イトヒキイワシ
イトヒキイワシ(糸引鰯、Bathypterois atricolor)は、条鰭綱ヒメ目チョウチンハダカ科に属する深海魚の一種。体を深海底に立たせて餌を待つ独自の生態から、「三脚魚」(サンキャクウオ)という通称を持つ。イワシと名に付くが、ニシン目に分類されるイワシとは目から異なる。
イトヒキイワシ | |||||||||||||||||||||||||||
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保全状況評価[1] | |||||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | |||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Bathypterois atricolor Alcock, 1896 | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Attenuated Spider Fish |
分布と生息地
編集インド太平洋、ギニア湾のリベリアからナイジェリア[2]。日本では福島県以南の太平洋岸、沖縄トラフから知られる[3]。大陸斜面、深海底、海溝に生息し、生息水深は258 - 5150 m[3]。
形態
編集体は細長く側扁しており、頭部前方は縦扁する。目は著しく小さい。吻は長く尖り、口は大きく、下顎が突出する。背鰭は体の中央部にあり、背鰭より前に腹鰭があり、背鰭基部の真下に肛門があり、臀鰭は明らかに背鰭より後方から始まる。また脂鰭がある。腹鰭と尾鰭の端は異常に伸びるが、腹鰭は臀鰭に達しない。胸鰭の遊離軟条も非常に長く、先端は分枝し、脂鰭まで達する。尾柄腹面には切れ込みがある。鱗は円鱗で、剥がれやすい。背側は暗い紫色で、腹側は青灰色。顎と鰓蓋、尾鰭は黒色[4]。体長は15 cm弱で、最大で20 cm[2]。
生態
編集鰭を使って海底に立ち、流れてくるプランクトンなどの餌を待つ。また胸鰭を動かし、餌を引き寄せるという。餌の少ない深海でエネルギー効率を抑えるために、独自の体型へ進化したとされる。潜水技術の進歩による海底での調査で、その生態が判明した。深海に住むヒメ目に多い雌雄同体である。幼魚時は海の表層辺りに出て、成長したのちに深海に戻り、独自の姿に変わるという。
類似種
編集ナガヅエエソとよく似るが、ナガヅエエソは腹鰭が臀鰭に達するほど長く、臀鰭は背鰭後端より前から始まる。また尾柄腹面の切れ込みが無い[3]。オオイトヒキイワシには脂鰭が無く、胸鰭も背鰭までしか達しない[3]。
脚注
編集- ^ Nunoo, F., Bannermann, P., Poss, S. & Russell, B. 2015. Bathypterois atricolor. The IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T13462748A15603185. https://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2015-4.RLTS.T13462748A15603185.en. Accessed on 18 April 2024.
- ^ a b Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2024). "Bathypterois atricolor" in FishBase. April 2024 version.
- ^ a b c d 『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』 pp.427-428
- ^ 『九州ーパラオ海嶺ならびに土佐湾の魚類』99頁
参考文献
編集- 中坊徹次編 『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』 東海大学出版会 2013年 ISBN 978-4-486-01804-9
- 久宗高 『九州ーパラオ海嶺ならびに土佐湾の魚類』 日本水産資源保護協会 1982年