松田瑞生

日本の長距離走選手

松田 瑞生(まつだ みずき、1995年5月31日 - )は、日本女子陸上競技選手。専門種目は中距離走長距離走マラソンダイハツ工業に所属。第101回日本陸上選手権女子10000m優勝、第37回・第39回・第41回大阪国際女子マラソン各優勝。大阪国際女子マラソンに3回出場し、いずれも優勝した。その鍛え抜かれた腹筋から、「なにわの腹筋女王」と呼ばれている。

松田 瑞生 Portal:陸上競技
マラソングランドチャンピオンシップ
(2019年9月15日撮影)
選手情報
フルネーム まつだ みずき
ラテン文字 MIzuki MATSUDA
愛称 なにわの腹筋女王
国籍 日本の旗 日本
競技 陸上競技
種目 中距離走長距離走マラソン
所属 大阪市立大和川中学校
大阪薫英女学院高
ダイハツ
生年月日 (1995-05-31) 1995年5月31日(29歳)
出身地 大阪府大阪市住吉区 遠里小野
身長 158cm
体重 46kg
自己ベスト
1500m 4分21秒45
3000m 9分08秒23
5000m 15分46秒40
10000m 31分39秒41
ハーフマラソン 1時間08分32秒
マラソン 2時間20分42秒
獲得メダル
陸上競技
世界ハーフマラソン選手権大会
2016 カーディフ 女子団体
アジア陸上競技選手権大会
2017 ブバネシュワール 10000m
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来歴

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大阪市住吉区出身。小学校時代は柔道、中学1年はバスケットボール部に所属し、中学2年から陸上競技を始めた。大阪市立遠里小野小学校大阪市立大和川中学校大阪薫英女学院高等学校卒業。

陸上経歴

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大阪薫英女学院高等学校時代に3年連続で全国高校駅伝に出場した。2011年の1年次には2区4.0975kmを担当し15位で襷を受けたが、4人を抜き区間10位13分21秒を記録した。但し、この時の区間賞は12分55秒で横江里沙須磨学園2年)であり、同学年の関根花観仙台育英1年)の記録した13分08秒にも及ばなかった。チームは総合9位だった[1]2012年の2年次にも2区を担当。1区大森菜月(3年)からトップと4秒差の2位と好位置で襷を受けるとトップに立ち、2位に11秒差をつけて3区に襷を繋ぐ好走で、前年敗れた横江理沙(須磨学園3年)を4秒差で抑えて13分00秒で区間賞を獲得した。チームは総合5位だった[2]2013年の3年次はエース区間の1区6kmを担当したが、由水沙季筑紫女学園3年)が19分28秒で2年連続区間賞を獲得しそのトップと8秒差、19分30秒で区間2位小口雪音(長野東2年)と同タイムながらコンマ差で3位の関根花観(仙台育英から移籍し豊川3年・チーム総合優勝)と6秒差の区間9位に終わった。その他1区走者には太田琴菜(須磨学園3年)、小吉川志乃舞(世羅1年)、出水田眞紀白鵬女子3年)らがいた。チームは総合8位だったが、翌2014年第26回大会でチームは初優勝した[3]

ダイハツ陸上競技部に所属後、10000mに注力していたが、2018年1月(22歳)の第37回大阪国際女子マラソンで、フルマラソンにデビュー。20km給水所でスペシャルドリンクを取り損ねた安藤友香に自らのドリンクを手渡し、そのスポーツマンシップの素晴らしさが話題となった。25Km付近では大阪薫英女学院高の1年後輩でもあった前田穂南天満屋)がペースメーカーの前に飛び出したが、26kmから松田もペースメーカーの前に出て追い掛け距離を詰めていき31Km付近で逆転した。結果2時間22分44秒という好タイムで、いきなり初マラソンで初優勝するとともに、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC・2020年東京オリンピック女子マラソン日本代表選考レース)への出場権も獲得した。

2018年9月のベルリンマラソンで2度目のフルマラソンに挑戦。松田もレース序盤から5Km毎のラップを16分台後半と積極的に飛ばし、中間点は1時間10分59秒で通過直後に前田に追いつかれるも、その後巻き返して2時間22分23秒と自身のベストタイムを21秒更新と同時にダイハツ記録を更新して、日本女子トップの5位に入った。しかしゴール後の松田は、「最低でも21分台を狙っていたので、まだ実力不足です。日本とは雰囲気が違った。来年のMGCで必ず優勝できるように頑張りたいです」と悔し涙を浮かべた[4]

松田は大阪国際女子マラソンでのその功績が認められ、2018年に活躍した競技者や競技を通じて社会に貢献した選手に贈られる日本陸連アスレティック・アワード2018で新人賞を獲得した。

2019年9月15日開催のMGC・女子マラソン本番に出場。スタート直後からハイペースで飛ばす一山麻緒ワコール)らの先頭集団に、松田も序盤の1Km過ぎで早々遅れ始めたが10Km手前で先頭集団へ追いつく。だが、14Km付近で再び集団から脱落し6位に後退するとその後は23Km地点で安藤友香、24Km地点で福士加代子のワコール勢2人を追い越して4位に浮上する。しかし、結果は3位の小原怜(天満屋)にわずか45秒差で届かず4位に終わり、松田の東京五輪内定選出は果たせなかった[注 1][5]

MGCファイナルチャレンジ第2弾となる2020年1月26日の第39回大阪国際女子マラソンへエントリーされ、松田も号砲から5Km毎に16分30秒台と高速ペースで走行する。今回ペースメーカー役を務めた新谷仁美らの先頭集団へ積極果敢についていった。12Km地点で谷本観月(天満屋)、17Km過ぎで小原、20Km付近で福士が次々と後退する中、日本女子は松田1人のみ優勝争いに加わる展開となった。24Km過ぎで松田とミミ・ベレテバーレーン)の2人が集団から抜け出してデッドヒートと成ったが、31Km付近で松田がロングスパートを仕掛けベレテを引き離すと、その後は松田の完全独走状態となった。35Km以降でややペースは落ちたものの、結果マラソン自己ベストを36秒更新する、2時間21分47秒の好記録で2年振り2回目の当大会優勝を成し遂げた。さらにMGCファイナルチャレンジ派遣記録の2時間22分22秒を上回った為、松田が暫定的に東京五輪女子マラソン日本代表の3人目の有力候補に名乗りを挙げた[6]

ところが、2020年3月8日開催の名古屋ウィメンズマラソン2020で優勝した一山が、松田の記録を1分18秒も上回る2時間20分29秒のゴールタイムを出した為、松田も東京五輪女子マラソン日本代表入りへの切符を逃してしまう[7]。なお、昨年9月のMGCで4位に入った事によりMGC3位の小原と共に補欠に選出される[8]。4日後の同年3月12日、福島県郡山市で開かれたマラソン代表会見において、女子マラソン選出の一山の隣席に座った補欠2番手の松田は、「正直な処、まだ気持ちの整理がついていないので…。再スタートを切れる位に、気持ちを整えてからチャレンジしたいです」と五輪落選の無念の涙を流し、声を詰まらせながら振り絞るようにコメントした[9][10][11]

2022年1月30日、第41回大阪国際女子マラソンにエントリー。23km付近まで2時間20分を切るペースで上杉真穂スターツ)と先頭集団を形成していたが、25km付近で上杉が後退したことによりその後は独走。終盤は疲れたものの、第40回大会で一山が記録した大会記録である2時間21分11秒を更新する2時間20分52秒の記録で2年振り3回目の当大会優勝を成し遂げた。これにより、MGC(2024年パリオリンピック女子マラソン日本代表選考レース)への出場権を獲得すると同時に、世界選手権オレゴン大会の派遣設定記録(2時間23分18秒)を突破した[12]。MGCには出場せず、MGCファイナルチャレンジである2024年1月の大阪国際女子マラソンでパリ五輪への代表権獲得を目指したが、2時間23分7秒で日本人2番手の3位となり、パリ五輪への出場はならなかった。引退も噂されたが、東京で開催される2025年秋の世界陸上を目標に現役続行を決めた。一方2028年のロサンゼルス五輪を目指す選択肢は「ない」と言い切る[13]

私生活

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2022年9月18日に元青山学院大学陸上競技部の松崎純也と結婚した[14][15][16]。「40歳までに3人産みたい」と公言している[13]

主な記録(マラソン以外)

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大会 種目 順位 備考
2012年 都道府県対抗女子駅伝 7区 区間2位 大阪府優勝[17]
第24回全国高校駅伝 2区 区間賞 薫英女学院5位
2013年 都道府県対抗女子駅伝 7区 区間賞 大阪府3位[18]
2014年 全日本実業団女子駅伝 6区 区間4位 ダイハツ2位[19]
2015年 都道府県対抗女子駅伝 9区 区間11位 大阪府優勝[20]
全日本実業団女子駅伝 3区 区間11位 ダイハツ13位
2016年 都道府県対抗女子駅伝 9区 区間10位 大阪府12位
全日本実業団ハーフマラソン ハーフマラソン 4位
世界ハーフマラソン選手権 ハーフマラソン 17位 日本チーム3位
第100回日本陸上選手権 10000m 4位[21]
全日本実業団陸上選手権 10000m 優勝[22]
全日本実業団女子駅伝予選会 3区 区間賞 ダイハツ10位
全日本実業団女子駅伝 3区 区間8位 ダイハツ16位
2017年 都道府県対抗女子駅伝 9区 区間5位 大阪府12位
第101回日本陸上選手権 10000m 優勝[23]
アジア陸上選手権 10000m 銅メダル[24]
世界陸上競技選手権 10000m 19位
全日本実業団女子駅伝予選会 3区 区間3位 ダイハツ3位
全日本実業団女子駅伝 3区 区間6位 ダイハツ2位
2018年 第102回日本陸上選手権 10000m 優勝[25]
全日本実業団女子駅伝 3区 区間7位 ダイハツ3位
2019年 都道府県対抗女子駅伝 4区 区間2位 大阪府3位
全日本実業団女子駅伝 3区 区間9位 ダイハツ2位
2020年 全日本実業団女子駅伝 1区 区間4位 ダイハツ9位
2021年 全日本実業団女子駅伝 5区 区間3位 ダイハツ5位
2022年 全日本実業団女子駅伝 1区 区間5位 ダイハツ5位
2023年 都道府県対抗女子駅伝 9区 区間賞 大阪府優勝
全日本実業団女子駅伝 5区 区間3位 ダイハツ5位

マラソン全戦績

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年月 大会 順位 記録 備考
2018年1月28日 大阪国際女子マラソン 優勝 2時間22分44秒 初マラソン初優勝・MGCシリーズ第3弾・MGC出場権獲得
2018年9月16日 ベルリンマラソン 5位 2時間22分23秒 日本女子トップ
2019年9月15日 マラソングランドチャンピオンシップ 4位 2時間29分51秒 2020年東京オリンピック・女子マラソン日本代表選考会
2020年1月26日 大阪国際女子マラソン 優勝 2時間21分47秒 マラソン2回目の優勝・MGCファイナルチャレンジ第2弾
2021年3月14日 名古屋ウィメンズマラソン 優勝 2時間21分51秒 マラソン3回目の優勝
2022年1月30日 大阪国際女子マラソン 優勝 2時間20分52秒 マラソン4回目の優勝・大会記録・世界選手権代表候補派遣設定突破・MGC出場権獲得
2022年7月18日 2022年世界陸上競技選手権大会 9位 2時間23分49秒 世界選手権の女子マラソンでは日本人最高記録[26]
2023年8月26日 2023年世界陸上競技選手権大会 13位 2時間29分15秒
2024年1月28日 大阪国際女子マラソン 3位 2時間23分07秒
2024年9月29日 ベルリマラソン 6位 2時間20分42秒 自己最高記録


脚注

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注釈

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  1. ^ なお、優勝した天満屋の前田と、2位の日本郵政グループ鈴木亜由子の2人が東京五輪即内定となった。

出典

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  1. ^ 2011年第23回女子大会記録”. 全国高校駅伝事務局・毎日新聞社. 2018年1月5日閲覧。
  2. ^ 2012年第24回女子大会記録”. 全国高校駅伝事務局・毎日新聞社. 2018年1月5日閲覧。
  3. ^ 2013年第25回女子大会記録”. 全国高校駅伝事務局・毎日新聞社. 2018年1月5日閲覧。
  4. ^ 松田、自己新も悔し涙=世界との差を痛感-ベルリン・マラソン 時事ドットコム 2018年9月16日掲載
  5. ^ マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)女子マラソン速報 スポーツナビ 2019年9月15日掲載
  6. ^ 第39回大阪国際女子マラソン速報 スポーツナビ 2019年9月15日掲載
  7. ^ 松田 五輪マラソン切符逃し「自分の力のなさを痛感した」 スポニチ 2019年3月9日掲載
  8. ^ 東京五輪マラソン代表 女子の小原と松田は補欠に 毎日新聞 2019年3月8日掲載
  9. ^ 松田瑞生は会見で涙「まだ気持ちの整理が…」東京五輪マラソン代表補欠 デイリースポーツ 2020年3月12日掲載
  10. ^ 結束感なきマラソン代表会見、補欠選手に心理的負担 日刊スポーツ 2020年3月14日掲載
  11. ^ 松田瑞生が流した尊い涙 JIJI.COM 2020年3月16日掲載
  12. ^ 【大阪国際女子マラソン】松田瑞生、3度目V世界選手権代表候補に/詳細 日刊スポーツ 2022年1月30日掲載
  13. ^ a b 「現役続行 世界陸上に挑む」読売新聞2024年7月24日付朝刊スポーツ面
  14. ^ 女子マラソン松田瑞生が一般男性と結婚「願いを受け入れてくれた旦那さんに感謝」競技続行も報告日刊スポーツ2022年9月18日付
  15. ^ マラソン松田瑞生、現役続行へ! 元青学大の夫が引退を阻止「後悔のないように走り切って笑顔でゴール出来たら終了!」dメニューニュース
  16. ^ ご報告 結婚しました!(uwajunya) - 松崎純也のYouTubeチャンネル
  17. ^ リザルト”. jaaf. 2018年1月8日閲覧。
  18. ^ リザルト”. jaaf. 2018年1月5日閲覧。
  19. ^ 記録集”. jita. 2018年1月5日閲覧。
  20. ^ リザルト”. jaaf. 2018年1月24日閲覧。
  21. ^ 決勝記録一覧”. jaaf. 2018年1月5日閲覧。
  22. ^ 競技結果”. jita. 2018年1月5日閲覧。
  23. ^ 競技結果”. jaaf. 2018年1月5日閲覧。
  24. ^ リザルト”. jaaf. 2018年1月8日閲覧。
  25. ^ 競技結果”. jaaf. 2019年6月24日閲覧。
  26. ^ 入賞まで15秒 最後力尽き涙『産経新聞』2022年7月20日。

外部リンク

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