サービスデザイン推進協議会
一般社団法人サービスデザイン推進協議会(サービスデザインすいしんきょうぎかい)は、実態として広告代理店の電通、人材派遣会社のパソナ及びITアウトソーシング会社トランス・コスモスなどが設立に関わった団体である[1][2]。
サービスデザイン推進協議会が入居している興和日東ビル | |
設立 | 2016年5月16日[1] |
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種類 | 一般社団法人[1] |
法人番号 | 9010405014817 |
目的 | 「経済のサービス化等経済的社会的環境の変化から生じる市場経済の課題解決に向け、新たなサービスデザインとその市場創造」[1] |
本部 | 日本 東京都中央区築地3丁目17番9号 興和日東ビル2階[1] |
座標 | 北緯35度39分57秒 東経139度46分18秒 / 北緯35.66583度 東経139.77167度座標: 北緯35度39分57秒 東経139度46分18秒 / 北緯35.66583度 東経139.77167度 |
代表理事・理事等 |
代表理事[1] 大久保裕一(電通グループ前執行役員) 浅野和夫(トランスコスモス執行役員) 杉山武志(パソナ執行役員 理事[1] 牛久保雅浩(大日本印刷) 大金慎一(電通国際情報サービス) 武藤靖人(広報担当、電通ライブ) 秋本道弘(テー・オー・ダブリュー) 内野亘(日本生産性本部) 平川健司(業務執行、前電通) 監事[1] 河野優加(みずほ銀行) |
重要人物 |
赤池学(元代表理事、2016 - 2020年) 笠原英一(元代表理事、2018 - 2020年) |
主要機関 | 理事: 9人(代表理事を含む)、監事: 1人[1] |
ウェブサイト | 公式ウェブサイト |
設立と事業受託
編集経済産業省によるおもてなし規格認証事業の公募が始まった2016年5月16日に一般社団法人として設立された[3]。定款の作成者名は経済産業省大臣官房情報システム厚生課であるが、この定款の作成者・タイトルが環境共創イニシアチブのそれと同じであり、さらに当団体の設立時における代表理事であった赤池学[4][5]が環境共創イニシアチブ代表理事を務めている[6]。
設立早々のおもてなし規格認証事業の受託をはじめ、IT導入支援補助金事業など、経産省から2020年持続化給付金事業を含む14事業・総計1576億円分を受託していた。このうち9事業が当団体から電通や電通ワークスの他、パソナ、日本生産性本部などへ丸投げする形で再委託されていた。また5事業は委託と変わらない外注という形態で再委託されていた(外注先は非公表)。
日本におけるコロナ禍による社会・経済的影響により緊急支援的に実施された2020年持続化給付金事業では、当団体の受託費769億円分[† 1]のうち97%にあたる749億円分が電通に再委託されていたが、残りの事業でも大半が90%以上の割合額で再委託されていた[7]。
事業受託実績
編集これまでに受託してきた主な事業として、以下のものがある。
- 2016年8月 - 中小企業庁「サービス産業海外展開基盤整備事業(おもてなし規格認証)」 - 4700万円[8]
- 2017年度 - 中小企業庁「中小企業・小規模事業者人材対策事業『カイゼンスクール』実施」 - 400万円[9]
- 2018年2月 - 経済産業省「サービス等生産性向上IT導入支援事業(事務局運営業務)に係る補助事業者」〔一者応募〕[10] - 8億7800万円[11]
- 2019年2月 - 中小企業庁「平成30年度第2次補正予算『事業承継補助金』の事務局」〔一者応募〕[12] - 37億7700万円[13]
- 2019年3月 - 経済産業省「サービス等生産性向上IT導入支援事業(事務局運営業務)に係る補助事業者」〔一者応募〕[14] - 38億5700万円[15]
- 2019年4月 - 経済産業省「平成31年度『女性起業家等支援ネットワーク構築補助金』事務局に係る補助事業者」[16]
- 2019年4月 - 経済産業省「平成31年度『女性活躍推進のための基盤整備事業(女性起業家等支援ネットワーク構築事業)』」[17]
- 2020年2月 - 経済産業省「先端的教育用ソフトウェア導入実証事業事(事務局運営業務)に係る補助事業者」〔原文ママ、一者応募〕[18]
- 2020年5月 - 中小企業庁「持続化給付金」[2]
持続化給付金事業の受託をめぐる批判
編集2019年新型コロナウイルス感染症の流行に伴う中小企業庁による持続化給付金事業を、当団体はおよそ769億円で受託し、その後電通におよそ749億円で再委託していた。さらに電通から電通ライブ、電通テック、電通国際情報サービス、電通デジタル、電通東日本などに再々委託され、電通ライブからはパソナ、大日本印刷、トランスコスモス、テー・オー・ダブリューなどに再々々委託されていた。その過程で電通本体だけでおよそ104億円、電通グループ子会社6社を含めると少なくとも154億円の緊急支援的意味合いのある公金ないし税金が大規模に"中抜き"されていたことが報じられ、国会審議などで波紋を呼び起こした[19][20][21]。これは、キャッシュレス・ポイント還元事業におけるキャッシュレス推進協議会(以下「キ協」)を媒介にした構図等と同じであり、この入札で当団体はキ協に敗れたが、結局キ協から電通を主な再委託先にすることに変わりはなかった[22]。
- 実態の無い「代表理事」
- 当団体代表理事の笠原英一は、共同通信の取材に対し「この案件(=「持続化給付金」)の執行権限がなく、細かいことは分からない。元電通社員の理事に委任している」と答えた[23]。また、TBSの番組サンデージャポンが笠原に直接電話取材を行ったところ、『私はあくまで「お飾り」です』、『私は、サービスデザイン推進協議会が持続化給付金の仕事を受注していたなんて、全然知りませんでした』と答えた[24][25]。
- 決算公告の不開示
- 当団体は法律で義務付けられている決算公告の開示を設立以来、2020年夏まで一度も行っていなかった[26]。
- 経済産業省との関係
- 経産官僚であった前田泰宏がテキサス州オースティンで主催したパーティーに当団体の役員理事らが参加していた[27][28][29][30]。当団体の平川健司業務執行理事は、2019年まで電通社員で経産省とのパイプ役だったとされている[31]。
当団体が受注した事業はすべて経産省商務情報政策局サービス政策課からで、前田はその担当大臣官房審議官であった。その後、前田は中小企業庁長官として2020年持続化給付金事業を所管していた[31]。 - ビルに入居する他の公共事業の受注者
- 事務局が入居するビルには、他にも「中心市街地再生事業事務局」[32]「農商工連携等によるグローバルバリューチェーン構築事業事務局」[33]、「商店街インバウンド促進支援事業事務局」[34]、「ふるさと名物開発応援事業事務局」[35](全て経済産業省の6事業)が入居し、野党からは「電通の“公共政策部”だ」と批判する声が上がった[36]。
- 持続化給付金事業における入札不適格
- 持続化給付金事業の入札調書では、サービスデザイン推進協議会は「C」等級であるのに対し、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社は「A」等級であった。競争参加者資格審査事務取扱要領)によると、等級Cの企業が入札に参加できる事業規模は300万円以上1500万円未満であり、700億円超の持続化給付金事業に入札する資格を有さない。サービスデザイン推進協議会がデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に競り勝った理由は明らかにされておらず、国会でこの問題を追及してきた立憲民主党の川内博史衆議院議員は「官製談合の疑いが極めて強い」と指摘している[37]。
脚注
編集注釈
編集- ^ 政府公表のアベノマスクの実際の諸経費がおよそ260億円なので、持続化給付金事業の委託費用分だけで、そのおよそ3倍と莫大な額となる。
(妹尾聡太 (2020年6月2日). “アベノマスク配布 ブレる政府の説明 批判回避に躍起”. 東京新聞. 2020年6月29日閲覧。)
出典
編集- ^ a b c d e f g h i j “法人概要|一般社団法人 サービスデザイン推進協議会”. 一般社団法人 サービスデザイン推進協議会. 2020年6月5日閲覧。
- ^ a b 桐山純平 (2020年5月28日). “給付遅れるコロナ「持続化給付金」 769億円で受託した法人の不透明な実態”. 東京新聞. 2020年5月30日閲覧。
- ^ 平成27年度補正予算「サービス産業海外展開基盤整備事業(おもてなし規格認証に係る認定機関及び認証機関の立ち上げ・運用支援等)」の公募について 経済産業省(ウェイバックマシン、2016年5月21日) - https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/kobo/k160516001.html [リンク切れ]
- ^ 週刊文春編集部 (2020年5月27日). “トラブル続出 コロナ「持続化給付金」を769億円で受注したのは“幽霊法人"だった”. 文藝春秋社. 2020年6月29日閲覧。
- ^ “代表理事からのご挨拶”. 一般社団法人環境共創イニシアチブ. 2020年6月29日閲覧。
- ^ 森本智之、大島宏一郎 (2020年6月13日). “電通が省エネ事業でも再委託で受注 法人設立に経産省が関与か”. 東京新聞. 2020年6月29日閲覧。
- ^ 森本智之など (2020年6月1日). “「給付金」法人に14件1576億円 経産省が委託 7件は電通などに再委託”. 東京新聞. 2020年6月29日閲覧。
- ^ “一般社団法人サービスデザイン推進協議会”. JUDGIT!(ジャジット). 構想日本・日本大学尾上研究室・Visualizing.JP・ワセダクロニクル (2019年). 2020年6月2日閲覧。
- ^ “一般社団法人サービスデザイン推進協議会”. JUDGIT!(ジャジット). 構想日本・日本大学尾上研究室・Visualizing.JP・ワセダクロニクル (2019年). 2020年6月2日閲覧。
- ^ “サービス等生産性向上IT導入支援事業(事務局運営業務)に係る補助事業者の採択結果について”. 経済産業省 (2018年2月22日). 2020年5月30日閲覧。
- ^ “一般社団法人サービスデザイン推進協議会”. JUDGIT!(ジャジット). 構想日本・日本大学尾上研究室・Visualizing.JP・ワセダクロニクル (2019年). 2020年6月2日閲覧。
- ^ “平成30年度第2次補正予算「事業承継補助金」に係る事務局を決定しました”. 経済産業省中小企業庁 (2019年2月15日). 2020年5月30日閲覧。
- ^ “一般社団法人サービスデザイン推進協議会”. JUDGIT!(ジャジット). 構想日本・日本大学尾上研究室・Visualizing.JP・ワセダクロニクル (2019年). 2020年6月2日閲覧。
- ^ “サービス等生産性向上IT導入支援事業(事務局運営業務)に係る補助事業者の採択結果について”. 経済産業省 (2019年3月5日). 2020年5月30日閲覧。
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- ^ “平成31年度「女性起業家等支援ネットワーク構築補助金」事務局の採択結果について”. 経済産業省 (2019年4月3日). 2020年5月30日閲覧。
- ^ “平成31年度「女性活躍推進のための基盤整備事業(女性起業家等支援ネットワーク構築事業)」に係る委託先の採択結果について”. 経済産業省 (2019年4月3日). 2020年5月30日閲覧。
- ^ “先端的教育用ソフトウェア導入実証事業事(事務局運営業務)の採択結果について”. 経済産業省 (2020年2月2日). 2020年5月30日閲覧。
- ^ 皆川剛 (2020年6月6日). “給付金事業 電通7社に154億円 パソナへの外注費は明かさず”. 東京新聞. 2020年6月19日閲覧。
- ^ “コロナ・持続化給付金、電通が巨額税金“中抜き”疑惑…パソナと“トンネル法人”設立”. ビジネスジャーナル. 2020年6月19日閲覧。
- ^ 皆川剛、桐山純平など (2020年6月25日). “電通、給付金事業で外注重ね利益 経産省が委託先に10%の管理費認める独自ルール”. 東京新聞. 2020年6月27日閲覧。
- ^ 皆川剛、大島宏一郎など (2020年6月12日). “「持ちつ持たれつ」経産省と電通 入札で敗れたキャッシュレス事業も9割再委託”. 東京新聞. 2020年6月27日閲覧。
- ^ 元電通の理事に「委任」 給付金受託法人の代表 共同通信、2020年6月6日、2020年6月29日閲覧
- ^ TBS「サンデージャポン」、2020年6月7日放送分。TBSオンデマンドなどのサービスを使えば、過去放送分が視聴可能で、こちらも検証可能。
- ^ “持続化給付金業務、「低い利益率」強調 サービスデザイン推進協議会と電通の記者会見詳報”. 毎日新聞. 2020年6月10日閲覧。
- ^ 給付金業務の受託団体、決算公告なしでも「契約に瑕疵ない」=梶山経産相 ロイター - ウェブアーカイブ(ウェイバックマシン、2020年9月5日)
- ^ 「中企庁長官の懇親会に電通関係者 経産省、報道認める」 朝日新聞デジタル 2020年6月10日
- ^ 「「中企庁長官が懇親会」認める 文春報道受け、便宜は否定―経産省」 時事ドットコム、2020年06月11日、2020年6月29日閲覧
- ^ 「「サービスデザイン」入居ビル、まるで電通公共政策部 経産省受託6事業事務所」 毎日新聞 2020年6月11日
- ^ 持続化給付金「電通社員」も参加 経産省最高幹部が民間業者とテキサス旅行 週刊文春
- ^ a b 元木昌彦 (2020年6月12日). “元木昌彦の深読み週刊誌「持続化給付金」疑惑の本命・電通社長を国会に呼べ!コロナ太りがあっちにもこっちにもゴロゴロ”. J-CASTテレビウォッチ. J-CAST. 2020年6月26日閲覧。
- ^ 中心市街地再生事業費補助金
- ^ 地域新成長産業創出促進事業費補助金(農商工連携等によるグローバルバリューチェーン構築事業)
- ^ 商店街インバウンド促進支援事業補助金
- ^ ふるさと名物応援事業 小売事業者等・ふるさと名物開発等支援事業
- ^ 持続化給付金委託法人の入居ビル、まるで「電通公共政策部」 経産省6事業の事務局に 毎日新聞 2020年6月11日
- ^ 野中大樹 電通に丸投げ、持続化給付金事業に疑惑続々 東洋経済オンライン、2020年6月12日
関連項目
編集- サービスデザイン
- 2019年新型コロナウイルス感染症の流行に伴う経済産業省中小企業庁による持続化給付金事業
- 同2019年新型コロナウイルス感染症の流行に伴う経済産業省中小企業庁による家賃支援給付金事業の受託をめぐる私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)違反・下請代金支払遅延等防止法(下請法)違反問題
- 電通等が関連するその他の公共政策ないし公共事業媒介団体
- 海外需要開拓支援機構 - グリーン家電普及推進コンソーシアム - キャッシュレス推進協議会 - 環境共創イニシアチブ(ZEH補助金事業や総務省マイナポイント事業委託等)
外部リンク
編集- 公式ウェブサイト
- サービスデザイン推進協議会 (japanSQ) - Facebook
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