東鷹栖安部公房の会
東鷹栖安部公房の会(ひがしたかすあべこうぼうのかい)は、北海道旭川市東鷹栖の市民団体。小説家の安部公房が小学生時代に一時的に旭川に滞在していたことから、東鷹栖と安部公房の関連を広めることを目的として、2012年(平成24年)に結成された団体であり、安部公房ゆかりの物品の展示会、安部公房の作品の朗読などの活動を行っている。
名の由来 | 北海道旭川市東鷹栖、安部公房 |
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設立 | 2012年8月 |
設立者 | 森田庄一 |
設立地 | 北海道旭川市東鷹栖 |
種類 | 市民団体 |
目的 | 東鷹栖と安部公房の関連を広めること |
会員数 | 26人(2013年時点) |
公用語 | 日本語 |
会長 | 高見一典 |
重要人物 | 柴田望 |
ウェブサイト |
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沿革
編集安部公房は東京出身だが、両親は共に北海道の旧東鷹栖村(現・旭川市)出身である[1]。安部も本籍は東鷹栖であり、小学校2年から3年にかけて、東鷹栖村近文第一小学校(現・旭川市立近文第一小学校)に通学していた時期がある[1]。本会の初代会長の森田庄一は、学生時代に安部公房の妹と同級生であり、安部の芥川賞受賞が印象に残っていたことから、安部の作品を愛読するようになった[2]。
森田は高等学校を卒業後に、安部の足跡を地元に残すことを考え始めた[2]。そして2012年(平成24年)に旭川市東鷹栖公民館(北海道旭川市東鷹栖)で開催された講演会「東鷹栖と安部公房〜安部公房はここにいた」が契機となり[3][4]、同2012年8月[1]、東鷹栖の有志を始めとする旭川の住民30人ほどで、市民団体として「東鷹栖安部公房の会」が立ち上げられた[2][5]。会員数は、翌2013年(平成25年)時点で26人である[1]。
2018年(平成30年)7月の総会で、旭川市議会議員の高見一典が新会長に就任、前会長の森田庄一は顧問に、旭川市の詩人である柴田望(2015年に入会[6])が事務局長となり、現在に至る[7]。
活動内容
編集映像外部リンク | |
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詩誌「フラジャイル」柴田望 | |
安部公房記念碑除幕式 H26.10.17 | |
安部公房『無名詩集』朗読会2016年1月23日 |
東鷹栖と安部公房の関連を広めることが活動目的である[8]。地域の文学愛好家や安部の親族たちの協力のもとで、安部公房ゆかりの写真などの品や、旭川市東鷹栖の東鷹栖公民館での作品資料の展示、安部の作品の朗読会や講演会[8]、安部を題材とした文学講座などを開催している他[1][9]、旭川市東鷹栖支所内の安部公房の資料展示室の管理も担当している[10]。事務局長の柴田望も、朗読会の解説などで協力している[11]。
2012年末には、安部の実弟宅より、安部の初期の未発表作品『天使』が発見されて、新潮社の立会いのもとで、本会へ原稿が寄贈され[4][12]、文芸誌「新潮」2012年12月に掲載に至った[12]。「新潮」同号はこの安部の作品によって好調な売れ行きを示し、約6年ぶりに増刷が決定された[13]。
安部が旭川滞在時に近文第一小学校に通学していたことから、2013年には、地域と安部との関わり、および同小学校と安部の関係性を後世へ伝えることを目的として[14]、記念碑の建立が計画された[1][15]。2000年代以降に旭川市から文学活動への支援が減少していることから、市には頼らず地域で建立することを目指し、費用を市民や企業からの寄付などで賄うべく、会員たちが奔走することで建立に至った[5]。設立地は同小学校の校庭に決定し[4]、翌2014年(平成26年)10月に、記念碑の除幕式と記念式典が開催された[16]。碑石には、東鷹栖在住の安部の親戚が所有していた神居古潭石(旭川で採取される天然石)が用いられ[17]、この親戚宅では旭川滞在時の安部が遊んでいたという[15]。東鷹栖出身で東京大学名誉教授の保坂一夫が、同小学校の卒業生で安部とも交友があったことから、「故郷憧憬」の題などを碑石に刻んだ[15][17]。
安部がシンセサイザーを日本国内での普及以前から使用していたことにちなんで、2016年(平成28年)からは、シンセサイザーの音楽や映像に合わせて安部の作品を朗読する朗読会など、ユニークな試みも行われている[17]。朗読に合わせて、場面に合った絵を投影したり、効果音やBGMを流したりする試みであり、映像があることでの内容のわかりやすさ、巧みな話術などで好評を博している[17][18]。
脚注
編集- ^ a b c d e f 田辺恵「父母が出身、近文第一小に在籍…「安部公房と東鷹栖」PR 没後20年 文学愛好家ら 14日に講演会 記念碑建立へ募金」『北海道新聞』北海道新聞社、2013年9月7日、旭A朝刊、32面。
- ^ a b c 田辺恵「ひと2014 森田庄一さん 安部公房の記念碑を建立した会の代表」『北海道新聞』2014年11月24日、全道朝刊、4面。
- ^ 荒木元「道内文学 詩 荒木元 安部公房〜「無名詩集」朗読会 文学的原点見つめ直す」『北海道新聞』2016年4月25日、全道夕刊、5面。
- ^ a b c 柴田望 (2024年6月18日). “SAPPORO ART LABO "SALA" LECTURES PROGRAM 第118回「生誕100年・安部公房と旭川」”. 詩誌『フラジャイル』公式ブログ. 2024年11月3日閲覧。
- ^ a b 川上舞「市民の思い 選択を前に 細る支援 運営に頭悩ます文化・芸術団体「地域文化守る意欲を」」『北海道新聞』2018年10月30日、旭A朝刊、14面。
- ^ 相沢宏「日曜談話室 柴田望さん 詩誌「フラジャイル」代表 終刊「青芽」の歩み受け継ぐ 繊細な文学 若者にも発信」『北海道新聞』2019年4月14日、上北朝刊、16面。2024年11月3日閲覧。
- ^ 柴田望 (2018年7月17日). “『青芽』から『フラジャイル』へ ■展示■記念朗読会&トークイベント ジュンク堂書店旭川店 ジュンク・ギャラリー 9月26日(水)〜10月1日(月)”. 詩誌『フラジャイル』公式ブログ. 2024年11月3日閲覧。
- ^ a b 東鷹栖安部公房の会 (@20110904) - X(旧Twitter)
- ^ 「安部公房テーマに文学講座」『北海道新聞』2014年8月22日、旭A朝刊、24面。
- ^ 渡辺拓也「ズーム道北 文化 旭川・東鷹栖のグループ 設立5周年 安部公房の世界 ゆかりの地に 音楽や映像組み合わせ朗読会も 功績見つめ地域に思い」『北海道新聞』2017年3月1日、旭C朝刊、20面。
- ^ 相沢宏「安部公房の世界 堪能 戯曲「棒になった男」を朗読 旭川・東鷹栖 有志ら集い」『北海道新聞』2019年2月24日、上北朝刊、16面。
- ^ a b 加藤弘一「解説」『新潮』第109巻第12号、新潮社、2012年12月7日、20-21頁、大宅壮一文庫所蔵:100047754。
- ^ 「「新潮」12月号、6年ぶり増刷 安部公房の未発表作が好評」『中日新聞』中日新聞社、2012年11月16日、夕刊、7面。
- ^ “北海道、安部公房さんの母校に碑 / 旭川市の小学校で除幕式”. SHIKOKU NEWS. 四国新聞社 (2024年10月17日). 2024年11月3日閲覧。
- ^ a b c 横田信行「安部公房 北海道・旭川に記念碑を 協賛金募集 偉大な作家との縁、伝えたい」『毎日新聞』毎日新聞社、2014年8月20日、北海道朝刊、26面。
- ^ 田辺恵「安部公房記念碑 近文第一小に建立 2〜3年時通学が縁」『北海道新聞』2014年10月21日、旭A朝刊、22面。
- ^ a b c d 「東鷹栖安部公房の会が近文第一小で音楽と映像を融合させて朗読会」『北海道経済』第597号、北海道経済新報社、2018年9月1日、105頁、NCID AA12683008。
- ^ 川上舞「安部公房文学 絵や音使い読み聞かせ 近文第一小で東鷹栖の団体」『北海道新聞』2017年8月3日、夕旭夕刊、9面。