死前喘鳴
死前喘鳴(しぜんぜんめい[1]、英:Terminal respiratory secretions)とは[2]、死期が近い人間に現れる現象の1つである。英語では一般的にdeath rattleとして知られる[3]。唾液や気管支分泌物が胸郭上部に溜まることによって発される音である[4]。死期が近い人は嚥下する力が低くなり、気管支に溜まる分泌物が増えた結果としてこのような症状が起こることがある。一般的には死の2~3日前から唾液が喉にたまり、水を飲み込むことすら難しくなる。関連する症状としては呼吸困難や胸の動きが早くなることなどが挙げられる。死前喘鳴は死が近いことを強く示唆するものであるが[5]、脳の障害などによっても生じることがある[4]。
時期
編集この症状は死の24時間前後に現れるが、この症状が現れたからといってすぐに死に至るわけでは無い[6]。
処置
編集通常、死期が近い本人はこの症状に気づくことは少なく、なにか害になるというわけではない。とはいえ、死にゆく人を看取る家族や介護者などの精神的苦痛を和らげるため、一部の医療従事者はこの音を最小限に抑えるための処置を施すことがある[7]。この処置の例として、患者の体勢を変えたり、点滴の量を減らしたり、喉の分泌物を減らすために抗コリン薬を投与するといったものが挙げられる[6]。ホスピスや終末期医療においては、抗コリン作用のあるグリコピロニウム、スコポラミン臭化水素酸塩水和物(スコポラミン)あるいはアトロピンなどの薬を使用して喉の分泌物を減らし、この症状を和らげることがある[8]。
関連記事
編集脚注
編集- ^ “がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン(2011年版)第4章「用語の定義と概念」”. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン作成委員会. 2023年1月31日閲覧。
- ^ Clinical Working Party (December 2010). “Guidelines for the management of respiratory secretions in an imminently dying patient”. Eastern Metropolitan Region Palliative Care Consortium (Victoria). 13 April 2014閲覧。,
- ^ “When Death Is Near”. MSD Manuals. MSD Manuals (Consumer Version). 14 March 2016閲覧。
- ^ a b Bickel. “# 109 Death Rattle and Oral Secretions, 2nd ed”. Fast Facts. End-of-Life/Palliative Education Resource Center. 4 September 2017閲覧。
- ^ Wee, B.; Hillier, R. (2008). “Interventions for noisy breathing in patients near to death”. Cochrane Database of Systematic Reviews (1): CD005177. doi:10.1002/14651858.CD005177.pub2. PMC 6478131. PMID 18254072 .
- ^ a b Ferrell, Betty; Coyle, Nessa; Paice, Judith A. (2015). Oxford Textbook of Palliative Nursing (4th ed.). Oxford University Press. pp. 253–255. ISBN 9780199332342. OCLC 875629996
- ^ “When Death Is Near – Fundamentals – Merck Manuals Consumer Version” (英語). Merck Manuals Consumer Version 2017年6月24日閲覧。
- ^ Hipp, B.; Letizia, M. (2009). “Understanding and responding to the death rattle in dying patients”. Medsurg Nursing 18 (1): 17–21, 32; quiz 22. PMID 19331295.
外部リンク
編集- Pulmonary Breath Sounds, a page that includes a death rattle sound clip (published by East Tennessee State University)