リッチストライク
リッチストライク(Rich Strike、2019年4月25日 - )は、アメリカ合衆国のサラブレッドの競走馬。2022年のケンタッキーダービーにおいて補欠繰り上がり・単勝オッズ81倍の大穴馬ながら優勝を果たした[4][5]。
リッチストライク | ||||||
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欧字表記 | Rich Strike | |||||
品種 | サラブレッド | |||||
性別 | 牡 | |||||
毛色 | 栗毛 | |||||
生誕 | 2019年4月25日(5歳)[1] | |||||
父 | Keen Ice | |||||
母 | Gold Strike | |||||
母の父 | Smart Strike | |||||
生国 | アメリカ合衆国 | |||||
生産者 | Calumet Farm[1] | |||||
馬主 |
Calumet Farm →RED TR-Racing (Richard Dawson)[1] | |||||
調教師 |
Joe Sharp →Eric Reed →William Mott[1][2] | |||||
競走成績 | ||||||
生涯成績 | 14戦2勝[1] | |||||
獲得賞金 | 2,526,809USドル[1] | |||||
WBRR | I120 - M120 / 2022年[3] | |||||
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出自
編集リッチストライクは、2019年4月25日にケンタッキー州のカルメットファームで生産された[6]。母ゴールドストライク(母父スマートストライク)は2005年のカナダ最優秀3歳牝馬に選ばれた馬で、また父はトラヴァーズステークスでアメリカンファラオに勝ったことで知られるキーンアイスであった。その後の成績により、リッチストライクはキーンアイス産駒としての最初のG1競走勝ち馬となり、またカルメットファームにとって10頭目のケンタッキーダービー優勝馬となった[7][8]。
経歴
編集- 以下、特記がない限り競走はすべてダートコース。
2021年(2歳時)
編集リッチストライクは当初カルメットファーム所有、ジョー・シャープ調教師の調教の下で競走馬となり、2021年8月15日にエリスパーク競馬場の芝8ハロン(1マイル)の未勝利戦でデビュー戦を切った。初戦でのリッチストライクはスタートで出遅れてしまい、最下位10着に沈んだ[9]。
翌戦、リッチストライクはチャーチルダウンズ競馬場での未勝利クレーミング競走(8ハロン)に登録された。ここでもリッチストライクはスタートが遅かったが、バックストレッチにおいて先団の後ろにつけて進み、そしてコーナーで猛烈に上がって先頭に立つと、後続を大いに引き離し、最終的に2着馬に17馬身1/4差をつけて初勝利を挙げた[10]。
この競走後、調教師のエリック・リードは、リチャード・ドーソン率いるRED-TRレーシングに代わって、リッチストライクを30,000ドルで購入した[11]。
10月9日、リッチストライクはキーンランド競馬場でのオプショナルクレーミング競走(8ハロン)に出走、スタートで躓き、最初のコーナー前で他馬と接触して安定を欠いた。その後復調したものの、最後の1ハロンで詰まった前方をこじ開けるのに苦労し、結果1着馬から3馬身半差の3着で競走を終えた[12]。
12月26日にニューオーリンズのフェアグラウンズ競馬場で行われたガンランナーステークス(グレード外・8.5ハロン)がリッチストライクにとって同年最後の競走であった。リッチストライクはずっと後方に付けて進み、勝ち馬エピセンターから14馬身離された5着に終わった[13]。
2022年(3歳時)
編集リッチストライクは2022年1月22日、ケンタッキー州のターフウェイパーク競馬場で行われたレオネイタスステークス(グレード外・AW8ハロン)で3歳シーズンの初戦を迎えた。リッチストライクはここでも後方から追い上げる競馬に徹し、3着に収まった[14]。調教師のリードは後のコメントで、リッチストライクが悪天候のために数日間のトレーニングの機会を失ったと語った。またリードは「パドックでは彼はモンスターでしたが、レースではそうではありませんでした。今回ひどく走りませんでしたが、彼がただ彼自身ではありませんでした」とも語った[11]。
続いて3月5日の同じくターフウェイパークで行われたジョンバッタリアメモリアルステークス(グレード外・AW8.5ハロン)にも出走、前走同様の追い込みの競馬を見せ4着に入った[15]。
同じくターフウェイパークの4月2日に行われたジェフルビーステークス(G3・AW9ハロン)でリッチストライクは重賞に初出走した。序盤から中盤にかけてずっと後方待機していたが、コーナーから内ラチ沿いに進出し、勝ち馬ティズザボムの後ろ3着で競走を終えた[16]。
ケンタッキーダービー
編集前走での3位入賞により、リッチストライクは2022年の「ロード・トゥ・ケンタッキーダービー」の得点が20ポイント加算された。本来この得点ではケンタッキーダービー出走に必要なポイントを下回っていたものの、すでに登録されていたエセリアルロードという馬が直前でスクラッチ(回避)したため、リッチストライクは補欠としてダービーへの参加が叶った[17] [11][18]。リードは当初、ベルモントパーク競馬場のピーターパンステークスにリッチストライクを出走させようとしていたため、直前の通知で心肺蘇生が必要になったと冗談を言った。さらに「彼はかつてないほど良くなった。彼はこのトラックが大好きです。この1週間、私は「彼は毎日良くなる」と思っていました。彼は今とても幸せです。走ることができるのは他ならぬ祝福です」とも語った[11]。馬主のリチャード・ドーソンも、この直前の登録変更を締め切りのちょうど30秒前に変更について知ったという[19]。
5月7日に開催された2022年のケンタッキーダービー(G1・チャーチルダウンズ・10ハロン)のは混戦模様で、その中で高く評価されていた馬は、ルイジアナダービーとリズンスターステークスを制してきたエピセンター、ブルーグラスステークス勝ち馬のゼンダン、サンタアニタダービー勝ち馬のテイバであった[20][21][22]。一方でリッチストライクは単勝オッズ約81倍との大穴扱いを受けていた。ソニー・レオン鞍上のもと、レースがスタートするとリッチストライクはスタートがうまくいかず、先頭から17馬身離された18番手につけていた。その後も後方を進んでいたが、第3コーナーから4頭分外に持ち出すと、波をかき分けるように進出し始め、その後内ラチ沿いに収まっていった。そして前方の力尽きた馬をどんどん追い抜いていくと、最後には先頭に立っていたエピセンターを3/4馬身差で捕らえてゴール、優勝を手にした[23]。
鞍上を務めたベネズエラ出身のソニー・レオンにとっては、これが初めてのグレード競走優勝でもあった。レオンは「皆さんは私たちが難しい役目を負っていたことを知っていますが、私は馬を知っています。彼が勝つことができるかどうかはわかりませんでしたが、私は彼と良い気持ちでした。私は最後の直線まで待たなければならなかった。待って、そして道が開いた。私は緊張していなかった。むしろワクワクしました。私が私の馬を知っているように、誰も私の馬を知りません」とコメントした[24]。
リッチストライクの大穴での勝利は、1913年にドーンレイルが記録した単勝92倍というオッズに続いてケンタッキーダービー史上2番目に大きな大穴であった[25]。
ベルモントステークス以後
編集三冠レースの2戦目となる5月21日のプリークネスステークスを回避し、三冠最終戦となる6月11日のベルモントステークスでは最後方追走も直線で伸びを欠いて6着に惨敗[26]。続く8月27日のトラヴァーズステークスではエピセンターの4着[27]、10月1日のG2ルーカスクラシックでは4番手追走から直線で脚を伸ばしてホットロッドチャーリーとの叩き合いとなるも頭差で2着に敗れる[28]。その後、11月5日のブリーダーズカップ・クラシックでは怪物フライトラインの4着、11月25日のクラークステークスでは最下位の6着に終わった[29]。
2023年(4歳時)
編集5月5日のG2アリシーバステークスで復帰したが6頭立ての5着に敗れる。その後、レースに出走することなく同年11月に現役引退を発表して、セールに上場して2024年より種牡馬となる予定であったが[30]、セールへの参加を取りやめて一転して現役を続行することになった[31]。
血統
編集リッチストライクの血統 | (血統表の出典)[§ 1] | |||
父 Keen Ice アメリカ 2015 鹿毛 |
父の父 Curlinアメリカ 2004 栗毛 |
Smart Strike | Mr. Prospector | |
Classy 'n Smart | ||||
Sherriff's Deputy | Deputy Minister | |||
Barbarika | ||||
父の母 Medomakアメリカ 2007 鹿毛 |
Awesome Again | Deputy Minister | ||
Primal Force | ||||
Wiscasset | Kris S. | |||
Tara Roma | ||||
母 Gold Strike カナダ 2002 黒鹿毛 |
Smart Strike カナダ 1992 鹿毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native | |
Gold Digger | ||||
Classy 'n Smart | Smarten | |||
No Class | ||||
母の母 Brassy Goldカナダ 1996 鹿毛 |
Dixieland Brass | Dixieland Band | ||
Windmill Gal | ||||
Panning For Gold | Search For Gold | |||
Apple Pan Dowdy | ||||
5代内の近親交配 | Smart Strike 3×2, Deputy Minister 4×4(父内) | [§ 2] | ||
出典 |
出典
編集- ^ a b c d e f “Rich Strike (KY)”. equibase.com. 2022年5月8日閲覧。
- ^ 奇跡のKYダービー馬リッチストライクが転厩、オーナーと調教師が仲違いJRA VAN the world、2023年5月26日配信・閲覧
- ^ “The LONGINES World's Best Racehorse Rankings For 3yos and upwards which raced in 2022”. IFHA. 2023年1月18日閲覧。
- ^ Dotson (May 7, 2022). “Rich Strike finishes first at the 148th Kentucky Derby”. CNN. May 7, 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。May 7, 2022閲覧。
- ^ Hoppert, Melissa (May 7, 2022). “Kentucky Derby Live Updates: Rich Strike, 80-1 Long Shot, Wins in a Stunning Upset”. The New York Times. オリジナルのMay 7, 2022時点におけるアーカイブ。 May 7, 2022閲覧。
- ^ “Ethereal Road Out, Rich Strike In”. Thoroughbred Daily News. (May 6, 2022). オリジナルのMay 6, 2022時点におけるアーカイブ。 May 7, 2022閲覧。
- ^ “Calumet extends record as leading KY Derby breeder”. BloodHorse.com. May 8, 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。May 8, 2022閲覧。
- ^ Moore, Josh (May 7, 2022). “Who is Rich Strike? What to know about the champion of this year's Kentucky Derby”. Lexington Herald-Leader. オリジナルのMay 8, 2022時点におけるアーカイブ。 May 7, 2022閲覧。
- ^ “Chart for August 15, 2021 at Ellis Park”. Equibase. November 6, 2021時点のオリジナルよりアーカイブ。May 8, 2022閲覧。
- ^ “Chart for September 17, 2021 at Churchill Downs”. BloodHorse.com. October 27, 2021時点のオリジナルよりアーカイブ。May 8, 2022閲覧。
- ^ a b c d Crosby, Claire; King, Byron (May 6, 2022). “Reed Savors Experience as Rich Strike Makes Derby Field”. BloodHorse. オリジナルのMay 7, 2022時点におけるアーカイブ。 May 7, 2022閲覧。
- ^ “Chart for October 9, 2021 at Keeneland”. Equibase. May 8, 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。May 8, 2022閲覧。
- ^ “Chart for the Gun Runner Stakes”. Equibase. March 16, 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。May 8, 2022閲覧。
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- ^ “Chart for the John Battaglia Memorial Stakes”. Equibase. March 25, 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。May 8, 2022閲覧。
- ^ “Chart for the Jeff Ruby Steaks”. Equibase. April 27, 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。May 8, 2022閲覧。
- ^ Wolken, Dan. “Long shot Rich Strike stuns all in winning 148th Kentucky Derby”. USA Today. オリジナルのMay 7, 2022時点におけるアーカイブ。 May 7, 2022閲覧。
- ^ Culpepper, Chuck; Hill, Glynn A. (May 7, 2022). “Rich Strike, an 80-1 shot, wins the Kentucky Derby in a stunner” (英語). The Washington Post. オリジナルのMay 7, 2022時点におけるアーカイブ。 May 7, 2022閲覧。
- ^ “Long shot Rich Strike wins 148th Kentucky Derby”. ESPN. (May 7, 2022). オリジナルのMay 8, 2022時点におけるアーカイブ。 May 7, 2022閲覧。
- ^ Roberts. “Ranking the top 10 horses for the 2022 Kentucky Derby”. Lexington Herald-Leader. May 7, 2022閲覧。
- ^ King. “Derby Dozen”. www.bloodhorse.com. May 7, 2022閲覧。
- ^ “Keeler Johnson's Kentucky Derby 148 Selections” (英語). cs.bloodhorse.com. May 7, 2022閲覧。
- ^ “Chart for the Kentucky Derby”. Equibase. May 8, 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。May 8, 2022閲覧。
- ^ Sherack (May 7, 2022). “80-1 Longshot Strikes It Rich in Derby” (英語). Thoroughbred Daily News. May 7, 2022閲覧。
- ^ Frakes, Jason (May 7, 2022). “'Unbelievable upset': Rich Strike wins the 2022 Kentucky Derby at Churchill Downs” (英語). The Courier-Journal. オリジナルのMay 7, 2022時点におけるアーカイブ。 May 7, 2022閲覧。
- ^ モードニゴールがベルモントSを快勝、KYダービー馬リッチストライクは6着に完敗JRA-VAN Ver world、2022年6月12日配信・閲覧
- ^ エピセンター、KYダービー馬ら寄せつけず米G1トラヴァーズSを圧勝JRA-VAN Ver world、2022年8月28日配信・閲覧
- ^ ホットロッドチャーリーがリッチストライクと大激戦、米G2ルーカスクラシックを制すRA-VAN Ver world、2022年10月3日配信・閲覧
- ^ KYダービー馬リッチストライク、米G1クラークSで最下位に沈むJRA-VAN Ver world、2022年11月26日配信・閲覧
- ^ 2022 Kentucky Derby Winner Rich Strike Retiredbloodhorse.com、2023年11月9日配信・閲覧
- ^ 去就が二転三転のKYダービー馬リッチストライク、現役続行を目指す意向JRA-VAN Ver world、2023年12月1日配信・閲覧
- ^ a b “Rich Strike”. EquineLine. May 7, 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。May 7, 2022閲覧。
- ^ “【ケンタッキーダービー】優勝馬リッチストライクの姉は日本で繁殖に、オルフェーヴルと交配 | 競馬ニュース”. netkeiba.com. 2022年5月10日閲覧。
外部リンク
編集- 競走馬成績と情報 netkeiba、JBISサーチ、Racing Post