トカゲギス科学名Halosauridae)は、ソコギス目に所属する魚類の分類群()の一つ。トカゲギスクロオビトカゲギスなど、底生性深海魚を中心に3属16種が含まれる[1]。科名(模式属名)の由来は、ギリシア語の「hals(海)」と「sauros(トカゲ)」から[2]

トカゲギス科
トカゲギス科の1種(Halosauridae sp.)
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
上目 : カライワシ上目 Elopomorpha
: ソコギス目 Notacanthiformes
: トカゲギス科 Halosauridae
英名
Halosaurs
下位分類
本文参照

分布

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トカゲギス科の魚類は全世界の深海に幅広く分布し、特に太平洋インド洋大西洋の大陸辺縁部に多い[1]。含まれる16種はすべて海底付近で生活し、底生性深海魚のグループとしてはソコダラ科タラ目)・アシロ科アシロ目)・ホラアナゴ科ウナギ目)の仲間と並んで重要な位置を占める存在となっている。水深400mから3,000mの範囲にかけて分布する種類が多いが、トカゲギス属の1種(Aldrovandia rostrata)は約2,700~5,000mと、突出して深い生息水深をもつ[2][3]

日本近海からはトカゲギス・トゲトカゲギス[4]・クロオビトカゲギスの3種が報告されている[5]。このうちトカゲギス・クロオビトカゲギスの2種はいずれも南日本の太平洋岸に分布し、前者は水深2,000m以浅、後者はより深い領域に多く、深度による棲み分けが行われているとみられる[5]

生態

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トカゲギス類は活発に運動して餌を探す、狩猟採集型の深海魚である。胸鰭を左右に広げ、細長い尾部を波打たせるようにして海底の直上を遊泳する。へら状に平たくなった(口先)で海底の砂泥を掘り起こし、主に甲殻類貝類などの埋在動物を捕食する[6]。一方で、同じソコギス目に属するソコギス科魚類はイソギンチャク海綿動物棘皮動物など、表在性の生物を摂食することが多い[3]。系統的に近縁で、類似した生態を示す両グループであるが、食性の違いは明瞭となっている。

カライワシ上目のグループに共通する特徴として、トカゲギス類もまたレプトケファルスと呼ばれる独特の幼生期を経て成長する。

形態

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トカゲギス属の1種(Aldrovandia rostrata)。へら状に突き出した吻と、細長い体が本科の特徴。本種は水深5,000mまで分布する、トカゲギス科の最深種である

体型は細長く、体長40~170cm程度にまで成長する中・大型の魚類である[5]。トカゲのように上下に平たく縦扁した頭部は、和名の由来にもなっている[5]

両顎にを備え、上顎は前上顎骨と主上顎骨に縁取られる[1]。近縁のソコギス科と類似した形態をもつが、鰓膜が完全に分離すること、が比較的大きく両側にそれぞれ30列以下の縦列をなすこと、背鰭は明瞭で後端は肛門よりも前方に位置することなどの特徴から鑑別される[1]側線はくぼみ状で、体の全長に及ぶ[1]

背鰭の鰭条は9-13本の軟条で構成され、棘条はもたない[1]。胸鰭は体の高い位置にあり、臀鰭の基底は長い。鰓条骨は9-23本[1]

分類

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水深1,736mで観察されたトカゲギス属の1種(Aldrovandia sp.)。尾部を波打たせて前進し、平たい頭部で海底を掘り起こす
 
トカゲギス Aldrovandia affinis (トカゲギス属)。日本近海にも多く、底生生物を捕食する姿が観察されている[5]
 
クロオビトカゲギス Halosauropsis macrochir (クロオビトカゲギス属)。トカゲギスとは異なり、側線域は黒色[7]

トカゲギス科にはNelson(2016)の体系において、3属16種の現生種が認められている[1]。他に、白亜紀後期の絶滅群として Echidnocephalus 属が知られ[1]、本科魚類の最古の化石記録となっている[2]

Nelson(2006)の体系では、本科はソコギス科とともにソコギス亜目を構成し、ソトイワシ目の内部に含められていた[8]

  • クロオビトカゲギス属 Halosauropsis
  • トカゲギス属 Aldrovandia
    • トカゲギス Aldrovandia affinis
    • Aldrovandia gracilis
    • Aldrovandia mediorostris
    • Aldrovandia oleosa
    • Aldrovandia phalacra
    • Aldrovandia rostrata
  • トゲトカゲギス属 Halosaurus
    • トゲトカゲギス Halosaurus sinensis
    • Halosaurus attenuatus
    • Halosaurus carinicauda
    • Halosaurus guentheri
    • Halosaurus johnsonianus
    • Halosaurus ovenii
    • Halosaurus pectoralis
    • Halosaurus radiatus
    • Halosaurus ridgwayi

出典・脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i 『Fishes of the World Fifth Edition』 pp.137-138
  2. ^ a b c Halosauridae”. FishBase. 2016年5月29日閲覧。
  3. ^ a b 『海の動物百科3 魚類II』 pp.26-27
  4. ^ 1標本のみに基づく記載(『潜水調査船が観た深海生物』 p.360)。
  5. ^ a b c d e 『日本の海水魚』 p.68
  6. ^ 『潜水調査船が観た深海生物』 p.360
  7. ^ 『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』 pp.237,1781
  8. ^ 『Fishes of the World Fourth Edition』 pp.112-114

参考文献

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外部リンク

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