ボルノレキサント: Vornorexant)は、不眠症および睡眠時無呼吸症候群の治療のために開発中のオレキシン受容体拮抗薬[3][4][5] 。オレキシン受容体OX 1およびOX 2の両受容体を拮抗する[5]大正製薬により自社創製され、開発されている[3][6]。2024年9月12日 、大正製薬はボルノレキサントを「不眠症」の適応で厚生労働省に製造販売承認申請を行った[6]。日本におけるオレキシン受容体拮抗薬としては、4剤目の申請となった[7]。臨床試験時の開発コードはORN-0829 および TS-142。

ボルノレキサント
IUPAC命名法による物質名
薬物動態データ
半減期1.3–3.3 時間[1][2]
データベースID
CAS番号
2265899-49-6
PubChem CID: 137419776
ChemSpider 61751857
UNII ZY54BP1CK3
別名 ORN-0829; TS-142
化学的データ
化学式C23H22FN7O2
分子量447.47 g·mol−1
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概要

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ボルノレキサントの血中濃度は2.5時間でピークに到達し、半減期は1.3〜3.3時間である[1][2]。早い血中濃度の立ち上がりと短い半減期により、入眠をしやすく、また翌日の眠気などの副作用を軽減することを目指して設計されている[5]

歴史

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  • 2024年9月12日 - 大正製薬はボルノレキサントを「不眠症」の適応で厚生労働省に製造販売承認申請を行った[6][7][8]

臨床試験

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第3相臨床試験

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TS142-301試験

  • 試験デザイン

多施設共同無作為化プラセボ対照並行群間比較試験として実施した[7]。被験者は不眠症患者596例。ボルノレキサント5mgもしくは10mgか、プラセボを1日1回、2週間投与した[7]。主要評価項目は、患者自身による睡眠日誌を用いて就床から眠りにつくまでの時間を評価する「sSL」を設定[7]。副次評価項目は、睡眠日誌で就床時間のうち睡眠時間が占める割合を評価する「sSE」を設定[7]。ベースラインからの変化を検証した[7]

  • 結果

sSLとsSEのいずれも、統計学的に有意に改善した[7][9][10]。安全性面でも、確認された有害事象のほとんどが軽度で、重篤なものは認められなかった[7]。主な有害事象には傾眠があり、5mg群で3.1%、10mg群で3.6%、プラセボ群で1.5%認められた[7][10]

論文

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脚注

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  1. ^ a b “Effects of TS-142, a novel dual orexin receptor antagonist, on sleep in patients with insomnia: a randomized, double-blind, placebo-controlled phase 2 study”. Psychopharmacology 239 (7): 2143–2154. (July 2022). doi:10.1007/s00213-022-06089-6. PMC 9205809. PMID 35296912. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9205809/. 
  2. ^ a b “0146 Efficacy and Safety of Single Dose of TS-142, a Novel and Potent Dual Orexin Receptor Antagonist, in Insomnia Patients”. Sleep 43 (Supplement 1): A58. (April 2020). doi:10.1093/sleep/zsaa056.144. ISSN 0161-8105. 
  3. ^ a b TS 142 - AdisInsight”. 2024年9月22日閲覧。
  4. ^ “Clinical pharmacology, efficacy, and safety of orexin receptor antagonists for the treatment of insomnia disorders”. Expert Opinion on Drug Metabolism & Toxicology 16 (11): 1063–1078. (November 2020). doi:10.1080/17425255.2020.1817380. PMID 32901578. 
  5. ^ a b c “Hypocretins (orexins): The ultimate translational neuropeptides”. Journal of Internal Medicine 291 (5): 533–556. (May 2022). doi:10.1111/joim.13406. PMID 35043499. 
  6. ^ a b c 大正製薬 自社創製の不眠症治療薬・ボルノレキサントを承認申請 | ニュース | ミクスOnline”. www.mixonline.jp. 株式会社ミクス (2024年9月13日). 2024年9月22日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h i j 大正製薬の睡眠薬、P3で好結果 オレキシン受容体拮抗剤で4番手、申請へ”. 日刊薬業 - 医薬品産業の総合情報サイト. 株式会社じほう (2024年9月22日). 2024年9月22日閲覧。
  8. ^ 大正製薬、オレキシン受容体拮抗剤「ボルノレキサント水和物」について「不眠症」を適応症として国内製造販売承認を申請”. 日本経済新聞. 日本経済新聞社 (2024年9月12日). 2024年9月22日閲覧。
  9. ^ オレキシン受容体拮抗剤「ボルノレキサント水和物」の国内製造販売承認申請に関するお知らせ|大正製薬”. 大正製薬. 大正製薬 (2024年9月12日). 2024年9月22日閲覧。
  10. ^ a b 大正製薬 自社創製の不眠症治療薬・ボルノレキサントを承認申請へ 国内P3で主要評価項目達成 | ニュース | ミクスOnline”. www.mixonline.jp. 株式会社ミクス (2024年4月5日). 2024年9月22日閲覧。

関連項目

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