株式会社エル・アンド・ジー (L&G Co.,Ltd.) は、東京都新宿区に本社を置いていた健康食品販売会社。有名人を広告塔に起用し[1]、高齢者を狙った被害総額1,000億円を超える詐欺事件は[2]「円天事件」と呼ばれ、世間を騒がせた[3]

株式会社エル・アンド・ジー
L&G Co.,Ltd.
エル・アンド・ジー本社
種類 株式会社
市場情報 非上場
本社所在地 160-0022
東京都新宿区新宿2-15-22
S2ビル
設立 1987年8月
業種 小売業
事業内容 疑似通貨「円天」の発行と詐欺による資金集め。
代表者 破産管財人 福田大助
資本金 2000万円
売上高 88億円(2006年6月期)
主要子会社 関連会社等の項目を参照
関係する人物 波和二(創業者、元代表取締役会長)
特記事項:2007年11月26日破産手続開始決定。2015年9月2日破産手続終結。
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創業者の波和二は2012年に実刑判決を受け[4]、収監中。

概要

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商号の由来は「Ladies & Gentlemen」を略したもの。バイオ・遠赤外線関連商品・DVDシステムおよび関連周辺機器などの研究・開発・製造・販売などのほか、Web円天市場と称するショッピングサイトの運営を行っているとしていた。

沿革

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  • 1987年8月 - 波和二により設立される。
  • 1989年ごろ - 健康寝具や、健康食品の販売を開始。
  • 1993年5月 - 東京都渋谷区から新宿区に本社移転。
  • 1996年7月 - デジタル・ウェーブ株式会社を設立。
  • 1996年ごろ - 全国各地で演歌歌手タレントを招いて無料コンサートを開き、会員を募る[5]
  • 2001年11月 - 株式会社L&Gあかりを設立。「協力金」の名目で出資の募集を開始。
  • 2005年4月 - 株主・社員研修会「実践 あかり天国」をスタートさせる。
  • 2005年6月 - 特定非営利活動法人あかり研究所を設立。
  • 2006年2月 - 「円天市場GINZA」をオープン。
  • 2007年1月 - 会員に「現金配当を円天に切り替える」「2008年2月まで解約に応じない」と通知。
  • 2007年2月 - 現金配当を停止。
  • 2007年4月 - 静岡県の会員が返金を求めて静岡地裁に提訴。
  • 2007年9月20日 - 役員らを除くほとんどの従業員を解雇。
  • 2007年10月1日 - 東京都が立ち入り調査を実施。
  • 2007年10月3日 - 出資法違反容疑で、被害届の出ている各都県警察の合同捜査本部による強制捜査を受ける。
  • 2007年10月10日 - 波和二のブログにて、新たに「元金円天市場」なる新たな市場を設立し、さらに資金集めを行っている事実が判明。
  • 2007年10月31日 - 会員11人がエル・アンド・ジーと波和二に対して破産の申し立てをする。
  • 2007年11月26日 - 東京地方裁判所によりエル・アンド・ジーの破産手続開始決定。負債総額は約880億円。
  • 2008年1月10日 - 東京地方裁判所により波和二個人の破産手続開始決定。
  • 2009年2月3日 - 警視庁が詐欺の容疑で波和二会長ら22名[6][注 1]の逮捕状を請求。
  • 2009年2月5日 - 詐欺の容疑で波和二が警視庁に逮捕される。
  • 2009年2月26日 - 波和二他22人、組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)で再逮捕される。
  • 2010年3月18日 - 波和二に対し東京地裁は組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)で求刑通り懲役18年の実刑判決を言い渡した。なお弁護側は「無罪でなければ控訴する」との理由から東京高裁に即日控訴した。
  • 2011年2月23日 - 波和二に対し東京高裁は一審の懲役18年の実刑判決を支持し、弁護側の控訴を棄却した。弁護側は判決を不服として最高裁に上告。
  • 2012年1月10日 - 波和二に対し最高裁は一審・二審の懲役18年の実刑判決を支持し、弁護側の上告を棄却した。これによって一審・二審の懲役18年の実刑判決が確定した[7]
  • 2015年9月2日 - 破産手続きが終結し、法人は完全消滅。

疑似通貨「円天」による詐欺疑惑

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円天の仕組み

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エル・アンド・ジー社のホームページにおいて公開されていた映像によると、擬似通貨「円天」は電子マネーとして使用可能と公開されていた。10万円以上を預け、あかり会員になると「1年ごとに預けた金額と同額の円天を受け取ることができる」「年利100%の金利が払われる」とされ、受け取った円天は、円天市場で利用することが可能とされていた。

L&Gの波和二会長は、自身のブログ[8] において、円天には強制捜査を受けた円天市場と、もうひとつの元金円天市場という2種類の利用法があると解説していた。後者は日本円・ドル・ユーロ・ウォンなど現行の通貨を稼ぐ目的で運用される円天と称していた。だが、波会長は自らが発行した通貨にもかかわらず、インタビュー時以外は全く使用したことがないことを、日本テレビ真相報道 バンキシャ!」(2007年5月13日放送)にて明らかにしている。

円天の実態は、購入単位が非常に大きかったにもかかわらず、一般的な電子マネーとは比較できないほど対応店舗が少なく、家電量販店等のポイント程度の機能と使用方法しかなかった。

経緯

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布団、健康食品などの販売を主な事業としていたが、2001年になり円天と呼ばれる電子マネー形式の疑似通貨を発行し、元本を保証した上「100万円を預ければ3カ月ごとに9万円を支払う」との説明で日本国内の不特定多数から協力金と称して多額の出資金を集めた。2007年1月頃から資金繰りが悪化、従業員の大半を解雇し、配当を現金から円天に切り替えたものの、円天による配当の支払いも止まるなど企業活動は事実上停止していた。

2007年5月13日放送の「真相報道 バンキシャ!」にて、出資した保証金が戻ってこないどころか、逆に更なる出資を強要するような書類を突きつけられていた会員がいたことが報道された。同番組のインタビューに応じた波会長の発言によれば、2008年2月まで保証金の返還が停止されていたという。これを受けて番組コメンテーター全員が、「マルチまがいかつ詐欺的な商法であり、取り付け騒ぎに発展する危険がある」といった警鐘を鳴らすコメントを述べた。自転車操業無限連鎖講ネズミ講)を指摘する声もあった。

さらに、同年9月23日の読売新聞の報道によると、同年2月から会員5万人への配当が停止されており、9月20日には多くの社員を解雇していたことが判明した。

2007年10月3日、警視庁および宮城福島県警察の合同捜査本部は、エル・アンド・ジーに対し、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)違反(預かり金の禁止)容疑で一斉捜索し、会社や会長自宅など全国60ヶ所の家宅捜索に着手、10時間に及ぶ捜査により段ボール箱1000個以上の資料を押収した。全国約5万人から1000億円を超える資金を集め、詐欺容疑での立件を視野にいれ捜査を進め、過去最大規模のマルチ商法事件に発展するおそれがあると報じられた。

波和二会長は、1960年代よりマルチ商法の会社「APOジャパン」を設立し、25万人に対し販売したが、高校生が自殺する騒動に発展、1978年に詐欺で実刑判決を受けた[9]。日本で初めて法的処分を受けたマルチ商法の会社であった。

有名人を広告塔に利用

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会員の募集や会社の信用を高めるため、以下の演歌歌手・タレントを広告塔として招き、関連団体を介しホテルや国技館などで無料コンサートを月10回にわたり行った。細川たかしは10年以上にわたってコンサートに出演、会長の波を「おやじ」と慕い「たくさん世話になっている」と称賛[5]、有名歌手が「今後とも円天をよろしくお願いします」と言うことで、顧客を信用させた[10]。L&G被害対策弁護団は、これら出演者に対しても損害賠償を請求する方針を発表した[11]。当初関与が公表された芸能人は以下の23人であった(50音順)[12]

細川たかしのギャラは1回1200万円であり、50回以上出演した[12]。さらには歌手を紹介することで彼らの出演料の一部を紹介料としてピンハネした[13]

被害対策弁護団は2007年12月12日[14]、同社に加担したタレント、以下30人に[15]出演回数・出演料・その他当時の状況を問う照会書[16]を送付[17]。細川への照会書では「知名度や社会的信用が高い貴殿が多数回コンサートに出演すること自体、L&Gに対する信用を増大し、結果的に詐欺行為を隠ぺい・助長することにつながったことは疑うべくもない」と指摘した[15]

弁護団は照会書をもとに責任の有無を検討するはずであったが[14]、細川ほか13人はこれを無視、翌2008年4月1日に催告照会書が送付された[17]。未回答のタレントは以下の14人である[18]

  • 細川たかし
  • 藤あや子
  • 松方弘樹
  • 長山洋子
  • 美川憲一
  • キム・ヨンジャ
  • 中村美律子
  • 伍代夏子
  • 香西かおり
  • 研ナオコ
  • 日野美歌
  • 錦野旦
  • 坂本冬美
  • 松崎しげる

結局、上記のうち再度の照会書請求に応じたのは松崎しげる1人だけであった[19]。弁護団は「違法収益は被害者に返そう!」という取り組みも行っていたが[17]、照会書にて報酬を「返還したい」と答えたのはものまねタレント1人のみである[19]

細川は以下の謝罪コメントを発表し(現在は削除)、同年の第58回NHK紅白歌合戦の出場を辞退した[11]。これに対し弁護士の紀藤正樹は「まず世間にではなく、直接のL&Gの被害者に謝罪し、そしてL&Gから受けた金銭や便益を被害者に返すべきだろう」「誰に謝っているのかが不明で、“広告塔”として果たした役割を過小評価している」と非難した[11]

12月3日(月) 細川たかしよりご報告がございます。

この度、通常のコンサート業務同様に、仕事の一環として受けた、NPO法人あかりコンサート等出演の件にあたり、世間に対して多大なるご心配をおかけした事を大変申し訳なく思っております。

つきましては、先月29日に『NHK紅白歌合戦』の出場を辞退させて頂きたい旨、申し入れをした次第です。

今後とも歌謡界全体のために、尽力していく所存です。


平成19年12月3日

2008年5月、弁護団は「新たな会員の参加や既存会員の出資を促進した」として細川に損害賠償請求訴訟を起こした。芸能人で提訴されたのは細川のみで、弁護団事務局長の田中博尊は「あれだけ多くのイベントに出演していれば、どういう会社なのかということは容易に推測できたはず」と断じた[5]。本件について細川の事務所は「お答えできることはありません」と回答[5]、2009年2月時点で弁護団への回答書も提出していない[19]

また、森山雅美(慶應義塾大学医学部元准教授)がL&Gの講演に出席した[20]

波の結婚式では金田正一が仲人を務めた[21]

「コスモガール」

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2003年7月、関連会社「ロイヤリティ・コスモ」を設立。幹部によると、この会社の社員は「コスモガール」と呼ばれる女性だけで、大半は営業部の社員が行きつけの六本木の店で勧誘したキャバクラ嬢であった。07年ごろには20〜26歳の約25人が所属していたという。

コスモガールは一律月給30万円で、仕事は会員向けイベントで受付をするほかは、男性社員らが酒を飲む時に同席するだけであったという。同社は渋谷区の代官山や港区西麻布などにあるマンションを社宅として無料で使わせていた[22]

関連会社等

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二次被害

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大型の詐欺事件では一旦詐欺被害にあった被害者が改めて別の詐欺師の標的とされるケースがままあるが、エル・アンド・ジーの場合もこうした事例が多く発生した。

菱和イマジネーション
被害者に親書でエル・アンド・ジーが会社更生法により吸収合併したとの説明で新たな出資を募る。
関連団体を名乗る詐欺
エル・アンド・ジー被害対策弁護団、その他証券会社・被害回復の為の法人(例:JGI、日本ゼネラルマネージメント、SPC証券等)、NPO法人破産管財人のボランティアのほか、弁護団弁護士を騙る者などが、電話やファックス等で被害者に協力金や円天、あかり価格の証書を額面の数十%の金額で買い取る、あるいは同様の金額を返金するなどと巧みな話法でさらに費用を請求する手口で持ちかけるなど[23]
主な業者名
SPD証券、明光証券、ネクストジャパン証券、株式会社エージェント、スリーエム、エンゼルハート、エージーパーク、エージーパートナー、SRC調査センターのほか弁護団弁護士、元弁護団弁護士の実名を語るものなど[23]
波和二による弁護団業務の妨害
波自身が自らのブログ上でL&G被害対策弁護団の業務を妨害するような以下の書き込みを行った。
弁護団を後3日で解散する事となりました。つきましては着手金の返還を一部受け付けます。本日24日、70%、25日50%、26日30%。尚返金処理に際し別途2万円をお振込みください。
しかしながら、上記の書き込みの事実はなく振り込み先は弁護団が管理する口座であったため、詐欺には該当しないが「偽計による業務妨害に該当する可能性」が高いと弁護団は説明している[23]

脚注

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注釈

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  1. ^ 波会長の長男も含まれる。

出典

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  1. ^ 【ケフィア破産】高齢者たちから老後資金をむしり取った超高利回り「投資詐欺」の実態”. Business Journal (2018年9月30日). 2025年1月29日閲覧。
  2. ^ 「円天」詐欺、L&G元会長に懲役18年 地裁判決”. 日本経済新聞 (2010年3月18日). 2025年1月29日閲覧。
  3. ^ 「電子マネーは未来のおカネ」で騙した円天事件(2007年)【TBSアーカイブ秘録】”. TBS NEWS DIG (2024年4月25日). 2025年1月29日閲覧。
  4. ^ L&G元会長懲役18年確定へ 巨額詐欺、上告を棄却 - 日本経済新聞”. www.nikkei.com. 2023年3月24日閲覧。
  5. ^ a b c d 広告塔?細川たかし 訴えられた”. デイリースポーツ. 2008年5月17日閲覧。
  6. ^ 週刊ダイヤモンド2007/04/21号、14頁
  7. ^ “波被告、懲役18年が確定へ 「円天」元会長、上告棄却”. 共同通信. (2012年1月11日). オリジナルの2012年7月6日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120706133353/https://www.47news.jp/CN/201201/CN2012011101001566.html 2012年1月31日閲覧。 
  8. ^ 2007年10月10日付け記事 等。
  9. ^ L&G会長ら22人の逮捕状を取得(2009年2月8日時点のアーカイブ
  10. ^ 「電子マネーは未来のおカネ」で騙した円天事件(2007年)【TBSアーカイブ秘録】”. TBS NEWS DIG (2024年4月25日). 2025年1月29日閲覧。
  11. ^ a b c 細川たかし氏の謝罪にオブジェクション!”. 弁護士紀藤正樹のLINC TOP NEWS-BLOG版 (2007年12月4日). 2025年1月28日閲覧。
  12. ^ a b エル・アンド・ジー詐欺事件”. 詐欺コム (2024年7月1日). 2025年1月28日閲覧。
  13. ^ 内外タイムス (2008年10月14日). “細川たかし 芸能生命危機!?”. livedoor ニュース. 2009年2月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年2月6日閲覧。
  14. ^ a b 細川たかしさんらに照会 L&G事件で勧誘コンサート”. Yahoo!ニュース (2007年12月14日). 2007年12月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年1月28日閲覧。
  15. ^ a b 細川たかし氏ら芸能人30名に照会書”. 弁護士紀藤正樹のLINC TOP NEWS-BLOG版 (2007年12月15日). 2025年1月28日閲覧。
  16. ^ 照 会 書”. L&G被害対策弁護団 (2007年12月28日). 2013年6月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年1月28日閲覧。
  17. ^ a b c L&G被害対策弁護団”. L&G被害対策弁護団 (2007年12月28日). 2012年4月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年1月28日閲覧。
  18. ^ 未回答タレント、細川たかし氏外13名へ催告照会書”. L&G被害対策弁護団 (2008年4月1日). 2012年4月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年1月28日閲覧。
  19. ^ a b c L&G詐欺:「円天」イベント、出演芸能人は30人 報酬返還、対応分かれ”. 毎日新聞社 (2009年2月7日). 2009年2月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年1月28日閲覧。
  20. ^ 「月100万円、研究費ならと了承」慶応大元准教授 - アサヒコム2008年9月1日付(2008年9月25日時点のアーカイブ)。2009年7月2日朝日新聞によれば、1日に原告側は森山雅美への訴えを取り下げたとのこと。被害対策弁護団 - 被害責務照会書
  21. ^ L&G巨額詐欺 円天マネー 波和二容疑者が広告塔として使った「タレント人脈 報酬と言い分」Friday2009年2月27日号。
  22. ^ 「マルチ界の教祖」L&G波容疑者の素顔と組織の実態は? - 産経新聞(2009年2月14日時点のアーカイブ
  23. ^ a b c L&G被害対策弁護団公式サイト

関連項目

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外部リンク

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