ハナヒリノキ
ハナヒリノキ(嚏の木[6]・木藜蘆[7]、学名: Eubotryoides grayana var. grayana または Leucothoe grayana)はツツジ科イワナンテン属の落葉低木。有毒植物。和名「ハナヒリノキ」(嚏の木)の由来は、葉の粉が鼻にはいると激しいくしゃみを起こさせるので、くしゃみを意味する古語「嚏(はなひり)」の名がある[8]。
ハナヒリノキ | |||||||||||||||||||||
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福島県磐梯山 2010年7月
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
標準: Eubotryoides grayana (Maxim.) H.Hara var. grayana (1935)[1]
広義: Eubotryoides grayana (Maxim.) H.Hara (1935)[2] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
ハナヒリノキ(嚏の木) |
特徴
編集落葉広葉樹の低木で、高さ1 - 2メートル (m) になる[8]。よく分枝して[8]、若い枝はやや扁平になる。樹皮は灰褐色や褐色で滑らかだが、老木では縦に裂けて不規則にはがれる[6]。一年枝は有毛で、のちに無毛になる[6]。
葉は紙質で、長さ1 - 2ミリメートル (mm) の葉柄をもって互生し、葉身は楕円形または長楕円形で、長さ3 - 10センチメートル (cm) 、幅1.5 - 5.5 cmになり、先は短く鋭くとがり、基部は円形または浅心形になる。葉の両面にはややかたい毛が生え、葉の縁には長さ0.5 mm内外の毛をもつ微小な鋸歯がある。
花期は6 - 8月[8][6]。新枝の先に総状花序を伸ばし、淡緑色のつぼ形の花を下向きに多数つける[8]。花序は長さ5 - 15 cmになり[8]、花序軸には短い毛がやや密生し、花序には線形または線状披針形の包葉があり、下部のものは葉状になる。萼は長さ1 mmで、先端は深く5裂し、裂片は3角状卵形となる。花冠は長さ4 mmのつぼ形で、先端は浅く5裂して先は反曲し、花冠の色は淡緑白色になる。変種で赤みを帯びるものもある。雄蕊は10本ある。
果実は径4 - 5 mmの扁球形の蒴果で、赤紫色になり、上向きについて、果序は横や斜め上に伸びる[6]。蒴果は5室に深くくびれ[8]、両端に多くの毛状突起がある細かい種子が詰まる。落葉後も、冬まで枝先に穂状の果実がよく残っている[6]。
冬芽はジグザ九状に曲がった小枝に仮頂芽、側芽が互生し、小さな円錐形で、芽鱗2 - 4枚に包まれている[6]。葉痕は半円形で、維管束痕が1個つく[6]。
分布と生育環境
編集北海道、本州(近畿地方以北)に分布し[6]、山地帯から亜高山帯の林縁に生育する。地域的に比較的多くの変種が認められている。山地の林縁などに生える[8]。
利用他
編集ジテルペンのグラヤノトキシン(grayanotoxin…この植物にちなみ命名された)を全草に含む有毒植物で、誤食すると吐き気、下痢などの中毒症状を起こす。
かつて、葉や茎を乾燥させたものを粉末にして、汲み取り式便所の蛆殺しとして利用した。また、葉を煎じて家畜の皮膚の寄生虫駆除に使われた[8]。
変種
編集- エゾウラジロハナヒリノキ(ヒロハハナヒリノキ)Leucothoe grayana Maxim. var. glabra Komatsu ex Nakai - 葉が大型で、葉の裏面が白色を帯び、無毛か毛を散生する。花序軸は無毛。北海道、本州の山形県、宮城県以北に分布し、山地の日当たりのよい低木林内や岩地に生育する。
- ウラジロハナヒリノキ(コシノハナヒリノキ)Leucothoe grayana Maxim. var. hypoleuca Nakai - 葉の裏面が白色を帯び、花序軸ともに無毛。山形県から鳥取県までの日本海側に分布し、山地の日当たりのよい低木林内や岩地に生育する。
- ヒメハナヒリノキ Leucothoe grayana Maxim. var. parvifolia (H.Hara) Ohwi - 樹高が低く、葉が小さい。日光山地、秩父山地、南アルプス、北アルプスを中心に分布し、新潟県や福島県でもまれに分布をみることがある。岩場に生育する。
- ウスユキハナヒリノキ Leucothoe grayana Maxim. var. pruinosa (H.Hara) Ohwi - ハナヒリノキとウラジロハナヒリノキ(コシノハナヒリノキ)の中間型。
- ハコネハナヒリノキ Leucothoe grayana Maxim. var. venosa Nakai - 葉が小さく、葉の縁に長さ1mmほどの長い毛をもつ。神奈川県の箱根山や丹沢山、静岡県の富士山や愛鷹山に分布する。
脚注
編集- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Eubotryoides grayana (Maxim.) H.Hara var. grayana ハナヒリノキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年6月26日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Eubotryoides grayana (Maxim.) H.Hara ハナヒリノキ(広義)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年6月26日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Eubotryoides grayana (Maxim.) H.Hara var. oblongifolia (Miq.) H.Hara ハナヒリノキ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年6月26日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Leucothoe grayana Maxim. var. grayana ハナヒリノキ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年6月26日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Leucothoe grayana Maxim. var. oblongifolia (Miq.) Ohwi ハナヒリノキ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年6月26日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 70.
- ^ 井上辰雄 監修、日本難訓難語編集委員会 編『日本難訓難語大辞典』遊子館、2007年1月。ISBN 4-946525-74-2。[要ページ番号]
- ^ a b c d e f g h i 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 224.
参考文献
編集- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、70頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、224頁。ISBN 4-522-21557-6。
- 佐竹義輔ほか 編『日本の野生植物 木本Ⅱ』平凡社、1989年2月。ISBN 4-582-53505-4。