ロバート・キング・マートン

ロバート・キング・マートン(Robert King Merton、1910年7月4日 - 2003年2月23日)は、アメリカ社会学者

ライデン大学から名誉学位を授与(1965年)

略歴

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人物

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  • パーソンズと並ぶ機能主義の社会学者であり、その批判的継承者でもある。マートンの社会学上の業績は多岐にわたり、社会心理学人類学等の研究成果を吸収しつつ、数多くの成果を世に残している。
  • 門下として、シーモア・M・リプセットアルヴィン・グールドナーピーター・ブラウらを輩出した。
  • また、 1934年に結婚したSuzanne Carhartとの間にできた子供に、1997年ノーベル経済学賞を受賞したロバート・マートンがいる。息子のノーベル賞受賞後、老マートンはしばしば書簡に「経済学者の父」とサインしていた[3]。なおSuzanne Carhartとは1968に離婚し、前妻は1992年に亡くなった。前妻の亡くなった翌年の1993年に、マートンは科学社会学者でコロンビアの社会学部教授も歴任したHarriet Zuckermanと再婚し、彼女はマートンの亡くなるまで彼に連れ添った。

研究と思想

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機能主義と中範囲の理論

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  • 彼をパーソンズと同じ構造機能主義に分類する学者もいるが、その見解は正しいとはいえない[4]。マートンの、パーソンズと並ぶもう一人のハーバードでの恩師ソローキンはパーソンズ批判でも知られているし、マートンの弟子の一人グールドナーもそうであったことからも、そのことはうかがえる。グールドナーの出世作とされる『産業における官僚制』(1954)は、コロンビアの学位論文を基にしているが、指導教授マートンの影響を強く受けている[5]。マートンの研究は、パーソンズの演繹的で幾何学的精神と好対照をなす、帰納的な精神をその特徴としている。パーソンズ研究で知られる高城和義東北大学元教授によると、「マートンは、師のパーソンズとは異なった志向をもち、マートンの弟子たちも激しいパーソンズ批判を重ねていったにもかかわらず、二人は生涯変わらず友好関係をつづけ、学問的協力関係を保っていった。このことは、充分に銘記されてよいと思われる」[6]とのことである。
  • パーソンズは、社会的機能は社会構造の維持・安定に貢献するものでなくてはならないと考えたが、マートンは、社会的機能には既存の社会構造を揺るがす逆機能があることを指摘している。さらに、パーソンズがすべての社会に適用できる統一理論を目指したのに対して、社会調査による成果を元に、個別の事例と抽象的理論との間の橋渡しとしての「中範囲の理論」の必要性を唱えた。ただし、この「中範囲の理論」は、パーソンズの目指す一般理論を否定したものではなく、特殊理論を積み重ねていくことによって最終的には一般理論へ到達しようという、いわば過渡的な理論ということができる。ただし理論の説明自体は抽象的な段階に留まる。

機能分析

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  • マートンの機能分析では、その結果が望ましいものである順機能とそうでない逆機能、その結果が知られている顕在的機能とそうでない潜在的機能の区別が提唱された。たとえば、その結果が知られておらず望ましくない働きをあらわす場合、潜在的逆機能といわれる。
  • 彼の機能分析のねらいは、「意図せざる結果」を明らかにするとともに、従来の機能主義理論のうちに認められた保守性とイデオロギー性とをともに克服することにある。

主な業績

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マートンによる逸脱の類型

著作・論文

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単著

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  • Mass Persuasion: the Social Psychology of a War Bond Drive, (Harper, 1946).
柳井道夫訳『大衆説得――マス・コミュニケイションの社会心理学』(桜楓社, 1970年)
  • Social Theory and Social Structure: Toward the Codification of Theory and Research, (Free Press, 1949).
森東吾森好夫金沢実中島竜太郎訳『社会理論と社会構造』(みすず書房, 1961年)
  • On the Shoulders of Giants: A Shandean Postscript, (Free Press, 1965).
  • On Theoretical Sociology: Five Essays, Old and New, (Free Press, 1967).
  • Science, Technology & Society in Seventeenth Century England, (Harper & Row, 1970).
  • Varieties of Political Expression in Sociology: An American Journal of Sociology Publication, (University of Chicago Press, 1972).
  • The Sociology of Science: Theoretical and Empirical Investigations, (University of Chicago Press, 1973).
  • Sociological Ambivalence and Other Essays, (Free Press, 1976).
  • The Sociology of Science: An Episodic Memoir, (Southern Illinois University Press, 1979).
成定薫訳『科学社会学の歩み――エピソードで綴る回想録』(サイエンス社, 1983年)
  • Social Research and the Practicing Professions, (Abt Books, 1982).
  • On Social Structure and Science, (University of Chicago Press, 1996).

共著

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  • The Focused Interview: A Manual of Problems and Procedures, with Marjorie Fiske and Patricia L. Kendall, (Free Press, 1956).
  • The Freedom to Read: Perspective and Program, with Richard McKeon and Walter Gellhorn, (Bowker, 1957).
  • An Introduction to the Study of Society, with Blaine E. Mercer, (Harcourt, Brace, 1958).
  • The Travels and Adventures of Serendipity: A Study in Sociological Semantics and the Sociology of Science, with Elinor Barber, (Princeton University Press, 2004).

共編著

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  • Continuities in Social Research: Studies in the Scope and Method of "the American soldier", co-edited with Paul F. Lazarsfelt, (The Free Press, 1950).
  • Reader in Bureaucracy, co-edited with Ailsa P. Gray, Barbara Hockey, and Hanan C. Selvin, (Free Press, 1952).
  • The Student-Physician: Introductory Studies in the Sociology of Medical Education, co-edited with George G. Reader and Patricia L. Kendall, (Harvard University Press, 1957).
  • Sociology Today: Problems and Prospects, co-edited with Leonard Broom and Leonard S. Cottrell, (Basic Books, 1959).
  • Contemporary Social Problems: An Introduction to the Sociology of Deviant Behavior and Social Disorganization, co-edited with Robert A. Nisbet, (R. Hart-Davis, 1961).
  • The Sociology of Science in Europe, co-edited with Jerry Gaston, (Southern Illinois University Press, 1977).
  • Qualitative and Quantitative Social Research: Papers in Honor of Paul F. Lazarsfeld, co-edited with James S. Coleman and Peter H. Rossi, (Free Press, 1979).
  • Sociological Traditions from Generation to Generation: Glimpses of the American Experience, co-edited with Matilda White Riley, (Ablex Pub. Corp., 1980).

脚注

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  1. ^ 高城和義「マートン文書の「知の社会史」上の意義――マートン研究の今日的課題――」『帝京社会学』24号(2011) https://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/syakai24-03.pdf なお苫米地伸東京学芸大学准教授の授業配付資料によると「12歳のとき手品師として荒稼ぎ」とある。 http://www.u-gakugei.ac.jp/~tschin/csp/csp02_2.pdf
  2. ^ 高城 前掲論文 https://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/syakai24-03.pdf
  3. ^ http://articles.latimes.com/2003/mar/02/local/me-merton2/2
  4. ^ チャールズ・クロザーズ『マートンの社会学』中野正大・金子雅彦訳、1993年、世界思想社、83-84、91頁を参照。
  5. ^ 宮原浩二郎「レフレクシヴ・プロジェクト:A.W.グールドナー再考」『関西学院大学社会学部紀要』57号、1988年 http://www.kwansei.ac.jp/s_sociology/kiyou/57/57-ch04.pdf
  6. ^ 高城和義「マートン文書の「知の社会史」上の意義――マートン研究の今日的課題――」『帝京社会学』24号(2011) https://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/syakai24-03.pdf

関連項目

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