川崎賢子
川崎 賢子(かわさき けんこ、1956年8月2日[1] - )は、日本の文芸・演劇評論家、日本近代文学研究者。学位は、博士(文学)。元立教大学特任教授。早稲田大学現代政治経済研究所招聘研究員、清華大学日本研究センター客員研究員(2021〜)。財団法人日中イノベーションセンター主席研究員(2021〜)。日本大学芸術学部芸術研究所研究員(2024〜)
経歴
編集宮城県生まれ。東京女子大学大学院修士課程修了。在学中、第19次『新思潮』に参加し、『早稲田文学』『思想の科学』『ユリイカ』『幻想文学』などに、久生十蘭・谷譲次・夢野久作・尾崎翠・吉屋信子など昭和初期モダニズムに関する評論を発表。
雑誌『新青年』の共同研究により大衆文学会より受賞した際の「新青年研究会」メンバーの一員である(第2回(1988年)大衆文学研究賞・研究・考証部門を、新青年研究会「新青年読本」(作品社)で受賞)。
1995年、長谷川四郎(四男)の兄弟、長谷川海太郎(=谷譲次・牧逸馬・林不忘)・長谷川潾二郎(画家、小説家)・長谷川濬(ロシア文学、詩人、満洲映画協会社員)を通じ、昭和文学の越境、満洲文学、満洲映画協会などについて描いた『彼等の昭和』でサントリー学芸賞受賞。『岡田桑三 映像の世紀 グラフィズム・プロパガンダ・科学映画』以降、戦時下・外地の文学文化研究から写真・映画研究までフィールドを拡大し、プロパガンダ研究、インテリジェンス(情報・諜報)研究に携わる。 早稲田大学20世紀メディア研究所において戦後占領期のGHQによるメディア政策を中心に共同研究を行い、機関誌『Intelligence』共同編集に参加する。大学非常勤講師などをへて、2012年日本映画大学教授。2016年 立教大学にて文学博士取得[2]。 2017年から2022年立教大学文学部特任教授。
フェミニズムと昭和文学の関わりを主題とし、ジェンダーの歴史的変容、セクシュアリティ表象分析についての著述も多い。また一貫して宝塚歌劇を論じている。
著書
編集- 『少女日和』(青弓社) 1990
- 『蘭の季節』(深夜叢書社) 1993
- 『彼等の昭和 長谷川海太郎・潾二郎・濬・四郎』(白水社) 1994
- 『宝塚 消費社会のスペクタクル』(講談社選書メチエ) 1999、のち改題『宝塚 変容を続ける「日本モダニズム」』(岩波現代文庫) 2022.2
- 『読む女書く女 女系読書案内』(白水社) 2003
- 『宝塚というユートピア』(岩波新書) 2005
- 『尾崎翠 砂丘の彼方へ』(岩波書店) 2010
- 『もう一人の彼女 李香蘭 / 山口淑子 / シャーリー・ヤマグチ』(岩波書店) 2019
編著
編集- 『鬼火 / 底のぬけた柄杓』(吉屋信子、講談社文芸文庫) 2003
- 『久生十蘭短篇選』(岩波文庫) 2009
- 『第七官界彷徨 / 琉璃玉の耳輪 他四編』(尾崎翠、岩波文庫) 2014
- 『墓地展望亭 / ハムレット 他六篇』(久生十蘭、岩波文庫) 2016
- 『左川ちか詩集』(岩波文庫) 2023
共編著
編集- 『宝塚の誘惑 オスカルの赤い口紅』(渡辺美和子共編、青弓社) 1991
- 『宝塚アカデミア』1 - 28号(青弓社) 1996 - 2006
- 『アンペイド・ワークとは何か』(中村陽一共著、藤原書店) 2000
- 『岡田桑三映像の世紀 グラフィズム・プロパガンダ・科学映画』(原田健一共編、平凡社) 2002
- 『戦後占領期短篇小説コレクション』(紅野謙介, 寺田博共編、藤原書店) 2007
- 『宝塚プラス』1 - 2号(小学館クリエイティブ) 2007
- 『定本久生十蘭全集』全11巻別巻1(国書刊行会) 2013
- 「占領期雑誌資料大系 文学篇」全5巻(岩波書店) 2009 - 2010
- 『戦争と平和の境界:1945・8 - 1946・7』
- 『表現される戦争と占領:1946・8 - 1947・7』
- 『破壊から再建へ:1947・8 - 1948・7』
- 『「戦後」的問題系と文学:1948・8 - 1949・12』
- 『占領期文学の多面性』
- 『宝塚百年を越えて 植田紳爾に聞く』(国書刊行会) 2014
- 『定本夢野久作全集』全8巻(国書刊行会) 2016 - 2022
脚注
編集- ^ 『文藝年鑑』2012
- ^ 川崎賢子『尾崎翠 砂丘の彼方へ』 立教大学〈博士 (文学) 32686乙第316号〉、2016年。doi:10.14992/00012275 。
(底本) 川崎賢子『尾崎翠砂丘の彼方へ』岩波書店、2010年。ISBN 9784000224055。 NCID BB01633251。