スパイク (ミサイル)
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スパイク(Spike:ヘブライ語: ספייק)は、イスラエルのラファエル・アドバンスド・ディフェンス・システムズ社によって開発された第三世代対戦車ミサイルである。
スパイクLR型のモックアップ | |
種類 | 対戦車ミサイル |
---|---|
製造国 | イスラエル |
設計 | ラファエル |
性能諸元 | |
推進方式 | 固体燃料ロケット |
誘導方式 | 赤外線画像(IIR)・可視光画像(TV)併用式 |
飛翔速度 | 130-180m/s(※-LR型) |
概要
編集スパイクは、発射後に自動誘導される、いわゆる撃ちっ放し能力を備えたミサイルである。
また、誘導方式は赤外線画像シーカーを用いた赤外線ホーミング。さらにスパイクの派生型ではミサイル本体と発射機に備えられた光ファイバーケーブルにより高い射撃・進路修正観測能力を持つものもある。
弾頭は、成型炸薬弾を二つ重ねたタンデムHEATで、先頭のHEATが爆発反応装甲を爆発させ、二番目のHEATが敵の主装甲を貫徹する。
発射はソフトローンチ式で、爆発の力ではなく圧縮ガスによって射出され、ロケットモーターに点火する。これによりバックブラストを軽減しており、より狭い場所からでも発射可能で市街戦に有利な特徴となっている。
構成要素
編集スパイクは、主に二つのサブシステムから構成される。すなわち「三脚付き発射台と射撃管制システム」および「ミサイル本体」である。全体での重量は長射程型のMR/LRの場合は26kg。重量削減はサーマルサイトを撤廃することで実現する。
このミサイルは、歩兵が三脚付き発射台を用いるか、あるいは装甲車にマウントされた発射器から用いられる。さらに、フランスでスペルウェールUAVへの装備が試みられている。また、スパイクER以降のモデルは攻撃ヘリコプターへの装備も行われており、イスラエル空軍はAH-1やAH-64に搭載しているほか、スペイン陸軍はティーガーに、イタリア陸軍はA129 マングスタに装備させている。
また、同じラファエル社によって開発された遠隔操作式砲塔ユニットである、サムソン RCWS-30やタイフーンに組み込んだ状態での運用も行われている。
販売
編集このミサイルは、多くの陸軍で旧式化したミランやドラゴンなどの第二世代対戦車ミサイルを置き換えた。
ヨーロッパでの販売を容易にするため、ドイツにEuroSpike GmbH社が設立された。この会社の持株比率はディール・ディフェンス社40%、ラインメタル社40%、ERCAS B.V社(ラファエル社が100%の株を所有する子会社)が20%である。所在地はバイエルン州のレーテンバッハ・アン・デア・ペーグニッツ。
派生型
編集- スパイクSR(Short Range)
- 短射程型。射程200-800m。もっとも小型のモデルで歩兵が肩に担いで使用する。
- スパイクMR(Medium Range)
- 中射程型。射程200-2,500mで歩兵か特殊部隊が使用。ミサイル重量が13.5kg、キャニスター重量13kg。射撃管制装置、バッテリー、サーマルサイトは他のスパイク派生型でも用いることが可能。それぞれ重量5kg、1kg、2.8kg、4kg。
- スパイクLR(Long Range)
- 長射程型。最大射程は4,000m。歩兵か軽装甲車両が使用する。サイズはMRと同じだが、通信用の光ファイバーケーブルが追加されている。装甲貫徹能力はRHA換算で700mm。2018年には最大射程を10kmに伸ばしたスパイクLR2が登場した。
- スパイクER(Extra-long Range)
- 超長射程型。かつてはNT-DandyあるいはNT-Dとして知られていた。最大射程は8,000m。直径や重量も大幅に増加しており、通常は車両などに搭載して使用する。歩兵、装甲車、ヘリコプターが使用。フィンランド沿岸防備旅団では対舟艇ミサイルとしても使用されている。ミサイル重量は34kg。発射器重量は車載型が30kg、空中発射型が55kg。装甲貫徹能力はRHA換算で1,000mm。2018年には最大射程を倍化したスパイクER2が登場した。
- スパイクNLOS(Non Line Of Sight)
- 超々長射程型。最大射程は25-30kmだといわれている。重量はさらに増加して70kgとなった。見越し圏外への発射を可能とするため、中間誘導にGPSを使用でき、通信は光ファイバーケーブルではなく無線式になっている。
-SR型 | -MR型 | -LR型 | -ER型 | -NLOS型 | |
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直径 | n/a | 130mm | 170mm | 170mm
1670mm | |
全長 | 1,200mm | 1,670mm | |||
弾体重量 | 9kg | 13kg | 13kg | 34kg | 71kg |
最小射程 | 50m | 200m | 400m | n/a | |
最大射程 | 800m | 2,500m | 4,000m | 8,000m | 30000m |
採用国
編集1990年頃よりNLOSを搭載したペレフ自走対戦車ミサイルを運用。1997年からMR、LR、ERを運用。
- チリ
- 2,600発。
- コロンビア
- クロアチア
- 32-64機のスパイクER発射機をパトリアAMV装輪装甲車用に購入。
- フィンランド
- MR発射機100機と追加で70機以上。ERを対上陸用舟艇用に18機購入。
- ドイツ
- LR発射機をプーマ装甲歩兵戦闘車用に331機購入[1]。またMILAN(マルダー歩兵戦闘車用)やTOW(歩兵やヴィーゼル用)の置き換えとしても採用が進んでいる。ドイツ語の「多目的軽ミサイルシステム」の頭文字を取ってMELLSと呼称されている。
- イタリア
- イタリア陸軍が歩兵用に65機、ダルド歩兵戦闘車にLRを20機、Freccia IFVに38機、野外訓練システムを37、屋内型を26。イタリア海軍が歩兵に6発。野外・屋内訓練システムをそれぞれ2つ。SR, MR, LR, ERをあわせて1,000発以上のスパイクを購入した。初期調達価格は1億2,000万ユーロ。
- オランダ
- MR発射機を227機。
- ペルー
- LR発射機を24とミサイル224発を2009年に注文[2][3]。
- ポーランド
- KTO Rosomak装甲車用にLR発射機を購入(ミサイル2,675発)。
- ルーマニア
- IAR 330 SOCAT攻撃ヘリコプター用にER発射機と、MLI-84M歩兵戦闘車用にLR発射機を購入。
- シンガポール
- 2023年時点で、シンガポール陸軍がSRとMRを保有している[4]。
- スロベニア
- MRとLRをいくつかパトリアAMV装輪装甲車用に購入。
- スペイン
- LR発射機を236機(追加で100以上)、ミサイル2,360発をスペイン陸軍に、LR発射機24機/ミサイル240発をスペイン海兵隊に購入。
- トルコ
- LR発射機をコブラ軽装甲車用に購入。
- 韓国
- 延坪島砲撃事件の後にスパイクNLOSを装備したプラサン サンドキャットを延坪島と白翎島に駐留する部隊に配備[5]。
- 2016年に韓国海軍が導入したアグスタウェストランド AW159汎用ヘリコプターにもスパイクNLOSが発射可能な様に発射機が取り付けることが出来るようになっている。
類似のシステム
編集- FGM-148 ジャベリン
- 96式多目的誘導弾システム(ミサイル重量約60kgで光ファイバー有線誘導)
出典
編集- ^ EuroSpike press release[リンク切れ]
- ^ [1][リンク切れ]
- ^ “El Agrupamiento Antitanques “Cazadores No 3″ Recibe Su Bandera De Guerra” (スペイン語). PeruDefensa.com. Peru Defensa Press. (2009年10月2日). オリジナルの2012年3月11日時点におけるアーカイブ。 2023年3月15日閲覧。
- ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 287. ISBN 978-1-032-50895-5
- ^ 「北、西海最前方にロケット砲配備、韓国は“海岸砲キラー”で対応」『中央日報』2013年5月20日。2013年5月20日閲覧。
- ^ Prusty, Nigam (2014年10月25日). “India picks Israel's Spike anti-tank missile over U.S. Javelin - source” (英語). ロイター通信 2023年3月15日閲覧。
- ^ Judson, Jen (2019年8月28日). “Can an Israeli missile give US Army aviation an advantage in future warfare?” (英語). Defense News 2023年3月15日閲覧。
- ^ 咲村珠樹「オーストラリア陸軍、新しい偵察戦闘車にラインメタル「ボクサーCRV」を採用」『おたくま経済新聞』2018年3月16日。2023年3月15日閲覧。
- ^ Ahronheim, Anna (2018年8月23日). “Rafael to supply Australia with Spike missiles, Trophy protection system” (英語). エルサレム・ポスト 2023年3月6日閲覧。