テトラカイン
テトラカイン (tetracaine) とはエステル型の局所麻酔薬の1つである。商品名テトカイン。力価の強い麻酔薬であり、副作用も強いため用途は限られており、主に脊髄くも膜下麻酔に使用されている。ナトリウムイオンの神経細胞への流入を阻害することで作用する局所麻酔剤であり、眼科、耳鼻科の短時間の処置にも用いられる[1]。 2000年にブピバカインが脊髄くも膜下麻酔に認可される[2]までは、日本においては脊髄くも膜下麻酔の主力薬剤であった。2023年5月に日本での製造販売中止が発表され、2024年3月に流通在庫切れとなる見込みである[3]。以後は、新薬の発売が無い限り、日本における脊髄くも膜下麻酔の適応薬剤はブピバカイン一択となる。近年、リドカインとテトラカインとの配合剤が美容整形分野において、有用性が報告されている[4]
IUPAC命名法による物質名 | |
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薬物動態データ | |
血漿タンパク結合 | 75.6 |
データベースID | |
CAS番号 | 94-24-6 136-47-0 (塩酸塩) |
ATCコード | C05AD02 (WHO) D04AB06 (WHO)N01BA03 (WHO)S01HA03 (WHO) |
PubChem | CID: 5411 |
KEGG | D00551 |
化学的データ | |
化学式 | C15H24N2O2 |
分子量 | 264.363 g/mol |
薬理作用
編集Na+チャネルの開口部に内側から入り込みチャネルに結合し、Naの透過を阻害して活動電位の振幅と伝導速度の低下させる。製剤が粉末[5]であるため、5%糖液を溶媒とすれば高比重液、蒸留水を溶媒とすれば低比重液を作成でき、脊髄くも膜下麻酔時の髄腔内での薬液の広がりを調節しやすい。しかし、脊髄くも膜下麻酔用に適応が拡大されたブピバカインの方が、作用時間が長いために、テトラカインよりも麻酔科医に好まれるようになっている[6][7]。
注意点
編集脚注
編集- ^ Stringer, Christopher M.; Lopez, Michael J.; Maani, Christopher V. (2023), Tetracaine, StatPearls Publishing, PMID 30571058 2023年6月30日閲覧。
- ^ “医療用医薬品 : マーカイン (商品詳細情報)”. www.kegg.jp. 2022年12月12日閲覧。
- ^ “製造販売中止のご案内”. 杏林製薬株式会社. 2023年6月22日閲覧。
- ^ Giordano, Davide; Raso, Maria Gabriella; Pernice, Carmine; Agnoletti, Vanni; Barbieri, Verter (2015-11-27). “Topical local anesthesia: focus on lidocaine–tetracaine combination”. Local and Regional Anesthesia 8: 95–100. doi:10.2147/LRA.S41836. ISSN 1178-7112. PMC 4669927. PMID 26664201 .
- ^ “医療用医薬品 : テトカイン (テトカイン注用20mg「杏林」)”. www.kegg.jp. 2022年12月12日閲覧。
- ^ 恵子, 木内; 美里, 中川; 清和, 香河; 薫, 松浪; 智明, 清水 (2006). “脊髄くも膜下麻酔 —高比重ブピバカイン+モルヒネ”. 日本臨床麻酔学会誌 26 (5): 576–582. doi:10.2199/jjsca.26.576 .
- ^ 収, 平尾、恵子, 木内、純一, 春名「高比重塩酸ブピバカインを用いた帝王切開の脊髄くも膜下麻酔」『麻酔 = The Japanese journal of anesthesiology : 日本麻酔科学会準機関誌』第52巻第9号、2003年9月、953–958頁。
参考文献
編集- “Tetracaine” (英語). アメリカ国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information、NCBI). 2023年6月23日閲覧。- 非常に充実した総説