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独立守備隊

南満州鉄道を守備する歩兵隊

独立守備隊（どくりつしゅびたい）は、南満州鉄道を守備する歩兵隊である。

概要

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1905年（明治38年）9月5日、日本とロシア帝国の間で日露講和条約が調印され、第三条にて日本とロシアの双方が満洲より同時に撤兵すること[1]、第六条にて長春（寛城子）～旅順口間の鉄道や支線等、一切の権利、特権、財産は日本政府に移転し譲渡すべき[2]などとして、10月16日に公布された。 12月の北京協約によって、この権利を中国に承認させたが、この中に長春以南の鉄道 1km につき15名の鉄道守備兵を置く権利が含まれていた。

日本政府は1906年（明治39年）6月8日に「南満洲鉄道株式会社ニ関スル件（勅令第142号）」を公布[3]し、約半年後の11月26日に南満洲鉄道が設立された。 しかし治安が不安定な状態から、南満洲鉄道の守備を行なう部隊の編成が急がれた。この部隊は当初「鉄道守備大隊」と名付けられた[注釈 1]が、間を置かずして「独立守備大隊」と改められた。 部隊は12月30日附の「独立守備大隊編成要領（送丙第93号）」及び「独立守備大隊編成ニ関スル細則（送丙第94号）」[4]を基に編成され、独立守備大隊編成要領によれば次の様に区分されている。

  • 独立守備第1大隊

　　　編成関係師管：第1師管
　　　編成担任官　：第1師団長

  • 独立守備第2大隊

　　　編成関係師管：第2師管、第7師管、第8師管
　　　編成担任官　：第2師団長

  • 独立守備第3大隊

　　　編成関係師管：第3師管、第9師管
　　　編成担任官　：第3師団長

  • 独立守備第4大隊

　　　編成関係師管：第4師管、第10師管
　　　編成担任官　：第4師団長

  • 独立守備第5大隊

　　　編成関係師管：第5師管、第11師管
　　　編成担任官　：第5師団長

  • 独立守備第6大隊

　　　編成関係師管：第6師管、第12師管
　　　編成担任官　：第12師団長

更に、1907年（明治40）年1月31日附で「独立守備大隊勤務令（送乙第166号）」[5]が出されており、独立守備大隊勤務令の総則は以下の通りであった。

第一、獨立守備大隊ハ關東都督ニ隷シ南滿洲鐵道󠄁　鐵道󠄁線路及󠄀之ニ附屬スル電線其ノ他財産ヲ含ム以下同シ　ノ守備ニ任ス
第二、獨立守備大隊ノ配置守備區󠄀域及󠄀鐵道󠄁ノ保安ニ關シテハ關東都督之ヲ定ム
第三、獨立守備大隊ノ服務ニ關スル細則ハ關東都督之ヲ定メ陸軍大臣ニ報告スヘシ
第四、隊長ハ常ニ部下ノ敎育ヲ施行シ其ノ技能及󠄀精󠄀神󠄀ヲ發揚スルコトヲ勉ムヘシ — 陸軍省、独立守備大隊勤務令[5]

南満洲鉄道の営業開始を4月1日としているので、それより前に陸軍省はそれぞれの独立守備大隊を配置しなければならなかった。これらの大隊は3月2日から16日までに洋上を移動[6]し、関東都督の隷下に入った。それぞれの守備区域は次の通り[7]とされ、各大隊は25日までに守備地へ到着した。

  • 独立守備第1大隊　白龍溝～四平街間（本部 公主嶺）

　　　東清鉄道（4月1日より南満洲鉄道）
　　　　停車駅：孟家屯―范家屯―公主嶺―郭家店―四平街[注釈 2]

  • 独立守備第2大隊　双廟子～新台子間（本部 鉄嶺）

　　　東清鉄道（4月1日より南満洲鉄道）
　　　　停車駅：双廟子[注釈 3]―昌図―馬仲河―開原―鉄嶺―新台子[注釈 4]

  • 独立守備第3大隊　奉天～撫順～遼陽間（本部 奉天）

　　　東清鉄道（4月1日より南満洲鉄道）
　　　　停車駅：奉天[注釈 5]―分岐点[注釈 6]―蘇家屯―沙河―十里河―煙台―遼陽[注釈 7]
　　　ロシア軍用鉄道（4月1日より南満洲鉄道撫順線）
　　　　停車駅：蘇家屯―深井子―李石寨―仙金寨[注釈 8]―撫順[注釈 9]

  • 独立守備第4大隊　本溪湖～安東県間（本部 鳳凰城）

　　　安奉軽便鉄道（4月1日より南満洲鉄道安奉線）
　　　　停車駅：本溪湖―孟家[注釈 10]―橋頭―南坆[注釈 11]―連山関―鳳凰城―沙河鎮―安東県[注釈 12]

  • 独立守備第5大隊　鞍山站～牛家屯[注釈 13]～蓋平間（本部 大石橋）

　　　東清鉄道（4月1日より南満洲鉄道）
　　　　停車駅：鞍山站[注釈 14]―海城―大石橋―蓋平[注釈 15]

  • 独立守備第6大隊　熊岳城～貔子窩[注釈 16]～普蘭店間（本部 瓦房店）

　　　東清鉄道（4月1日より南満洲鉄道）
　　　　停車駅：熊岳城[注釈 17]―万家嶺―得利寺―瓦房店―普蘭店

全ての大隊は、南満洲鉄道営業開始の前日となる3月31日に編成を完結[7]した。

1909年（明治42年）4月13日、「独立守備大隊」は改編された。部隊の編制は以前同様の六コ大隊だが、新たに司令部が置かれて隊名は「独立守備隊」となった[8]。 独立守備隊司令部は5月4日より旅順関東都督府将校集会所にて事務を開始した[9]。

1914年（大正3年）5月9日、第4大隊が連山関に移転[10]。

鉄道の延長は1100kmであるから守備兵は16,500名となるが、独立守備隊の兵数は満州事変時には約5,000に過ぎず、駐箚師団兵数が約5,400であったため、鉄道守備兵は合計約10,400名である。独立守備隊は司令官の下に歩兵六大隊があり、公主嶺、奉天、大石橋、連山関、鉄嶺および鞍山に大隊本部、その他要地に分遣部隊を駐屯させた。

司令官

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独立守備隊
第1独立守備隊

第1独立守備隊長

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脚注

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  1. ^ 『官報』号外、明治38年10月16日、1頁。
  2. ^ 『官報』号外、明治38年10月16日、2頁。
  3. ^ 『官報』第6881号、明治39年6月8日、233頁。
  4. ^ 陸軍省『独立守備大隊編成要領制定ノ件』防衛省防衛研究所（アジア歴史資料センター Ref.C03022855000）
  5. ^ a b 陸軍省『送乙第166号 独立守備大隊勤務令別冊ノ通定メラル』防衛省防衛研究所（アジア歴史資料センター Ref.C09050202800）
  6. ^ 陸軍省『独立守備大隊関東都督ノ隷下ニ入ルノ件』防衛省防衛研究所（アジア歴史資料センター Ref.C03027500400）
  7. ^ a b 関東都督府陸軍部『明治四十年三月第三旬々報』防衛省防衛研究所（アジア歴史資料センター Ref.C03022869100）
  8. ^ 『官報』第7736号、明治42年4月13日、338頁。
  9. ^ 『官報』第7766号、明治42年5月18日、395頁。
  10. ^ 『官報』第540号、大正3年5月19日、474頁。
  11. ^ 『官報』第7728号、明治42年4月2日、51頁。
  12. ^ a b 『官報』第8465号、明治44年9月7日、133頁。
  13. ^ a b 『官報』第99号、大正元年11月28日、543頁。
  14. ^ a b 『官報』第697号、大正3年11月27日、585頁。
  15. ^ a b 『官報』第1217号、大正5年8月19日、414頁。
  16. ^ 『官報』第1794号、大正7年7月25日、599頁。
  17. ^ 『官報』第1794号、大正7年7月25日、598頁。
  18. ^ 『官報』第2093号、大正8年7月26日、597頁。
  19. ^ 『官報』第2093号、大正8年7月26日、598頁。
  20. ^ a b 『官報』第2535号、大正10年1月17日、268頁。
  21. ^ a b 『官報』第2930号、大正11年5月11日、282頁。
  22. ^ a b 『官報』第3696号、大正13年12月16日、433頁。
  23. ^ a b 『官報』第4054号、大正15年3月3日、70頁。
  24. ^ a b 『官報』第778号、昭和4年8月2日、48頁。
  25. ^ a b 『官報』第1078号、昭和5年8月2日、49頁。
  26. ^ 『官報』第1683号、昭和7年8月9日、235頁。
  27. ^ 『官報』第2151号、昭和9年3月6日、142頁。
  28. ^ 『官報』第2765号、昭和11年3月24日、587頁。
  29. ^ 『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』195頁。
  30. ^ 『官報』第3175号、昭和12年8月3日、64頁。
  31. ^ 『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』277頁。

注釈

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  1. ^ 「独立守備大隊編成要領」及び「独立守備大隊編成ニ関スル細則」の上奏案では「鉄道」に抹消線が引かれ「独立」と書き加えられている。
  2. ^ 四平街駅は双廟子駅の隣駅。昭和16年に四平駅と改称。
  3. ^ 双廟子駅は四平街駅の隣駅。
  4. ^ 新台子駅の隣駅は虎石台駅、次いで奉天駅。1907年3月当時、虎石台駅は独立守備第2大隊の守備区域か否かは不明。
  5. ^ 奉天駅は虎石台駅の隣駅。
  6. ^ 分岐点駅は明治40年12月1日に渾河駅と改称。
  7. ^ 遼陽駅は鞍山站駅の隣駅。
  8. ^ 仙金寨駅は明治40年4月1日に千金寨駅と改称、大正2年に撫順駅と改称。
  9. ^ 撫順駅は大正2年に永安橋駅と改称、大正3年に廃止。
  10. ^ 孟家駅は明治40年12月1日に孟家堡駅と改称、明治44年に福金駅と改称、昭和2年に宮原駅と改称。
  11. ^ 南坆駅は明治40年6月1日に廃止。
  12. ^ 安東県駅は明治45年に安東駅と改称。
  13. ^ 牛家屯は営口の附近にある埠頭。
  14. ^ 鞍山站駅は遼陽駅の隣駅。昭和6年に千山駅と改称。
  15. ^ 蓋平駅は熊岳城駅の隣駅。
  16. ^ 貔子窩港は日清戦争において日本軍が用いた揚陸地。
  17. ^ 熊岳城駅は蓋平駅の隣駅。
  18. ^ 1916年8月18日、中将任官。（『官報』第1217号、大正5年8月19日、412頁）
  19. ^ 1918年7月24日、中将任官。（『官報』第1794号、大正7年7月25日、592頁）
  20. ^ 1921年7月20日、中将任官。（『官報』第2692号、大正10年7月21日、599頁）
  21. ^ 1923年8月6日、中将任官。（『官報』第3306号、大正12年8月7日、118頁）
  22. ^ 1934年8月1日、中将任官。（『官報』第2276号、昭和9年8月2日、32頁）
  23. ^ 1936年4月28日、中将任官。（『官報』第2795号、昭和11年4月30日、878頁）
  24. ^ 1939年3月9日、中将任官。（『官報』第3652号、昭和14年3月10日、363頁）

参考文献

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外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。

 

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