プードル・スプリングス物語
レイモンド・チャンドラーの小説
『プードル・スプリングス物語』(Poodle Springs)は、アメリカの作家レイモンド・チャンドラーの未完の遺稿をロバート・B・パーカーが完成させたハードボイルド小説。1989年に刊行された。私立探偵フィリップ・マーロウを主人公とする長編シリーズの第8作となる。
あらすじ
編集『長いお別れ』で出会った富豪の娘リンダ・ローリングと結婚し、プードル・スプリングスの豪邸に住むことになったフィリップ・マーロウ。だが、妻の金で暮らすことを潔しとしないマーロウは町はずれに探偵事務所を開いた。最初の依頼人は、借金を返さない男を捜してほしいというカジノ経営者だったが、一見単純な依頼はやがて殺人事件へと発展する。
登場人物
編集- フィリップ・マーロウ:主人公。私立探偵。
- リンダ・ローリング・マーロウ:マーロウの妻。『長いお別れ』と『プレイバック』に登場。
- ハーラン・ポター:リンダの父親。大富豪。
- アウグスティノ:マーロウとリンダの雇った召使い。
- マニィ・リップシュルツ:依頼人。カジノ・アゴニィ・クラブの経営者。レスター・ヴァレンタインを捜すよう依頼してくる。
- レナード:リップシュルツの手下。
- レスター・ヴァレンタイン:カメラマン。通称”レス・ヴァレンタイン″マニィ・リップシュルツに借金をしたのち行方不明となる。
- マッフィ・ブラックストゥン・ヴァレンタイン:レスターの妻。大富豪、クレイトン・ブラックストゥンの娘。行方不明の夫を心配する。
- クレイトン・ブラックストゥン:大富豪。プードル・スプリングスの名士。冷酷な人物で利益のためなら、犯罪も辞さない
- エディ・ガルシア:クレイトン・ブラックストゥンの側近。銃の名手で殺しも引き受ける。
- ソンドラ・リー:トップモデル。レスター・ヴァレンタインの仕事相手。
- ラリィ・ヴィクター:カメラマン
- エインジェイル・ヴィクター:ラリィ・ヴィクターの妻
- ローラ・フェイスフル:タップダンスの踊り子
- バーニィ・オウルズ:地方検事局の主任捜査官。物語の途中より殺人事件の捜査に関わってくる。地方検事局にマーロウが勤めていた頃の上司で、彼の腕前を認めている。『大いなる眠り』『高い窓』『さらば愛しき女よ』に登場する。
- ウィルトン・クランプ:リバーサイド郡の主任捜査官。警部補。プードル・スプリングスを管轄している。名士ハーラン・ポターの娘婿であるマーロウのことを厄介の種と考えている。
- ハリィ・シンプスン:弁護士。
作品の詳細
編集本編は41章からなる。『プレイバック』を刊行したのちレイモンド・チャンドラーが1958年秋ごろから書き始めたが、翌59年に死去したため執筆できたのは4章のみであり、その後はロバート・B・パーカーが執筆した。プードル・スプリングスは架空の地名だが、モデルは高級リゾート地のパームスプリングスであり、チャンドラーが「エレガントな女性が3人いれば少なくとも1人はプードルを飼っている」ような土地柄なので、そういう題名にしたと語っている。
映画化
編集1998年にHBOによりテレビ映画化されている(マーロウ 最後の依頼)。監督はボブ・ラフェルソンで、マーロウはジェームズ・カーンが演じている。
日本語訳
編集出版年 | タイトル | 出版社 | 文庫名等 | 訳者 | 巻末 | ページ数 | ISBNコード | カバーデザイン | 備考 |
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1990年5月1日 | プードル・スプリングス物語 | 早川書房 | ハヤカワ・ノヴェルズ(単行本) | 菊池光 | 265 | 978-4152076861 | |||
1997年1月1日 | プードル・スプリングス物語 | 早川書房 | ハヤカワ・ミステリ文庫HM 110-19 | 菊池光 | 権田萬治 蘭の花のような女 | 289 | 978-4150756697 | 唐仁原教久 |
脚注
編集
関連項目
編集- 夢を見るかもしれない - ロバート・B・パーカーによるマーロウもの第2作。『大いなる眠り』の続編。
- S&W M36 - マーロウが携帯する拳銃。終盤で犯人と対峙する際に用いる。