不二越
株式会社不二越(ふじこし、英: NACHI-FUJIKOSHI CORP.)は、東京都港区に本社を置く切削工具・ベアリング・産業用ロボット(おもに自動車製造用ロボット)の製造を中心とする日本の企業である。東京証券取引所プライム市場上場企業で、2004年までは日経平均株価の構成銘柄であった。
本社が入居する汐留住友ビル | |
種類 | 株式会社 |
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機関設計 | 監査役会設置会社[1] |
市場情報 | |
本社所在地 |
日本 〒105-0021 東京都港区東新橋一丁目9番2号 汐留住友ビル17階 北緯35度39分44秒 東経139度45分36.5秒 / 北緯35.66222度 東経139.760139度座標: 北緯35度39分44秒 東経139度45分36.5秒 / 北緯35.66222度 東経139.760139度 |
設立 |
1928年(昭和3年)12月21日 (不二越鋼材工業株式会社) |
業種 | 機械 |
法人番号 | 4230001002687 |
事業内容 |
マシニング事業 ロボット事業 機能部品事業 マテリアル事業 |
代表者 |
本間博夫(代表取締役会長) 坂本淳(代表取締役社長) |
資本金 |
160億7400万円 (2021年11月期) |
発行済株式総数 | 2491万9343株 |
売上高 |
連結:2291億1700万円 単独:1705億3800万円 (2021年11月期) |
営業利益 |
連結:147億1800万円 単独:68億1800万円 (2021年11月期) |
経常利益 |
連結:144億5700万円 単独:63億7200万円 (2021年11月期) |
純利益 |
連結:99億9300万円 単独:46億800万円 (2021年11月期) |
純資産 |
連結:1247億9700万円 単独:752億9200万円 (2021年11月期) |
総資産 |
連結:3193億1200万円 単独:2436億2000万円 (2021年11月期) |
従業員数 |
連結:7,204人 単独:3,151人 (2024年2月現在) |
決算期 | 11月30日 |
主要株主 |
那智わねい持株会 9.49% ナチ不二越従業員持株会 5.94% 三菱UFJ銀行 4.79% 日本マスタートラスト信託銀行(信託口)4.46% 日本カストディ銀行(信託口)4.38% 北陸銀行 3.49% (2020年11月30日現在) |
関係する人物 | 井村荒喜(創業者) |
外部リンク |
www |
創業地は富山県富山市で、かつては本社も富山市に置かれていたが、2018年(平成30年)2月、本社機能を東京に全面移転した[2]。
商標はNACHI(那智)。かつては那智号のブランドで自転車を製造していた。
社名の由来
編集創業者の井村荒喜が、「機械工具分野の自立が、わが国の産業を発展させる基礎である」という強い使命感にあふれ、この抱負を、創業の精神として社名を「不二越」とした。不二は、仏典で「善悪不二、邪正一如」あるいは「迷悟不二」というように、現象としては違うもの、反対に見えるものも、より高い次元に立ってその本質を深く見極めれば、もともと一つのものであることを意味する。すなわち、正に対する反、そして合への昇華を期するもの。越は、北陸の古い呼称「高志」を意味する。
NACHIブランドは、日本のルーツである熊野那智大社に由来し、高い事業意欲を表している。1929年(昭和4年)、昭和天皇が国産奨励の産業視察のため関西に巡幸した折、優秀国産品として、不二越のハクソー(金切鋸刃)を大阪市庁で見学した。井村はこの栄誉にいたく感激し、このとき天皇が座乗した最新鋭の重巡洋艦「那智」の艦形をバックにしてNACHIマークをつくり、商標とした[3]。
沿革
編集- 1928年(昭和3年)12月21日 - 不二越鋼材工業株式会社設立[4]。
- 1941年(昭和16年) - 海軍用の高角砲、機銃の部品生産を開始。
- 1944年(昭和19年) - 軍需会社法による軍需会社に指定。
- 1944年(昭和19年)10月 - 満洲証券取引所上場。
- 1945年(昭和20年) - 上滝小学校講堂へ疎開[5]。
- 1946年(昭和21年) - 自転車や民生品などの製造開始。
- 1949年(昭和24年) - 東京証券取引所1部上場。
- 1950年(昭和25年) - 自転車製造業から撤退。
- 1963年(昭和38年)8月 - 株式会社不二越に商号変更[6]。
- 1999年(平成11年) - 住友電工ハードメタル(当時は住友電気工業の粉合・ダイヤ事業部)と業務提携。
- 2013年(平成25年) - 中国で産業用ロボットの生産を開始[7]。
- 2017年(平成29年)8月20日 - 本社を富山・東京の2本社制から東京に一本化[8][9][10]。
- 2018年(平成30年)2月 - 本店を東京に移転。本社機能を一本化[2][9][10]。
本社・生産拠点
編集- 本社 - 東京都港区
- 富山事業所(旧・富山本社) - 富山県富山市
- 東富山事業所 - 富山県富山市
- 滑川事業所 - 富山県滑川市
- 水橋事業所 - 富山県富山市
- 流杉事業所 - 富山県富山市
騒動・訴訟
編集ベアリングカルテル
編集2012年12月28日、ベアリングの販売を巡る大手メーカー4社の価格カルテル事件で、東京地方裁判所から独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪で不二越の元取締役に懲役1年2月(執行猶予3年)、元軸受企画部副部長に懲役1年(執行猶予3年)、法人としての不二越に罰金1億8千万円の有罪判決が言い渡された[11]。2013年3月29日、公正取引委員会から独占禁止法違反で排除措置命令と約5億900万円の課徴金納付命令を受けた[12]。
女子挺身隊に関する訴訟
編集2013年2月、太平洋戦争中に女子挺身隊として強制労働させられたとして、韓国人女性やその遺族らが不二越に損害賠償を求める訴訟をソウル中央地方法院に起こした[13]。原告は2003年にも不二越と日本政府に対し富山地方裁判所に訴えを起こしていたものの、同地裁は日韓請求権協定により個人の請求権は消滅しているとして原告敗訴の判決を下し、最高裁判所も2011年に原告の上告を棄却していたが、三菱重工業と新日鉄住金が訴えられた別の訴訟において、2012年5月に韓国の大法院が「個人の請求権は有効」との判断を示したことに伴い、改めて不二越を提訴したものであった[14]。
ソウル中央地方法院は2014年、原告の訴えを一部認めて1人当たり8000万 - 1億ウォン(当時の為替レートで約830万 - 1030万円)の支払いを不二越に命じ[14][15]、控訴審のソウル高等法院も2019年1月に一審判決を支持する判決を下した[16]。上告審の大法院は2024年1月、同様の理由で不二越に対し起こされていた他2件の訴訟もあわせて上訴をいずれも棄却し、不二越の敗訴が確定した[17]。
従業員採用に関する発言
編集2017年7月5日に富山市内で開かれた同年5月中間決算の会見において、本社を東京に一本化することを発表した会長の本間博夫が、東京一本化の理由を「優秀な人材を全国から幅広く集めたい」と説明した上で「富山生まれの人は閉鎖的な考え方なので極力採用しない」という趣旨の発言をした[18]。富山労働局は「公正な採用選考の観点から不適切」との見解を示し[19]、本間は同年7月25日付で謝罪のコメントを同社ウェブサイトに掲載した[20]。
脚注
編集- ^ 役員紹介 - 株式会社不二越 2021年6月16日
- ^ a b 『組織改正と人事異動について(2018年2月21日付)』(プレスリリース)不二越、2018年2月21日 。2018年5月13日閲覧。
- ^ 株式会社不二越
- ^ 『富山市史 第二巻』(1960年4月15日、富山市役所発行)516頁。
- ^ 『大山の歴史』(1990年3月31日、大山町発行)934頁。
- ^ 株式会社不二越 沿革 (2019年11月期)(どんぶり会計、2024年2月23日閲覧)
- ^ “不二越、中国で産業用ロボットを生産”. 日本経済新聞. (2013年1月15日) 2017年4月14日閲覧。
- ^ 『組織改正と取締役の担当職務の変更および人事異動について(2017年8月20日付)』(プレスリリース)不二越、2017年8月18日 。2017年11月26日閲覧。
- ^ a b “不二越 東京に本社一本化…本店も移転”. 読売新聞. (2017年7月6日). オリジナルの2017年7月6日時点におけるアーカイブ。 2017年7月8日閲覧。
- ^ a b 北日本新聞 2017年7月6日付朝刊1面。
- ^ “不二越元取締役らに有罪判決 ベアリングのカルテルで”. 日本経済新聞. (2012年12月28日) 2023年1月7日閲覧。
- ^ “3社に課徴金133億円 ベアリングカルテルで公取委が命令”. 日本経済新聞. (2013年3月29日) 2023年1月7日閲覧。
- ^ 「韓国で慰謝料求め不二越を提訴/元挺身隊女性と遺族」『四国新聞』2013年2月14日。2024年6月9日閲覧。
- ^ a b 「挺身隊訴訟 韓国地裁が不二越に賠償命令(10月31日)」『聯合ニュース』2014年10月31日。2024年6月9日閲覧。
- ^ 内山清行「韓国徴用工訴訟、不二越に賠償命令 日本企業4件目」『日本経済新聞』2014年10月31日。2024年6月9日閲覧。
- ^ 山田健一「挺身隊訴訟、不二越の控訴棄却」『日本経済新聞』2019年1月18日。
- ^ 小池和樹「韓国最高裁、挺身隊巡る不二越の上告棄却…元徴用工訴訟12件はすべて日本企業敗訴」『読売新聞』2024年1月25日。2024年6月9日閲覧。
- ^ 「富山生まれ「極力採りません」「閉鎖的な考え方が強いです」 本間不二越会長、会見で持論」『北日本新聞』2017年7月13日。オリジナルの2017年8月6日時点におけるアーカイブ。2024年6月9日閲覧。
- ^ 不二越 「富山の人は極力採用せず」 地元機械メーカー会長 毎日新聞 2017年7月15日
- ^ 不二越会長 「富山採らぬ」謝罪 HPで 毎日新聞 2017年7月26日