ディストラクション・ベイビーズ
『ディストラクション・ベイビーズ』は、2016年の日本のアクション・ドラマ映画である。監督を真利子哲也、主演を柳楽優弥が務めている[2]。愛媛県松山市を舞台としている[3]。
ディストラクション・ベイビーズ | |
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監督 | 真利子哲也 |
脚本 |
真利子哲也 喜安浩平 |
製作総指揮 |
紙谷零 森口和則 太田和宏 大和田廣樹 王毓雅 阿南雅浩 |
出演者 |
柳楽優弥 菅田将暉 小松菜奈 村上虹郎 |
音楽 | 向井秀徳 |
主題歌 | 向井秀徳「約束」 |
撮影 | 佐々木靖之 |
編集 | 李英美 |
制作会社 | 東京テアトル |
製作会社 | 「ディストラクション・ベイビーズ」製作委員会 |
配給 | 東京テアトル |
公開 | 2016年5月21日 |
上映時間 | 108分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 6000万円[1] |
あらすじ
編集2011年の愛媛県松山市。両親を早くに亡くし、港町で喧嘩に明け暮れる芦原泰良は、ある日、同居していた弟の将太の元から姿を消す。繁華街に現れた泰良は、道行く人々に次々と喧嘩を仕掛ける。高校生の北原裕也は泰良に興味を持ち、彼と行動を共にするようになる。
泰良と裕也は、商店街で暴力沙汰を起こしつづけ、世間からの注目を集める。2人は自動車を盗み、街を立ち去る。その車に乗っていたキャバクラ嬢の那奈は拘束されて、彼らに同行する羽目となる。同じ頃、商店街を訪れていた将太は、兄を捜そうとするが、友人たちと仲間割れする。
翌日、泰良たちを乗せた車が農村に着く。自分たちがテレビ番組やインターネットで取り上げられて警察に追われている身だと知った裕也は、苛立ちを募らせて、那奈に運転を代わらせる。那奈は、殴り倒された農夫が車の前に横たわっていることを知らず、農夫を轢いてしまう。彼女は、農夫の体をトランクに押し込むよう裕也から指示されるが、その作業の最中、農夫が息を吹き返す。とっさに那奈は農夫の首を絞めて、彼の息の根を止める。
その夜、泰良と裕也が乗った車を運転する那奈は、意図的に速度を上げて、対向車と衝突させる。瀕死状態で車を降りた裕也は、那奈に何度も蹴られた挙げ句、命を落とす。泰良は、対向車に乗っていた男性を殴り倒し、行方をくらます。
入院した那奈は、警察からの事情聴取に対して、全ての責任を泰良と裕也に負わせる。将太は港町に帰ってくるが、兄が事件を起こしたことにより、友人たちから侮辱を受ける。逆上した将太は友人たちに暴力をふるう。
将太は、地元で開催される喧嘩御輿を見に行き、その壮観に目を奪われる。同じ頃、港町に帰ってきていた泰良は、職務質問を行おうとした警察官と揉み合いになる。夜空に1発の銃声が響き渡る。泰良は、横たわる警察官を残し、その場をあとにするのであった。
キャスト
編集- 芦原泰良 - 柳楽優弥
- 路上で突然暴力をふるう凶暴な男[4]。
- 北原裕也 - 菅田将暉
- 泰良に惹かれていく高校生。18歳。
- 那奈 - 小松菜奈
- キャバ嬢。
- 芦原将太 - 村上虹郎
- 泰良の弟。18歳。
- 健児 - 北村匠海
- 将太の友人。
- 三浦慎吾 - 池松壮亮
- 暴力団員。キャバクラの店長。
- 河野淳平 - 三浦誠己
- 暴力団員。
- 近藤和雄 - でんでん
- 泰良と将太の育ての親。漁船修理工の社長。
スタッフ
編集- 監督 - 真利子哲也
- 脚本 - 真利子哲也、喜安浩平
- 製作 - 紙谷零、森口和則、太田和宏、大和田廣樹、王毓雅、阿南雅浩
- プロデューサー - 西ヶ谷寿一、西宮由貴、小田切乾、石塚慶生
- ラインプロデューサー - 金森保
- 企画・プロデュース - 朱永菁
- 撮影 - 佐々木靖之
- 編集 - 李英美
- 美術 - 岩本浩典
- 録音 - 高田伸也
- 衣裳 - 小里幸子
- ヘアメイク - 宮本真奈美
- 特殊メイク - JIRO
- アクション・コーディネーター - 園村健介
- VFXスーパーバイザー - オダイッセイ
- 助監督 - 茂木克仁
- 制作担当 - 柴野淳
- 音楽 - 向井秀徳
- 主題歌 - 向井秀徳「約束」
- 制作・配給・宣伝 - 東京テアトル
- 製作幹事 - DLE
- 製作 - 「ディストラクション・ベイビーズ」製作委員会(DLE、松竹メディア事業部、東京テアトル、ドリームキッド、大唐国際娯楽、エイベックス・ミュージック・パブリッシング)
製作
編集本作は、監督の真利子哲也が2012年、ミュージック・ビデオの撮影のために愛媛県松山市を訪れた際、バーのマスターから聞いた実話に着想を得ている[5]。その人物と同世代だった真利子は「年齢的に近いという親近感と、やっていることのあり得なさ」で彼に興味を持ったのだという[6]。
当初、本作には『喧嘩の凡て』という仮題がつけられていた[7]。その後、別の題名へ変更することになり、その候補のひとつとして挙げられた『ディストラクション・ベイビーズ』(本作の音楽を担当した向井秀徳のバンド・ナンバーガールの楽曲「DESTRUCTION BABY」に由来)が正式に採用された[7]。これは「『ディストラクション』が『Distraction(気晴らし、動揺)』『Destruction(破壊)』という類似する発音で2つの意味を持ち、今作に登場する若者たちの群像劇を象徴している」からであるという[8]。
真利子哲也にとっては本作が商業映画デビュー作品となったが、インディーとメジャーの違いについて問われた際、真利子は「現場でやることは今までと大きく変わりないですし、周囲の影響で身動きがとれない、ということもなかった」と答えている[9]。また、「前作の『イエローキッド』にもプロデューサーはいたので、僕の中で本当の意味でのインディーズ作品は初期の短編作品だけだと考えています」と述べている[9]。
撮影は全て、ロケーション撮影、順撮りで行われた[10]。夏の場面は2015年5月28日にクランクインし、6月14日にクランクアップした[11]。
上映
編集2016年4月21日、本作の完成披露上映会が行われた[12]。5月21日、全国で一般公開された[13]。
関連製品
編集2016年5月21日、本作のオフィシャルブックが亜紀書房より刊行された[14]。同書には、柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎、真利子哲也、向井秀徳へのインタビューのほか、スタッフ証言録、映画監督の黒沢清のコメント、全シナリオが掲載されている[14]。
同年12月7日、本作のDVDおよびBlu-rayが松竹より発売される[15]。特典ディスクには、柳楽、菅田、小松、村上、真利子らにスポットを当てた5種類のメイキング映像、完成披露上映会の映像、真利子と向井と漫画家の新井英樹のトークイベント、真利子と瀬々敬久によるトークイベントの映像が収録されている[15]。
評価
編集須永貴子は「特殊メイクもせずCGも使っていないのに、人でない者を体現する柳楽優弥は、モンスター級の俳優として覚醒した」と述べている[16]。また、柳楽をはじめとした「強力な布陣のキャスティング」に言及しつつ、「彼らのメジャー感と演技力を借りながら、過去作がはらむ不穏さや先鋭性をさらにむき出しにした本作は、いい意味でもっとも見やすく、観客を選ばない」と述べて、「真利子監督のキャリア最高傑作であると同時に、日本映画の現在地点を示す」と評価した[16]。
北小路隆志は、「真利子作品の政治的次元での先鋭さに注目すべきである」と述べた上で、「泰良は一匹の『戦争機械』として野に放たれ、『暴力階級』の生成と拡張、さらにはその悲惨と栄光を鮮烈なまでの強度で僕らに知らしめる」と指摘している[17]。
ジョナサン・ロムニーは、「本作が日本版『ファイト・クラブ』として位置づけられる運命にあることは間違いないが、主人公の心身に変容がもたらされる点では、塚本晋也監督の『鉄男』をも想起させる」と述べている[18]。
受賞
編集日本国外
編集日本国内
編集発表年 | 賞 | 部門 | 対象 | 結果 |
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2016 | 第8回TAMA映画賞[21] | 特別賞 | 真利子哲也と柳楽優弥およびスタッフ・キャスト一同 | 受賞 |
最優秀新進男優賞 | 村上虹郎[注 1] | 受賞 | ||
最優秀新進女優賞 | 小松菜奈[注 2] | 受賞 | ||
第41回報知映画賞[22] | 監督賞 | 真利子哲也 | ノミネート | |
主演男優賞 | 柳楽優弥 | ノミネート | ||
助演男優賞 | 菅田将暉 | ノミネート | ||
第38回ヨコハマ映画祭[23] | 2016年日本映画ベストテン | ディストラクション・ベイビーズ | 第3位 | |
森田芳光メモリアル新人監督賞 | 真利子哲也 | 受賞 | ||
撮影賞 | 佐々木靖之 | 受賞 | ||
主演男優賞 | 柳楽優弥 | 受賞 | ||
助演男優賞 | 菅田将暉 | 受賞 | ||
最優秀新人賞 | 小松菜奈 | 受賞 | ||
最優秀新人賞 | 村上虹郎 | 受賞 | ||
2017 | 第90回キネマ旬報ベスト・テン[24] | 日本映画ベスト・テン | ディストラクション・ベイビーズ | 第4位 |
主演男優賞 | 柳楽優弥 | 受賞 | ||
新人女優賞 | 小松菜奈[注 3] | 受賞 | ||
新人男優賞 | 村上虹郎[注 4] | 受賞 | ||
第71回毎日映画コンクール[25] | 男優主演賞 | 柳楽優弥 | ノミネート | |
男優助演賞 | 菅田将暉 | ノミネート | ||
音楽賞 | 向井秀徳 | ノミネート | ||
第26回東京スポーツ映画大賞[26] | 作品賞 | ディストラクション・ベイビーズ | ノミネート | |
監督賞 | 真利子哲也 | ノミネート | ||
主演男優賞 | 柳楽優弥 | ノミネート | ||
助演男優賞 | 菅田将暉 | 受賞 | ||
新人賞 | 小松菜奈 | ノミネート | ||
新人賞 | 村上虹郎 | ノミネート |
脚注
編集注釈
編集- ^ 『夏美のホタル』『さようなら』とあわせて受賞。
- ^ 『黒崎くんの言いなりになんてならない』『バクマン。』『ヒーローマニア-生活-』とあわせて受賞。
- ^ 『溺れるナイフ』『黒崎くんの言いなりになんてならない』『ヒーローマニア-生活-』と合わせて受賞。
- ^ 『夏美のホタル』と合わせて受賞。
出典
編集- ^ 『キネマ旬報 2017年3月下旬号』p.81
- ^ “『ディストラクション・ベイビーズ』&『ヒメアノ〜ル』、門間雄介が“ヤバい映画”を分析 (1/2)”. リアルサウンド 映画部 (2016年5月25日). 2016年6月6日閲覧。
- ^ “柳楽優弥『ディストラクション・ベイビーズ』 壮絶演技が話題”. NEWSポストセブン (2016年5月28日). 2016年6月6日閲覧。
- ^ “映画『ディストラクション・ベイビーズ』柳楽優弥×菅田将暉×小松菜奈、狂気溢れる108分”. ファッションプレス (株式会社カーリン). (2016年5月21日) 2020年8月2日閲覧。
- ^ “小松菜奈の体張った演技に拍手! 胸を揉まれ、びんたされ…衝撃作「ディストラクション・ベイビーズ」 (1/5)”. 産経ニュース (2016年5月14日). 2016年6月6日閲覧。
- ^ “真利子 哲也 (監督) - 映画『ディストラクション・ベイビーズ』について (1/5)”. INTRO (2016年5月14日). 2016年6月6日閲覧。
- ^ a b “『ディストラクション・ベイビーズ』真利子哲也監督インタヴュー (1/2)”. NOBODY (2016年5月21日). 2016年6月6日閲覧。
- ^ “柳楽優弥が菅田将暉が…真利子哲也監督の商業映画デビュー作で若き才能が共闘!”. 映画.com (2015年8月3日). 2016年6月6日閲覧。
- ^ a b “『ディストラクション・ベイビーズ』真利子哲也監督が語る、新世代役者たちの“目つきの違い” (1/2)”. リアルサウンド 映画部 (2016年5月21日). 2016年6月6日閲覧。
- ^ “バイオレンス全開の衝撃作『ディストラクション・ベイビーズ』主演・柳楽優弥に直撃! 「朝イチでケンカをする日もあった」”. AOLニュース (2016年5月26日). 2016年6月6日閲覧。
- ^ “柳楽優弥・菅田将暉・小松菜奈・村上虹郎、注目の若手が集結 少年犯罪を描く”. モデルプレス (2015年8月4日). 2016年6月6日閲覧。
- ^ “柳楽優弥 代表作の一つにしたい”. デイリースポーツ (2016年4月22日). 2016年6月6日閲覧。
- ^ “柳楽優弥、先輩・山田孝之から「勇者ヨシヒコ」出演オファー!”. 映画.com (2016年5月21日). 2016年6月6日閲覧。
- ^ a b “「ディストラクション・ベイビーズ」公式本に柳楽、菅田のインタビューや脚本収録”. 映画ナタリー (2016年5月21日). 2016年9月5日閲覧。
- ^ a b “柳楽優弥×菅田将暉×小松菜奈×村上虹郎「ディストラクション・ベイビーズ」ソフト化”. 映画ナタリー. (2016年8月19日) 2016年8月19日閲覧。
- ^ a b “柳楽優弥、覚醒。不穏さをむき出しにしながらも観客を選ばない、監督の最高傑作”. 映画.com (2016年5月17日). 2016年6月6日閲覧。
- ^ “映画監督・真利子哲也の最新作「ディストラクション・ベイビーズ」から考える、真利子映画に固有の〈政治〉とは?”. Mikiki (2016年5月18日). 2016年6月6日閲覧。
- ^ Romney, Jonathan (2016年8月12日). “Films of the Week: Locarno Sex Romp Edition!”. Film Comment. 2016年9月5日閲覧。
- ^ “真利子哲也×柳楽優弥「ディストラクション・ベイビーズ」がロカルノ映画祭で受賞”. 映画ナタリー. (2016年8月15日) 2016年8月17日閲覧。
- ^ “準グランプリ受賞の快挙!柳楽優弥主演『ディストラクション・ベイビーズ』フランス・ナント三大陸映画祭で銀の気球賞!”. シネマトゥデイ. (2016年11月29日) 2016年11月30日閲覧。
- ^ “「オーバー・フェンス」「団地」が最優秀作品に、第8回TAMA映画賞結果発表”. 映画ナタリー. (2016年10月6日) 2016年10月7日閲覧。
- ^ “報知映画賞 ノミネート一覧”. スポーツ報知. 報知新聞社. 2017年5月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月2日閲覧。
- ^ “「オーバー・フェンス」「団地」が最優秀作品に、第8回TAMA映画賞結果発表”. 映画ナタリー. (2016年10月6日) 2016年10月7日閲覧。
- ^ “キネマ旬報ベスト・テン決定、「この世界の片隅に」「ハドソン川の奇跡」が1位に”. 映画ナタリー. (2017年1月10日) 2017年1月10日閲覧。
- ^ “第71回毎日映画コンクール:心に迫る一本 日本映画大賞・日本映画優秀賞候補作”. 毎日新聞. (2016年12月16日) 2020年8月2日閲覧。
- ^ “「第26回東京スポーツ映画大賞」ノミネート決定 2・26授賞式”. 東スポWeb (東京スポーツ新聞社). (2017年1月5日) 2020年8月2日閲覧。
関連文献
編集- 『ディストラクション・ベイビーズ オフィシャルブック』亜紀書房、2016年。ISBN 9784750514734。