トライク

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トライクは「三輪の乗り物」という意味の表現であり、さまざまな分野で三輪の車種が「トライク」と呼ばれている。

  • 馬車: 馬に引かれた3輪の乗り物。三輪の荷馬車1828年より存在)[1]
  • 自転車: ペダルでこぐ3輪の乗り物(1868年以降に存在していたことが確認されている[1])。
    • 車輪が2つでなく3つの自転車[2]。三輪自転車[3]
    • 幼児用の(前輪をペダルで直接駆動する)3輪車。
  • 航空機: 三輪のウルトラライトプレーン。
  • 自動車: 原動機付き(エンジン付き)の三輪の乗り物。

「tri トライ」の語源は、「3」を意味する ラテン語の「tres」「tria」やギリシア語の「treis」「trias」である[4]。cycleの語源は「周期的に回転するもの」という意味である[5]

本記事では「トライク」と呼ばれる乗り物全般を扱う。特に原動機つきの3輪の乗り物について詳細に解説する。

ペダルでこぐ三輪の乗り物

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TAYLORTRIKE テイラートライク (2008年)

冒頭の定義でも解説したように、ペダルでこぐトライクは1868年以降に存在していたことが確認されている。下に1885年のものの写真を掲載しておく。

原動機つきの三輪の乗り物

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原動機エンジン)がついた、3つの車輪が車両中心線に対して左右対称な二等辺三角形に配置された乗り物である。(なお、日本の一部の人によって「三輪バイク」と呼ばれることもあるが、「バイク」はあくまで「二輪の乗り物」という意味なので、「三輪バイク」は「三輪の、二輪の乗り物」という矛盾した表現になる)。

いくつか分類があり、前輪が2輪で後輪が1輪のトライクは逆トライク、リバーストライクと分類される。オートバイのように車体を傾けることできるものはリーニングトライクと分類される。そして、車体を傾けることができ、かつ前輪が2輪で後輪が1輪のトライクはリーニングリバーストライクと分類される。

日本国外ではエンジン付の三輪の乗り物は「三輪の乗り物」というカテゴリで一本化されて扱われることが多い。

一方、日本では三輪の乗り物の法体系がかなり混乱してしまっている。屋根つきと屋根無しで分類先が異なっており、屋根つきで後部が荷台になっている貨物運搬用のものは昔からその存在が認められ「オート三輪」とも呼ばれているが、屋根無しで左右対称のもののは法体系から当初排除されてしまっていて法的に(一応)認められたのは後になってのことである。この日本の法体系の混乱が貿易の障壁ともなってきた歴史がある(後述)。

歴史

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二輪の自転車が普及するとやがてペダルを漕ぐ苦労を減らそうと自転車に原動機をつけたもの(=原動機付きの自転車)を作り出す人が出てきたように、三輪の自転車があればそれのペダルを漕ぐ苦労を減らすためにそれに原動機をつける、ということも行われるようになる。

初めて市販された(試作車や実験車規模のものを除く場合は)原動機つきの三輪の乗り物は1895年フランスド・ディオン・ブートンによる、ド・ディオン・ブートン・トライシクル(フランス語: De Dion-Bouton tricycle)とされる。この製品は商業的に成功を収め、これを模倣した類似製品が、各国で多数製作された。ド・ディオン・ブートン・トライシクルの模倣車はアメリカでもE・R・トーマス・モーター、(英語: E.R. Thomas Motor Company)などによって製造された。

 
ハーレーダビッドソン・サービカー

米国のハーレーダビッドソン(以下、H-D社と略す)は1932年から1972年までハーレーダビッドソン・サービカー英語: Harley-Davidson Servi-Car)を製造していたが、これは1932年式サイドバルブ750ccのR型をベースにしたもので、差動装置付きの後輪2輪で駆動する構成であった。1名乗車で、後軸の上に大きな荷台を設けたシャシは、ハーレーダビッドソン・サービカーは自動車整備業者の車両回送業務用として企画され、小口配送や移動販売、警察の警ら、広い敷地を持つ施設内での連絡やメンテナンスなどの業務で、軽便で手軽な移動手段として利用された。当初は実用車であった戦後アメリカのトライクであったが、1960年代後期から1970年代にかけて、これらをカスタマイズして個性的な乗り物として親しむ文化が確立した。

 
トライクのATV。オフロード走行ではトライクでは転倒事故があまりに多いので、ATV用トライクの製造は中止になり、4輪車にとってかわられた。

1990年代までの全地形対応車(ATV)はトライクが一般的で(日本の本田技研工業も製造し「ATC(ALL TERRAIN CYCLES)」という通称で販売していた)、しかし転倒事故が多く、死傷者が出て、アメリカでは訴訟に発展し、三輪のATVは急速に衰退した(日本のオートバイメーカーも三輪のATVの生産は止め、全て、安定性の良い四輪ATVの生産に切り替えた)。

トライクは道なき荒地や未舗装路(オフロード)を走行することを想定すると安定性が悪すぎて危険な乗り物だが、しっかりと舗装された平らな道路を走行するくらいならば十分な安定性があり、世界的にはそういった用途(平らな舗装路の走行)のために購入して乗車している人々は相当数おり、メーカーも相当数ある。現在の世界のトライクメーカーについては末尾の「#メーカー」の節を参照のこと。

 
BRP社のカンナムスパイダー

なお2007年よりカナダのボンバルディア・レクリエーショナルプロダクツBRPカンナムスパイダーというトライクを製造しており、前輪2輪、後輪1輪の「リバーストライク」であるが「Yフレーム設計」という構造によりそれを実現しており、しかも「スタビリティコントロール」も備えることでノーマルトライクよりも優れたコーナリング性能を備え、さらに(四輪自動車で普及しているがオートバイやトライクでは一般的ではない)アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)やクルーズコントロールなども備えたもので、2009年5月までに12,500台が売れその販売数もトライクとしては比較的大きいのだが、「購入者の27%はそれまでにオートバイに乗ったことがない」「購入者の21%が女性」というデータがあり、購入者(使用者)の特性も従来のトライクとは異なっている。

日本

1930年代~1950年代当時の日本はまだ発展途上で、世界の一般的なサイズの車を購入することは難しかった。日本のメーカーもその事情を考慮して、部品数が少なく、小さくて使用する金属の量が少なく、安価にできるオート三輪を製造・販売した。それは歓迎され 結構な割合で売れた。戦後復興期を支える輸送手段としても用いられた。なおオート三輪は四輪車に比べて不安定で、過積載するとしばしば転倒事故を起こした。その後、日本が戦後の高度成長期を迎え、日本人の平均収入は上昇し、もう少し値の張る車も買えるようになり、転倒事故が多くて「危険」おまけに「安っぽい」、といったイメージの三輪車は避けて四輪車を選ぶようになり、オート三輪は自動車新車市場から徐々に数を減らし、しばらくして日本の道路からほぼ姿を消した。

日本の1930年代〜1950年代のオート三輪の隆盛より少し後、1960年代~1970年代の米国ではカスタマイズが流行っていたハーレーダビッドソン・サービスカーがやがて日本にも持ち込まれるようになり、日本の一部のカスタマイズ車好きの者たちの間で、これが流行した(1930~1950年のオート三輪の用途が実用一点張りであったのに対して、こちらはほぼ純粋な「遊び」や「趣味」の世界である)。ハーレーダビッドソン・サービスカーの製造が打ち切られてからは、代わりに(主にH-D社以外の)2輪オートバイの後輪部分を改造してトライクにすることを楽しむ人々が出てきた。四輪自動車のエンジンやトランスミッションを後軸上に置いて、その前方にオートバイと同様の乗車装置や前輪を配置するシャシ構成のものもある。

その後の日本では、バイクをトライクに改造する店舗が長い年月をかけてゆっくりと増え、また北米で流行したものも細々と輸入される、という状況にあった。

 
ヤマハ・トリシティ
 
ヤマハ・NIKEN

日本全体の公道上では、トライクの走行台数の割合は非常に小さい状況が続いていた。2007年にはヤマハがオートバイの車体に四輪を備えたコンセプトカー「ヤマハ・テッセラクト」を発表した。この車体はスイングアームにより車体と車輪が傾く機構を備えていた。

2008年-2009年ころから、イタリアのピアッジオ・MP3が輸入・販売されるようになった。日本のトライク普及状況が大きく変化しはじめたのは日本の大手メーカーの正式参入によってであり、2014年3月にヤマハがトリシティを発表し、2014年9月の販売開始から同年12月までの4か月で出荷台数が5,666台となり、「125cc以下の二輪」の2014年の年間出荷台数ではシグナスに次いで第4位、という状況で、現在の日本の公道上で走行するトライクの割合が増えつつある。またヤマハは大型のリーニング・リバース・トライク(リバース型で、傾けることができるトライク)であるNIKENも開発し、2018年9月に受注開始し2018年末に発売した。2016年3月にはトライクファクトリージャパン(株式会社JAPTEC)が、日本では初の横並び二人乗りリバーストライクである1itを開発・発売し、フェラーリなどを手掛けたデザイナーがデザインに参画していることも話題を呼び、ここからトライクブームが一気に加速した。

長所・短所

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長所

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  • 二輪のオートバイと比較すると、停車中やごく低速でも自立するため、停車中にスタンドや運転者の足で車体を支える必要がなく、低速走行が容易である。また、停車時に足で支える必要がないため、屋根やドアなどの運転者を覆う構造を備えることができる。
  • 二輪のオートバイを運転することが困難な身体障害者が手軽に乗れる乗り物としても注目されている。
  • 二輪のオートバイより積載能力と安定性が優れているのと同時に、四輪の自動車よりも小回りが利くことから、マラソン駅伝競走のテレビ中継用カメラの搬送に用いられる場合や、電動のものが空港や大規模駅舎内における旅客や従業員の移動、軽貨物の配送に使用される場合がある。
  • 日本では普通自動車免許、準中型自動車免許、中型自動車免許、大型自動車免許で運転でき、自動二輪車免許を必要としない(後述の特定二輪車に該当する場合を除く)。

短所

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  • 旋回時に四輪車と比較して安定性の限界が低い。車体を傾けることが不可能なものは二輪車の様に重心移動が出来ない。
  • 前1輪後2輪のものは斜め前に引く力に弱い。特に旋回中にブレーキを使った場合、制動による慣性力と遠心力の合成により斜め前に力が働き、前1輪では横方向に踏ん張りが効かず内側後輪が持ち上がる。多くはハンドルとブレーキを戻せば(もしくは重心移動可能なら)避けられるが、ハンドルを切りパニックブレーキをかける事でより回転が増し転倒する。三輪の全地形対応車の場合には旋回時以外にも下り斜面での急な制動、又は前輪が窪みに嵌まる事で、重心が高くサスペンションが柔らかい為ノーズが大きく沈み、一気に斜め回転する。サイドカーであまり問題にされないのは三つめの車輪が横に離れているので横転しにくい事が考えられる。
  • 前2輪後1輪のものは、前2輪に比べ後1輪のグリップ力が小さいものが多く、特に自動車タイプのもの(三輪自動車)は旋回時にリヤが滑り易い。
  • 二輪のオートバイよりも車体が重く、電力や燃料といった運用に要するエネルギー消費量が多い。また、車幅が比較して広いため狭い場所を通行できない。
  • 高速道路の最高速度は80km/hでバイクより20km/h低い。

各国の法規による扱い

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香港では、「機動三輪車免許」ですべてのエンジン付き三輪車が運転できる。「機動三輪車免許」で、サイドカーも、屋根無しのエンジン付き三輪車も、屋根有りのエンジン付き三輪車も、すべての三輪車が運転できる。

中国では、「普通三輪摩托車免許」ですべてのエンジン付き三輪車が運転できる。日本のように排気量や屋根や車室の有無で、強引に既存の複数の分類に振り分けてしまう(押し込んでしまう)、ということは行われていないので、普通三輪摩托車免許でサイドカーを含めすべての三輪車が運転できる。

日本の法規における扱い

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中国の三輪車(北京市瑠璃廠)。この車両は車室を有するため、日本では「三輪自動車」登録である。
 
リアエンジン・リアドライブ(RR)自動車の原動機・駆動装置を流用し、オートバイ様の前輪懸架・操舵装置と組み合わせた三輪車。日本では(苦しい措置だが、三輪にもかかわらず)「自動二輪車」に分類される。

日本の法規での扱いは複雑になっている。

日本の行政は、昭和26年の道路運送車両法制定および昭和35年の道路交通法制定当時、左右対称でかつ屋根の無い三輪のオートバイを想定しなかった。両法の想定外との三輪オートバイは長年法的には考慮外の乗り物であり、排気量250cc以上の車両は小型自動車の内の乗用車区分や貨物車区分など、陸運支局においても判断の異なる捻じれ状態となってしまっていた。このような状況において国外から貿易障壁であるとの指摘を受け、法改正により現状の是正を行う運びとなった。しかしながらその際にいわば原動機付三輪車のような枠を新設することはなく、既存の二輪車の枠に定義として当て嵌めることで対応した。結果として車両の外観は三輪車であるが法的に二輪車として扱われる車両や、車両の改造内容によって登録枠が複数該当する車両や、分解不可能な三輪車であるが要求される技能的に二輪車として認められる車両が存在する事になった。また、三輪形状の車両であっても荷台を有する貨物用のものは「小型三輪自動車」(6ナンバー登録)として扱われ、乗員が車室で覆われず、運転席がまたがり式座席でバーハンドルを備えた車両が「自動二輪車」に分類されている。

二輪車として扱われるかは目視では判別しにくく、普通自動車として扱われる車両を二輪免許が必要な車両と誤認し運転手を逮捕した事例もある[6]

三輪で三輪自動車と見なされる例
モーガン・3ホイーラー
三輪にもかかわらず、日本の法規上は「二輪車」に分類される例
ハーレーダビッドソンがサービスカーとして製造した車両
  • 道路運送車両法
    • 総排気量が250ccを超えるものは、二輪の小型自動車として取り扱われ、車検証の車体の形状欄は「側車付オートバイ」となり、車検が必要である。管轄は運輸支局
    • 50cc超~250cc以下のものは、「側車付軽二輪」として扱われ、検査対象外軽自動車となり車検は不要である。軽自動車検査協会の管轄となる[7]
    • 50cc以下のものは、原動機付自転車としての扱いとなり、車検はない。管轄は市町村
  • 道路交通法
    • 普通自動車に準ずるものとして扱われ、運転免許証は普通免許以上が必要。大型特殊免許、二輪免許では運転不可。
      • 一般道での法定最高速度は60km/h。
      • 高速道路での法定最高速度は[8] 、平成11年7月16日以降は登録区分が側車付オートバイに分類されたことから、車検証に「側車付オートバイ」と記載されている車両については、平成12年の道路交通法の改正に伴い法定最高速度は100km/hになり、車検証の登録区分が3輪自動車の車両は従来通り80km/hであるとの誤解が蔓延しているが(実際、都道府県警察に問い合わせても間違った回答をされることがある)警察庁によりこの登録区分は道路交通法に及ぶものではないとの通達が出ており、すべてのトライクは三輪の普通自動車区分の80km/hであるとこに注意が必要である。[2]
      • ヘルメットの着用義務はない。ただし、バイクと同じく体を露出して運転することには変わりないので、安全のため極力着用したほうが良い。
    • ただし50cc以下のものは上記にかかわらず規制が異なる。[9]
    • さらに上記に関わらず、以下の項目を全て満たす車両は特定二輪車として自動二輪車扱いとなり、普通免許では運転できず二輪免許が必要となる(ヘルメット着用義務あり)[10]
      • 3個の車輪を備えるもの
      • 車輪が車両中心線に対して左右対称の位置に備えられているもの
      • 同一線上の車軸における車輪の接地部中心の間隔が460 mm 未満であるもの
      • 車輪および車体の一部、または全部を傾斜して旋回する構造を有するもの
  • その他
    • 高速道路など有料道路の料金は道路運送車両法によるため、オートバイ扱いで軽料金となる(通行可能な車種に限る)。

法改正の経緯

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当初、50ccを超える三輪自動車(側車付を除く)は車検や、登録のために印鑑証明の添付、車庫証明が必要であった。やがてトライクの法的位置付けが海外メーカーなどから非関税障壁として問題視されるようになり、市場開放問題苦情処理体制(OTO)への提訴がきっかけで[要出典]1999年(平成11年)に運輸省(現国土交通省)から「50cc超の自動三輪車は道路運送車両法上では側車付二輪車とし、道路交通法上では普通自動車とみなす」という見解が出された。これにより同年7月16日以降、二輪の小型自動車および二輪の軽自動車に分類されたため、印鑑証明や車庫証明が不要になり、ナンバープレートと自賠責は二輪車に、自動車税は軽自動車税の市町村税に、運転免許は普通自動車免許以上が必要であると明確化された。

現在7ナンバーで運行中のものにあっては申請がない限り従前の取り扱いが適用される。従前の取り扱いでは登録制度が適用されるため、移転登録の際は印鑑登録証明書や車庫証明の添付が必要になる。申請があった場合は二輪への変更が可能であるが、一旦「一時抹消登録」をすることが必要で、二輪としての新規検査となる。

諸経費の差異は次のようなものが挙げられる。

  • 自動車税
    • 三輪登録・6,000円/年(都道府県税) → 二輪の小型自動車届出・4,000円/年(市町村税)
  • 自動車重量税
    • 三輪登録・5,000円/年(車輌重量0.5t以下) → 二輪の小型自動車届出・2,200円/年(小型二輪)
  • 自賠責保険
    • 三輪登録・22,470円/24か月 → 二輪の小型自動車届出・13,400円/24か月

二輪車とみなされるトライク

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2008年10月、一部のトライクに対し自動二輪車の保安基準を適用する旨の基準改正が公示された。

道路運送車両の保安基準等の一部改正について 平成20年10月15日 (PDF)
国土交通省では、自動車の安全・環境基準の拡充・強化を進めるとともに、自動車の安全・環境性能の確保に関する国際的な整合性を図るため、平成10年に「国連の車両等の型式認定相互承認協定」に加入し、これに基づく規則(協定規則)について段階的に採用を進めているところです。(中略)また、近年開発された前二輪・後一輪を有する一定の要件を満たす自動車について、基準の適用を整理し、二輪自動車の基準を適用することとしました。
3個の車輪を有する自動車に適用する保安基準(細目告示第2条の2関係) (PDF)

【改正概要】

3個の車輪を有する自動車又は原動機付自転車であって、左右の車輪の間隔が460mm未満であるなどの一定の構造を有するものは、二輪車の保安基準を適用します。一定の構造として次の要件を規定します。

  • 3個の車輪を備えるもの
  • 車輪が車両中心線に対して左右対称の位置に備えられているもの
  • 同一線上の車軸における車輪の接地部中心の間隔が460mm未満であるもの
  • 車輪及び車体の一部又は全部を傾斜して旋回する構造を有するもの

【適用時期】

施行日より適用します。

 
2009年9月1日免許区分改正の一部三輪自動車 構造図説
 
特定二輪車に該当するヤマハ・トリシティ

この改正により基準が適用される車両は、車検における保安基準が自動二輪車と同一になり、車両の常時点灯などが必要となる。現時点での該当車はヤマハ・トリシティヤマハ・NIKENピアッジオ・MP3などである。輪距の狭い旧モデルのホンダ・ジャイロなどを改造した場合にも適用される。

2009年3月27日、警視庁から法改正意見公募案件が公示され、上述の保安基準に該当する車両における免許区分を自動二輪車免許へ区分を変更する法案の意見を募集した[11]。当初は2009年6月1日施行の予定であったが、警察庁に多数の意見が寄せられたことから、それらを踏まえた上で改めて再検討されることになったため、施行は延期となった[12]

この件に関し、三輪スクーター輸入元に「三輪スクーターの運転免許改正案の修正について」の先行通知があり[13]、同年6月22日、警察庁から『「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令案」等について』が正式に公布された[14]

  • 2009年9月1日施行
    • 乗車用ヘルメットの着用が必要となる。
    • 二輪免許を受けてから1年、または普通・中型(8t限定を含む)・大型自動車免許で三輪スクーターの運転を始めてから1年を経過しない者は、二人乗りができなくなる(高速道路を運転する場合は3年)。
    • 2009年8月31日時点において普通・中型(8t限定を含む)・大型自動車免許で乗っているユーザーのみ、経過措置として2010年8月31日まで普通・中型(8t限定を含む)・大型自動車免許で運転可。また、試験場において特別試験が2010年8月31日までの期間限定で実施され、該当者のみ受験可能で合格すれば限定免許が交付される。
      • それ以外の者は、該当する二輪免許(大型二輪免許・普通二輪免許)が必要となる。
      • ただし1965年8月31日より前に原動機付自転車免許・小型特殊自動車免許以外の運転免許(旧軽自動車免許を含む)を取得した者で、運転免許証の「免許の種類」の欄に「大型自動二輪」の記載がある場合は従前どおりそのまま運転することができる。
  • 2010年9月1日変更
    • すべての者において、該当する二輪免許(大型二輪免許・普通二輪免許・限定免許)が必要となる。

以上が適用される車両は、道路交通法施行規則において「特定二輪車」と総称されることになった[15]

なお、現時点では道路運送車両法の車両登録における区分変更(側車付二輪登録→二輪車登録)については公示されていない。

トライクとみなされるサイドカー

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輪距・車幅の広い(460 mm 以上)トライク・サイドカー等の免許区分図説

トライクは、運転席の構成がオートバイと類似した3輪の車両であるという点で、オートバイの側面に1輪を追加した車両であるサイドカーとの共通点があり、道路運送車両法では、どちらも側車付二輪自動車の一種とされる(排気量50cc以下または出力0.6kW以下のものは車両法において自動車とはされないため除く)。

一方、道路交通法においては(側車付)二輪車(要二輪免許・ヘルメットの着用義務有り)とされるのはサイドカーおよび特例二輪車に当てはまるトライクのみであり、一般的なトライクは(3輪の)普通自動車(要普通免許以上・ヘルメットの着用義務無し)とされる。

しかし、サイドカーであっても、車体の構造によっては道路交通法においてトライク(普通自動車)とみなされ、自動二輪免許で乗れないものがある。サイドトライク・サイドトライカーとも呼ばれる。

  • 側車を分離したときオートバイとして単独で運転できない車両
  • 運転席側の側面が開放でない(ドアがある)車両
  • 走行軌跡が3本になる車両

をトライクとみなし、普通自動車免許または中型自動車免許が必要となる。

具体的に、以下のものがトライク扱いになる。

二輪駆動 (2WD) のサイドカー
二輪を駆動させるサイドカーは「フルタイム型」「パートタイム型」共にトライク扱い。ウラル型2WDサイドカー、ドニエプル2WD型サイドカー、BMW・R75ツェンダップ・KS750、九七式側車付自動二輪車(日本の軍用車太平洋戦争中の陸王ビンテージモデル。)、サイドバイク・ゼウスなど。
二輪操舵 (2WS) のサイドカー
本車の後輪を操舵できる場合はトライク扱い。サイドバイク・ゼウスなど。
一体型のサイドカー
設計時点から一体構造のフレームで、二輪のオートバイの構造をもたないためトライク扱い。サイドバイク・ゼウスなど。
  • 例外:この基準があてはまらない車種も存在する。クラウザー・ドマニはレーシングニーラーのサイドカーに性質が近く、バイクの操縦感覚がない四輪自動車免許のみの運転者が乗ると危険であるため、正式な二輪車認定車種になっている。
  • 標準的なサイドカーに一体型ボディーをかぶせたものでは、側面開放なら二輪免許扱いになる。外観が似ていても免許が異なり、無免許運転やノーヘル運転につながるため、注意が必要である。
光岡・ライクT3電動オート三輪であるが、排気量250 cc 以下の側車付軽二輪車として型式認定を取得している。

メーカー

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ペダルで漕ぐトライク

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エンジンつきのトライク

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日本国内の(日本で販売されている)トライク

脚注

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  1. ^ a b etymonline trike"
  2. ^ Oxford Dictionary
  3. ^ なお、日本でもリカンベントタイプの三輪自転車をカタカナを用いて「トライク」と言う事がある
  4. ^ etymonline tri
  5. ^ [1]
  6. ^ 三輪バイク「トライク」運転の男性を誤認逮捕 二輪免許が必要と誤解:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2024年1月8日). 2024年1月8日閲覧。
  7. ^ 軽自動車検査協会[出典無効]
  8. ^ ただし、車両性能により50km/h以上を安定して出せないものは、高速自動車国道のうち一部にでも対面通行でない区間を含む道路の区間は、通行できない。
  9. ^ 20cc以下のもの(20cc超50cc以下でも車体要件を満たすホンダ・ジャイロ等を含む)は、道路交通法における原動機付自転車と同様に30km/hで二段階右折などが適用され、高速道路は通行できず、原付免許以上が必要であり、ヘルメット着用義務あり。また、20cc超50cc以下のもの(車体要件を満たすホンダ・ジャイロ等を除く)は、規制はミニカーと同様になり、普通免許以上が必要で、高速道路は走行できない。
  10. ^ 2010年9月1日施行、3個の車輪を有する自動車に適用する保安基準(細目告示第2条の2関係)。
  11. ^ 「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令案」等に対する意見の募集についての資料7を参照
  12. ^ 警察庁交通局・「三輪車の自動車の区分の見直し」に関する内閣府令案等について (PDF)
  13. ^ 三輪スクーターの運転免許改正案の修正について通知がありました」(成川商会公式サイト)
  14. ^ 「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令案」等について (PDF) 警察庁交通局 2009年6月22日
    三輪の自動車の区分の見直し (PDF)
  15. ^ 道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令等の施行に伴う交通警察の運営について (PDF) - 警察庁・平成21年6月22日

参考文献

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  • 雑誌『別冊 MOTOR CYCLIST』八重洲出版(連載記事より引用)

関連項目

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外部リンク

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