ブラックバード (ビートルズの曲)

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ブラックバード」(Blackbird)は、ビートルズの楽曲である。1968年に発表された9作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ザ・ビートルズ』に収録された。レノン=マッカートニー名義となっているが、ポール・マッカートニーによって書かれた楽曲で、演奏もマッカートニーのみとなっている。スコットランドにある農場で書かれた本作は、黒人女性の人権擁護や解放について歌われている。

ブラックバード
ビートルズ楽曲
収録アルバムザ・ビートルズ
英語名Blackbird
リリース1968年11月22日
録音
ジャンルフォーク
時間2分19秒
レーベルアップル・レコード
作詞者レノン=マッカートニー
作曲者レノン=マッカートニー
プロデュースジョージ・マーティン
チャート順位
後述を参照
ザ・ビートルズ 収録曲
アイム・ソー・タイアード
(DISC 1 B-2)
ブラックバード
(DISC 1 B-3)
ピッギーズ
(DISC 1 B-4)
試聴
Blackbird (Remastered 2009)
ビートルズ公式YouTube

背景・曲の構成

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マッカートニーは、スコットランドにある自身の農場で「ブラックバード」を書いた[1]。ギターの伴奏は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハの「ブーレ ホ短調英語版」に触発されたもので、マッカートニーは「構成的にはメロディとベースラインのハーモニックな関係が特徴となっていて、僕はそこに魅了された。バッハの曲を元にしたギターでメロディを展開させて、別のレベルに持っていった。歌詞はそれに合わせて付けてある」と振り返っている[1]

歌詞は、女性を「鳥」になぞらえて、「傷ついた翼のまま、夜の闇の中にある光を目指して飛んでゆく」などと描写した内容となっている。歌詞についてマッカートニーは「1960年代は公民権をめぐって様々な問題が起きていて、僕らもみな熱心に応援していた。この曲は実のところ、リトルロック高校事件で差別と隔離を受けていた黒人女性に宛てて書いた曲だ」と語っており[1]、2016年4月30日にノース・リトル・ロックで行ったライブでも「僕らはイギリスに戻って、公民権をめぐったさまざまな問題を知ることになったんだけど、僕らにとってこの場所はとても重要な場所だ。だって僕にとってすれば、このリトル・ロックから公民権運動は始まったのだから。何が起こっているのかを知り、問題を乗り越えようとする人々に共感することになって、そうしたことが僕に曲を書かせることになったんだ。少しでも問題を乗り越えようとする人々の手助けになるかもしれないと思ってね」と語っている[2]

アコースティック・ギターでのツーフィンガー奏法によるアルペジオと、指弾きによるストロークとの中間的な演奏が聞け、3弦開放音(G音)が通奏的に鳴り続けているのが特徴。このアコースティック・ギターのフレーズは、2006年にシルク・ドゥ・ソレイユのショーのサウンドトラック・アルバムとして発売された『LOVE』において「イエスタデイ」のイントロとして収録されている[3]

レコーディング

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「ブラックバード」のレコーディングは、1968年6月11日にEMIレコーディング・スタジオのスタジオ2で、ジョージ・マーティンジェフ・エメリックを交えて[4]行なわれた[5]。レコーディングは、マッカートニーがアコースティック・ギターマーティン D-28)を弾きながら歌うという構成で行われ、セッションに参加しなかったジョン・レノンはスタジオ3で「レボリューション9」のサウンド・エフェクトの作成[6]ジョージ・ハリスンリンゴ・スターはカリフォルニアに滞在していた[1]

マッカートニーが一通り演奏した後、マーティンが「リズムも含めて完全に演奏が止まって、そこから再び演奏が始まる」フェイクのエンディングを提案した[1]。別のスタジオで作業をしていたレノンも、度々スタジオ2に顔を出していて、マッカートニーにアコースティック・ギターとピアノで伴奏をつけることを提案した。その後3人で、本作のアレンジについての話し合いを始めた[7]。マッカートニーは「2番目のヴァースから入ってくる弦楽四重奏」を想像したが、マーティンは「演奏が一度止まる箇所までマッカートニーのギターとボーカルのみで通し、そこで遠くからアレンジされた音が聞こえてくる」という案を出した[8]。なお、レノンがこの際に出したブラスバンドの案は、同じくマッカートニー作の「マザー・ネイチャーズ・サン」に流用された[8]

この日にレコーディングされた全32テイクの中から最後のテイクが採用され、10月13日に行われたミキシング作業時にスタジオのサウンド・ライブラリーから取り出した「クロウタドリのさえずり」をオーバー・ダビングして完成となった[4][9]

マッカートニーによるライブでの演奏

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1973年にマッカートニーは、ATVで放送された特別番組『James Paul McCartney』で、「ミッシェル」とともに[10]アコースティックメドレーの1曲として演奏[11]。1975年から1976年にかけて行なわれたワールドツアーで演奏されて以降、マッカートニーは、全てのライブツアーで本作を演奏している[12]。ウイングスのライブ・アルバム『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』、ソロ名義でのライブ・アルバム『公式海賊盤』、『バック・イン・ザ・U.S. -ライブ2002』、『バック・イン・ザ・ワールド』、『グッド・イヴニング・ニューヨーク・シティ〜ベスト・ヒッツ・ライヴ』にライブ音源が収録された。

ライブツアー以外でも、2002年6月に開催された「クイーン・エリザベス二世即位50周年記念コンサート」や、2009年に開催された「コーチェラ・フェスティバル」でも演奏された。

評価や文化的影響

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「ブラックバード」は、同じくマッカートニー作の「ヘルター・スケルター」とともにチャールズ・マンソンによって人種戦争を予見するものと解釈された楽曲の1つだった。マンソンは本作の「You were only waiting for this moment to arise(おまえは飛び上がるこの瞬間だけを待っていた)」というフレーズを「黒人達が立ち上がり、すぐさま取りかかって事を起こすように、ビートルズが仕向けているもの」と解釈し、これがテート・ラビアンカ殺人事件英語版におけるマンソンの動機を確立する決め手となった[13]

Mr.ミスターが1985年に発表した「ブロウクン・ウイングス英語版」には、「Take these broken wings and learn to fly」という本作の歌詞に酷似したフレーズが入っているが、Mr.ミスターのメンバーであるリチャード・ペイジ英語版は「無意識による意図していない引用」としている[14]

2018年に『インデペンデント』誌のジェイコブ・ストルワーシーは、アルバム『ザ・ビートルズ』収録曲を対象としたランキングで、本作を5位に挙げた。本作について、ストルワーシーは「その『美しい静けさ』は、曲に影響を与えた人種間の緊張の高まりと反目している。多くの人にとって、それはマッカートニーのキャリアの典型で、彼のソロライブで傑出した存在であり続ける」と評している[15]

クレジット

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※出典[16][1]

チャート成績

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チャート (2010年) 最高位
オランダ (Single Top 100)[17] 91
US Billboard Hot 100 Recurrents[18]
20

認定と売上

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国/地域 認定 認定/売上数
イギリス (BPI)[19] Silver 200,000 
United States
デジタル配信による売上
506,630[20]

  認定のみに基づく売上数と再生回数

カバー・バージョン

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インデペンデント』誌の音楽ジャーナリスト、ジョン・エルメスによると、「ブラックバード」は2008年12月までに最もカバーされた10曲のうちの1つとなっている。特筆するカバー・バージョンとして、以下のようなものがある。

なお、日本ではSHOW-YA(1988年、『抱きしめたい』)、BONNIE PINK(1998年、『イン・マイ・ライフ』)によってカバーされた。

脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ a b c d e f White Album 2018, p. 18.
  2. ^ ポール・マッカートニー、“Blackbird”を書くきっかけになった二人の黒人女性と対面”. NME Japan. BandLab UK (2016年5月2日). 2020年10月11日閲覧。
  3. ^ マーティン親子による楽曲解説”. Sound Town :: ザ・ビートルズ 日本オフィシャルサイト. 東芝EMI. 2007年2月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月11日閲覧。
  4. ^ a b Lewisohn 1988, p. 137.
  5. ^ MacDonald 1998, p. 255.
  6. ^ White Album 2018, p. 32.
  7. ^ White Album 2018, pp. 18–19.
  8. ^ a b White Album 2018, p. 19.
  9. ^ 'Blackbird'”. Rolling Stone (2011年9月19日). 2019年1月3日閲覧。
  10. ^ Madinger & Easter 2000, p. 180.
  11. ^ Badman 2001, p. 96.
  12. ^ Womack 2014, p. 153.
  13. ^ 殺人鬼チャールズ・マンソンの歪んだビートルズ愛「この音楽は無秩序な力を引き起こす」”. Rolling Stone Japan. CCCミュージックラボ. p. 3 (2019年8月10日). 2020年10月11日閲覧。
  14. ^ 19 of the greatest power ballads of all time”. Smooth (2018年7月2日). 2020年10月11日閲覧。
  15. ^ Stolworthy, Jacob (2018年11月22日). “The Beatles' White Album tracks, ranked - from Blackbird to While My Guitar Gently Weeps”. The Independent. Independent News & Media. 2020年10月11日閲覧。
  16. ^ MacDonald 1998, p. 291.
  17. ^ "Dutchcharts.nl – The Beatles – Blackbird" (in Dutch). Single Top 100. 2022年3月27日閲覧。
  18. ^ The Beatles Chart History (Hot 100 Recurrents)”. Billboard. 2022年1月15日閲覧。
  19. ^ "British single certifications – Beatles – Blackbird". British Phonographic Industry. 2022年1月15日閲覧
  20. ^ Nielsen SoundScan charts – Digital Songs – Week Ending: 11/16/2014”. Nielsen SoundScan. 2015年4月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月15日閲覧。
  21. ^ Johnson, Zac. I Am Sam - Original Soundtrack | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年10月11日閲覧。
  22. ^ Hoffman, K. Ross (2009年7月9日). “Michael Jackson's death causes The Dandy Warhols to cover The Beatles”. NME. IPC Media. 2020年10月11日閲覧。
  23. ^ Price, Deborah Evans (April, 2012). "Cover Set Soars" (Document). Billboard - The International Newsweekly of Music, Video and Home Entertainment. ProQuest 1030338784
  24. ^ デイヴ・グロール、アカデミー賞授賞式でビートルズの“Blackbird”をカヴァー”. NME Japan. BandLab UK Limited. 2020年10月11日閲覧。
  25. ^ Deming, Mark. Blackbirds - Bettye LaVette | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年10月11日閲覧。

参考文献

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外部リンク

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