北朝鮮の核実験 (2017年9月)
2017年9月の北朝鮮の核実験(きたちょうせんのかくじっけん)とは、2017年9月3日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)咸鏡北道吉州郡豊渓里付近[1][2] において行われた核実験[3]。北朝鮮が核実験を行ったのは2006年、2009年、2013年、2016年1月、2016年9月に続き6度目となる。
概要
編集日本の気象庁は2017年9月3日12時31分頃、北朝鮮付近を震源とする自然地震ではない可能性のある地震波を観測した。気象庁によると当該地震の発生時刻は12時29分57秒、地震の震源は北緯41.3度、東経129.1度、深さ0キロメートル、地震の規模はマグニチュード6.1とされる[4]。一方、韓国気象庁と韓国軍合同参謀本部はマグニチュード5.7と発表し、米地質調査所はマグニチュード6.3と発表した[1]。北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは現地時間同日15時、「大陸間弾道ミサイル搭載のため、水爆実験に完全成功した」と発表した。また、水爆実験の実施は同日午前に開催された朝鮮労働党中央委員会政治局常務委員会会議[5] で決定し、決定書に金正恩党委員長が親筆署名したとも報じた。もし確認されれば、北朝鮮による過去最大規模の核実験となる[6]。実験に伴う揺れは中国でも観測された[7]。
同日、ジョセフ・ユンアメリカ合衆国国務省北朝鮮担当特別代表、金杉憲治外務省アジア大洋州局長、金烘均大韓民国外交部朝鮮半島平和交渉本部長が電話会談し、北朝鮮を非難するとともに、対応を協議した[8]。
核実験から約1週間後の9月11日、国際連合安全保障理事会は北朝鮮に対する制裁決議を全会一致で可決した[9]。
影響とその後
編集この核実験で発生した高熱により、地下600m地点の岩盤が融解し半径41mの空洞が形成された[10]。この空洞は実験の8分後に崩壊し、マグニチュード4.6の地震を引き起こすと共に地表の陥没や土石流を発生させた[10][11]。この影響で豊渓里核実験場は事実上使用困難な状態となり[12]、同地でこれ以上核実験を続けた場合山体崩壊による放射性物質の漏出が懸念される事態となった[7]。実際、2018年に毎日新聞が報じたところによると豊渓里周辺で放射線被曝によるとみられる健康被害が発生しており、当該地域からの脱北者に染色体異常が確認されているという[13]。
その後2018年4月20日に開催された朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会で豊渓里核実験場の閉鎖が決定され(表向きは「核戦力の完成により使命を終えた」ことを理由としたが、実際は先述のように実験場が使用困難となったため、制裁解除を求めるためのパフォーマンスに利用したとされる)[14][15]、同年5月24日までに坑道と施設が爆破処分された[16]。しかし、2022年に入って再建の動きがあると指摘された[17]ほか、2024年11月にもアメリカ合衆国のジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官が、北朝鮮による7回目の核実験実施に対する可能性の警戒を続けていると表明している[18]。
脚注
編集出典
編集- ^ a b 北朝鮮、6度目の核実験 人工地震とみられる揺れ観測 朝日デジタル 2017年9月3日
- ^ 北朝鮮、6回目核実験=「ICBM用水爆」成功と発表-過去最大の爆発規模 共同通信 2017年9月3日[リンク切れ]
- ^ “北朝鮮が「水爆」実験と発表、過去最大規模 核保有へ着々”. ロイター (2017年9月3日). 2020年9月29日閲覧。
- ^ 政府 北朝鮮の核実験の可能性を発表 NHK 2017年9月3日
- ^ “「水爆実験、金正恩氏が署名」党政治局常務委で党議決定”. デイリーNKジャパン. (2017年9月3日) 2020年4月12日閲覧。
- ^ “北朝鮮で強い揺れ、「水爆実験に完全成功」と国営テレビ”. BBCニュース (英国放送協会). (2017年9月3日) 2017年9月3日閲覧。
- ^ a b “北朝鮮の核実験、山頂付近で複数の「地滑り」発生か”. BBC. (2017年9月7日) 2017年9月9日閲覧。
- ^ 「韓米・韓日の6カ国協議首席代表が電話協議 北に「断固たる対応」」朝鮮日報2017/09/04 09:49
- ^ “石油輸出に上限=北朝鮮制裁決議を採択―米譲歩、中ロ容認・国連安保理”. AFPBB News (フランス通信社). (2017年9月12日) 2017年9月12日閲覧。
- ^ a b 『Seismological Research Letters』(Volume 89, Number 6 November 2018)2018年12月7日閲覧。
- ^ “北朝鮮核実験場付近で複数の土砂崩れか 米大学が分析”. NHK NEWS WEB (NHK). (2017年9月6日) 2017年9月8日閲覧。
- ^ 『読売新聞』朝刊2018年11月28日。2面「北核実験場 直径80メートル空洞/昨年の6回目実施時 地震学者分析」、 国際面「北の核実験場 使用困難/豊渓里 山の破壊進む」。
- ^ 北朝鮮核実験近くで染色体異常 住民被ばくか『毎日新聞』朝刊2018年1月9日(1面)
- ^ 金正恩委員長の指導の下に朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会が行われる - 2018年4月21日、朝鮮中央通信
- ^ “北朝鮮「核実験中止」宣言、実験場は既に崩壊・汚染で使用不可”. www.chosunonline.com. 2019年12月11日閲覧。
- ^ 북한, 풍계리 핵실험장 폭파…폐기 실행
- ^ “New Activity at Punggye-ri Tunnel No.4”. 戦略国際問題研究所 (2022年6月15日). 2022年6月16日閲覧。
- ^ “米政府高官 北朝鮮の7回目の核実験「可能性は常に存在、警戒を続ける」 日米韓首脳会談で対応を協議へ”. TBS NEWS DIG. (2024年11月15日) 2024年11月15日閲覧。