猪熊葉子
猪熊 葉子(いのくま ようこ、1928年8月16日 - 2024年11月19日)は、日本の近代文学研究者・イギリス近代文学研究者、児童文学者、翻訳家。 聖心女子大学名誉教授。
来歴
編集千葉県生まれ。旧姓・葛原。父は外科医の葛原輝、母は歌人の葛原妙子。聖心専門学校をへて、1952年聖心女子大学国文科卒業、須賀敦子とは大学時代からの友人。1954年同大学院修士課程修了。同大学助手、1956年専任講師、1957年から一年間オックスフォード大学留学、J・R・R・トールキンに師事した。1972年助教授、1978年教授、1990年白百合女子大学教授、1999年定年退職。
ローズマリー・サトクリフ、メアリー・ノートン、フィリッパ・ピアス、イディス・ネスビットなど英国の女性児童文学者を中心に多数の翻訳がある。1970年サトクリフ『ともしびをかかげて』(で児童福祉文化賞出版部門奨励賞、1986年「かさどろぼう」の訳で日本の絵本賞絵本にっぽん賞特別賞、また『まよなかのパーティ』(の訳でサンケイ児童出版文化賞を受賞。
「子どもの本・九条の会」代表団員を務めている[1]。宗教はカトリック。聖心女子大学に入学した1949年に受洗したが、そのとき受洗に反対した母妙子に対して、最晩年に洗礼を授けた。
2024年11月19日、死去[2]。96歳没。
著書
編集- 『ものいうウサギとヒキガエル 評伝ビアトリクス・ポターとケニス・グレアム』(偕成社) 1992
- 『児童文学最終講義 しあわせな大詰めを求めて』(すえもりブックス) 2001
- 『大人に贈る子どもの文学』(岩波書店)2016
共編著
編集翻訳
編集- 『ちびくろサンボ』(バンナーマン、講談社) 1966
- 『マツの木の王子』(キャロル・ジェイムズ、学習研究社) 1967
- 『海のたまご』(ルーシー・M・ボストン、大日本図書) 1969、のち岩波少年文庫
- 『トムの塔』(ジャネット・マクネイル、学習研究社) 1970
- 『村は大きなパイつくり』(ヘレン・クレスウェル、岩波書店) 1970
- 『どれいになったエリア』(アイザック・バシェヴィス・シンガー、福音館書店) 1971
- 『夜明けの人びと』(ヘンリー・トリース、大日本図書) 1971、のち岩波少年文庫
- 『ジョゼフのにわ』(チャールズ・キーピング、らくだ出版デザイン) 1971
- 『まどのむこう』(チャールズ・キーピング、らくだ出版デザイン) 1971
- 『砂に消えた文字』(アン・スウェイト、大日本図書) 1972
- 『ぼくはレース場の持主だ!』(パトリシア・ライトソン、評論社) 1972
- 『少女シルビーの旅だち』(メイビス・クラーク、講談社) 1972
- 『雲の森の少年』(ジョーン・ノース、学習研究社) 1973
- 『おひめさまのたんじょうび』(アニタ・ローベル、文化出版局) 1974
- 『光と影の序曲』(マデレイン・レングル、大日本図書) 1975
- 『赤毛のアン』(モンゴメリ、講談社文庫) 1975
- 『マリアンヌの夢』(キャサリン・ストー、冨山房) 1977、のち岩波少年文庫
- 『オンリー・コネクト 児童文学評論選』全3巻(S・イーゴフ,G・T・スタブス,L・F・アシュレイ編、渡辺茂男,清水真砂子共訳、岩波書店) 1978 - 1980
- 『秘密の花園』(F・H・バーネット、福音館書店) 1979
- 『へんてこりんなサムとねこ』(エヴァリン・ネス、佑学社) 1981
- 『海賊の大パーティ』(マーガレット・マヘイ、大日本図書) 1982
- 『星に叫ぶ岩ナルガン』(パトリシア・ライトソン、評論社) 1982
- 『青い目のペサラク』(ジャヴァード・モジャービー、桜田方子共訳、ほるぷ出版) 1984
- 『赤ひげのとしがみさま』(ファリード・ファルジャーム,ミーム・アザード、桜田方子共訳、ほるぷ出版) 1984
- 『ビアトリクス・ポターの生涯 ピーターラビットを生んだ魔法の歳月』(マーガレット・レイン、福音館書店) 1986
- 『海からきた白い馬』(ヘレン・クレスウェル、岩波少年文庫) 1986
- 『かさどろぼう』(シビル・ウェタシンヘ、福武書店) 1986、のち復刊(徳間書店)
- 『仕事と私 ベティ・マクドナルドの生き方』(ベティ・マクドナルド、晶文社) 1988
- 『暮らしと私 ベティ・マクドナルドの生き方』(ベティ・マクドナルド、晶文社) 1989
- 『海賊の大パーティ』(マーガレット・マーヒー、大日本図書) 1992
メアリー・ノートン
編集- 『魔法のベッド南の島へ』(メアリー・ノートン、学習研究社) 1968
- 『魔法のベッド過去の国へ』(メアリー・ノートン、学習研究社 1968
- 『小人たちの新しい家』(メアリー・ノートン、岩波書店) 1983、のち岩波少年文庫
- 『どっこい巨人は生きていた』(メアリー・ノートン、岩波書店) 1999
- 『空とぶベッドと魔法のほうき』(メアリー・ノートン、岩波少年文庫) 2000
ローズマリ・サトクリフ
編集- 『太陽の戦士』(ローズマリ・サトクリフ、岩波書店) 1968、のち岩波少年文庫
- 『ともしびをかかげて』(ローズマリ・サトクリフ、岩波書店) 1969、のち岩波少年文庫
- 『運命の騎士』(ローズマリ・サトクリフ、岩波書店) 1970、のち岩波少年文庫
- 『第九軍団のワシ』(ローズマリ・サトクリフ、岩波書店) 1972、のち少年文庫
- 『王のしるし』(ローズマリ・サトクリフ、岩波書店) 1973、のち岩波少年文庫
- 『思い出の青い丘』(ローズマリ・サトクリフ、岩波書店) 1985
- 『銀の枝』(ローズマリ・サトクリフ、岩波書店) 1994、のち少年文庫
- 『竜の子ラッキーと音楽師』(ローズマリ・サトクリフ、岩波書店) 1994
- 『小犬のピピン』(ローズマリ・サトクリフ、岩波書店) 1995
- 『辺境のオオカミ』(ローズマリ・サトクリフ、岩波書店) 2002、のち岩波少年文庫
イディス・ネスビット
編集- 『緑の国のわらい鳥』(イディス・ネスビット、大日本図書) 1968
- 『魔法使いの心臓』(イディス・ネスビット、講談社、こどもの世界文学) 1972
- 『王女さまと火をはくりゅう』(イディス・ネスビット、岩波書店) 1981
- 『火の鳥と魔法のじゅうたん』(イディス・ネスビット、岩波少年文庫) 1983
- 『国をすくった子どもたち あっちこっちりゅうだらけのお話』(イディス・ネスビット、大平社) 1987
フィリッパ・ピアス
編集- 『まぼろしの小さい犬』(フィリッパ・ピアス、学習研究社) 1970、のち岩波書店、のち岩波少年文庫
- 『りす女房』(フィリッパ・ピアス、冨山房) 1982
- 『まよなかのパーティー』(フィリッパ・ピアス、冨山房) 1985、のち岩波少年文庫
- 『エミリーのぞう』(フィリッパ・ピアス、岩波書店) 1989
- 『ふしぎなボール』(フィリッパ・ピアス、岩波書店) 1989
- 『川べのちいさなモグラ紳士』(フィリッパ・ピアス、岩波書店) 2005
J・R・R・トールキン
編集- 『ファンタジーの世界 妖精物語について』(J.R.R.トーキン、福音館書店) 1973、のち評論社 2003
- 『トールキン小品集』(J・R・R・トールキン、吉田新一,早乙女忠共訳、評論社) 1975
- 『星をのんだかじや』(J・R・R・トールキン、評論社) 1991
ジョーン・エイキン
編集- 『しずくの首飾り』(ジョーン・エイキン、岩波書店) 1975、のち岩波少年文庫
- 『海の王国』(ジョーン・エイキン、岩波書店) 1976
- 『とんでもない月曜日』(ジョーン・エイキン、岩波少年文庫) 1978
- 『かってなカラスおおてがら』(ジョーン・エイキン、岩波書店) 1981
- 『カラスゆうかいじけん』(ジョーン・エイキン、岩波書店) 1981
- 『子どもの本の書きかた』(ジョーン・エイキン、晶文社) 1986
- 『魔法のアイロン』(ジョーン・エイキン、岩波少年文庫) 1988
- 『月のしかえし』(ジョーン・エイキン、徳間書店) 1995
- 「アーミテージ一家のお話」(ジョーン・エイキン、岩波少年文庫)
- 1)『おとなりさんは魔女』 2010
- 2)『ねむれなければ木にのぼれ』 2010
- 3)『ゾウになった赤ちゃん』 2010
ルーマー・ゴッデン
編集- 『ディダコイ』(ルーマー・ゴッデン、評論社) 1975
- 『台所のマリアさま』(R.ゴッデン、評論社) 1976
- 『元気なポケット人形』(ルーマー・ゴッデン、岩波書店) 1979
- 『木馬のひみつ』(ルーマー・ゴッデン、大日本図書) 1981
メリー・カルホーン
編集脚注
編集- ^ 子どもの本・九条の会
- ^ “児童文学者の猪熊葉子さん死去 96歳 フィリパ・ピアス「真夜中のパーティー」など”. 産経新聞. (2024年12月3日) 2024年12月3日閲覧。