生命大躍進
『生命大躍進』(せいめいだいやくしん)は、2015年5月から7月にかけてNHKスペシャル枠で放送されたドキュメンタリー番組。全3回。本作では、化石記録を軸に制作されていた過去の古生物番組から脱却し、むしろ生物の持つDNAに着目して遺伝情報の突然変異の観点から生物史を解説している。出演(ナビゲーター)は新垣結衣が一人二役で行った[2]。
生命大躍進 | |
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ジャンル | ドキュメンタリー |
ディレクター | 植田和貴 |
ナレーター |
伊藤雄彦 久保田祐佳 |
音楽 | 横山克 |
国・地域 | 日本 |
言語 | 日本語 |
話数 | 3 |
製作 | |
制作統括 | 北野和弘[1] |
制作 | NHKスペシャル「生命大躍進」制作班 |
放送 | |
放送局 | NHK |
放送国・地域 | 日本 |
放送期間 | 2015年5月10日 - 7月5日 |
NHK放送史 | |
第1集 そして"目"が生まれた | |
放送期間 | 2015年5月10日 |
放送時間 | 日曜21:00 - 21:58 |
放送枠 | NHKスペシャル |
放送分 | 58分 |
第2集 こうして"母の愛"が生まれた | |
放送期間 | 2015年6月7日 |
放送時間 | 日曜21:00 - 21:49 |
放送枠 | NHKスペシャル |
放送分 | 49分 |
第3集 ついに"知性"が生まれた | |
放送期間 | 2015年7月5日 |
放送時間 | 日曜21:00 - 21:49 |
放送枠 | NHKスペシャル |
放送分 | 49分 |
同年および2016年には関連する特別展『生命大躍進 脊椎動物のたどった道』が日本各地で開催された。また、関連するアニメ『ピカイア!』もEテレで放送された[3]。
内容
編集製作
編集日本でラジオ放送が開始されて2015年で90周年を迎えることに合わせ、90周年記念番組として高精細映像で製作されている[6]。ナビゲーターの新垣結衣は本作で一人二役を担当してナビゲーターを務めた。これは難解なDNAというテーマを噛み砕いて視聴者に伝えるための工夫であり、2人のキャラクターは"進化に詳しい姉"と"あまり興味のない妹"という立ち位置にある[2]。演じる新垣結衣はヒョウモントカゲモドキを飼育していることもあり、番組の冒頭に登場する両生類に親しみを抱いたという[7]。
第1回ではDNA研究者に対し目の誕生に迫る取材が行われたが、DNAのみからでは当時の祖先の姿が判明しなかったため、その点に関しては化石研究者の助言を受けて推測されている[2]。カナダのロッキー山脈でも取材が行われたが、1年間に2ヶ月しか発掘が行えず、さらに標高2000メートルという天候の急変しやすい場所であったため、撮影は研究者の邪魔をせずかつ確実に行うというジレンマの状況にあった[1]。
DNAや生命の繋がりを感じられるよう、番組のロゴにはDNAや生命の連続を賛美するイメージが加えられた。登場する生物はアノマロカリスやオパビニアといった子どもに魅力的な外見の生物が採用された。アノマロカリスのCGデザインは20枚製作され、専門家からの指示を何度も受けて劇中のCGデザインに至った。1年以上に及ぶ製作期間を経て、オパビニアにオパピーという愛称がつくなど、スタッフには生物に対する愛着が湧いたという[1]。古生物の居る風景にリアリティを持たせるため、撮影は実写で行われた。両生類が上陸するシーンは鹿児島県薩摩川内市の上甑島で、ヤンチュアノサウルスが剣竜を襲うシーンは北アメリカの針葉樹林で撮影された。また、音響効果にはアナログ的な手法が採用された。ウミサソリのシーンはカニを市場で購入して擦り合わせる・毟るなどして音を立て、6ミリテープの可変機で音の高さや回転数を変化させてCGに合う音が生み出された[1]。映像は全編4K解像度で製作されており、恐竜のグラフィックには1億ポリゴンのモデルが作成された。これは従来の恐竜のモデルと比較して約10倍のポリゴン数であった[8]。
主な登場生物
編集
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展開
編集放送・DVD
編集上記日程で初放送された後、2015年8月9日に全3集とも再放送された[13]。その後は後述する特別番組とその再放送を挟み、再びNHKスペシャルとして12月28日に再放送された[14]。
2015年9月6日から9月20日にかけては『ドキュメント 生命大躍進』として編集されて放送された[14]。ドキュメント版はその後もBS4Kで再放送されており、2019年1月15日から2月5日、4月9日から4月23日、11月12日から11月26日、2020年6月7日に再放送された[15]。
2015年9月25日にはNHKエンタープライズから第1集のDVDとブルーレイディスクがそれぞれ発売された[16]。なお、一般販売に先駆けてNHKスクエアでの予約販売が開始されていた[9][10][12]。
書籍
編集2015年7月に同名のタイトルで本作の書籍版がNHK出版から出版された[17]。
- 『NHKスペシャル 生命大躍進』
- NHK出版、2015年7月13日、ISBN 978-4-14-407210-9
- 編:NHKスペシャル「生命大躍進」制作班、協力:土屋健
サウンドトラック
編集横山克によるオリジナルサウンドトラックは2015年7月8日に発売された[18]。
# | タイトル | 時間 |
---|---|---|
1. | 「生命大躍進」 | |
2. | 「はじまりを知る」 | |
3. | 「いのちの枝」 | |
4. | 「目と目を合わせて」 | |
5. | 「進化の謎」 | |
6. | 「遥かムカシ」 | |
7. | 「時空を超えた分析」 | |
8. | 「繋がれていく生命」 | |
9. | 「新たなる種子」 | |
10. | 「危機を乗り越え」 | |
11. | 「生命大躍進〜躍〜」 | |
12. | 「探求と共にある未来」 | |
13. | 「何通りもの進化を経て」 | |
14. | 「未知との遭遇」 | |
15. | 「DNAを追う」 | |
16. | 「種の壁」 | |
17. | 「この先に見える光へ」 | |
18. | 「問いと仮説の日々」 | |
19. | 「更なる発見の為に」 | |
20. | 「生命大躍進〜進〜」 | |
21. | 「生命の系譜 (Simple version)」 | |
22. | 「枝分かれの先」 | |
23. | 「危機への処世術」 | |
24. | 「点と線をつなぐ」 | |
25. | 「生命の系譜 (Serious version)」 | |
26. | 「使命として」 | |
27. | 「この場所で生きる」 | |
28. | 「生命の系譜」 |
プラネタリウム上映
編集本作は放送後も複数の教育施設で編集版のプラネタリウム上映が行われた。
特別展
編集「特別展『生命大躍進』脊椎動物のたどった道」として、以下の日程と会場で特別展が開催された。主催は主に会場となった博物館と各地のNHK放送局およびNHKプラネットであり、後援に文部科学省、協賛に日本写真印刷とみずほ銀行がついた。監修は山田格、冨田幸光、倉持利明、加瀬友喜、篠田謙一、河野礼子[23]。ココリコ田中が広報大使を務めた[24]。
展示会場によって展示内容には差があるものの、ピカイアやアノマロカリスを含む日本初公開となったバージェス動物群化石38点、ウミサソリやジュラマイアなどのレプリカ、ダンクルオステウスやディメトロドンの実物大復元模型などが展示された[3][25]。4K映像を活用した映像展示も行われた[26]。
各会場詳細
編集- 東京展
- 会場:国立科学博物館
- 会期:2015年7月7日 - 10月4日
- 2015年2月9日に国立科学博物館での開催決定が告知された[3]。8月7日に来場者数10万人、8月27日に20万人、9月29日に30万人を達成し、それぞれの達成者には企画展の図録や縫いぐるみなどの関連グッズが贈呈された[27]。最終的な来場者数は33万人を超えた[25]。同館の研究者による関連する講演会が合計6回開催されたほか、クイズ大会、フズリナ化石の研磨イベント、オスロ自然史博物館のヨルン・フールムとロイヤルオンタリオ博物館のジャン・ベルナール・キャロンによる記念講演が催された[28]。
- 2015年8月10日には特別展を特集する48分の番組『至宝化石が大集合!探検ナイトミュージアム』が放送され、閉館後の特別展会場を舞台に化石の裏話や最新の研究内容が取り上げられた。劇団ひとりと中村慶子が司会を担当し、飯尾和樹・伊集院光・春香クリスティーンがゲスト出演した。国立科学博物館からは加瀬友喜・河野礼子・山田格が出演した[29]。
- 名古屋展
- 会場:名古屋市科学館
- 会期:2015年10月17日 - 12月13日
- 備考:中日新聞社共催
- 名古屋での開催に伴い、ジュンク堂書店ロフト名古屋店では脊椎動物の進化を題材とする書籍を中心としたフェアが開催された[30]。
- 愛媛展
- 会場:愛媛県美術館
- 会期:2016年1月16日 - 4月3日
- 備考:主催に愛媛新聞社が加わっている。
- 国立科学博物館の名誉研究員による講演が1月に、クイズラリーや親子鑑賞会を内包するナイトミュージアムが2月に開催された[31]。また、愛媛大学とNHK松山放送局が主催となって、本展に関連する講演会とフリートークも愛媛大学の南加記念ホールで開催された。講師は冨田幸光が担当し、同大学理学部生物学科と地球科学科の研究者がフリートークに参加した[32]。来場者数は2月4日に1万人を突破した[33]。
- 大阪展
- 会場:大阪市立自然史博物館
- 会期:2016年4月16日 - 6月19日
- 4月19日にココリコ田中が同館の1日所長に就任し本展の展示解説を行った[34]。また、東梅田駅の付近の地下通路にココリコ田中による公告が期間限定で掲示された[24]。来場者数は5月13日に5万人を突破した[35]。
関連事業
編集本作に関連し、進化の興味深さと生物多様性の重要さを伝えるテレビアニメとして『ピカイア!』が制作された。同作は2015年春にNHK Eテレで放送された後[3]、2016年秋に再放送され、2017年春に第2期となる『ピカイア!!』が放送された[38]。2021年4月にはNHK総合『ダーウィンが来た!』にて「大進化!最強アノマロカリス」を放送。アノマロカリスを中心にウィワクシアやオパビニアなどバージェス動物群が取り上げられた[39]。
また、カンブリア紀の生物をモデルにした古代モンスターを進化させる育成ゲームアプリ「コダモン 〜NHK古代モンスター進化中!〜」もリリースされた。コダモンでは上記の特別展とも連動し、各古生物の各論や進化の考え方の解説がなされた。単独の番組と連動するNHKのアプリとしては初めてのもので、iOSとAndroidに対応した[40]。
出典
編集- ^ a b c d e f “Nスペeyes eyes #30 生命大躍進”. NHK. 2020年8月7日閲覧。
- ^ a b c d e “生命大躍進 第1集 そして"目"が生まれた”. NHK. 2020年7月20日閲覧。
- ^ a b c d 『特別展「生命大躍進」開催決定のお知らせ』(プレスリリース)国立科学博物館、2015年2月9日 。2020年8月7日閲覧。
- ^ “生命大躍進 第2集 こうして"母の愛"が生まれた”. NHK. 2020年8月7日閲覧。
- ^ “生命大躍進 第3集 ついに"知性"が生まれた”. NHK. 2020年7月20日閲覧。
- ^ “放送90年の取り組みについて”. NHK (2014年12月4日). 2020年8月7日閲覧。
- ^ a b “新垣結衣“は虫類ラブ”熱弁「離れた時は心に穴があいた感じ」”. スポーツニッポン. (2015年4月28日) 2020年8月7日閲覧。
- ^ 新谷幹夫、片山美和、高橋時市郎、小黒久史「映像表現およびコンピュータグラフィックスの研究動向」『映像情報メディア学会誌』第70巻第1号、2016年、149頁、doi:10.3169/itej.70.149、ISSN 1881-6908、2021年2月11日閲覧。
- ^ a b c d e f “NHKスペシャル 生命大躍進 第1集”. NHKスクエア. NHK. 2020年8月7日閲覧。
- ^ a b c d e f “NHKスペシャル 生命大躍進 第2集”. NHKスクエア. NHK. 2020年8月7日閲覧。
- ^ a b “新垣結衣、NHKスペシャル「生命大躍進」でナビゲーターに!一人二役で姉妹演じる”. 映画.com. カカクコム (2015年5月10日). 2020年8月7日閲覧。
- ^ a b c d e f “NHKスペシャル 生命大躍進 第3集”. NHKスクエア. NHK. 2020年8月7日閲覧。
- ^ “番組表検索結果”. NHKクロニクル. NHK. 2020年8月7日閲覧。
- ^ a b “番組表検索結果”. NHKクロニクル. NHK. 2020年8月7日閲覧。
- ^ “番組表検索結果”. NHKクロニクル. NHK. 2020年8月7日閲覧。
- ^ “NHKスペシャル 生命大躍進 第1集”. HMV. 2020年7月21日閲覧。
- ^ “Nhkスペシャル 生命大躍進 教養・文化シリーズ”. HMV. 2020年7月21日閲覧。
- ^ “NHKスペシャル 生命大躍進 オリジナルサウンドトラック”. タワーレコード. 2020年7月21日閲覧。
- ^ “上映作品”. 蒲郡市生命の海科学館. 2024年5月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月30日閲覧。
- ^ “カレンダー”. とよた技術体験館. 2020年8月7日閲覧。
- ^ とよた科学体験館 [@toyota_hands_on] (2020年7月26日). "本日7/26(日)プラネタリウム14:30の回「プラネタリウム版生命大躍進」最終投映です!お見逃しなく!チケットは残りわずか(^^)/". X(旧Twitter)より2020年8月7日閲覧。
- ^ “全天周映像番組「プラネタリウム版 生命大躍進」(星空ミニ解説付き)”. 人と科学の未来館サイピア. 2021年1月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月12日閲覧。
- ^ 特別展公式図録
- ^ a b “特別展「生命大躍進」大阪・梅田に ココリコ田中さん現る??”. NHK (2016年4月27日). 2020年7月22日閲覧。
- ^ a b “日本初公開!進化の“超重要化石”を見逃すな! 特別展「生命大躍進 ― 脊椎動物のたどった道 ― 」 10月17日(土)、名古屋市科学館で開幕!”. アットプレス (2015年10月16日). 2020年7月21日閲覧。
- ^ “【名古屋市科学館】 特別展「生命大躍進 ―脊椎動物のたどった道―」開催中”. WEB歴史街道. PHP研究所 (2015年11月10日). 2020年7月21日閲覧。
- ^ “トピックス”. 特別展 生命大躍進 脊椎動物のたどった道. 国立科学博物館. 2020年7月21日閲覧。
- ^ “イベント”. 特別展 生命大躍進 脊椎動物のたどった道. 国立科学博物館. 2020年7月21日閲覧。
- ^ “番組表検索結果詳細”. NHKクロニクル. NHK. 2020年8月7日閲覧。
- ^ “名古屋市科学館特別展「生命大躍進」開催記念フェア”. honto. 大日本印刷 (2015年10月21日). 2020年7月21日閲覧。
- ^ “日本初公開多数!生命進化の代表化石が“四国”に大集結! 特別展「生命大躍進 - 脊椎動物のたどった道 - 」四国展 国立科学博物館にて入場者30万人突破の大規模展覧会 1月16日(土)から、愛媛県美術館で開幕!”. アットプレス (2016年1月15日). 2020年7月21日閲覧。
- ^ “生命大躍進と共催大学講座”. 愛媛大学 (2016年1月23日). 2020年7月21日閲覧。
- ^ 「生命の歩み紹介「大躍進展」来場1万人」『愛媛新聞』2016年2月4日。2020年7月21日閲覧。
- ^ “ココリコ田中直樹さんが特別展「生命大躍進」で一日館長に就任”. 大阪市立自然史博物館 (2016年4月20日). 2020年7月21日閲覧。
- ^ “特別展「生命大躍進」の入場者数が5万人を突破しました!”. 大阪市立自然史博物館 (2016年5月13日). 2020年7月21日閲覧。
- ^ “岡山シティーミュージアム 特別展〜生命大躍進 脊椎動物のたどった道〜開会式”. 岡山市 (2016年8月10日). 2020年7月21日閲覧。
- ^ “2016年度 岡山シティミュージアム「生命大躍進 脊椎動物のたどった道」展”. 就実大学 (2016年8月10日). 2020年7月21日閲覧。
- ^ “ピカイア!”. NHK. 2017年11月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月13日閲覧。
- ^ “「大進化!最強アノマロカリス」”. NHK. 2021年4月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月13日閲覧。
- ^ “NHK 初の番組・イベント連動アプリ「コダモン~NHK 古代モンスター進化中!~」 アプリ開発協力に関するお知らせ”. エムアップ (2015年5月18日). 2021年5月19日閲覧。