富岡車両基地
富岡車両基地(ふこうしゃりょうきち、繁体字中国語: 臺鐵富岡車輛基地、略称富岡基地、英語: Fugang Vehicle Depot)または富岡機廠(ふこうきしょう)は台湾桃園市楊梅区にある台湾鉄路管理局(台鉄)の車両工場と車両基地。 台北市信義区でかつて車両検修作業を行っていた台北機廠および新竹市で検車区兼車庫として稼働していた新竹機務段の移転先として2013年1月に開設された[2]。台北市のほうを「台北機廠松山旧廠」、本基地を「台北機廠富岡新廠」という場合もある。台北機廠の名称については2022年6月より正式に「富岡機廠」へ改称された[3]。
富岡車両基地 | |
---|---|
新富駅からみた富岡車両基地 | |
各種表記 | |
繁体字: | 台鐵富岡車輛基地 |
簡体字: | 台铁富冈车辆基地 |
拼音: | Fùgāng Chēliàng Jīdì |
注音符号: | ㄈㄨˋ ㄍㄤ ㄔㄜ ㄌㄧㄤˋ ㄐㄧ ㄉㄧˋ |
発音: | フーガン チャーリァン チーディ |
台湾語発音: | Hù-kang Tshia-lióng ki-tē/ki-tuē |
日本語漢音読み: | ふこうしゃりょうきち |
英文: | Fugang Vehicle Depot |
周辺図 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
|
富岡車両基地 | |
---|---|
北湖駅から分岐する基地への支線(左)
| |
基本情報 | |
国 | 台湾 |
所在地 | 桃園市楊梅区富全街1号 |
鉄道事業者 | 台湾鉄路管理局 |
帰属組織 | 機務処 |
併設区所 | 富岡機廠、北区供応廠、新竹機務段 |
最寄駅 | 縦貫線新富駅 |
旧称 | 台北機廠 |
開設 | 2013年1月10日 |
車両基地概要 | |
敷地面積 | 約520,000 m2 |
留置線本数 |
(電車線)富岡4 新竹28 (機関車線)3 (貨車線)2本 |
検査線本数 |
(電車線)富岡10 新竹8 (機関車線)4 (貨車線)1本 |
洗浄線本数 | 3本 |
年間検修能力 | [1](予定)1,394(予定)両 / 年 |
配置両数 | |
電気機関車 | [1](富岡)154両 |
内燃機関車 | [1](富岡)126両 |
電車 |
[1](富岡)1,074 [1](新竹)444両 |
貨車 | [1](新竹)400両 |
備考 |
上記両数は移転前の台北・新竹配属車[1](p176) 北緯24度55分58.44秒 東経121度4分2.74秒 / 北緯24.9329000度 東経121.0674278度 |
概要
編集2005年9月7日に行政院で計画案が通過、2009年、台湾鉄路管理局(以下台鉄)は鉄道工場である台北機廠および併設の北区供応廠、そして通勤電車の車両区で新竹駅周辺にある新竹機務段の移転集約先として、当地(当時は桃園県楊梅市)に総面積52haのアジア最大級[4]の車両基地を新設する総経費133億台湾ドルの事業化を決定した[5]。2010年7月22日には北湖駅および駅から基地への分岐線(北湖口進廠線)を起工[6][7]。老朽化した建物、古い機材と手狭な敷地だった台北機廠と比べて大幅な自動化、省人化、電脳化で作業環境の効率化、安全性向上、近代化も果たされ、太陽光発電、風力発電も備えた親環境の基地となっている。
基地は4つのエリアに大別される。
- 台北機廠区:三・四級検修(周期が年単位の重検査など)
- 北区供応廠場区:資材工場
- 新竹機務段場区:一・二級検修(周期が数日、数ヶ月単位の通常検査点検)
- 自然生態園区:治水と灌漑用の溜め池を備える緑地帯は総面積の30%を占める。
- 鉄道文化園区:造成中[8]。
2013年1月10日、第1期として車両工場部分が供用された[9][10]。構内の信号システムなどは台湾京三製作所が受注している[11]。
2014年末には台北機廠部分の移転が完了[12]、同時に観光スポットとしての周辺整備事業も進行している[13][14][15]。
また、台鉄捷運化に伴い南方に通勤駅の北湖駅が、基地付近にも新富駅(当初は当基地職員乗降用に「富岡基地駅」として開業、2017年9月6日に旅客駅となる)が設置されている[16]。
2018年4月20日、新竹駅にあった新竹機務段本段が当地へ移転し、旧本段は南新竹機務分駐所となった[17]。
配属
編集新竹機務段#配属を参照。
逸話
編集映像外部リンク | |
---|---|
EMU100型土地公廟開廟 | |
全台唯一!台鐵車廂改造土地公廟成地標 - YouTube 台視新聞 TTV NEWS (2019年10月31日) |
基地周辺の一帯(富岡里、富豊里)は客家人が信仰する「大伯公[18]」(中国の民間信仰、別名福徳正神とも。沖縄では土帝君の名称で定着)の土地公廟があり、丘陵地帯(伯公岡台地)だったことから旧地名が「伯公崗/伯公岡」と呼ばれていた。
車両基地開設前の計画用地にも付近住民約200世帯が祀る中国神話の太上老君、魯班(巧聖仙師)(古代中国の名匠[19])、土地廟に祀られる民間信仰の土地神の神体像と廟(土地公廟)があった。神体の石像は当地の職人が造ったもので、取り壊しを懸念した住民たちの反発があったが、台鉄との協議で付近の鉄工所が所有する空き地に仮移転し、基地完成後は元の場所に戻すという協定が結ばれた[20]。
2013年に基地が稼働してからも設計に起因する問題が多発しただけでなく、廟への動線が良くないと職人から不満を訴えられた。開設半年足らずの6月には検修のためクレーンでジャッキアップ作業中のEMU500型電車が1メートルの高さから落下する事故も発生した。(台鉄によるとこの事故はクレーン製造メーカーの設計不良だとしている。[21][22]。)
労組の台鉄工会にも不安が広がり、局に対して抗議活動を繰り広げた[20]。また立法委員に新基地の年間作業量が台北機廠の6割にとどまっていることを暴露されている[20]。周辺住民たちは基地にまつわる不運が相次ぐことを土地公廟の移転と絡めて祟りだと噂するようになり、早期に元の場所に戻すよう抗議した。 台鉄側も法会を行って土地公の怒りを鎮めることにしたほか、新たに基地用の安全祈願のシンボルを求めることにした。2017年8月1日深夜に台湾鉄路管理局EMU100型電車の中間車1両(ET115)が台北機廠からトレーラーで搬出、当基地に運送された[23]。重大事故歴もなく、状態も良好だったことから選定されたとされている[24]。搬入されたET115型は車内に土地神の石像を祀ったうえで、安全祈願の象徴として基地内に安置する方針が2017年末に公表され[25]、2018年に内装改造に着手[26]。土地公廟は2019年10月24日に開廟した[27][28][29]。
台北駅や七堵駅などで台鉄の土地公廟は既にあるが[30]、鉄道車両自体がこうした神仏の安置場所に選ばれるのは台湾で初となる。
出典
編集- ^ a b c d e f g “臺鐵臺北機廠遷建富岡基地技術服務計畫概要”. 中華技術 (財団法人中華顧問工程司) (第86期): 170-183. ISSN 18184464 . 楊漢生、林坤滄、李明勳、楊文祥 (4 2010).
- ^ 台鐵富岡基地 亞洲最大鐵道園區 2017年3月10日閲覧。 中時電子報 (2013-01-09),
- ^ “台鐵台北機廠正名「富岡機廠」 強化在地連結”. 聯合報. (2022年6月28日). オリジナルの2022年6月28日時点におけるアーカイブ。
- ^ “「新火車醫院」 台鐵富岡基地亞洲最大保修廠”. 聯合報. (2017年7月18日). オリジナルの2017年7月18日時点におけるアーカイブ。
- ^ “台鐵拼觀光! 「火車醫院」富岡基地正式啟用”. NOWnews 今日新聞. オリジナルの2015年9月7日時点におけるアーカイブ。 2017年3月10日閲覧。 彭夢竺 (2013年1月11日).
- ^ “北湖口進廠線及車站 舉行動土儀式”. 大紀元. (2010年7月22日)
- ^ 『北湖口進廠線及車站工程舉行動土儀式!!』(プレスリリース)新竹県政府、2010年7月22日 。
- ^ 薪火賡傳 臺鐵富基 財団法人中華顧問工程司
- ^ 總統出席臺鐵富岡車輛基地啟用典禮』(プレスリリース)中華民国総統府、2013年1月10日 。2017年3月10日閲覧。 『
- ^ 台鐵富岡車輛基地第一階段啟用』(プレスリリース)桃園県政府、2014年8月12日。オリジナルの2014年8月12日時点におけるアーカイブ 。2017年3月10日閲覧。 『
- ^ 会社案内 台灣京三股份有限公司
- ^ 臺北機廠遷建建設計畫 - ウェイバックマシン(2017年8月8日アーカイブ分) 台湾鉄路管理局
- ^ 台鐵臺北機廠遷至桃園富岡車輛基地,現代化、高效率修車工場今啟用』(プレスリリース)台灣商會聯合資訊網 。2017年3月10日閲覧。 『
- ^ “「新火車醫院」 台鐵富岡機廠拚觀光”. TVBS. オリジナルの2017年3月10日時点におけるアーカイブ。 2017年3月10日閲覧。
- ^ “台鉄・富岡車両基地、一部供用開始 観光地化にも期待”. フォーカス台湾. (2013年1月10日)
- ^ “臺鐵富岡車輛 基地─現代化 維修機廠”. 財団法人中華顧問工程司. (2017年3月10日). オリジナルの2017年3月10日時点におけるアーカイブ。 2017年3月10日閲覧。
- ^ 鐵道情報 (春臨臺灣文化事業房) (第236期): pp.6-9. 林宜潔 (2018). “『新竹機務段入厝富岡基地』”.
- ^ 富岡車站 臺灣驛站之旅
- ^ ろはん【魯班 Lǔ Bān】コトバンク
- ^ a b c “【土地公罩台鐵】火車當土地公廟 原來是因為這件事”. 鏡周刊 2017年8月7日閲覧。 嚴文廷 (2017年8月7日).
- ^ “車廂險壓維修員 台鐵挨轟”. 台灣蘋果日報. (2017年6月13日)
- ^ “抬高機出包!台鐵車廂翻 險壓維修員”. TVBS (YouTube). (2017年6月13日)
- ^ “【土地公罩台鐵】全程直擊台鐵運送車廂”. 鏡周刊 2017年8月7日閲覧。 嚴文廷 (2017年8月7日).
- ^ “【土地公罩台鐵】火車土地公廟的車廂 特別挑過的”. 鏡周刊 2017年8月7日閲覧。 嚴文廷 (2017年8月7日).
- ^ “【土地公罩台鐵】台鐵車廂變土地公廟 年底現身桃園富岡”. 鏡周刊 2017年8月7日閲覧。 嚴文廷 (2017年8月7日).
- ^ “祈求平安!台鐵消災蓋廟 建全台首座「車廂土地公廟」”. 三立新聞網. (2018年10月23日) 2019年6月30日閲覧。
- ^ 有神快拜!全台唯一!台鐵車廂改造土地公廟”. 自由時報 (2019年10月31日). 2019年12月1日閲覧。 “
- ^ ☝️全台最特別的台鐵富岡站車廂土地公‼️”. 楊梅区公所Facebook (2019年10月24日). 2019年10月31日閲覧。 “
- ^ “全台唯一「車廂土地公」就在富岡! 鐵道迷趁假日衝一波”. ETtoday新聞雲. (2019年11月10日) 2019年12月1日閲覧。
- ^ “台鐵多站「藏佛堂」 七堵降意外、北車助升等”. 三立電視台 (YouTube). (2018年9月1日) 2019年6月30日閲覧。
関連項目
編集- 台湾鉄路管理局
- 台湾鉄路管理局EMU100型電車
- 穴守稲荷神社#羽田空港に残された一の大鳥居 - 羽田空港拡張に伴う撤去作業で相次いだ不幸が同様に祟りと言われた。
外部リンク
編集- 臺鐵 富岡車輛基地簡介 - YouTube 臺鐵影音專區
- 客家新聞雜誌 第336集 火車來到伯公岡 - YouTube 客家電視台
- 臺鐵富岡車輛基地─現代化維修機廠 財団法人中華顧問工程司