昇亭北寿
1763?-1824, 江戸時代後期の浮世絵師。葛飾北斎の門人。名は一政。昇亭、北寿、保久寿と号した。
来歴
編集葛飾北斎の門人。姓は不明、名は一政。昇亭、北寿、保久寿と号す。北斎の初期の門人で両国薬研堀に住んでいたと伝わる。作画期は寛政末期から文政頃にかけてとされ、作の大半は風景画だが風俗画や狂歌本の挿絵、摺物、肉筆画も残している。『武江年表』の享和年間の記事に「北寿浮絵上手」と記されていることから、当時すでに相当の評価を得ていた絵師だったと知られる。北寿の風景画は北斎の洋風表現を受け継いだものといわれており、それを永寿堂、栄久堂などといった版元から多数版行している。
なお『浮世絵師伝』は、北寿の作で「文政七年(1824年)に画きしと思はるゝ肉筆画の掛物」の「清正公之像」に「行年六十二歳」とあることから、北寿の生年は宝暦13年(1763年)であると述べているが、この「清正公之像」の消息については現在不明である。千葉県市原市牛久町の三島神社には、嘉永7年(1854年)及び安政の頃に奉納された絵馬2枚が伝わっており、これらに「昇亭」と「昇亭北寿」の落款があるが、北寿の作画期の下限とされる文政7年頃から三十年も後のものであり、これらを北寿の作とするのは問題がある。
作品
編集版本挿絵
編集錦絵
編集- 「下総銚子浦鰹釣舟之図」 横大判 東京国立博物館所蔵
- 「たうくハん山のづ」(道灌山の図) 横中判 名古屋テレビ放送所蔵 ※享和 - 文政
- 「東都品川宿 高輪大木戸」 横大判 ※文化頃
- 「東海道川崎宿 六郷川渡之図」 横大判
- 「東都両国之風景」 横大判 ボストン美術館所蔵
- 「東都佃島之景」 横大判 ボストン美術館所蔵
- 「東都金龍山浅草寺之図」 横大判 ボストン美術館所蔵
- 「江之嶋七里ヶ浜」 横大判 ボストン美術館所蔵
- 「東都三園山増上寺図」 横大判 ボストン美術館所蔵
- 「東海道富士河真写之図」 横大判 ボストン美術館所蔵
- 「東都深川洲崎 徒弁天望海上」 横大判 ボストン美術館所蔵
- 「武州千住大橋之景」 横大判 ボストン美術館所蔵
- 「東都隅田川 真洌崎之風景」 横大判 ボストン美術館所蔵
- 「甲斐国猿橋ノ真写之図」 横大判 ボストン美術館所蔵
- 「東都芝愛宕山 遠望品川海」 横大判 ボストン美術館所蔵
- 「東叡山麓不忍池 弁財天図」 横大判 ボストン美術館所蔵
- 「淡路嶋風景」 横大判 ボストン美術館所蔵
- 「東都日本橋風景」 横大判 ボストン美術館所蔵
- 「東海道 薩陀峠之図」 横大判 ボストン美術館所蔵
- 「東都浅草川山谷堀入口向 牛島之景」 横大判 ボストン美術館所蔵
- 「東都芝愛宕山 遠望品川海」 横大判 ボストン美術館所蔵
- 「東都御茶之水風景」 横大判 ボストン美術館所蔵
- 「上総九十九里地引綱 大漁猟正写之図」 横大判 ボストン美術館所蔵
- 「しのはす弁天」 横中判 ボストン美術館所蔵
- 「両こくはしうきゑ」 横中判 ボストン美術館所蔵
- 「てつほうず佃島のうきゑ」 横中判 ボストン美術館所蔵
- 「江戸名所十景 両国橋涼の風景」 ボストン美術館所蔵
肉筆画
編集- 「傾城の図」 紙本着色 ニューオータニ美術館所蔵
- 「遊女道中」 紙本着色 光記念館所蔵 ※「昇亭北壽画」の落款と「弌政之印」の白文方印、「東都 楽々庵自覚道人」の画讃あり。那須ロイヤル美術館(小針コレクション)旧蔵
- 「赤井ろく像」 絹本着色 奈良県立美術館所蔵 ※「曻亭北壽画」の落款と「壽南山」の朱文方印、庭訓舎綾人の画賛あり。文化9年(1812年)の作。像主については不明。
- 「茶筅売り図」 紙本淡彩 摘水軒記念文化振興財団所蔵
参考文献
編集- 井上和雄編 『浮世絵師伝』 渡辺版画店、1931年 ※国立国会図書館デジタルコレクションに本文あり[1]。
- 仁科又亮 「昇亭北寿の絵馬」 『浮世絵芸術』第34号 日本浮世絵協会、1972年[2]
- 日本浮世絵協会編 『原色浮世絵大百科事典』(第2巻) 大修館書店、1982年 ※90頁
- 『小針コレクション 肉筆浮世絵』(第五巻) 那須ロイヤル美術館、1989年
- 小林忠編 『肉筆浮世絵大観(9) 奈良県立美術館/京都府立総合資料館』 講談社、1996年 ※178頁
- 小林忠監修 『浮世絵師列伝』<別冊太陽> 平凡社、2006年1月 ISBN 978-4-5829-4493-8 ※115頁
- 佐々木英理子編 『北斎一門肉筆画傑作選 北斎DNAのゆくえ』 板橋区立美術館、2008年