リオジャスクス
リオジャスクス(学名:Riojasuchus)は、アルゼンチンの上部三畳系ノーリアン階から産出した、絶滅したオルニトスクス科の主竜類の属[1][2]。オルニトスクス科の中で最も新しい時代の属であるとともに、最も完全な骨格が知られている点で特筆性がある。タイプ種 Riojasuchus tenuisceps は1969年にホセ・ボナパルテ (José Bonaparte) により命名されており[3]、アルゼンチンで発見された保存の良い数多くの三畳紀の主竜類の中でも最初の一つである。ホロタイプ標本 PVL 3827 はアルゼンチン北西部のIschigualasto-Villa Unión盆地に分布するロス・コロラドス層で発見された[4][5]。
リオジャスクス | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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リオジャスクスの頭蓋骨
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地質時代 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
後期三畳紀ノーリアン期 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Riojasuchus Bonaparte, 1969 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
タイプ種 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Riojasuchus tenuisceps Bonaparte, 1969 |
発見と命名
編集ホロタイプ標本 PVL 3827 は完全な頭蓋骨と下顎およびほぼ完全な体骨格からなる[4]。また、ホロタイプ標本以外に3個の標本が知られている。PVL 3828 はホロタイプと同程度に完全な標本であり、ほぼ完全な頭蓋骨を含む。PVL 3826 は関節した椎骨と肋骨の断片からなる。PVL 3814 は椎骨の複数個の断片、四肢の骨、皮骨板を含むのみである[5]。
これら4標本は全てロスコロラドス層の上部で共に近接して発見された[3]。ロスコロラドス層の多様な化石単層は放射年代測定によって後期三畳紀の中期ノーリアン期の地層として推定されている[6]。発見された化石はサン・ミゲル・デ・トゥクマンに位置するInstituto Miguel Lilloの古脊椎動物学コレクション(PVL)に所蔵されている[4][5]。
リオジャスクスとその化石は1969年[3]と1972年にJosé Bonaparteによって論文上で記載された。頭蓋骨の再記載は2016年[4]、体骨格の再記載は2019年に行われている[5]。
特徴
編集リオジャスクスの全長は約1.5メートルに達し、その半分を尾が占める[7]。現生のワニと異なり四肢が体の直下に伸びる直立型であり、頸部も細長い[7]。全身が扁平で這い歩き型の正鰐類よりも陸上生活に適応していたとされる[7]。
Bonaparte (1969)によって判断された形態形質を以下に記す[3]。
- 小型の前眼窩開口部の突出する縁により縁取られるpreorbital vacuity
- 外側に張り出す涙骨の縁
- 下顎窓を伴う短い成体の頭蓋骨に存在する上側頭窓
- 小型の前関節突起を伴う、外側に突出する上角骨の最上部
- 腹側のキールを伴う短い環椎と全ての頸椎
- オルニトスクス型である腸骨・恥骨・大腿骨・距骨・踵骨
- オルニトスクスよりも高い底部を持つ眼窩中央部
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復元図
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頭部の復元図(貫通した外鼻孔はあくまで想像上のもの)
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PVL 3828
分類
編集リオジャスクスはオルニトスクス科の属である[3]。オルニトスクス科は後期三畳紀に生息した偽鰐類の分類群であり、アルゼンチン以外ではブラジルやスコットランドで化石が発見されている[8]。かつてオルニトスクス科は恐竜に近縁と考えられていたが、その後の多くの系統解析で否定されている[1]。
以下はButler et al. (2011)のクラドグラム。主竜型類における祖先-子孫関係を示しており、特に偽鰐類に焦点を当てている[9]。分岐群の名称はNesbitt (2011)に従う[10]。
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古生態
編集リオジャスクスの化石はアルゼンチンの後期三畳紀の地層であるロスコロラドス層で発見されており[3]、この地層の年代は約2億1700万年前から約2億1500万年前と見積もられている[1]。リオジャスクスはオルニトスクス科としては最も新しい時代の動物であり[1]、プロトスクス科のヘミプロトスクス、スフェノスクス類のシュードヘスペロスクス、スタゴノレピス科のネオアエトサウロイデス、リオハサウルス科のリオハサウルスと共存した[3]。
出典
編集- ^ a b c d von Baczko, M. B.; Ezcurra, M. D. (2013). “Ornithosuchidae: a group of Triassic Archosaurs with a unique ankle joint”. In Nesbitt, S. J.; Desojo, J. B.; Irmis, R. B.. Anatomy, Phylogeny and Palaeobiology of Early Archosaurs and Their Kin. The Geological Society. pp. 183–195. ISBN 978-1-86239-361-5
- ^ Von Baczko, M. Belén (2018). “Rediscovered Cranial Material of Venaticosuchus rusconii Enables the First Jaw Biomechanics in Ornithosuchidae (Archosauria: Pseudosuchia)”. Ameghiniana 55 (4): 365–379. doi:10.5710/AMGH.19.03.2018.3170. hdl:11336/99976 .
- ^ a b c d e f g Bonaparte, J. F. (1969). “Dos Nuevas 'Faunas' de Reptiles Triásicos de Argentina” (Spanish). Gondwana stratigraphy: IUGS Symposium. pp. 283–306
- ^ a b c d Baczko, Maria Belen von; Desojo, Julia Brenda (2016-02-05). “Cranial Anatomy and Palaeoneurology of the Archosaur Riojasuchus tenuisceps from the Los Colorados Formation, La Rioja, Argentina” (英語). PLOS ONE 11 (2): e0148575. doi:10.1371/journal.pone.0148575. ISSN 1932-6203. PMC 4743959. PMID 26849433 .
- ^ a b c d von Baczko, M. Belén; Desojo, Julia B.; Ponce, Denis (2019-09-03). “Postcranial anatomy and osteoderm histology of Riojasuchus tenuisceps and a phylogenetic update on Ornithosuchidae (Archosauria, Pseudosuchia)” (英語). Journal of Vertebrate Paleontology 39 (5): e1693396. doi:10.1080/02724634.2019.1693396. hdl:11336/138965. ISSN 0272-4634 .
- ^ Kent, Dennis V.; Santi Malnis, Paula; Colombi, Carina E.; Alcober, Oscar A.; Martínez, Ricardo N. (2014-06-03). “Age constraints on the dispersal of dinosaurs in the Late Triassic from magnetochronology of the Los Colorados Formation (Argentina)” (英語). Proceedings of the National Academy of Sciences 111 (22): 7958–7963. doi:10.1073/pnas.1402369111. ISSN 0027-8424. PMC 4050597. PMID 24843149 .
- ^ a b c 土屋健『ifの地球生命史』藤原慎一、椎野勇太、松田眞由美 監修、技術評論社、2021年2月13日、90頁。ISBN 978-4-297-11920-1。
- ^ “2.3億年前のワニに近い動物「偽鰐類」の新種を発見、レア”. 日経ナショナルジオグラフィック (2020年2月7日). 2023年12月25日閲覧。
- ^ Butler, R. J.; Brusatte, S. J.; Reich, M.; Nesbitt, S. J.; Schoch, R. R.; Hornung, J. J. (2011). Farke, Andrew A.. ed. “The Sail-Backed Reptile Ctenosauriscus from the Latest Early Triassic of Germany and the Timing and Biogeography of the Early Archosaur Radiation”. PLOS ONE 6 (10): e25693. Bibcode: 2011PLoSO...625693B. doi:10.1371/journal.pone.0025693. PMC 3194824. PMID 22022431 .
- ^ Nesbitt, S. J. (2011). “The Early Evolution of Archosaurs: Relationships and the Origin of Major Clades”. Bulletin of the American Museum of Natural History 352: 189. doi:10.1206/352.1. hdl:2246/6112. ISSN 0003-0090 .