハードカバー版(中央公論新社)は2001年2月
- 伊吹和子『われよりほかに――谷崎潤一郎最後の十二年』講談社文芸文庫、2001年10月。ISBN 978-4061982789。 ハードカバー版(講談社)は1994年2月
- 笠原伸夫 編『新潮日本文学アルバム7 谷崎潤一郎』新潮社、1985年1月。ISBN 978-4-10-620607-8。
- 『文藝別冊 谷崎潤一郎――没後五十年、文学の奇蹟』河出書房新社〈KAWADE夢ムック〉、2015年2月。ISBN 978-4309978550。